ナルト&シカマル&縁真のお誕生日おめでとー企画でーす。
2006年10月末までフリーと致します。
著作権はもちろん放棄しておりません。
お持ち帰りの際の一報とかは無くてもかまいませんご自由にお持ち帰りください。
  「子供の王国」管理人、縁真(えんま)より



緊急事態よ

ある夜のお仕事中のことだった。
滅多にかけてこない灰原哀から電話がきた。ってかお初かもっっ。
咄嗟に浮かぶのは愛しの名探偵のピンチ。
慌てて出てみれば深刻そうな堅い声音で言われたのだ。

緊急事態・・・

「コナンちゃんに何かあったの!?」
本性が前面に出るくらい焦る。いつもむかつくくらいに優雅なKIDから余裕がかききえる。
「あったと言えばあったわね。ああ命に関わることじゃないから安心してちょうだい。」
ただ

言い淀む灰原哀が怖い。あの無血の心臓を持つ(←失礼)灰原哀が言うのに躊躇うってなにごと!?

そうして哀は溜息だけつきとりあえず・・・と続けた。

あなた帰りにうちに寄ってもらえる?

怪盗は即座に頷いた。


子供化新ちゃん




阿笠宅についた瞬間怪盗KIDは熱烈歓迎を受けた。
小さな小さな存在に。

「わ、きっどだぁぁ」

キュートな歓声と共にぎゅぅぅぅといきなり足にしがみついてくるその物体にKIDは頭が真っ白になった。

「こ・・・これは」
「はいばらぁきっどだよっテレビとおんなじ真っ白ーー」
とKID特報を放映しているテレビをブンブン指差す足下の物体。
「そうね」

灰原哀は穏やかに微笑んでみせた。それに驚愕しつつ、とりあえずもっと気になる存在をじっと眺める。

「なんでここにいるの?ようじあるの?でも僕びっぐじゅえるなんて持ってないよ?ねぇねぇ」
マントをひっぱる興奮気味なお子様が一名・・・ってかまさか、よもや


「めーたんてー?」
「ええそうよ」
「ナチュラルに肯定しないでくださいませんかDr」
サラリと哀に頷かれKIDはますます混乱した。

「どーしたの?かおあおいよ。お仕事失敗しちゃったの?」
朗らかに聞かれたが失敗してたらここにはいない。


「や、ビックリしまして・・・」
「なんで?」
こてんと首を横に倒した目の前の少年は間違いなく彼に見える・・・見えるが

「なぁんかなぁんか更に縮まってませんかーーー」


江戸川コナンより体は少しばかし小さくなって、頭の中身は・・・いきなり最下層までダウンですか!?

「えーおいくつですか?」
「ぼく?ぼくは3才だよきっど。」
3本の指を一生懸命立ててみせるその愛らしい姿にフイに胸がときめく・・・って3才児にときめくな俺っっ!!




「と、とりあえず。この事態の説明をして頂けますかDr?」
動揺あらわなKID様はなんとか視線を愛らしい生き物から引っぺがし、優雅に紅茶をすする元凶(推測)に目をやった。

「見たままの状況よ」

電話での混乱ぶりが嘘のようだ。見ようによっては『腹を括った』ともとれるその態度。

「副作用・・・ですか?」
「ええ。そうよ。」

アポトキシンの解毒剤。
たまに弱めのものを打ち込んで拒否反応を調べたりするのをKIDは知っている。
その際これでもかっとマウス実験をした上でその行為に挑んでいることもよぉぉく知っている。

「戻りますか?」
「予想では48時間で薬が切れるわ」
だからの余裕か。

「48時間・・・誤差は?」
「前後5時間といったところかしら。それまでは下手な手出しは出来ないわね」

自然に戻るならそれに越したことはない。

「わ・・・私が呼ばれた意味は?」
「・・・ちょっと錯乱していたのよ」
そっぽを向いて気まずそうな顔。

そんな顔をすると小学生らしくてかわいらしい。

「いきなりよ?彼に」

『はいばら〜ぼくおなかすいたー』


「ええっ名探偵が空腹を訴えた!!?」

もっと突っ込むべきところは沢山あったかもしれない。
だが何より、これに驚かなくてどうする?
というよりそれが最大級の驚愕なのだ。

「驚くでしょ?」
「それは確かに錯乱してしまいますね。」

江戸川コナンはこの世で1番空腹と無縁の世界に生きているのだ。

「空腹を訴える前にパッタリ行くか、栄養失調で息耐えるか・・・そんな名探偵が」

多分彼は空腹という感覚を感じないのだろう。
一種の病気と2人は思うことにしている。←(笑)



