はじめて出会った日・・・・というのは大変貴重なものだ。
なにせそこで第一印象が決まってしまうし、そこで相手とのこの先も決まってしまう。

その点俺らはとんでもない出会い方をしたもんだよなぁ。

4月1日



「まてーーKID−−−−!」

「相変わらずお元気ですね中森警部」

「おかげさまでな」

はっはっはっと腰に手を当て嬉しそうな顔をみせる中森にKIDはフと笑みを漏らした。

「まぁいつまでもお元気でいていただきたいのですが・・・・・どうぞ血圧のほうには十分お気をつけください」

私のせいで死なれたら目覚めが悪いので。
サラリと述べられた辛らつな言葉に中森はうっと呻いた。

実は先日の健康診断で高血圧との診断が。
毎日カッカと怒っているせいだろうか?
いい年してKIDを追いかけているこの情熱が俺の血圧を上げまくっているのかっっっ!?
と悩んでしまったのを見透かされたような気がした。

真実は『もーー聞いてよ快斗っっお父さんったらとうとう血圧最高値振り切っちゃった(←おおげさ)んだからーーーKIDのせいよーーー』
などと最近文句たらたらの娘からの情報提供によるものだったのだが、彼がそんなこと知る由もない。

「それでは今宵はこれにて」

この先の予定がありますので。
などと意味深な言葉を残しKIDはドロンとその場から消え去った。

いつもよりあっさりした退場に彼らは「ああ、KIDも忙しいんだなぁ」などと思ったとか。

そんな場合じゃないでしょ警察諸君。



「また逃げられたぁぁぁぁぁ」
「警部血圧がっっ」
「娘さんに怒られちゃいますよっ」
「うるさーーーーーいっっ」



「くくくっ」
「おや名探偵、楽しそうですね」
「や、中森警部の叫び声がここまで聞こえてきて、な」
盗聴器の意味がねーな。
などと先ほど電源をきった盗聴器のイヤホンをポケットにしまいこむ小さな子供。


「来ると思ってたぜKID」
「ええ、覚えててくださって嬉しいですよ」

子供が立っていたのは初めてであったあの屋上。
今日という日にこの場にいてくれた理由はたった一つしかない。

「さすがに印象強かったしな。4月1日なんてな」
「エイプリルフール。どうぞお好きなうそをおつきください」
「ばぁか。とりあえず一年、お前を捕まえられなかったことを実感した。まぁそこまで力入れてたわけじゃなかったけどな」
「・・・ひどい・・」
「しょせんこそ泥じゃねぇか。俺には関係ない。それより気になるのはお前にかかわってくる組織のほうだな」
「別に私の仲間というわけではありませんよ」
「ったりめーだ。そうだったらとっくにお縄にしてらぁ。で、あいつらは一体なんなんだ?」
「まさかそれを聞くためだけにこちらに?」
「あーまぁ今日なら確実に会えると思ったしな」
「・・・・つまんない・・名探偵つまんないよ。」
「別にお前に楽しんでもらおうなんて欠片たりとも思ってねーからつまんなくて結構」
「あーあ。なんだか何にも言いたくなくなゃっちゃったなぁ」

フェンスに寄りかかり空を仰ぐKIDにコナンはフムとうなづいた。
「情報提供する気なし、か。じゃ帰る」

「うっわ。マジそのためなわけ?傷ついたなぁ」
「お前のそのくだけた言葉遣いにもかなり俺はショックを受けたけどな」
「地でぇぇす。だってキザッたらしい言葉はいたら名探偵ぜっったいなんか蹴ってくるもん。こっちのが無難っしょ?」

コナンはちょっと考えた末に

「ところでお前その石いつ返す気だ」
などと話題変換をした。図星だったのだろう。

予想通りの反応に唇を持ち上げつつも、それをコナンに見せないように手で隠す。
その反対の手でヒョイと宝石を取り出した。

「んーちょっと待ってね。すぐに・・・・あぅ・・はぁずれっ」
「じゃあ返せ」
「ほいっ」
ポンッと放られた2000万円の宝石。
それを慌てるでなく持っていたハンカチの中にキャッチするとそのまま丸めてポケットへ。
なんだかただの綺麗な石を扱っているような適当さ加減にKIDは苦笑してしまう。

「なくさないでね」
「ばぁろー俺を誰だとおもってやがる」
「ピッチピチの小学一年生の江戸川コナンくんでぇす。」
「・・・・・」←危険物構え中
「あ、駄目駄目っその危険な針は禁止ーー」

ムスッとした顔のコナンの腕から危険物体を奪い取り、KIDはニッコリ微笑んだ。

「さて、武器をなくしたコナン君はどうするのかなぁ」
「蹴る」
「遠慮しまぁす。」

これまたニッコリ笑って靴まで奪い去った。
もちろん奪ったと同時に抱えあげたことは言うまでも無い。

「靴ないんだから大人しく抱っこされててよ」
「やなこったっ。靴返せッ腕時計も返せっ。ついでに俺も離せっっっっ」
「んー・・・・やだ」

「このバカKID−−−−」
「あははー。罵声すらも心地よいねぇ」

なんだかいつの間にかよく話すようになってて、こんなバカなこともするようになってて、互いの正体を知ってるのに言ってもいいのか分からず知らないフリ。
出会ったときからは想像もできないこんな関係。

第一印象はお互い最悪で、この先もずっと最悪だと思っていたのに。
今じゃこんなに居心地よい。



「出会って一年だね。めいたんてー」
「ああ、一年だな。KID」

ちょっと含み笑って。
それから


「「これからもよろしく」」

そんな関係。

なんだか適当な話ですみません。
さっき思い出してタカタカ打ったので落ちも何もあったもんじゃありません(涙)
やーでもなんかとりあえず邂逅記念日おめでとさんっ

2005.4.1
By縁真