小さな名探偵は依頼人の少女と共に闇夜に消え去った

猫の
を探せ5


(うーんかっこいーー)

過ぎ去る背中を見送り胸の中で拳を握る。さすが"俺の"名探偵!!!
そんな心の賛美とは裏腹に表情を取り繕うと口元に手をあて考え混んでいる都を見やった。

「何者なのよあの子」
「さあ?それは私にも解りかねますよお嬢さん。でも、謎だからこそ楽しい。
謎のままとって置きたいと私は思ってます」

知りたい気もするけど謎は謎のままの方が人生面白い事もあるじゃん?
ね?

「そういうもんかしら?」
「ええ。でも貴方の謎は解き明かさなくてはいけませんね。名探偵に頼まれた以上私もここで手を引くわけには行かないのですよ」
「え?」

「一つ、彼が気付いていながらも言わなかった事を教えましょうか。」
指を一本立てフリフリ振る。
「貴方の探していたその石はレプリカですよ。」
「なんで・・」
「傷がついてます」
「傷くらい―――――」
「最初からついていたと彼は言いました。と言うことは貴方のお祖父様が持っていた時に付いたもの。」
「でもその間に何人もの手に渡ってるわよっ」
「いえ。それは意図的につけられたとしか思えない傷です」

手の中の猫目石に目を落とす
明らかに彫られたような傷だった

「キャッツアイをこよなく愛するあなたの祖父が本物にそんな傷を負わせるわけがありません。だからレプリカだと申し上げたのですよ。そしておそらく本物は―――――」

あの部屋の中に


「・・・そう言うことだったのね。」

だからしつこいまでに紙面で遠慮するなと繰り返していたのか。
全ての宝石を都ただ一人に譲るとそう言っていたのか
(全く孫バカなんだから)

「とりあえず扉を開ける方法から考えましょう。名探偵は月光が関係すると言いましたね。」
「月の光を当てろって事よね?」
「そうでしょう」

すっとかざしてみる
その仕草はKIDがいつもするのと寸分違わぬ動き

「彫ったところに何か見えるのかなぁっと思ったけど違うみたい」

目を細めてみるが変化はない
石の向きを変えてみる



その時

「ちょっと待って下さい」
「なに?」
「地面を」

石を通った月光は地面を光らせ小さな影を作った

「これって・・数字?」
「読めますか?」
「多分・・・・・3かな」

そこまで言ってから納得した
都は、てっきりこの石をどっかにはめ込めば開くと思っていたのだ。
だから夜がお勧め・・・


「早く帰らなくちゃっ」
夜が明ける前に
「そうですね」
ついてくる気満々らしいKIDはとりあえず気にしない事にして都は走り出した

家にある11個のレプリカの為に








「出来たっ。12個の数字。」

順番は迷わなかった
元々石が置いてあった順番は都が一番覚えているのだから
きっとそれで間違いない
そんな確信があった

「385841579747、ね」

言ってから少し顔をしかめる
(これって・・)

「良いお祖父さんですね」

彼も気付いたのだろうふと微笑んだ

「・・・・」
泣かないわよと呟きながら番号を入力していく。

カチャリと思ったより簡単に扉は開いた

中は少しかびた臭い。
ずっと使って無かったのだから当然だ
そして予想通りの本物のキャッツアイ達

一ダース

385841579747
みやこはよいこなくなよな
都は良い子、泣くなよな
ワシが死んでも悲しむでない。
笑っていておくれ。

何を考えてこんな番号を選んだのから知らないがあの孫バカの祖父が都にこの部屋を譲ると最初から決めていたのが伺える。
そしてこの部屋を可愛い孫に譲るのは自分がこの世からいなくなってから。
そう決めていた事までありありと解って・・・

(バーーーカっっ泣くに決まってるじゃないのっ悲しむに決まってるじゃないのっ
なによこの暗号っっっっ。バカじじいーーっっ)

祖父の命の次に大切な石達を見たらもうどうにも止まらなかった
涙がポロポロとこぼれ落ちてくる

(こんな石いらない。生きていてくれればそれで良かったのに)

声を殺して泣く少女の背を見つめKIDも感傷的な気分に陥った

(うーん俺も明日あたり墓参り行ってこよっかなぁ)