「思わず貴方にヘルプコールした上に説明に躊躇するのもしかたないでしょ」
「ごもっともです」

深く同意をしめすKID。
同じ状況なら自分もそうする。

「ねーねーはいばらとキッドって仲良しなの?だから遊びにきたの?」

さっきからずっとズボンを引っ張られているのは気づいていた。あえて気づかない振りをして哀と会話を進めていたのだが・・・それは聞き捨てならなかった二人。

「「・・・」」

何故だろう。その言葉を思いっきり否定したくなるのは。

「私は名探偵、貴方に会いに来たのですよ」
「めーたんてー?ぼく?なんで?」
「なんでって・・・Dr彼の記憶は一体」
「・・・怪盗KIDさんにちゃんとご挨拶はしたのかしら?」

「あっ。忘れてた。んと、くどーしんいちです。3さいです。男の子です」
よろしくお願いしますと礼儀正しく頭を下げるその姿はほほえましい。

だがしかしKIDの頭はクラリと来た。
いろんな意味で。


「あー工藤新一?ですか」
はあ。
「ちなみに性別を宣言するのは変質者対策にあのご両親が教えたことらしいわよ」

「はあ・・・」
まあ確かにこんなに可愛かったら必要なことですね。あまり効果なさそーですけど。
えーっと・・・


「ねぇねぇ、めーたんてえってぼくのことなの?」
「は?ええそうですよ工藤探偵」
「わぁっすごいっぼくホームズみたいだー♪」

「そうですね。ところで何故・・・私は解らずDrの事は覚えてらっしゃるのです?」
三歳に記憶が戻ったなら灰原哀のことも知らないはずなのでは?
「・・・どくたぁ?」
体ごと傾げる勢いの子供の頭をそっと支えつつ笑顔で灰原のほうへ顔をやる。
「灰原さんの事です」

「んとね。ぼくが起きた時お腹すいたーって言ったらあがさ博士がね、哀君が来るまで待ってなさいって」
だから哀くんってだぁれ?って聞いたの
「灰原哀くんといってね君のお友達だよって。ぼくははいばらって呼んでたって教えてくれたから」

またうとうとして目が覚めたら彼女がいて柔らかい笑みで
「気分はどう?」
と聞いてくれたのだ。その笑みに彼は迷いなく彼女が灰原哀だと確信したらしい。だからにっこり笑って

「はいばらーぼくお腹すいたー」

元気に今の気分を答えたわけだ。

「・・・・・・」
「わかった?私とも初対面なわけよ彼は」

愛らしい声音に身を委ねていた次の瞬間地獄の閻魔様のような低温が響く。


「まあ・・・戻るまで待ちましょうか」
「そうね。じゃあ工藤くん。子供はもう寝る時間よ」
「やーだーっだってKIDがぼくとあそびたいって言ってるもんっ」
きゅうっっっとマントを握りしめ力説体制のお子様。

(ああそんなに握るとシワに・・・でも名探偵の手形と思えば幸せ?)
かなり危ない思考を働かせながらそっと握りしめられた手を外し自分の手で包み込む。


「3才児でもいいのね貴方・・・」
なんて大層失礼な言葉が聞こえた気がするが無視して

「また遊びに来ますからその時たくさん遊びましょうね」
「でもぼく眠くないもん」
さっきまで寝てたのだからそれはそうだろう。

「それでもやはり時間通りに生活しないと体によくありませんよ。」
「うー解った・・・明日もくる?」
額が触れる程の距離で真剣に諭されプクぅと頬を膨らましながら素直に小さな新一は頷いた。

「明日必ず伺います。」

「やったーはいばらが証人だからね。おやすみなさいきっど、はいばら〜」

「ええお休みなさい。良い夢を。・・・ふ。流石名探偵。3才で証人という言葉をご存知でしたか」

侮れない子供に引き攣った笑みを浮かべている間に新一はさっきまで寝ていた阿笠宅の客間にてけてけ向かった。



「・・・彼とは思えない程聞き分けがいいですね」
「でしょう。ご飯もそれは幸せそうに食べてくれるし」

もしかして今しっかり躾とけば戻った時まともな生活をおくるかも?


