幸せの在処(ありか)4
コナン
「で?母さん一体こんな朝早くからどんな用件なんですか?」
『しばらくコナンちゃんを一人で外に出さないように気を付けてくれない?』
・・・・
唐突にぶっそうな話題に新一は今までの情報を総動員させ、考えてみる。
まあコナンがらみと言えば一つしか答えは出ないが。
「もしかしてあの人が?」
『ええ。あの人がまた騒いでるの。誘拐されかねないからコナンちゃんの事きちんと守ってあげてね。』
「それはいいですけど、なんでコナンの居場所がバレたんですか?」
『それは根負けして優作が・・・』
「・・・・・父さん?何考えてるんですかあの人は。あんな人の所へコナンを渡したらコナンが可哀想じゃないですか」
『私だってそう思ってあの人の悪戯電話とかに一生懸命耐えてきたのよーなのに優作ったらいっそ教えてやりなさいって・・・』
いざとなったら警察に守って貰えばいい。
とかなんとか言ったらしい。
確かにいっそその方がなにか罪状をひっつけて逮捕して貰えるかもしれない。
だがしかし・・・
「困りましたね。場所を知られたとなると、かなりやっかいですよ」
『そうね。あの人も悪い人ではないと思うのだけど精神を病んでらっしゃるから・・・・』
「悪いですけどそれを理由にして欲しくありませんね」
『新一ったら辛辣ね。まあ私も同感だけど。とりあえずコナンちゃんの事お願いね。すぐに動くとは思えないけど・・でも居場所が知れてるってだけで気になって気になって仕方ないの・・』
「解りました。電話ありがとうございました母さん」
『私も出来るだけ早くそちらに帰るようにするから』
「コナンも待ってますよ。沢山おみやげ買ってきてあげて下さい」
『らじゃーー』
元気よく電話を切る母に小さく微笑むと新一はすぐに憂いた表情を見せた。
「あの人が・・・」
親指の爪をかむ。
胃がキリキリ痛んできた。
「今日の約束はキャンセルにしてもらうか」
だが聡いコナンの事だ納得いく理由なく頷いてくれるはずがない。
もしかすると今の自分の顔を見ただけで悟ってしまうかもしれない。
正直に言ってもいいが、コナンの精神的痛手を考えると可哀想でとても口に出せない。
きっと怯えてしまうだろう。
端正な横顔をしかめながら熟考する。
「どうすれば・・・」
かいと
「っくーこの時を待ってたっつーの。あー頭スッキリーー。これが本来の俺じゃーん。」
いつも靄の掛かったような頭がクリアになり、快斗は元気よく体操を始めた。
場所は自分に割り振られた個室。
部屋と呼ぶにはおこがましいほどに狭い。
「うーんそうそうこの感じ。うっわー気持ちいーーーー」
パチリと指を鳴らす。それだけで今の姿が白いタキシードへと変身する。
残念ながら大きな鏡が無いため自分の姿が映せないが快斗は自分の姿を見下ろしビックリするほど陽気に笑いだした。
「うーん俺ってかっくいーー」
父の遺品として残してあった衣装。
これだけはと必至に隠しもっていたそれ。
マントを取りだしパチリとマント止めで固定する。
シルクハットをとりだし形のよい頭に乗っける。
そして手のひらを握りしめ次に開いたその時手のひらにはモノクルが乗っていた。
それを片目に装着すると準備完了。
まるで自分の一部のようにしっくりくるその姿が完成した。
「よしっ頭はクリアー視界良好。体もいつもより軽く動く。」
これは父のマジックだったのだろうと今なら思う。
組織に狙われるほどのたぐいまれなる自分の才能を心配して、17になるまで封じた。
そして、使えないと捨てられる事を望んだ。本来ならそうなる筈だったのかもしれないが、父が敵に反感を買いすぎたのか、残念なから父の予想外に不幸な事態に陥ってしまったようだ。
いっそ記憶を失わなかったほうがなんとか逃げ切れたんじゃないか?
ちょっぴりそんな事が頭をかすめる。
だが所詮あのころはたったの9歳児。例え逃げ切れたとしてもすぐに捕まって組織のためにこの能力を使わされるのがオチだろう。
IQ400なんて馬鹿げたこの頭脳と、ネコよりも軽い人間離れしたこの運動神経。
鍛え抜かれた度胸。父からうけついだ勝負運。
その他もろもろの能力を。
どちらの方がよかったかなんて今じゃあ解らないけれど、でも父の選択に文句を言う気はない。
父が父なりに自分の事を考えてくれた結果なのだから。
「さあ・・ショーのはじまりだ」
まずは手始めに人質を取り替えすことから始めようか。
|