朝からひどく憂鬱だった
雨の日のあとって最悪だよな 水気を含んだ空気が息苦しくてたまらない
息をすってるのに体に酸素が吸入されてないみたいなプチ呼吸難みたいなかんじ

気分わりぃー

ついでに鬱々といつもなら気にしない事を思って落ち込む
あーやだやだ
さっきも自分のちっちゃい手をみて
 あー俺一生このままかも・・・と
か暗い事考えてた

気分転換に家の中でサッカーボールけってみたけど花瓶わるし蘭に怒られるしふんだりけったりだ

外は昨日の雨で地面濡れてるから出来ないし仕方ねーじゃねーか
ぶすっとふくされてソファに埋もれてみた
隣でおっちゃんが二日酔いで倒れてた。大人はいいな気楽で・・・なんて訳わからん事考えてたらどんどんムカムカしてきた。

うーむ気がはれないぞ

文句を胸に溜めるのがいけないんだな
ガバリとおれは立ち上がった


よしっ八つ当たりしに行こう



白い花2


外へ出た
快晴だ
ただし空気は水を含んでいて重い
まとわりついてくるようなベタベタの空気に嫌な顔をしながらあるく
今日遊ぶ予定だった公園を通過。
「あーあグランドぐしゃぐしゃ」
明日はでこぼこのグランドでサッカーをすることになりそうだ。
またもや嫌な気分になった 。
道をゆくと先にキラキラ光るものが見えた
水たまりだ。
虹色に輝いていた。
へー綺麗だなー
蘭に無理矢理はかされた青い長靴で水溜まりの中を歩いてみた。
虹がビニョーンと広がってゆく。
けっこう楽しいかも・・・童心に帰るって感じ?そのままバシャバシャやってたら車がきて水をはねていきやがった。

ちくしょう またいやな気分に逆戻りだ。
しかたなく水溜まりをあきらめて歩き出す。半ズボンの裾あたりがぬれたがすぐに渇くだろう。

「あれ?」

八つ当たり君一号の家のちかくの公園で元のおれとそっくりな顔立ちの人間をみかけた。
あんだけ似てんのはあいつぐらいしかいねーよな。
さっそくヤツ当たってやろうと思ったらそいつは自分に気付かずボーっと芝生を眺めてた。
何かあるのか?
興味にかられてそちらに視線をやる。

芝が濡れてた

雨粒が太陽を反射してキラキラと光をこぼしながら芝からぽとんと地面に落ちていく
コーヒーを立てる時のように静かにぽとりと
時間を掛けて

時を忘れて魅入っていた

綺麗とかそんな風に感じたわけじゃない。
ただ目が離せなかった
心が穏やかになっていくような、イヤサレタって感じかな
思わずしゃがみ込んでいた程だ
足が痛くなって立ち上がった時にはすでにそこに奴当たる相手は居なかった

あーあ失敗失敗
まあいいかあいつの家に行けば嫌でも会えるわけだし
公園から少し離れたコンビニに入り栄養ドリンクを一本買い一気のみ

ぶはぁ

うしっ八つ当たりに行くかっっ

何もそこまでって程に気合い全開にすると俺は瓶をゴミ箱に突っ込み通い慣れた道を歩きだした。

そこでみた

白い花を

つぶされて、でもまだ生を感じさせる小さな花を

後ちょっとであいつの家ってとこで見つけた
踏みつぶされていたそれ。

気合い満々だった俺の心に思いっきり影をさしてくれた

もちろん花が悪い訳じゃない
踏んだ奴が悪いんだ。
目の前にそいつがいたら俺は間違いなく指さしてバカーーーっと叫ぶだろう(子供だから出来る技)
まあだからどうしたと聞かれたら答えようがないけど、でも何も感じず花を踏めてしまえる心が悲しくて、踏まれた花が悲しくて。

そっと両手で支えてみた。
少しだけ花が生き返ったような気がする。
まだいける。
頑張れるっ
もう少しだけでも

「頑張れ」
背後にいた大人がそんな俺をみて微笑まし気な瞳を見せたが特に気にしない。

両手の小さな指で優しく傷つけないように整えていく
完全復活は無理でも花が花として認識できるくらいには整ったと思う

うん。綺麗だぞ

大丈夫頑張れる
俺だって頑張れた
踏まれても踏まれても
こんな姿になってさえ未来を諦めた事はない

だからお前も頑張れっ

悲しげに見える花に精一杯のエールを送った
まるで自分に言い聞かせるかのように
自分を奮い立たせるかのように
なごり惜しくその場を立ち去る

そうして奴の家へとたどり着くとそこには誰もいなかった

「ちくしょーどういうことだっ俺が来るときに居ないだとぉぉぉ」
ムッとする
かなり我が儘だとは解っている
でもいつもは居るから
居ないと悔しい
やっばりさっきひっつかまえて置けばよかったと今更後悔

仕方ないから玄関先で足を抱え込んで座りこんだ

なんかこのまま寝ちまいそうだな

そう思っていたら気配を感じた

顔を上げた先には快斗がこちらに向かって歩いていた。
なにやら嬉しげにほころんだ口元
(良いことでもあったのか?)
俺を差し置いてなんてこれまた意味不明な事を思って胸の当たりがムカムカする
そしてそいつが自分の存在に気付いてさらなる笑顔を見せた時その苛立ちは解消された
最大限の歓迎
なにもそこまでってほどの歓迎をうけ、照れくさい

なあ快斗。
俺さ、さっき花を見つけたんだ。
一人で頑張って咲いてる白い花
つぶれてたけどまだ生きたいって言ってた

後で・・一緒に見に行こう。

そう言ってやろうと待ちかまえ俺は抱きついてきた快斗にいつものように罵声を投げかけた
そう。いつものように

第二弾。
個人的には1話目の快斗の方が好きです。
でもセットで読んでほしいかな。