「「なんてありえない」」
ですね。
わね。



2日後元に戻ったコナンは

「はぁオムライスを美味しそうに頬張ってくれないし」
「近寄ったら威嚇してくるし」
「素直じゃないし」
「生活破綻者ですし」


「「小さいままのほうがよかった」」

と深い深い溜息をついた灰原とKIDにかなり理不尽な思いをしたという。






おまけ



「あ、いらっしゃいきっどっっっ」

翌日もまた熱烈歓迎を受けた怪盗KID様。
実を言えば本日は黒羽快斗のままやってきた。
なにせ夜は早めに就寝しなければいけないのだ。なのでKIDにはいささか早い時間にお宅訪問しなければならない。
苦肉の策で『KIDの代理人の黒羽快斗』としてやってきた・・・のだが。


「あっさり看破ですかめー探偵・・・」

なんだかちょっぴり悲しいような嬉しいような。

「3歳児に一目で見破られるとは落ちぶれたものね怪盗さん」
「・・・ええ。そうですね。そうですよね」
ズブリと哀のひと言が胸にこたえた。


「ねーねーきっどー何してあそぶー?本読むー?暗号つくるー?それともクイズ出しっこー?」
「・・実に貴方らしい選択肢ですね・・」

かくれんぼとかお絵かきとか元気に外へでてキャッチボールとか。子供らしい遊びが出てこない。
そっかー名探偵の子供の頃はこんな感じだったのかも。


「では暗号でも作りましょうか?」
「やったーー。じゃぼくも作るから後で交換ねっ」
「ええ。それはいいですね」

そういえば名探偵の暗号を解くなんて初めてかも。
作れたんだぁ。

などと失礼極まりないことを内心おもいつつ快斗は新一から渡された紙にぐりぐり鉛筆で思いついた暗号を書きなぐる。
そしてニッコリ笑うとはい、と新一に紙を手渡した。その間約3秒。
思わず新一も、傍で見ていた哀も目を瞠ってしまった。


さすがである。
犯罪者番号を頂いちゃうだけのことはある。
そう見えないけど実は凄いぞってことがなんとなく感じ取れる。

(いやみな感じでむかつくわね)
の哀と
(むーーーーーーー。手抜きだ。絶対きっどの暗号手抜きーーー)
とご立腹の新一。


こんなささやかな場面で一瞬にして2人から悪意を抱かれてしまった快斗は学ランをバサリと脱ぎ捨て
「別にすぐに思いついたわけでも手抜きなわけでもないからねー。これは今度出す予定の予告状デース」
快斗の口調でヘラリととんでもないことを口にした。

「わり、10分だけ寝かして。俺昨日寝てないんだ」
「は?あの後すぐに帰ったんでしょう?」
「や、ほら。コナンのさらに子供化の原因となった解毒剤貰って帰ったじゃない?あれ調べてたらあっという間に朝。も〜眠くて眠くて学校でずっと寝てたけどまだ眠いーー」

「自業自得じゃないの」
「だってサー。この名探偵めっちゃ可愛いじゃん?解毒剤みたいな強い薬じゃなくてもっとお手軽で体に影響の無いものでこんな風にならないかなぁって」
「・・・・・」
「まぁある程度目処はついたから後で体に影響が無いかだけ見てね」

それだけ言うとスゥ・・と意識を手放した快斗。

「バカと天才は紙一重というけれど」

バカに見えて本当に天才なのねこの人。
ついでに考え方的には哀大賛成。

なにせこの小さな新一は可愛いっっ。
しかも素直っっっ。
良い子っっっ。

生意気ざかりで根性曲がりの江戸川コナンからたまには開放されてもいいじゃないか?
と哀も思ってしまうのだ。



「月に3日くらい・・いいわよね」

不穏な言葉は傍で一生懸命KIDの暗号を解いている小さな新一の耳には幸いなことに入らなかった。