それはお仕事帰りのこと。
たかり新ちゃん
寒くて寒くてたまらなく寒い。
そんな雪が積もった夜。
こんな日に駆り出されてしまった可哀想な警察陣に心の底から「ごめーん」
と謝りつつ先ほど欲しいものをゲットしてきた怪盗紳士。
素敵な犯罪者番号をお持ちの、素敵な白い怪盗さまは本日寒さゆえに空を飛ぶ
のに辟易していた。
そろそろ適当なところで降りて適当に変装して電車で帰ろうかなぁ
・・・終電まだあるよな?
などとぼーっと考えながらその適当なところを探そうと視線を下に向けたその時。
「・・・・・・行き倒れ?」
うっすら積もった雪の上に誰かが倒れているようだった。
このまま明日まで放置しておいたらもしかすると凍死の危険性もある。
ほんの数分歩けばコンビニがあるようなこの場所で凍死なんて可哀想すぎだろ。
ちょっとした仏心で彼は周囲に人が居ないのを確認してからフワリと道路へと足を付け
カシャリと小さな音を立てながらグライダーを片付けた。
「さぁて。適当にゆすり起こして退散しましょうかね」
酔っ払いだろうと検討つけ彼は白い衣装を解くことなくその行き倒れに近づこうとして
・・・・・そして、嫌なことに気がついてしまった。
「・・・・まさか・・よもや・・・いや、気のせいであって欲しいと思うが・・・・」
ちょっと離れた所から見たその行き倒れは自分が知る人物に大層似ていた。主に背格好。
サラサラの黒髪。
向こうを向いて倒れているので顔はわからないが、あの大変特徴的な髪のハネが
ひっじょーーーーーーに怪しい。
そしてピンッともう1ついやな予想をひらめいてしまった。
「まさか組織の残党に」
そうで無ければ良い。そう願いながら慌て駆け寄ってみれば・・・・・
「・・・・め、名探偵?」
予想通り彼だった。
だがもう1つの予想は幸いなことに外れてくれたようで、怪我1つなさそうだった。
というか・・なんだか寝てるだけ?
息があるのにホッとして置き去りも人間としてどーかと思うので夜更けに申し訳ないが
阿笠宅に連絡をしてあげようと携帯を取り出して立ち上がろうとして。
・・・グイっと後ろによろめいた。
「め、たんて?」
なんと彼が倒れたままガッシリとKIDのマントをつかんでいたのだ
そして開口一番に
「はらへった」
「…おい」
なんだそれはーーーーーー。
ふつー腹減ってミチバタで寝るか
ちょっと行けばコンビニあるじゃん。
「サイフに金ねえ」
「今時のコンビニならカード使えますよ」
「あ?この俺にたかが100円200円でカード使えと?」
はいはい見えっ張り大王ですものね。
「っつかおにぎりかパンですませる気満々ですか。栄養は何で補うんですかー」
「緊急時用、灰原特製栄養剤」
真面目な顔でのたまうなっ全然緊急時じゃねーっっ
「でもこれじゃ腹は膨れねー。あードラゴン●ールの世界ならなぁ」
「仙豆ですか?」
「ん。あれあったらなーいつも怒られないですむのに」
遠い所をみるように呟く。そこまで食べるのめんどくさいか?
「とりあえず、はいどうぞ」
仕方ないので夜食用にと持っていた怪盗KIDお手製サンドイッチを渡してみた。
「どろぼーの施しなんかうけとれるかっ」
だがマントは離さない
「じゃあ…」
「だが背に腹はかえらんねー」
1人で食べたくないからつきあえ
事情聞きたいか?
「めんどくさいので聞きたくありません」
「実はな白馬のヤローが」
語りだしたー!
聞きたくないって言ったジャン
で力なく倒れたところでフイに思いだしたわけだ
そーいやあの白いのが仕事日だな ここらへんとーるなー
「よし。あいつにたかろう」
俺はたかられてたのか!
誰も通り掛かからなかったんですか
「おきづかいなくと言っておいた」
気になるって
「なんだよつれねーな。こぉぉんなちっちぇー時からの仲だってのに」
えーえー確かにその通り。あなたはこぉんなちっちゃかったですね最近までっっ
「なぁかいとー」
「…へ?」
あっぶねぇ。
思わず返事するとこだったじゃねぇか。
何ナチュラルに本名呼ぶんだめいたんてー。
「あ、わり。いきなり下の名前呼んだら気分わりぃよな。んと黒羽」
決定?もう確定してるの?
「誰の名前です?」
「…うわぁ。まだしらばっくれ気かー。や、もう証拠ばっちりだし、手遅れだって」
「…」
「なんだよその不服そーな顔」
「いえ不服というか不思議で」
「ああ。そりゃ中森警部に教えてもいーけどあのおっさん黒羽捕まえたらすっげ落ち込み
そーじゃね?」
オッサン呼ばわりですか名探偵。
しかも私じゃなく中森警部の心配…。
俺…もしかして中森警部以下!!?
もしかしなくても、そうかもしれない。
「ってわけで黒羽」
「や、この姿の時にその名を呼ばれると大変困るのですが」
「2人っきりん時くれぇいいじゃねぇか」
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