光のかけら(エピローグ)


結局その後警察がやってきて、被害者・高宮社長の遺体は伊瀬の説明により発見され運ばれた。
警察は、犯人の伊瀬、書類を盗んだ佐久間、社長の息子真悟(多分後から社長の妻も呼ばれるだろう)さらにそれに関わったコナン、哀、快斗、白馬だけを事情聴取のため警察署へと連れていった。

 

事情聴取後パトカーを家の前に止めるのもなんだしなーと言うことで白馬の車で送ってもらうことになったコナン達一行は、まず最初に灰原哀の家へと行くことになった。

これは哀の立っての希望だった。

「ちょっと待っててもらえるかしら?」
哀の言葉に首を傾げつつ白馬は笑顔で頷いた。
「ええ。いいですよ」

その言葉に軽く笑みを浮かべると心なしか機嫌よさげに家のドアを開いた。

「一体なんでしょうね?」
「送ってくれたお礼に菓子でもくれんじゃねーの?」
「なんであなたはそういう事しか考えられないんですか黒羽君」
「えー?他におもいつかねーしなー」
「まったく僕はお礼のために送ったわけではありません」
「そんくれー知ってるって何せお前の趣味はレディーファーストだしぃ。単なる女ったらしとどこが違うんだろーな」
「全くちがいますっっ」
「えーそーかぁ?」

 

そんな二人の楽しげな会話をよそにコナンは哀の去った扉を見つめていた。
こんなのがあの世紀の怪盗なんて嫌だ・・・信じたくない・・・。
というか俺は信じないぞ。
心に強く決めつけるとコナンはチラリと隣りに座る工藤新一のそっくりさんを見つめた。

(しかも顔そっくりだし・・)

泥棒とそっくりってむちゃくちゃ嫌だよなぁ。もし指名手配とかになったら俺絶対疑われるんだぜ。
あー嫌だ嫌だ。

本人が聞いたら思わずこの可愛い顔にデコピンをくれたいと思うような失礼な事を考えていた。

「あっそういえばコナン君。ずっと気になってたんですけど、どうしてあのひもの事が分かったんですか?」

快斗との不毛な会話をうち切り白馬が窓の外を眺めているコナンに話かけた。

「え?ひも?」
「ええ。確かあの時はいろいろな事情により推察した・・と言ってたような気がしますが。」
「ああ。うん。いろいろな事情。別に大したことじゃないよ。
えっとねー。お昼前にね大きな木の葉の陰にキラキラ光るものを見つけたんだ。」
「光るもの?」
「うん。僕てっきりカラスの収集物が太陽に反射してたんだと思ってたんだけどね、
多分あれがあのひもだったんだと思う。
佐久間さんはあのひもにそって夜中に下山しようと思ったんだよきっと。
だからキラキラ光ってたのは蛍光塗料。葉で隠れる場所を選んで塗ったんだろうね。」

そうじゃないと建物から光が見えてしまうから。

「それが探お兄ちゃんの別荘へ行く途中無くなってたんだ。
おかしいなーってずっと思ってたんだけど、夜だから太陽がないせいかなぁって。
でもどうしても気になっていろいろ考えててたら社長さんの背広に変なシワがあるのを思い出したんだ。
それでああそっかって思ったの」

「・・・そうですか」

それでああそっかと思えてしまうんですね君の頭は。
どこをどう飛躍したらそこまで思考が飛べるのだろう?
ああ・・・・だからあの時黒羽君はああ言ったのか。

「もう一人の探偵・・・ですか」
「え?」
「いえ独り言です。」

コナンの不思議そうな顔に苦笑をみせ手を振ると快斗の方へとチラリと瞳を向けた。
そこにはようやく分かったのか、とニヤリと笑う快斗がいて少し共犯者めいた気分を味わい含み笑いをみせると白馬は今度は窓の外へと目を向けた。

そこにはようやく家から出てきた哀の姿があった。

コンコンと窓を叩く相手にガーと車窓を開くと哀はニッコリ白馬に礼を言い、次いで背後に座る快斗に目を向けた。

 

「黒羽君だったわよね?ちょっと出てきてくれる?」
「ふぇ?」

まさか自分に用があるとは思ってもみなかったのだろう快斗が不思議そうに哀を見つめる。

窓の外から手招きをする哀になんだ?と思いつつ車を降りる。

「これ。例の物よ」

はいと手渡されたのは白い封筒。

「・・・・・あ゛」

コナンにはバレているだろうと思っていたが何でこの少女に自分の正体がバレているのだろうか?

うっそおおおん。
あまりの事態に狼狽えつつもやはり思考は手渡された封筒に行ってしまう。
ああ・そんな場合じゃないのに。

「これ何だ?」

いつの間にか車から降りたコナンが快斗の手に握られた封筒をさっと奪いなんと開いてしまった。


うっわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ

ダメっっダメダメダメぇぇぇぇ見ちゃだめぇぇぇ。


変態のレッテルが貼られるのはごめんだ。

もちろんこの写真を手に入れた時点で自分がそう言う物の仲間入りになることは予想していたが、それを本人に知られるのだけはずえっったいに避けたい。
でも・・でも・・もう遅い(涙)

 

