世の中にはホワイトデーと言う物がある。
そう、3倍返しのあの日だ。

っつかさ、チョコレート最高峰のゴディ○を貰ってしまった俺は一体何を返せばいいんだ?
というか、「いじめ」ももーちーろーん、3倍返ししてオッケーだよな?
そうだよな?


そんな訳で俺、黒羽快斗は2週間も前から頭を悩ませていた。
いやいや、とぉーーーっても楽しいシンキングタイムでしたけどね。
なんと言ってもあの名探偵のことだ。

「絶対こねぇって。来るわけが無い!!」
やり逃げ決定に決まってやがるのだ。
ああそうだとも。俺のKID生命賭けたっていいさ。

「3月14日お会いしましょうね♪」
なぁんて予告状送ったが最後ビリビリに破り捨てられ、すっかり忘れ去られるに決まってる。
いや、押しかけホワイトデーやってもいいけどさー、なんかどっかに逃げ込まれそうだよな。

ちっ卑怯者めーーーっっ。


なので策を練ったのだ。





予告状 〜WD編〜




『先月のお礼を致したく思います。よろしければ今月14日の19時。私のためにお時間をくださいませんか?』

そんな手紙が・・・・


「「「届いたっっっ」」」
「届いたわ」

少年探偵団全員の下へと届いた(笑)




「先月のお礼っていうのはやはりコナン君を説得した僕たちの苦労をKIDはご存知だったということですね」
「歩美と哀ちゃんでチョコレートも選んだしね♪」
「そうね」
「俺がチョコ売り場までコナンのやつを引っ張ってったしな」

その4人の功績(笑)を称えてのKID様からのご指名。
いやはや何ともアフターフォローが完璧な御仁である。
ちなみにその加害者・・・もといチョコをKID様へと差し上げた張本人さまは貰ったその日にその手紙を握りつぶした←その後当然破って捨てた

「・・・・・・・あいつ。俺が来ないこと見越してやがったな」

先月あれだけ苛めたのだ、ホワイトデーなんぞ仕返しに決まっている。
コナンは初めから行く気はさらっさら無かった。 ←快斗君の予想通り〜

だがしかし、現実はとっても厳しいものである。

「当然、コナン君も行きますよね」
「どこで待ち合わせしよっかー?」
「どうせならうちで夜ご飯食べて博士の車で皆で行きましょ。その方が夜道を歩く危険が少ないわ」
「焼肉かうな重希望って博士に言っといてくれよな灰原っっ」
「はいはい」


何で彼らはこんなにもKIDに協力的なのだろうか。
涙が出てくるぞ俺は。

コナンに逃げ道はひとかけらも残されていなかったのである。




先月と同じ場所に。
KIDは優雅に舞い降りた。
本日は当然のように子供たちが勢ぞろい。
そして先月と同じように車の中に阿笠博士が待機中。

「今宵は突然のお呼び出しにお応えいただきありがとうございます」
わぁとKIDを嬉しそうに見つめていた子供達に向けシルクハットを腰にあて深く頭を下げてみせる怪盗紳士。


「どうかお受け取りください。」

パチリと指を鳴らせばポンッと可愛らしい音とともに子供たちの目の前に小さな箱がゆっくり振ってきた。

「すっげーーー。これどーなってんだ?」
「企業秘密ですよ」

それぞれ目の前に浮かぶ箱を手に取り仕掛けが無いか充分確かめ、満足すると。

「「「ありがとーございます」」」
良い子の挨拶。
それから
「あら。これロイズの。子供相手に中々いい物くれるわね。ありがたく頂くわ」
珍しく素直に灰原が。

それから

「名探偵にはもちろん、もーーちーーろーーんーー。この間お礼をさせていただかないといけませんからね。3倍返しですよ。はい、あーーん」

「・・・・・・・・・」

「おや?どうしました?ああ、頂いたチョコと同じメーカーでお返しするのはどうかと思いまして」
ゴデ○バに対抗できるものが思いつかなかったのだ。かといってゴディ○で返すのも芸がない。
そこで
「クッキーや飴にしてもよかったのですが、甘いものがそうお好きでない名探偵でも美味しく召し上がれるホロ苦トリュフを作製してみました。自信作ですよ」
キラキラといつもの気障ったらしい微笑みとは大違いの輝かしい笑顔。
バックに「褒めて褒めて〜」という心の声が見える気がしてしまうコナン。