「声を殺して泣くのは辛いですよ」

ポンと恵にしたように自分より10cmばかり小さな少女の頭に手を乗せた

「うるさいわよっ」

はいはい
それでもKIDは優しく微笑んだ

「泣いて泣いて泣いて。そしてまた明日元気に学校に行きましょうね。皆が待ってますよ」
「待ってないわよ」
「待ってますよ」

なんでアンタにそんな事言われなきゃなんないのよと思いつつもその手のひらがあまりに優しくてつい子供のように頷いてしまった

「待ってて・・くれるといいな」
「ええ。」
「変なのばっかいるのようちのクラス」
「そうなんですか?」
「そうよ。KIDのファンとかいるし」
「・・・・・」
「あんなに態度悪くしてんのに全然平気な顔して話かけてくる人もいるし」

KIDの頬がちょっと頬が綻ぶ

「なんてったって小学生のノリなのよっあのクラスっっ」
「そうですか」


「でも。うん。楽しいかな。」


たくさん転校して来たけどあんなに居心地の良いクラスは初めてかもしれない
原因はきっとあの二人。

「お礼いわなきゃいけないかな・・・」
「心の中だけで充分だと思いますよ」
「そっか・・」

小さく微笑むと都はようやくKIDから離れた

「よしっもうひと頑張りっっ」
「え?」

「これ返さなくちゃね」

都は12箱の速達をその日の内に用意して一枚のカードを同封して送った。


―――――さよなら
        大切な猫の目達―――――







エピローグ



    勝者はベリーキャット!?

新聞の一面どころかニュースのトップと人々の話題を独占したそれは結局決着の解らぬまま終わってしまった。

盗んだのはKID

・・だった筈なのだが、何故かベリーキャットから石は持ち主へと返還された。
しかもベリーキャットは今まで盗んだ全てのキャッツアイを送り返しているらしい。
「KIDに改心させられた」
と一部ではそんな噂まで流れる始末。


「でもま、中森警部が負けたのだけは確かだよなっ」

朗らかに快斗はそんな事を言った。
青子は呻きながら教科書で快斗撲殺を計るつもりなのだろう、引き出しから教科書を引っぱり出しクルクル丸め始めた。。
そんな日常の風景を眺めながら都は昨夜の事を思い出していた。






『貴方は一体何者なの?』
何も言わず去ろうとした白い泥棒に思わず都は問いかけた。

それにわずかに首を傾げると
『世の中には、知らない方が素敵な謎と言う物が多々あります。
名探偵の事もしかり。
それはもちろん私の事も。』


『だってずるいじゃない。私の事は知ってるのに、私は貴方の事を全く知らないわ』
『そうですね。確かにフィフティー・フィフティーとは言い難いですが、それは貴方自身で解き明かしてください。答えばかり求めてはいけませんよ。その過程もきちんと踏んでこそフィフティー・フィフティーってね!』
『もう・・・会うことないじゃない』

過程を踏むどころか
このまま永遠にさらばだ
こうやって言葉を交わしている事すら奇跡と言えよう

それにKIDは笑った
それは今までの大人びた優しい笑みとは違い
もっと子供っぽいいたずらっ子のような瞳

『探してみたらどうですか?意外な所にいるかもしれませんよ』

そんな自分の顔を隠すようにシルクハットを目深にかぶると優雅に一礼をしてみせた。
そして都のとまどったような顔を目に留め軽いウインクを送ると柔らかな風と共に姿を消した。
まるで幻だったかのごとく





(夢・・・じゃないわよね)

宝石を手放した今、全てが夢のように思えて仕方ない。
結局の所都はレプリカと本物の二つを持ち主へと送った。
それは彼らへのせめてもの罪滅ぼし。
祖父の形見は確かに大切だけれど都にはあの部屋と祖父との思いでがあるから大丈夫。
一個ぐらいとって置きたかった気持ちは確かにもの凄くあったけれど・・

でもKIDの前でそんな子供っぽいこと言いたくなかった
プライドかもしれない


「あーーーコナン君だーーっっ」

そんな物思いふけっていた時脳天気な青子の声が耳に入った。
窓の外を指さす青子
その子供っぽい仕草に微笑みを誘われてしまう・・

が、
それより前に

「えっえっえっえっえーーーーーどこどこどこーーーーーー!!!どこなのコナンちゃーーーーーん」
「どこですかどこにコナン君がいるんですか中森さんっっ!!!」
素っ頓狂な二人の少年の声に慌てて振り返った


