快斗くんのチョコレートゲット大作戦!!
うきうきしてるのは一人の少年。
うんざりしてるのは一人の少年。
二人は実に対照的な顔で、横に並んでいた。
「バレンタイーーンバレンタイぃぃーーーン」
ウキウキと心のうちを声に出しこぶしを回して歌うのは見た目かなりイケテル少年である。
今はしまりの無いどーーーーしよーーーもない顔をしているが、もう少しまともな時はモデルでも一稼ぎできるくらいの顔立ちとスタイルをしていたりする。
まぁ、本人そんなお仕事につく気はサラサラないのだが。
対する少年はその嬉しそうな少年よりグッッと下にいる。
足元である。
ようするに小さい。
っていうか子供。
他人が見れば間違いなく二人は兄弟だと思うだろう似通った顔立ちをしかめて、口の中で呪いの言葉を吐き続けているらしい。
「この世にバレンタインというものがあるから・・俺がこんな目に・・・」
ぶつぶつぶつぶつ。
そう、彼はもう2週間も前からこんな状態の男の相手をさせられてたのだ。愚痴りたくなったとしても仕方あるまい。
街中がチョコの甘い香りで充満するこのシーズン。
甘いもの嫌いのこの少年にとっては辛くて辛くて堪らないのである。
にも関わらず隣の男がずっと浮かれているのだ。
腹立たしくなったとしても仕方あるまい。
「ねっコナンちゃんっ」
嬉しそうな少年が足元の少年のつむじに向かって声をかけた。
今にもその足は宙に浮かびそうなほど嬉しそうである。
「なんだ」
これまたコナンと呼ばれた小学生か幼稚園児とおぼしき子供は地面にめり込みそうなほど低い声を響かせた。
でも気にしなーーい♪
「あのねっあのねっ俺バレンタインはチョコ派なのっ」
「・・・・」
「物あげる人もいるみたいだけどね、俺的にはーやっぱり初心にかえってチョコが一番だと思うわけ」
無反応にも関わらず少年はうっとり頬に手をやり夢見心地だ。
「なにが言いたい」
放っておきたいのは山々だが、このまま一人でしゃべくられてもウザイ。
「でねっチョコはやっぱり手作りが一番だと思うの。愛情タップリじゃない?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・で?」
ものすっげーーー聞きたくないけど聞いてみる。
「って事で快斗君のチョコレート大作戦っっっっ」
イエーーーイ
腰に左手をあて空に向かって右手を突き出す。
やる気満々ポーズである。
こんなときの快斗はとても厄介な事を考えている。
こんなときの快斗は自分の素晴らしきアイデアに酔いしれ、他人の迷惑は考え無い。
そしてそして、こんなときの快斗はなんでかいつもコナンを巻き込んでくるのである。
チャンチャカチャカチャカチャンチャンチャーーン
チャンチャカチャカチャカチャンチャンチャーーン
エプロンつけて、手を洗って、材料も分量量り終えたし準備はかんりょーーーう
「さっコナンちゃんっ張り切っていっくわよーーー」
「・・・・・・・」
現在位置をお教えしよう。
台所in黒羽家
である。
(何で俺はこんな格好でこんなところにたってるんだ!!?)
激しい疑問である。
なぜか快斗の隣でフリフリのエプロンつけて踏み台に乗った自分の姿に呆然とするコナンを置いて、快斗はサクサク話を進めていった。
「さっまずはチョコを湯せんで溶かしマース」
これを持って♪
とボールとゴムヘラを持たされる。
ボールの中には茶色い固体が入っていた。
「なんだこれは」
「チョコ」
間髪いれず返ってきた答え。
いや、それは分かってるけどな・・
俺にどうしろと言うのだ?
