泊まりに行こうっ  No.7




「分かってるよ。大輔君が一生懸命考えてくれてるの。僕が急かすから焦ってるのも。ごめんね。ちょっと浮かれてるんだ僕」

まだ眠そうなトロンとした瞳をとじマクラに顔を埋め込む。
そんなタケルに大輔は寝ぼけてたのか?と首を傾げてしまう。

「このままでいたいって言うのは本当の所僕も一緒なんだ。今の関係が凄く居心地が良くて・・・」
「本当か?それなら―――――」
「でも・・ずっと今のままじゃいられないよね」
ずっとこのままでと言おうとした大輔の言葉を即座に遮る。

「・・・・」
「大輔君が僕の事少しでも好きでいてくれるうちにがんじがらめにしちゃおうって思っちゃったんだよね。だけど止める。大輔君のそんな苦しそうな顔見たくないから」

もう一度目を微かに開く。
眠そうな声に大輔まで眠気を誘われてしまいそうだ。

「そんな顔・・してるか俺?」
「うん。」
「お前の事嫌いなわけじゃないからな」
「分かってるよ。だから僕のことは気にしないで。言ったでしょ?今の関係は居心地がいいって。いつか本当の気持ちが分かるまで待つから。だからその時が来るまではこのままでいよう。」
「このままって隙を見せたら昨日見たいに迫ってくんのか?」
「そうだね青春爆発中だし」

クスクス笑いながら肯定するタケルに大輔は
「それ待つっていうのかよっ」
と文句を付ける
「いいじゃない?たまにドキドキするのも楽しいでしょ?」
そう言う問題か?
「いいのいいの。こんな関係が楽しいんだから。ねっ大輔君。焦らないで、ゆっくり答えを出してね。僕は大輔君に自分の気持ちを受け取ってもらえただけでも実は満足なんだから」

言ったら最後無視され続けると思ってた。
それが思いがけずこんなに良い展開に持ち込めて、タケルは今でも夢を見てるようで怖いくらいなのだ。
目が覚めたら不幸な現実が待っていたらどうしようと眠るのが怖いくらいに。

「タケル・・・えっとな・・じゃあ逃げずにちゃんと考えてみるから・・その・・とりあえず無期限保留続行な?」
「了解」
唇を小さく持ち上げるとそのまま規則正しい吐息を繰り返した。


「タケル?・・・寝ちまったのか。しっかし寝付きの良い奴だなー」
さっきのはやっぱり寝言なのか?疑問を感じてしまう。だがタケルの言葉は筋が通っていたし、寝ぼけていたとしても、ずっと考えていたことをポロリと漏らしてしまったといった感じだろう。

「ゆっくり・・か」
どうしよう。どうしようと繰り替えし唱えていた心がやっと落ち着いた気がする。
(もう一眠りすっかな)
朝日は昇ってるが、起きるまでにまだ2時間以上ある。
その2時間はこの4日間で一番気持ちの良い眠りになるだろう。
それを思い、思わず浮かぶ笑みを隠すかのように大輔は勢いよく布団に潜り込んだ。






「おはよう大輔君」


まだしっかり寝ている事を確認してからおはようと昨日の分のお休みなさいのキスをかすめとる。
とは言っても控えめに頬に。

「今日はいい天気だよ。どこかに遊びに行こうね」

気持ちよさげに惰眠をむさぼる大輔に聞こえないと知りつつも思わず話かけてしまう。
起きた時に隣に人のいる嬉しさ。
それが大輔ならなおさらのこと。

「嬉しいな。本当に嬉しいな。ここの所大輔君に幸せにして貰ってばっかりだ」

ほころぶ口元を手で押さえ、大輔の目覚めをそっと待つ。
一日の一番初めに大輔のこの大きな瞳に自分の顔が映る。
そんな事にすら幸せを感じてしまう。

「大輔君僕は実は諦めが悪いんだ。もし断られてもアタックは続けちゃうかもね」

十中八九断られる事はないと思いつつそんな事をつぶやくとタケルはカーテンを勢いよく開いた。
眩しい太陽光線が振り込む。

直射した光に大輔は呻いた。
「だっいすっけくーーーん朝だよー」
「んーーーあとちょっと寝かせてくれぇぇ」
「いいよ」
「さんきゅぅ・・・・って、へ?」

まさか了解の言葉が出ると思わなかったらしい大輔は目を覚ましたその瞬間不思議そうに部屋の中を見舞わした。

「タケル?」
「うん。」
「ああ・・そっか昨日泊まりにきて・・えっと・・おはよ」

一度6時に起きた事すら忘れているのか、もう一度自分の部屋との違いに驚くと、大輔は何故かすっきりした気分に首を傾げた。

「あれー?なんかモヤモヤしてたのが無くなってるなー」
「それはさっき話したからじゃない?」
「は?なんか話したか?」
「・・・・」

どうやら大輔の方が寝ぼけていたみたいだ。
「まあ良いけどね。大輔君。ゆっくりゆっくり行こうね」
そんな所も大輔らしいと思ってしまいタケルはクスクス笑いだした。
それに大輔はキョトンとすると
「何処に行くんだ?」
などと典型的なボケをかましてくれる。
まあ朝方の会話を覚えていないのだから仕方のないこと。
それでもタケルは教えてあげる気はサラサラない。

まあ良いじゃないそれでもね?
それが大輔君だしそんな大輔君が僕はとっても好きだし。
スッキリ顔の大輔君は覚えてなくてもどこかでちょっぴり覚えているようだし。

ゆっくり行こう二人でね。

ゆっくり行こういつまでもね。

だからゆっくりゆっくり考えて。僕と君との事だけを。




小説部屋     

完結っっ
大輔君無事に生還できそうです(笑)
タケル君の理性が持ってくれてよかったよ。
いや母のおかげか?
飛丸様、楽しいリクエストありがとうございました!!
2002.7.28
By縁真