幸せの在処(ありか)6
コナン
あの電話からすでに7日たった。
未だ敵は動く様子をみせない。
さすがに毎日傍に置くにはネタ切れの新一。
今日はさすがに引き留めきれなかった。
「やだっもうずーーっと遊んでないもんっ絶対遊びに行くっっ」
初めての駄々に嬉しいやら困ったやらで新一はどんな顔をしようか迷った。
駄々をこねてくれるなんてそれ程気を許してくれたのかと手を叩いて踊り狂いたいくらいに嬉しい←本当にやったら病院につれていかれるだろうが
だが状況が状況なだけに・・・
「はあ・・・」
自分も今どうしても急がなければならない事件を抱えていて見張りに行くわけに行かない。
いや出来ることならホッポリ出してコナンを見守りたいが、もう数ヶ月も前から手がけている事件なのだ。今のがすと今までの捜査がパーになってしまう。自分だけなら良いが協力してくれた高木やその他の刑事さんに申し訳が立たない。
「ちっくしょーーこんな時俺が二人いれば・・」
だが二人いたらいたでコナンを奪い合いそうだなと思い至り一人で良かったなんて考えてしまうあたりどうしようもないかもしれない。
もしもう一人の自分の方にコナンが懐いてしまったらどうすんだ?そんな事になってしまったら俺は泣き暮れるぞ。
仕方ない・・目暮警部にお願いして誰かに見張りを頼むか。
「コナーーーン」
「よおっ悪かったなーなかなか遊びに出れなくて」
「ホントだぜっ少年探偵団は一人でも欠けたら活動できねーんだからなっ」
元太の嬉しい言葉にコナンは微笑んだ。
同年代の友達というもの自体初めての存在なのだ。
もともと3人で組んでいた彼らに誘われて探偵団なんて一くくりに呼んで貰えて最初は感動して泣いてしまった。
何故泣くか解らずオロオロする三人に思わず笑ってしまったものだ。
「コナン君風邪大丈夫?」
「うん。もう治ったよ。お見舞いのお花ありがとうね歩美ちゃん」
まさか警察の手伝いをしてるなんて言える筈もなく、子供達には執事からコナンは風邪をこじらせ寝込んでいると伝えてもらっている。騙していることに良心がチクチクと痛むが(特に見舞いに来てくれたと聞いて)だが新一と刑事さん達との約束を破って口外してしまうわけには行かずコナンは困ったように微笑んだ。
「何度行っても会えないんだもん。ものすごーーーく悪い風邪にかかったのかと思って心配したんだからっ」
「そうですよっコナン君。僕たちもの凄く心配して思わずお小遣い出し合ってケーキなんて買ってしまったんですからねっ」
「ごめんね。うつるといけないからって思って」
そう。この子供達は5度目のお見舞いの時に小さな小さなケーキをおみやげに持ってきてくれた。あの時ほど感動したことはないだろう。
お菓子を買うのにお金が足りないとぶつぶつ言ってる元太。
欲しい本があるからお金を貯めてるんですと言ってた光彦。
お手伝いを一杯してるけどなかなかお小遣いが貯まらないと言っていた歩美。
あのケーキはいろんな犠牲を出してまでコナンの為に買ってくれたものなのだ。
今まで食べた食べ物の中で一番美味しいと思った。
「ありがとな。マジで。ケーキすっげーおいしかった」
はにかんだようにそう言ったコナンに三人はニッと笑いそれならいいと頷いた。
「よーーっし久々に少年探偵団出動だぁぁぁぁ」
元太のかけ声にコナンを含めた三人が手をふりあげた。
おーーーーー!!!
カイト
「元気だねぇ。子供って・・」
丁度傍を通り抜けた快斗は肩をすくめ幸せそうな彼らを眩しげに見やった。
何も知らない子供達。
世界がこんなに汚れきっているというのに子供達の目はキラキラしている。
彼らの目にはこの世界がどんな宝石にも負けない輝きを放っているように映るのだろうか。
羨ましいこって
「さぁってお仕事お仕事」
子供達を今度は冷めた目で一瞥すると快斗はきびすを返した。
コナン
今日は新一に誘われてとある大きな展覧会へと連れていかれた。
どうやら今日ここで何かが起こるらしい。時刻はまもなく20時を指す。
展覧会は警察の貸し切りとなっていた。
だがもちろんパーティーを開くわけではない。
なにも聞かされないまま連れてこられたコナン。
いつものように新一にひっついて現場へと向かった。
出来うるかぎり新一の傍にいたが、高木を見つけると新一に一言断り駆けだした。
「高木さ〜ん♪」
「あっコナン君こんばんわ」
「こんばんわ」
ペコリと丁寧に頭をさげる高木にコナンも勢いよく頭を下げた。
「えへへ。久しぶりだね。高木さんとお話するの」
「そうだね。コナン君いつも目暮警部に取られちゃうからね。佐藤さんも話したがってたよ。今度また佐藤さんがいるときにもおいで」
「うんっ。なんか今日僕が知ってる刑事さんがいないから心細かったんだー」
「そうだね。今日は2課の人たちが主だって来ているからね」
と言うことは今日は殺人事件ではないと言うことか。
コナンはへーと頷くとキョロキョロ回りを見回した。
中でも一番目立つのはさっきからずっと怒鳴り続けている男だった。
その視線に気付いたのか高木が腰をかがめてコナンと同じ高さでその男を見た。
「ああ。あの人元気だよね?あの人は中森警部って言ってね今回の責任者なんだ」
「警部?」
うっそー
張り切って空回りしているただのおじさんに見える。
「今回の要請はね。何年かぶりに現れた怪盗KIDの逮捕に協力してもらおうと思ってのことなんだ」
「かいとう・・きっど?」
「あ、そっか。コナン君は知らないよね。えーっとねー宝石専門の泥棒なんだけどね、白いスーツに白いマント白いシルクハットのものすっっごく有名な怪盗だよ。犯行前に予告状が送られてくるのが彼
流でね、それが小難しい暗号で新一君に前回手伝ってもらったんだ」
うわー僕も暗号解きやって見たかったなーと目を輝かせるコナンに高木は小さく苦笑した。
2課の人間は外部の人間が捜査に入ってくるのが嫌で仕方ないらしい。それが探偵という職種ならばなおさら。
この前の暗号だってどうしても解けない中森警部に嫌な顔をされながら新一が解いたものだ。
協力してあんな嫌な顔をされたらたまったもんじゃない。
それでも新一は喜々として暗号解読に取り組んだ。
探偵という人種に暗号はネコにマタタビのようなものらしい。
当然そんな面白い事普段ならコナンにも教えて二人で楽しむのが新一のやり方だったが、あの居心地の悪さを味合わせたくなくて新一はコナンに内緒で一人で2課へと向かった。
ざっとそんな理由がある。結局は兄心といったところだ。
「まーいいや。それで?その泥棒が今日くるの?」
「うん。新一君の解読では今日・・今から15分後にね。」
「楽しみーー」
両手を握りしめコナンは頬をピンクに染めた。
それに柔らかく微笑むと高木は「そうだね」と同意をしめし、ポンと小さな頭をなでた。
「高木刑事・・でしたよね?」
突然背後から声をかけられ高木とコナンは振り返った。そこには見知らぬ少年が一人立っていた。
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