途方にくれているとピッと指を立てて快斗は説明してくださった。
「中にお湯を入れないように気をつけて混ぜてねっ」
そうか、混ぜればいいのか。
分からないまでも頑張ってみた。
「上手いうまいっっコナンちゃん意外とこーゆーの得意?そのサックリとした混ぜ方バッチリよっえー俺より上手いかもーーー」
教えるコツは褒め殺し。
褒めて褒めて褒めまくる。
そうするとあーら不思議。
「そ、そうか?まぁ俺にかかればこんくらいたやすいことだからなっ」
今まで嫌がっていたあの子もこのとおり。
「うんうん。さすがコナンちゃんっ」
(なんて素直なんでしょ♪)
「そして溶かしたチョコをこのアルミカップにいれまーーす」
用意されていた色とりどり形とりどりのカップをトントンと置いていき、ちょっと不安そうに聞いてみる
「出来るコナンちゃん?」
そうすれば負けず嫌いの彼のこと
「誰に聞いてんだっ」
フフンっとスプーンを手にした。
きゃーーースプーンを持つコナンちゃんって素敵ぃぃ♪
と壊れた快斗は忘れることにして。
コナンは溶けたチョコをすくった
そして入れる。
こぼれた。
「・・・・・」
んん?
はみ出した部分を手で拭いもう一度入れてみる。
こぼれた
「っっっっっっ」
かなりムー(ご機嫌斜め)なご様子のコナンに快斗はあせった。
「最初からうまくいくわけないってこれに入れるのはプロにだって至難の業なのよっっ」
そんなバカなってなフォローを入れる。
だがしかしお菓子作り初心者の彼はそれに納得したのかそうかと頷きもう一度チャレンジ。
トロトロトロトロトロトロ〜
おおっ
今度は一撃で綺麗にカップの中に納まった。
「見ろッ」
「うんうんっっコナンちゃんすごーいっっ」
「だろっさすが俺っ」
「うんうんっコナンちゃんサイコーーてんさーーいっ」
「ふふふっもっと言ってもいいぜッ。よーしっもう一個いくぞーーー」
「ではではコナンちゃんが天才的才能にて納めたカップの中のチョコレートをデコレートしてゆきまーーす」
カラーチョコとホワイトチョコを手渡し
「さっコナンちゃんの芸術を一発ヨロシクお願いしますよーーー」
「ふっ腕がなるぜ」
ホワイトチョコをチョンチョンと乗せていったり
模様を書いてみたり、気分はパティシエ。
のコナンに背後でほくそえんでいるのは快斗。
「できたっっっ」
「うっわーーお店で売ってるのみたーーい」
コナンの芸術的センスはまぁ口にしないでおこう。
とりあえず褒め殺しがポイントなのだから。
食えればいいのである。
たとえカラーチョコまみれになっていようとも。
ホワイトチョコがはみ出してあふれ出して大変なコトになっていようとも。
決して口にしてはならないッ。
快斗の反応に満足したのかコナンは鷹揚に頷くとキラキラした瞳で
「次は?」
と尋ねた。
いやん可愛すぎですコナンちゃんったら♪
今にも倒れんばかりクラクラした快斗はグッ胸を押さえ
「頑張れ俺っここで倒れたら勿体ないじゃないかっっっ」
大きな独り言を叫んだ。
「冷蔵庫っっ冷蔵庫にいれて冷やすのっそんで固まったら完成っっ」
「なるほど。んじゃ入れるぞ」
「うんお願いーー」
こうして最初から最後までコナンの手で作られたチョコレート達はもちろん当然ながら
「これ俺が貰ってもいーい?」
「あ?まぁ俺はチョコなんか食わねーしな。ありがたく食えよ」
「ははーぁぁぁぁ」←拝んでいる
快斗の物となった。
もちろん本日2月の14日
ヴァレンタインであった。
うっかり快斗の作戦に嵌ったはずのコナンは何故か楽しかったので不問に処すこととした。
その後お菓子作りに嵌るコナンの姿を見たとか見ないとか・・・
おしまい
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