黒羽快斗と
白馬探
仲か良いのか悪いのか良く分からないが二人はよく一緒にいる
その二人が窓のそとへと身を乗り出して青子の指さす方を一生懸命見やる仕草は

   類は友を呼ぶ

と言う言葉を連想させた。


「あーーー発見発見です!こっなんちゃーーーーーん」
やっほーーと手を振る快斗
「コナン君どうしてここに?」

首を傾げながら門のところで校舎を見上げる少年を不思議そうに見る白馬。
そんな二人に野次馬が一緒になって門の方を見る
窓の所は押せや押せやの大騒動だった

「お・ま・え・ら〜〜〜〜〜〜今、おれは、HRを、し・て・る・ん・だけどなぁぁぁぁぁぁ」

担任の怒りのあまりの低い声を聞くまでは



「一家に一台黒羽快斗君さんじょーーーーーー」
「いらん」

HRもそこそこに飛び出して来た快斗の脳天気な叫び声にコナンは速攻で返した。

「ああん。つれない貴方もす・て・き♪」
「近寄るな変態っっ」
「ふふ。冷たい言葉も愛情の裏返しと思えば幸せなーのよーー」
「・・・・」

(誰かこいつをレッカー移動してくれ)

残念ながらそんな事をしてくれる親切な警察さんはここにはいない。

「って冗談はこのくらいにしておいて、もしかして東?」
「そう。いるか?」

察しのよい快斗にようやく本題に入れるとホッとしてコナンは頷いた。

「ちょっと待っててねー」

快斗は疾風のごとく走り出し1分と立たないうちに困惑顔の都をつれて帰ってきた
驚くほど見事な手際だった


「はーいお届け物でーーす」
「ありがとー快斗兄ちゃん」

ニッコリ
猫かぶりバージョンで微笑まれ快斗はデレリと相好を崩した。

「何なのよ黒羽君っっっっ―――――あれ?あなたは・・昨日の?」
「うん。江戸川コナンだよ」

確か昨日自己紹介されたがすっかり記憶から抜け落ちていた都
さっき黒羽君達が叫んでたのって「コナン」って名前だったわね。
あれってこの子の事を言ってたのね・・。


「何か・・用?」

隣りに快斗がいるせいであんまりつっこんだ事は口に出来ないと思った都

「あのね。美園さんに頼まれたんだ。」
(またですか)

つくづく親切な少年である


「これ。お姉さんに返して置いてってさ」
「それって・・」

差し出された箱は昨日の夜都が用意した速達用の箱。

「んっとね。お父さんと話し会ってお母さんの形見の石だけもらいましたって」
「でもあれは」
「うん。偽物って美園さんも美園さんのお父さんも知ってるよ」
「・・・・・」
「それはいらないから返すってさ」

と言うことは箱の中身は本物のキャッツアイ。
価値にすれば偽物なんかと比べ物にならない
でもあの子はあっちが大切とそう言って・・・・

「『お祖父ちゃんの形見だもんね。大切にしてねっ』てさ」

その言葉に都は泣き出しそうな顔で箱を受け取った。

「うん。うん・・・。大切に・・するから。・・・お願い伝えてね。絶対に、絶対に大切にするからって」

ぎゅっと手のひらの中の箱を握りしめる。
コナンはそれ以上つまって声が出ないでいる都を少し眺めてからニッと笑った
これにて一件落着ってか?

「わかった。伝えておくよ。じゃあ。バイバイっ」

小さな手を大きく振る
その仕草はとても子供子供していて
だけどその瞳は大人びていて
言動がどこかしらちぐはぐしている
不思議な子供

「あああ。コナンちゃーーーーんっっせっかく口挟まないで大人しく待ってたのにそのまま無視なんて酷いよ〜〜〜〜」

追いかけようとした快斗。
それに都ははっと振り返りガッッシとその腰をつかみとった

「ええっちょっと東ぁぁぁ離してーーーーコナンちゃんが行っちゃうーーーーー」

涙ながらに懇願する快斗には悪いが都は口止めする必要があるのだ

「い・・今のこと誰にも言わないでねっっ」
「え?」
「解らなかったんならいいけど」
「ああ。その石の事?うん。言わないよ。そんな事したらコナンちゃんに怒られちゃうし」

