今日中にね。そういわれて居た宿題は残念なことに完成できなかった。 「仕方ないね、じゃあ帰ってくるまでに推測くらいは立てておいて。」 今日中って言ったのはただノンビリしたらダメな問題だから。切迫感をだしただけ。 それが何日延びようが実質コナンの損ではない。 それでもこの小さな女王様を少しは気に入っているからこそ、これは捨て置いて良い問題では無いと、 自分に教えられることは教えておきたい。 「うむ。」 そんなコナンの気持ちを解っているのか解っていないのか。 とりあえず女王さまは真剣な顔で頷いてみせた。 (はは。ぜってー解ってねぇだろうけどな) いくら責任を問われる立場にいようともルゥは子供である。 だから、この言葉は6割くらいは、傍で聞いているサフに対するものだ。
赤いバラが咲いた小国 11
「へー思ったより活気であふれてるね。」 「まだそこまで大きな影響は出ていませんから」 高山関係者以外には。と但し書きがつくが。 こんなに小さな国である。あと少しすればどこもかしこも悪い空気が溢れることだろう。 外からの金がないと言う事は内循環しかないのだ。 「それに今現在、一本入った通りでは物取りが増えています。」 「・・・」 一見平和に見えても少しずつ悪化への道のりを進み始めているのであろう。 「あまりノンビリはしていられない。そういう事だね。」 「はい」 まずは王を決めてから。何よりそれが一番の安定。 「でも、ルゥが女王になったからと言って簡単に落ち着く筈がないよね。」 そんなお気楽に考えているなら非常にやばい。 「ええ。もちろんです」 あっさり頷いてくれてありがとう。後々の心配までしてしまう所だったよ。 「鉱山の活動停止をあっさりと決めてしまったりしたのは何故?」 混乱の予想はついたはずなのに。 「そうですね・・まずは第一に、それが前王の遺言と取られたからです。」 なるほど。カリスマ王は死してなお影響大という事か。 「第二に、王の腹心である大臣が賛成したこと」 いやぁ、その人やばいよね。何か考えての事かいな? 「第三に・・」 まだあるんかい 「王が、王妃と共に突然お亡くなりになり誰もだ冷静であれなかった事。」 そりゃそうか。 あまりの事にパニックになっている時に『王の遺言により鉱山は閉山する』 と言われたら。 「そっかー王が言ったならそれがいいのかも」 なんてウッカリ思っても仕方ないかもしれん。 むしろその時に 「いや待て。理由は何だ?」 なんて突っ込みを入れる人間が一人もいなかったのは悲しい話だが。 「今は?その処置に疑問を覚えている人はいる?」 「そうですね。おそらく城内にはほぼ居ません。」 「へ?」 「宝が無くなりそれどころでは無いからです。」 な・・・なるほど。なんて単純な脳みそ軍団が集まってるんだ。平和すぎるぞ。 閉鎖しているという鉱山は確かに立ち入り禁止の立て札とロープで人が入るのを躊躇させるように はしてある。 まぁ簡単に入れるけどな。 見学がてらサフと一緒ならということで入らせてもらったが目の前を歩いていたサフの足がある程度奥まった ところでピタリととまった。 「どうしたの?」 「い、いえ。なんというか・・・」 視線が掘り返された周辺をさまよう。 合わせてそちらに視線をやってみる。 「道具がおきっぱなしだね。」 「そうですね。」 口元に手をやり眉をしかめたサフにきっと彼自身からは口にしずらいのだろう疑惑を突きつけてみた。 「これって最近掘られてるんじゃない?」 その言葉にうつむけていた顔をバッとあげ 「まさか!!!」 思わずと言ったように叫んだサフ。 やっぱり疑ったのだろう。動揺がうかがえた。 「ここを管理しているのは?」 「スサル大臣・・だが」 「そう」 「彼が?