その日の1時間目のことだ。
いつものごとく蘭に見送られ小学校へ向かった江戸川コナン(小学一年生)は一時間目の算数の準備をしていた。
「えーっと・・・ノートと・・教科書・・・それに三角定規・・・・・・ああ、懐かしい響きだよな三角定規」
などと小学生にあるまじきボヤキを言いつつも良いこの見本とばかりに机の上にちょんと揃えて置いた。
「あーそういや鉛筆削らないといけなかったな」
中学からシャープペンに移行してしまったせいで鉛筆というものも実に懐かしい。
ついでに言えば工藤の家には電動の鉛筆削りが置いてあったがさすがに新一が中学を卒業するころには捨ててしまった。
あーあれがあれば楽なのになぁ。
などと捨てた本人は今さら後悔している。
仕方あるまい。あの時はまさかもう1度鉛筆を使う生活がくるなんて思ってもみなかったのだから←そうだろうとも
そんな元高校生は蘭が買い揃えてくれたシンプルな青い筆箱のふたを開け・・・・・・・
固まった。
「予告状?」
言わせてもらえば筆箱は小さい。
どちらかというと細長い。
そこに収まるサイズに予告上は縮小されていた。
「折り曲げればいいじゃねぇかよ」
いや、本人きっとインパクトを狙ったのだろうが(開けた瞬間字が見えた方がそりゃビックリするからな)それにしてもマメなヤツである。
敵ながらあっぱれ←そんな所で関心されても・・・
「なになに?」
読み進めていくうちにコナンの瞳が半眼になっていった。
「・・・・暗号じゃねぇ・・・・・」
普通の文だったのだ。
期待していたコナンとしては拍子抜け、いや、それよりも始末が悪い。
「コソ泥の分際でただの文を贈りつけてくるとはいい度胸じゃねぇか!!」
ぐしゃりとその紙を握りつぶした。
一体どんな理屈だろうか?
本人周りの人間が見ていることも聞いていることも気にせず鬱屈した気分を撒き散らした。
「どーしたのコナン君?」
「なんでもないよ」
「でも何か叫んでませんでした?」
「そーそーコソ泥がどーのってな?」
「・・・・・・相変わらずバカね」
歩美もげん太も光彦も灰原もそれは疑いの視線満々。
っていうか
「もしかしてKIDのことっ?」
「まさかその紙はKIDの予告状ですか!?」
「や、違うから。ただのゴミ。」
興奮する探偵団にコナンににぃぃっこり笑うとぐしゃぐしゃの紙をビリビリに破り捨てゴミ箱へ捨てた。←ひどい
「誰かがいたずらで俺の筆箱にゴミを入れたみたいでな。ついムカッとしただけだよ」
だから気にするな。
「ふぅん。なんて書いてあったの?」
歩美の素朴な疑問にコナンは憮然と答えた。
「チョコくれ」
なんか仰々しく書いてあったが要訳するとその一言だ。
「「「「・・・・・・・」」」」
歩美とげん太と光彦の納得したような顔と、哀の呆れた顔が見て取れた。
「やっぱりKID様はコナン君が大好きなんだねっ。歩美KID様ならコナン君譲ってもいいーっっ」
「少年探偵団としては怪盗とどうこうというのはいただけないと思うんですけどね。ですが愛に国境はありませんよコナン君」
「そっかKIDも俺と一緒で甘いもん好きなんだな。俺もチョコくいてーー」
「・・・・・ここまでして欲しいって言うんだからあげたらどうかしら江戸川君?」
4者4様の返事をありがとう。ってかすでにあの紙がKIDからって決め付けられている所が気にかかる。
ついでにげん太以外はなんとなくKIDとコナンのビミョーーな関係を理解しているようだ。
「だれがんな恥ずかしいことするかっっっっ!!」
真っ赤になって怒鳴りつけるコナン。
バレンタインまであと7日のある日の出来事。
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