ニカっと笑う

「ほらさ。昨日も言ったじゃん?謎のままのが素敵だろって―――――ね?べりーちゃん♪」

それだけ言うとウインクを茶目っ気たっぷりに送りつけ都の手をすり抜けて軽やかに走り出した。

そう
名探偵を追いかける為に


「え?ええ?えええええええ?」

何?今のどういう意味?ちょっとなになんなのよーー

あいつに。黒羽に自分の正体がばれている?
いやいやそれも重要だがもっと大切な事が残ってる

『昨日も言ったじゃん?』―――――――――――――――


昨日の最後の言葉がまざまざと記憶に蘇った
探してみたらどうですか?意外な所にいるかもしれませんよ


  「意外すぎるわよバカーーーーーーーーーーー」


叫ぶだけ叫ぶと何故だろうもの凄くスッキリした気分になった。

そっか彼が。

そうなのか。

「王様の耳はロバの耳、をしたければいつでもお相手してもよろしくてよ」

唐突に背後から声が聞こえ都は跳ね上がった心臓を押さえながら振り返った

「あ・・小泉さん・・・」

すらりと素晴らしいプロポーション
黒いサラサラの長い髪
整いすぎて怖いほどの顔は今は苦笑が刻まれていてどことなく取っつきやすい空気をもっていた

「なんの事?」

動揺を悟られないように虚勢をはる。
だが彼女はそれすらも見通すかのごとく婉然としたゴージャスな笑みを見せた。

「彼の事を知る者よ」
そう言うと残像をうつすかのように視線を彼が去った方へと向けた。
「それって」
「白い鳥はいつまでも羽ばたいていて欲しいから。貴方もその秘密墓場まで持ってゆく覚悟でいらしてね?」
「・・・・・ええ。私も同じ思いよ」
小さく微笑み合うと二人は空へと目をやった


「夜に映える白い翼はそれは綺麗で華麗で。でもたまに見せるいたずらっ子のような瞳が憎めない。昼間とは違う空気を持つその二面性に惹かれているのかもしれませんわね。」
ポツリと呟いた紅子に
「確かに」
頷いた。
この目で見なければ絶対に信じられないだろう
こんな楽しい事実


そのまま思いを馳せ青い空を見上げていたら背後から元気な声が聞こえてきた。
「あーー紅子ちゃんだーーそれに都ちゃんまでっ何してるのぉ?」

見なくてもわかる。
この二人に気軽に声をかけられるのは世界広しといえども現時点ではきっと青子くらいなのだから。
この脳天気な少女は彼の幼なじみを見事に勤めている。
見ただけじゃ解らないのかもしれない本当の事と言う物は。


「ねーねー今から皆で新しく出来たケーキ屋さんに行くんだけど一緒にいこーー」
返事が無くとも気にしない。
ニコニコ笑顔で二人を誘う青子に紅子が笑いだした。

「ありがたくご一緒させて頂きますわ中森さん。行きましょ東さん」

とても参加などしなそうな紅子がどことなく楽しそうに誘ってきた。
ハッキリ言って紅子をケーキ屋に誘えるのもきっと青子ぐらいだと思う。
どことなく壁の見える彼女にぶつかっていける青子は鈍感なのか大物なのか。

「彼女のヒトトナリに少々興味もあることだし」
そう言い訳して都も微笑んだ


「私も行くわ中森さん」


それは祖父が亡くなってから初めての本当の笑みだったかもしれない。
自然と浮かんできた心からの笑み。


「中森さんには敵いませんわね」
苦笑とともに駆けだした紅子にそっと頷き返し都もまた走り出した。


新しい

友人の元へと






謎は謎のまま
そうね。
こんなに心躍る謎は他にない。白馬君や中森警部には申し訳ないけど(いや、彼らも知らない方が幸せなのかもしれない)一生胸に秘めコッソリ楽しみたい。
そして、たまには小泉さんと二人で語り合うのもいいかもしれない。
だからそう、貴方が言う通り


   ―――――謎のままが素敵―――――





                end



と言うことで終了です
果たしてリクを消化出来ているのか疑問が残るところです。。
コナンちゃんはまだ全然快斗に興味持ってないですよねー
ただの変態としか思ってない(笑)
片思いですみません

By縁真