値段的には3倍返しには全然ならないが
「愛なら名探偵に頂いたチョコレートの30倍以上ありますよ」

自信満々に言い切ったKIDにコナンは鼻で笑ってみせた。

「お前知ってっか?"0(ゼロ)"はどれだけ掛けても"0(ゼロ)"にしかなんねーんだぜ」
「・・・もともと愛は入っていなかったと・・?」
「無いな」
キッパリと言い切られ、解っていたとはいえショックを受けてしまうKID。

パタパタと振られていた尻尾がヘナリと地面に落ちたような幻覚が見えた気がしてしまう。
いや、間違いなく気のせいでは無いだろうが。

「愛・・・名探偵の愛が欲しい・・・・」
哀しそうに呟くKIDのうっとおしい事といったら―――――――なんてムカついている場合ではなかった。



「酷いよコナン君。KID様の心を弄ぶなんてっっ」
「お返しを期待して義理チョコをばら撒く悪女のようですよコナン君」
「コナン・・・さすがに俺でもKIDがかわいそーって思ったぜ」

とうとう元太まで本格的にKIDの味方についてしまった。

うう・・弄ぶって・・悪女ってなんだぁぁぁ!!小学一年生らしい言葉を使えぇぇぇぇ。

しかも
「江戸川君。・・・見損なったわ」
追い討ちかよ。
はぁいーばぁらぁぁぁぁぁぁっっ。
その面白がっているのがありありと解る瞳で何を言う。
しかも3人がそれに「そうだそうだ」と同意するし。


ああ・・なんなんだこの展開は。俺に味方は居ないのか。
と嘆いていると

「まあまあ落ち着いてください」

元凶が何か言いやがった。

「名探偵には今からバレンタインの分もまとめて愛を頂くつもりですから♪」
更にはニッコリ不吉な発言まで飛び出す始末。
お前どこまで調子に乗るつもりだ、ああん?←巻き舌(笑)




「という事で名探偵。とりあえずあーーんしてください」


胡散臭くて当然ながら差し出されたチョコに口をあけるはずも無い。
そんなコナンに不思議そうに首をかしげたKID。

(わざとらしいっっっ)

と思いつつも背後から突き刺さる3対の瞳がどんどん険悪になってくるのにコナンは気がついてしまった。
ああ、ここで拒否すれば明日どんな文句を言われるか。 ←すでにさっき散々言われたが


そうかだからこいつは元太達もこの場に呼びやがったのか。

くっそーー。と思いつつKIDを見あげればニッと口許にいたずらっ子の笑みを浮かべてみせる。

「ま、私は貴方ほど酷くありませんから。この9つのチョコのうち1つだけ、選んでください。」
「・・・・・確率は?」
「2つだけ。はずれがあります。」
ニッコリと。

「俺ははずれなんか入れなかったぞ」
「ええ、ですが充分恐怖に陥れてくださったのでそちらのお礼もしたいのですよ私は」
「・・・」
ふ。そうだよな。忘れるわきゃねぇよな。

「ご安心を。貴方の体に害をなすものではありませんから」
「何が入ってるんだ?」
「先日そちらのドクターから譲り受けた品です」
「・・・・・はーーいーーばーーらぁぁぁ。何渡しやがったっっ」

慌てて振り返ればこれまた動揺は全くみせないふてぶてしい笑顔の灰原哀。

「あら。大した物じゃないわよ。ただの貴方の体に悪影響が出ないように作成した『媚薬』よ」

ただのじゃねぇよーーーー。こえーーってそれーーーーーーー。
しかもなんでそれをこいつに渡すんだぁぁぁぁぁ。

「楽しいじゃない」

楽しくねーーーっっっ


「はいどうぞ」
「くっっっっ」


だらだらと冷や汗を流しながら9つのチョコを睨みつける。
どれも同じに見えた。
しかし

うっかり・・運悪く引いてしまったら・・・。
俺はお持ち帰りか?
そうなのか?

