パラ・・・パラ・・
一定の規則的な紙の音。
本をめくる音が静かな空間にサラリと響く。
今日という日がもうすぐ終わろうといった時刻。
いつもはだれもいない、工藤家に小さな明かりが灯っていた。
 
パチン。
暗闇の中ベッドの小さな明かり一つで細かい字を真剣に
読みふけるブルーの瞳の少年。
本の世界へ入り込んでいるその少年は気づかなかったが
どこかで指を鳴らす音が鳴った。
その瞬間部屋の電気がパッとつく。
しかし相変わらずそれにすら気づく気配を見せず、ベッドに腹這いに転がり本を読み続ける。
「こんばんわ。名探偵。暗闇で本を読んでは目を悪くしてしまいますよ。」
そっと静謐な空気を壊さないような静かな声音で囁いた。
「・・・・ん?あ・・・KID・・いつの間にここに・・・いやそれよりどうやって家に入ってきたんだっっ。」
驚いた。というより訝しげに問う。
鍵を閉めたかはしっかり確認した。だがしかし相手はKIDだ。
「おや?愚問ですね。こちらの窓からそっとおじゃまさせて頂ました。
こんな簡単な鍵をつけていては泥棒にはいられてしまいますよ。?」
首をかしげ親切そうにKIDは言う。
「もう入られてるじゃねーか。手遅れだな。」
本に目を戻し、はっと鼻で笑うコナン。
「私は別ですよ。私以外の泥棒がもし入り込んだら大変ですよ。」
「俺的にははっきり言っててめーほどやばい泥棒はいねーと思うんだが」
いつものごとく冷たい対応。だがそれに堪えた様子もなく楽しげにKIDは笑う。
「やばいとは心外ですね。こんなにあなたの事を心配しているのに。」
「ガキに手を出そうとする泥棒のほうが物盗んでくやからよりよっぽど悪質だと思うぞ俺は」
開いていた本をようやくパタンと閉じ、やっときちんとKIDに向き直る。
せっかく今日は久々に夜更けまで本を読み続けられるとウキウキ
工藤家へやってきたのに、こんなのに邪魔をされて迷惑だ・・・・と
その目は訴えていた。
「手を出すなんてとんでもない。私はただ敬意を表しているだけですよ。」
こうやってね・・。と逃げる隙もなくコナンの頬に口づけた。
「紳士の風上にもおけねーヤローだな・・・」
あわてて真っ赤になった頬を手の甲でこすりそっとベッドを後じさる。
「おやおや。そんなに下がると・・・ほらもう後ろがなくなってしまいましたね。」
下がりすぎて壁に頭を激突させたコナンにクスクスと笑うと
ゆっくり近づいてくる。
「くんな。なんなんだよてめー一体。俺からかって面白いのかよっ」
唇をかんでキッと睨み付ける二つのブルーアイに瞬間KIDはみとれた。
「本当にかわいい人だ。」
ふっと笑うとコナンの顎をとり今度は唇をあわせる。
「キ・・・っん・・・」
軽いキスの後、今度は深い深いディープキス。
含みきれない唾液が唇からあふれ顎から膝にしたたり落ちる。
息が出来なくて苦しくなったコナンがドンドンとKIDの胸をたたきまくってやっと唇は解放された。
「は・・・はぁ・・はぁぁ。」
酸素不足のため抗議の声も出ないコナンの唇をそっと指でたどる。

「や・・め・」

KIDの指をはじこうとするコナンの手を封じ、唇からあふれた唾液をそっと嘗め取る。

コナンはかすかに震えた。

「ん・・」

背筋がゾクゾクする感触にコナンは目を潤ませる。

このままでは自分がどうなってしまうか分からない。

「やめ・・ろ・」

やっとのことで絞りだした言葉に理性が半ば飛びかけていたKIDは名残惜しげにコナンから唇を離した


「今夜はこのへんで失礼させて頂きます。」

すっとコナンの手を離し、半分乗りかかっていた体を起こす。

「これ以上いたら大変な事をしでかしてしまいそうですから」

嫌われては元もこもない。とりあえずキスは感じてもらえたようだしこれなら

少しは好意をもたれているということだろう。そうKIDは判断を下し、今

自分がすべき事(理性があるうちにこの場を去ること(笑))を実行した。

「それでは名探偵。またお会いしましょう。」

まだ呆然としているコナンにチュッとおやすみのキスをするとKIDは窓へと身を翻した。

唇を押さえ、KIDが消えてさらに数分ぼんやりした後

「なんで・・・こんな事したんだ?」

おとぼけな彼は首をかしげつぶやいた。もしや新手のいやがらせか?とか

真剣に思っている彼に、KIDの熱い思いが届く日はくるのだろうか?

彼はにぶいぞ。負けるなKID。



※おまけ※

「あーやばかった。あれ以上いたらかーなーりぃやばかった。

だけどなあ、俺って子供オッケーだったのかあ。知らなかったなあ。

しっかしこれで俺の思いも伝わっただろうし・・くぅぅぅ可愛かったなぁ。」

空を飛ぶKIDはとても人様にみせられないようなデレデレの顔をしていた。

気づかぬまま素のしゃべりかたでぺらぺら独り言をつぶやく。

残念ながらまったく自分の思いが伝わっていないなど考えもしないおめでたい

彼なのだった。

end

あとがき
・・やってしまった。こんな筈ではなかったのに・

up2001/
6/6