夜のベールが辺りをつつむ。
今宵は見事な快晴だった。
星々はさえわたり、月は神々しいまでに美しい。
そんな中を今夜の主役はゆったりと優雅に飛行していた。
良いご身分である。
猫の
を探せ3



「いーー風っ。いーー月!・・あーあ。これであの名探偵君が来れば言うこと無しなのになー」

月に向かって唇をとがらせる。
とても彼があの有名な怪盗とは思えないそんな仕草だった。

「さて。ベリーキャットねぇ。」
あの後寺井の奮闘のおかげで盗みにはいるお宅の情報とその他もろもろをゲットした。

すでに枚数にして数十枚ある資料は頭の中にインプット済み。
ハッキリ言って今、日本で一番ベリーキャットについて詳しいだろうと自負している。

ここ数年活躍しているその怪盗はちまたでは女性と言われている。
KIDとは違い怪盗と名は付いているものの、予告状は出さない普通の泥棒さんだった。
狙うのはキャッツアイのみ。
他の石は絶対に狙わない。
そしてそのお宅にはかならず一枚のカードが残されるのだ。
そこにはベリーキャットの名と共に一言だけ書かれているらしい。

『お借りします』

借金のようだ

まあそんなこんなで最近中高校生の間で「お借りします」はブームらしい

敵の情報はそんなものだろうか。


ターゲットは美園家。
そして美園恵。彼女がどうやら今夜の騒動の引き金らしい。
小学1年生。母を亡くし父子家庭。
ちょっと親近感が沸く。

「相変わらずジイちゃんの手腕は見事なもんだなぁ」

集まった資料に目を通し快斗は感嘆の声をあげたものだ。
彼女がKIDの予告状を出した事は調べがついている。
じゃあなんでわざわざ自分の家へ盗みに入ってもらおうと思ったのか?
ちょっと気にかかる所である。

「一体お嬢さんは何がしたかったんでしょうねー」
ある程度の予想は付いているけれど。
風を正面からうけながら白い衣の怪盗は渋い顔を一転させニッと天真爛漫な笑みを作った。

(ま、本人に聞けばいっか)

彼は風に乗ると鳥のごとくはばたいた。



(首尾は上々)
一方もう一人の主役はすでに現場にもぐりこんでいた。

「今日こそKIDをとっつかまえてやるんだからっっっ!!!」

お父さんが、と心の中で付け加えているのだろう青子がやる気満々で手を振り回した。
その横で白馬が苦笑を見せた。

「ごめんなさいね、無理言って連れてきてもらってしまって」
「いえ、大した事ではありませんから。それより東さんもKIDに興味がおありなんですね」
「ええ・・まあ」

話しかけてくる青子と白馬に適当に相づちを打ちながら都は思った。
(とりあえず明かりが消えた瞬間が勝負ね)
電気系統にはさっきお手洗いを借りたついでに手を加えておいた。
意外と身内には甘いぞ警備。
現場にこんな簡単に潜り込めたのは本当にラッキーだった。

「時間です」

時計を見て警官の誰かが叫んだその瞬間、辺りは暗闇に包まれた。
「奴の仕業かっそれともベリーキャットか!?誰かっっプレーカーを見てこいっっ」
青子の父の怒声が響く。
思わず身を縮めてしまいそうな勢いだ。

警官がザワザワと動く中、さりげなく石に近づいた都は持っていた偽者と置きかえ本物を手に入れた。
そしてすぐに自分の制服にあらかじめ用意しておいた隠しポケットに忍ばせて置いた。
白馬の知り合いである都を疑うものなどこの場に誰もいないだろう。
その間約10秒。
明かりはすぐに点いた。


「KIDだーーーーーーー!!!


彼は月光を背に堂々と姿を現した。
明かりが消えていればもっと効果的に彼を際だたせた事だろう。
闇にはえる白いスーツ。
背後からの月の光でまるで輝いているかのように彼の姿が目に映ったはず。
実に惜しいと都は思った。

「今晩は。中森警部。今宵もまた気合いが入ってますね。」
それだけ言うと厳重な警備もなんのそのヒョイっとくぐりぬけ都が置いた偽者の石を手の中に転がした。
少しだけ目を細めると彼はウインクを残し身を翻した
「では確かにキャッツアイは頂きました。今日これで。」

    
追えーーーーー!!!


中森警部の怒声がさえ渡る。
ものすごく楽しそうだ。嬉しそうだ。
喜々としている。
はずんだその怒声は近所迷惑以外の何者でもないだろう。

そこまで考えてから都の口から思わず笑いがこぼれた。
偽者と気付かず持ち去ったKIDに。

(なんだ、大した事ないわね)

世間が噂するほどの物じゃないじゃない。やっぱり見ると聞くじゃ大違いよね。
本物は自分が持っている。
そしてこれが最後の石。
これが12個目。

絶対に渡すわけには行かなかった。
ようやく全部そろったのだから。

かみ殺せない笑みを無理矢理押し込み、焦らないよう心がけ白馬たちに別れの言葉をつげると都は大急ぎで帰路へとついた。
送っていくという白馬の言葉を断るのは結構骨が折れたがそれすらも気にならない。
早く帰って・・・そして・・・・そして・・・
オープンザッドアーーー!!!よっっ

そんな踊り出しそうな軽やかな走りをみせる都を月夜に輝く街灯の上から大きな白い鳥が一羽眺めていた。
楽しそうに。
口元をゆるめ。

丁度近道の為公園と呼ぶのもおこがましいほど小さな公園を横切っていたときようやくその鳥は声をかけた。
「なるほど、あなたが怪盗ベリーキャットだったのですね」





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あっもしかして今回短い?
短いかも。
でも区切りとしてはここがいい感じ♪
By縁真