幸せの在処(ありか)2
コナン
「新一様。奥様からお電話です」
優雅な朝食のさなかの出来事だった。
工藤家の住人工藤新一と工藤コナンは広いリビングでゆったりと朝食をとっていた。
可愛い指を動かしてクロワッサンをちぎるコナンを微笑ましげに見つめていた新一は給仕係の一言に一気に不機嫌への入り口へと入り込んだ。
こんな朝早くから何のようだあの人は。
我が母ながら非常識なっっ。
頭の中でVサインでこちらを振り返る若々しい母の顔を思い浮かべるとよけいに忌々しさが増す。
せっかくの可愛い弟との交流の場をたかが電話ごときに邪魔をされたくない。
それでなくともコナンは今日友人と約束が入っていて夕方まで会えないというのに。
ブラコンを自認する新一は夕方まで何時間も可愛いコナンの姿が見れないという今日が憂鬱でたまらなく、見納めとばかりに朝からずっとコナンの愛らしい動きを盗み見していた。
目の前の席でお行儀よくスープをすすっていた子供がいらついた顔のしんいちをきょとんと見つめた。それに小さく笑うと
「食事終わってからでもいいんだけどね。ちょっと電話してくるよ。母さんからなんだけどこなんも話すかい?」
「うん♪」
嬉しそうに頷くこなんに新一は相好をくずした。
俺の弟は今日も可愛いな。
容姿もさることながら中味も天使のごとき愛くるしさなのだ。
兄バカを最大級に発揮すると食事を中断し電話のある場所へと移動する。
受話器を受け取るととなりで待ちかまえているコナンに手渡した。
先にいいの?と尋ねてくる瞳に頷いてやるとコナンはほんのり頬を染め受け取った。
「もしもしーお母さん?僕だよぉこなんだよ」
照れ臭そうに電話のムコウニ話しかける。
『きゃぁ♪こなんちゃーんおはよーもう起きてたのねえらいえらい』
傍にいたら抱き着いてほお擦りしていただろうテンションで母はしゃべり続けた。
朝からハイである。
新一の所まで聞こえるほどの大きな声。
寝起きに聞いたら頭がガンガンしそうなキンキン声にも堪えた様子なくコナンはニコニコと耳を傾けた。
『どーお?新ちゃんに虐められてない?お友達できた?お勉強ついていけてる?』
心配で堪らないといった様子の有紀子にこなんは笑顔で頷いた
「だいじょーぶだよ」
それでもなお言い募る有紀子に隣で見兼ねたしんいちが受話器を奪い取った。
「いーかげんにして下さい母さん。コナンが困ってるじゃないですか」
『だあってーコナンちゃん照れ屋さんだからなかなか喋ってくれないんだものー』
すねた口調の有希子にコナンは笑ってしまった。
「母さんが喋る間を与えないんですよ。ほらコナンも笑ってますよ」
『むーそんなに喋り続けてるかしら?』
「口を挟む暇も無いほどにね」
まだ反論があるらしかったが、新一は話を進めるべく丁寧に無視した。
「コナンは先に食事に戻っていてくれるか?」
「?うん解った。早く来ないと新一兄ちゃんのデザートまで食べちゃうからねっ」
「それは困るな。すぐ行くから食べるなよ」
「はーい」
別にデザートの一つや二つどうでもいいのだが、コナンに合わせて答える。
そして完全に気配が消えてからようやく本題に入った。
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