心の行方 <4> |
初めに沈黙を破ったのは大輔だった。 「タケル…ごめんな…」 とても、小さな声だったが隣に座るタケルには十分聞こえた。 「ううん…僕こそごめん」 大輔はタケルに背を向けたまま話を始めた。 「タケルが怒るのムリないよな…オレ…タケルの事…」 「知ってる」 大輔はタケルを振り返った。 ソコには、いつもの笑みで自分を見つめるタケルがいた。 「タケル…?」 「ごめんね、いつも君の事見ていたのに君が、誰を見ているのか気がつかなかった。 近すぎて…」 大輔の頬が赤く染まりだす。 「じゃ…じゃぁ、オレの気持ちは分かったよな?」 タケルが頷いたのを見て安心するが…。 「でもね、大輔君の口から聞きたいな、僕」 にっこりと笑顔で大輔を見る。 「や、やっぱり言わなきゃダメか?」 「うん…わかってても、言葉にしてくれないと不安なんだ」 大輔は唇を噛み真っ赤になって俯くが、直ぐに顔を上げ真っ直ぐにタケルの目を見た。 「い、一回しか言わないからな!良く聞けよ、オレは…タ、タケルの事が…事が… …だー!! 言えね〜!!」 大輔は頭を抱え唸った。 「いいよ、言おうとしてくれただけで嬉しいからさ…」 タケルは困ったような笑みで大輔を宥める。 タケルの肩を大輔は掴んだ。 「いや…言う。 言うって決めたんだから、言うんだ。 タ、タケルの事…す…好き…だからな」 最後の方はタケルの耳にしか聞こえないほど小さな声だった。 これ以上赤くならない位大輔の頬は紅潮していた。 「もう、いわね〜からな」 恥ずかしくてタケルから目を反らす。 「大輔くん…ありがとう、嬉しいよ」 タケルの目に涙が光っていた。 「な、泣くなよ」 「だって、凄く嬉しいんだよ」 ちっ!と舌打ちしてタケルの唇に掠めるようなキスをした。 「だ、大輔くん!?」 突然の事に戸惑うタケルを見て大輔は満面の笑みを浮かべた。 「いつも、やられっぱなしだからな!」 と、タケルに手を差し伸べる。 「え…?」 「帰ろうぜ、腹減ったから…」 「ムードもなにもないなぁ〜」 「オレにそんなもん求めるな! いやならいいんだぜ」 大輔は手を引っ込めようとするが、その手は直ぐにタケルに取られる。 「ありがとう、大輔くん」 タケルは小さな声で大輔に囁いた。 大輔は何も言わずに、タケルの手を握り返す事で答えた。 繋いだ手の温もりに、タケルは自然と笑みが零れるのだった。 |
おわり デジ貰い部屋へ |