嫌だぁぁぁぁぁ。


ぐるぐる回るコナンの表情をじっくり眺め終えた怪盗KIDは内心ぶぶっっと噴出しながらそろそろかな、と提案を口にした。

「名探偵。1つ妥協案をだしましょう」
「え?」
「ここに名探偵の口付けをくださればはずれを教えてさしあげます」
「・・・・・」

自分の唇をさしてみせるKIDにコナンは眉をしかめた。
KIDからされたことはあったが自分から、というのは未だかつて無い。



「えーっと・・・僕たち先に車に戻ってましょうか?」
さすがにお邪魔ですよね、と子供らしからぬ気をまわす光彦。
それにKIDは微笑んでみせ

「名探偵は私がご自宅までお送りいたしますからお先にお帰りいただけますか?明日も学校ですから夜更かしするとお辛いでしょう?」

それに子供たちは頷いて

「じゃあKID。ありがとな。それからコナンまた明日なー」
「ちゃんと愛をあげるんだよコナン君っっ」
「詳しい話はまた明日しっかり聞かせてもらうわ。江戸川君頑張ってね」
などと暢気に子供たちは去ってゆく。

「お気をつけてお帰りくださいね。今日はここまで来てくださってありがとうございました、探偵団の皆さん」

軽く手を振られ、振り返し。

それを呆然と見送ってしまったコナンは彼らが視界から消えた瞬間KIDの腕の中に包まれていた。


「うわっっっておいっっっKID?」
「はずれを引きたくないのでしょう?私はそれでも本当はいいのですけどね、無理矢理は本意ではありませんし」
「むーー。」
さぁどうぞ。
とキスをねだる怪盗にコナンはほとほと困り果てた。


嫌なわけでは無い。
実は。
でも・・・照れくさい。

「目ぇ瞑ってろ」
「はいっ」

軽い、羽のような口付けを落とし、ぱっと離れたコナン。
ゆっくり目を開いてみせればそっぽ向いたその顔は真っ赤だし、KID自身も

(あ、やべーまじで嬉しいかも・・)
赤くなる顔を抑えられなかった。

「は・・はずれさっさと取り除けよ」
「ああ、最初からそんなもの入れてませんよ」
「・・・・はっっっ!?」
「貴方と同じです。ちょっと苛めてみたかっただけ。でも、WDなのに私のほうが頂いてしまったようですね」

照れくさそうに笑って見せたKIDに
ばぁろーと呟きつつもコナンは拗ねたようにチョコをひったくる。


「寒いから帰るぜ」
「ええ。風邪でも引かれたら大変ですからね」

フワリと白いマントで包み込みカシャンと一瞬で組み立てられたハングライダーで空へと舞う。


「名探偵」
「ん?」
「大好きですよ」
「・・・・・ばぁろ。知ってるよ」


呟かれた言葉はなんだかとても可愛らしくてKIDの笑みを深くするのだった。






ああくそっっ。昨日はしてやられたっ。
むかつく。
ムーーかーーーつーーくーーーーっっ。
しかもあいつのお手製だっつートリュフがこれまた俺好みの味で更にむかつく。

そんなこんなでホワイトデーの次の日コナンは子供たちの無邪気で遠慮ない追求をのらりくらりと何とか適当にかわし放課後警視庁へと意気揚々と向かった。

「中森けーぶーーーーーーーーーー」
「ん?おおコナン君じゃないか。どうした?また事件に巻き込まれたのか?」
「ううん。今日はKIDの事で来たんだ。これ、昨日のホワイトデーでKIDから貰ったんだけど・・・・・」
ついつい止まらなくて5つばかし食べてしまったため残り4つとなったトリュフを開いてみせる。
「怪盗KIDからホワイトデーのお返しを貰ったぁぁ?」
「・・・うん。手作りみたいだからもしかして捜査の役に立つかなって」