「これって・・・」

写真を見つめて固まるコナンに快斗はヒクッと頬を引きつらせどんな反応をするのか心臓をバクバク鳴らせながら待機していた。

「は〜い〜ば〜らーーーーーーーーーーーー」

しかし予想に反して快斗ではなく哀の方へ怒りの矛先が向かった。

「何だよこれはっ」
「なにって写真ね。あなたの」
「そうだな写真だな。なんでこんな写真お前が持ってんだっ」
「いろいろな手を使って手に入れたのよ。他にもあるけど見る?」
「見ないっっつーか没収っ」
「いやよ。私のなんだから」
「違う俺の写真なら俺のもんだっ」
「変な理屈こねないでくれる?私のものに決まっているでしょ」
「ちがうっっっ俺のだっっ出せっっ全て出せっ」

 

平行線をたどる二人の喧嘩に快斗はそっとコナンの手から写真を奪った。

そしてウキウキと目を落とした瞬間固まる。

 

「これって・・・」

さっきのコナンと全く同じ対応だった。

「あ〜い〜ちゃぁぁぁぁんーーーーーーー」

怒りというよりとまどいが強い快斗の表情に哀はニヤリと笑う。

予想通りだったのだろう。

「何だよこれはっ」
「なにって写真ね。彼の」
「そうだけどっっちがぁぁぁう」
「あら?約束通りの写真でしょ?『江戸川コナンの恥ずかしい写真』」
「そうだけどっっちがぁぁぁう」

恥ずかしい写真は写真だけど恥ずかしいの意味が違うのだ。

もっとこう・・・その・・ねぇ。

 

「お前ら一体何の約束してやがるっ」
「えーー俺は哀ちゃんに騙されただけだもーん。関係なーい」
「あら。提案したのは私だけど乗ったのはあなたよ。白いスーツの怪盗さん」
「・・・・それなんでバレてるの?」
「企業秘密よ」
「・・・・・・」

快斗が手にした写真。

確かに『恥ずかしい』には恥ずかしいが、恥ずかしいのはコナンのみ。

なにせそこに映るコナンは小五郎にぶん殴られて頭を抱えている姿や学芸会で木の役をやらされた姿。
さらにはつい先日ある事件に関わってどうしても避けられない事態であった女装姿の写真だったのだ。

恥ずかしすぎる。

この世から抹殺してしまいたい。

 

「一体どんな写真を期待していたのかしら?きちんと口にしてくれないと分からない事もあるわよね」

分かっていながらわざとやったくせに。
フフンと意地悪げに微笑む哀に快斗はくすんと嘆く。

「どんなって言わなくても分かってるくせに。
恥ずかしい写真って言ったらもちろんあーーんなのやこーーんなのでしょ」
「あら?私小学一年生だものそんな擬態語使われても分からないわ」
「・・・・ぼそぼそぼそ」
「聞こえないわねぇ。もっと大きな声でしっかりはっきり言ってくれる?どんな写真がよかったのかしら?例えば江戸川君が靴下とシャツ一枚で―――――」

「うっっわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

はっきり言おうとしたらしい哀の声を止めるべく盛大な声を出した快斗。

その声は近くにいたネコをビビらせ慌ててその場から逃げようとしたあげく塀から落ちるという災害を引き起こした。

「言わないでいいっ良いですっごめんなさい俺が悪かったです。」

哀の口を手で押さえ慌てて謝る快斗。

  

「そう?せっかく貴方が言えないなら言ってあげようと思ったのに残念ね。
この写真いらないなら返してくれて構わないわよ?とくにこの女装の写真は貴重なんだから」

「これ俺知らない」

「ええ。あなたが出現する前の出来事だものね。ほーら貴重。いらないの?
いいのよそれでも」
「・・・・欲しいです。」
「そう仕方ないわね。あげるわ」
「でもでも・・なんか騙された気分なの」
「ええ。そうかもしれないわね。今度は騙されないように気を付けましょうね。
世紀末の魔術師さん。」

あらもう世紀かわったからこの呼び名使えないわね。あっもしかしてあなたの時代はもう終わったって事かしら?

「しくしく。哀ちゃんが苛めるの・・・。」
「灰原頼むから頼むからその写真を焼き増しするのは止めてくれ。」
「良いわよ。もう配れる人には全て配ったし」
「・・・・・(涙)」

もう今更なのかもしれない。コナンは敗北を悟った。

 

 

黒羽快斗VS灰原哀 

第一回戦

勝者  もちろん灰原哀。




あとがき

例の取引はこんなオチが付いていたのです(笑)
皆様が「コナンの恥ずかしい写真」欲しいとおっしゃった時
ふふ・・掛かった掛かったと一人ほくそ笑んでいました。うふ♪
なにせ相手は哀ちゃんです。普通に渡すわけがない。
実はこの技はすでに平次も使われており、被害者二人目です(爆)
きっと哀ちゃんは心の中で馬鹿な男がまた一人・・
と怪しい笑みを浮かべていたことでしょう。
とは言っても、平次の話はまだ書いてませんけどね。
それはいつか書く予定です。

そして今回書きたかったポイントは「第一回戦勝者灰原哀」。
このワンフレーズです。
一回戦っつーことは2回戦もあるのか?と思うでしょうが、まだ考えてません(笑)
それもまたいつか〜ですね

後は取りこぼしたえせ推理話をちょっとと、書き足りなかった白黒の会話を追加してみました。
二人の会話書くのとても楽しかったです。

あーようやく完全に終わりました「光のかけら」
皆様ほんとうにおつきあいありがとうございました。
心から感謝します。
それではまた、他のお話でお会いいたしましょうっ。
グンナイッ(Good night)


2002.5.20
By縁真(えんま)