バカな」 サフがそうまで言うということは相当な忠義者なのだろう。 「前と今じゃ状況が違うよね。そしてもしかすると・・・」 あの石が大臣の心を狂わせているのかもしれない。 「サフ。宝物庫には」 「大臣なら入れる」 詳しく言わなくても通じるのがありがたい。 「もしルゥを・・・」 「後見人のいない今なら簡単だ」 いい淀むコナンに気付いたのだろうサフは先回りして答えた。 「そっか」 排除しようと思えば簡単にできるか。 ひどく軽い次期女王の存在に憤りすら感じてしまう。 「大臣に頼むつもりだったが。」 おそらく後見人の話しだろう。主語はください兄さんや。 「サフが邪魔なのかもね」 「俺?」 キョトンと。まるで幼い子供のような表情にこの人実はいくつなんだろう?なんて思う。 「意のままには出来ないでしょ」 ルゥを傀儡にしたければ優秀な側近は邪魔以外の何者でもない。 「・・・なるほど」 サフは額に手をやり深くため息をついた。 「後見人って他にだれか頼める人いる?」 「・・・」 「そっか。いっそサフがなれば?」 「それは無理だ」 無理ねぇ。 「身分がどーのとか?」 「いや。」 否定して、視線を空でさ迷わせるサフに何だろうかと考える。 無理。 と言うことはしたいけど出来ない。 後見人の条件は? 本人が認めた人。 周りが文句言わない人。 ここらへんは楽々クリアーしている筈だが。 (そういえば根本的な条件があったな。) フイに思い出しサフを見上げ。思い至った。 「まさか・・・よもや・・・成人してない、とか?」 どう見ても30代の落ち着きだが。顔は辛うじて20代に見えないこともない。 どれだけ甘く見ても決して10代には見えないが。 しかし 「・・・」 沈黙のままのサフの様子がその有り得ない現実を訴えている。 「バカな!」 「自分で言っておいて否定しないで下さい!」 「や、だって10代。うっそー」 下手したら元の自分と同じ歳かもしれないのだ。 信じられないというよりも、信じたくないっっ 「とりあえずスサル大臣って人が後見人として信用できるか疑問を覚えてしまった現在他に だれか頼める人は?」 「・・すぐには思いつきません」 そう。大ピンチなカンジだね。 「じゃあ・・・このまま、もし国宝が見つからなかったらどうするの?」 後見人さえいれば国を継ぐ事は可能なのか、それともそれが認められないのか。 「そうですね・・・若すぎる女王の即位を反対するものにとっては都合のよい事態に なりそうかと」 「なるほど」 言い訳なんてなんとでも言える。戴冠の儀に必要な国宝が無くなったのは時期国王に問題があるからだ、なんて 言われれば「そうですね」としかいえまい。 たとえ誰かにしくまれた事だとしても。 「ルゥが王の座から追い払われたとして次に候補にあがるのは?」 「現段階で言えば・・・スサル・・・大臣。前王の右腕と呼ばれていた方ですので。」 「今、実質的に一番権力があるってことだね?」 「・・・そうですね」 ルゥすらも凌ぐ。そういう事だ。 野心があるなら絶好のチャンスだ。 王女に不満がたまれば次に王位に近いのはスサルだろうとまで噂されているらしい。 おおう。黒い。ホシはクロの可能性が濃厚すぎるのですがーーー 「・・・一応ルビー様にご兄弟が一人いますが」 いるにはいるんですけど・・・歯切れの悪いサフに思わず 「は?」 驚愕の声を出してしまった。 今まで見たことも聞いたこともない兄弟の存在に驚くしかない。 「兄君が一人」 しかも兄かよ!! 「・・なんでルゥが世継ぎなわけ?」 「彼は養子なんです」 「成る程」 あまりに解りやすい理由だ。 どうやら体質的に子供を作るのが難しいと言われていた王が世継ぎのために 養子を取った。 ・・・だがしかしなんと驚き子供が生まれた。それがルゥというわけだ。 無理と言われていた上にだいぶ歳をとってから出来た子供なだけにかなり 可愛がっていたらしい。 「そらーそうだ。んで?」 「その筆頭が・・・その兄君でした」 「・・ほ、ほほう」 養子のお兄ちゃん的には存在価値の危機なのでは? そこで溺愛をとっちゃいましたか。 「それはそれは、これでもかと可愛がっていまして」 「世継ぎ争いってなぁにーだね」 「ええ。もうすでにその時ルビーさまの補佐に入る気満々でいたそうです」 なんて平和な話だ。 「じゃあ、なんで今ルゥの傍にいないわけ?」 「そうですね。周りに男児を担ぐ人間が意外と多かったから、ですかね」 「まぁルゥも生まれたばかりってことは歳の差も結構あったんでしょ?とりあえずは 安全パイを選ぶのは当然じゃない?」 「・・・」 6歳の子供に何をいわれているのだろうか、なんて遠い目を思わずしてしまったサフの 気持ちなんて気づくわけがない少年は「ね」なんて可愛らしく首をかしげて見上げてくる。 (ふ・・) とりあえず突っ込みは胸のうちにとどめる事にして話を進めることにしてみた。 そう。どうせ突っ込んだところでサラリとかわされるのがオチだろうしな。←よくわかったね。 「ええ。王夫妻も結構歳を召してらしたので。とりあえず、もし何かあっても 王子を第一王位継承者にしておけばどうにかなると考えたのでしょう。」 口にはしなかったがきっとその王子は優秀だったのだろう。 血筋よりもその少年を選んでもよいと思うぐらいには。 「まぁ、そんな訳で彼は家出をしました」 「は!!!?」 「逃げ出した訳ですね」 「・・はぁ」 なかなか辛口な意見である。だがもしそのまま王子が居続けたら国内で分裂の危険はあった。 だからそれも1つの道だろうとは思う。 なかなか行動派な王子だなとは思うが。 「そんな訳で王位の順位でいけば出奔中の王子が一応2位です。」 「その次にスサル大臣?」 「ええ。前王の親族は居ますが民衆の意を汲むならばその順でしょうね」 そうか汲むのか。さすがだ小国。 「んじゃルゥがもし国王としてダメだと判断されたら?」 「リコールされて国外追放ですね」 なかなか合理的だ。王様でもリコールありっすか。 「もし、そうなったらまずは王子を探すでしょう。」 「うん。」 「なので、もし・・・スサル大臣が王の座を求めているのであれば王子を亡き者にするか・・」 「偽王子を用意するか、だね」 「ええ。」 「おっけー。その方向で調べてみるよ。」 「え?」 うむうむ。と頷きながら呟いたコナンの言葉にサフは思わず聞き返した。 「あ、そういえば。義理とはいえ両親も亡くなったのに葬式に王子は来なかったの?」 「残念ながら王子は行方知れずですので連絡ができていません。」 「なるほど。本当にだれも連絡取っていなかったんだね。」 「そうですね。もしかすると王夫妻はご存知だったかもしれませんけど」 ありえる話だ。もし王子がもどるとしたら、ルゥがある程度成長するか、王位についてからが望ましい。 それまで黙っていたのかもしれない。 「サフ。僕は今夜鉱山の様子を見に行くよ。もちろん一緒にきてくれるよね。」 ニッコリ笑って言えば 「・・・」 なんとも言えない微妙な顔でまじまじ見下ろされそれから遠い目をしながら頷いた。 はっはっは。 勝ったぜい。





    つづく  小説部屋

ざっぱーな展開とオチは考えているんですけどね。そこまでたどりつくのが時間かかるのが縁真です。
いつもの事ですけどねー。ようやくお兄ちゃんの存在まで書けたと満足です。ここまで長かったなぁ。
2008.10.30
By縁真