そりゃあいろいろ検出されそうです。
というか実は昨日青子が快斗から貰ったホワイトデーとほぼ同じだったりして。
甘さの度合と愛情の量が違うだけで同じトリュフ。
同じ型の箱。
同じ色のリボン。

手抜きか快斗よ?

いやいや違う。コナン用の包装で余ったものを青子に使ったという失礼な行為の結果である。



「いや、うーん。ヤツがそう簡単に痕跡を残すとは・・・」

過大評価しすぎです中森警部。
なんにせよ怪盗KIDがこんなチョコごときで捕まえられるとは思えない中森はそれを重要物件と捕らえず、ありがたくコナンの協力的な気持ちだけ受け取ることにしたのだった。


「それと・・あの・」


「うん?どうした?ヤツに何かされたのか?」
「あ・・・の・・・昨日その・・・む・・・ムリヤリに・・」

頬を染め唇を噛み締め肩を震わせる。
そんな見事な演技力をみせつけたコナンに中森警部は勢いよく動揺した。
(む・・・ムリヤリなんだ?ムリヤリムリヤリ・・・・・)
目の前にいるあまりにも愛らしい顔立ちの少年がいけない想像を掻き立てる。

あんなことやこんなこと。

まさかKIDに限って・・などと思いつつも、こんなに可愛いコナン君相手ならKIDだっておかしくなるかもしれない。
と否定しきれないところが怖い。
きっとそうだ。
間違いない。

コナン君は昨日、KIDのヤツにそれは口にはできないようなことを・・・・・

「うわぁぁぁぁそっっっそ・・・それ以上言わなくていいぞっ私には充分わかったからなっっ」
「中森警部・・ひっくひっく・・・・」
中森にしがみついてその胸に可愛らしくすがってみせる。
あまりにも不憫で中森はヒシィィィとコナンを強く抱きしめた。

「うぬぬ。おのれKIDっっっこんないたいけな幼子にまで手を出すとはっっっっいくらコナン君が可愛いからといってなんて事をぉぉぉぉぉ」
「・・」

その腕の中でコナンがニヤリとほくそ笑んで居ることなど当然中森は気づかないのであった。



その後現場で・・・・・
いつもとは格段に違う迫力で中森警部はKIDを追い回した。
それはもう。
一発ぶん殴ってやらねば気がすまないと言わんばかりの勢いで。


「まてぇええいっっそこの変態ショタコンきざ男ぉぉぉぉ」

(は?)
変態?
ショタコン?

あまりに聞きなれない言葉と、身に覚えのある言葉に思わず足がツルリと滑りうっかり人様のお宅の屋根からガッシャンと落ちてしまった。

怪盗KIDにあるまじき失態。
っていうか・・・

ま・・・・まさかこの中森警部の憤怒の情はもしや名探偵が絡んでいたり・・・・・するんですね。
ええ、解ってしまいましたよ。


打ち付けてしまった腰を押さえながら転がったシルクハットを被りなおすその瞬間、視界の端に爆笑するあの名探偵が映っちゃったりしたのだから。



「ざまーみろ変態ショタコン気障怪盗めっっっ」

あーすっきりした、と溌剌とした笑顔でKIDに一矢報いてくれた中森警部にお礼を言いに行くコナンでした。

ただのバカ話ぱーと3〜
まさか3まで行くと思いませんでしたが、ホワイトデー編です。これで予告状は完結ですね。
今回のはブログに書いたものに前後書き加えて見ました♪
あれ甘すぎでしたからね。