―――――――――――――――――――― 12巻 奴等の仲間 1 ―――――――――――――――――――― 「なんだあの古典的な方法は」 「ん?それは手紙のこと?それとも鳩?」 「どっちもだ!!」 江戸川コナンは昨日、近所の公園で小学校の友人とサッカーで遊んでいる所、い きなり鳩が肩にとまり、くちばしに銜えた封筒を差し出されたという。 それはもう驚いた。 鳩から手紙を貰う日が来るなんて思いもよらなかったのだから。 しつこく自分に差し出すので人違いでは?という気持ちを抱えながらも受け取っ てみれば宛名書きは K to E それだけで分る。 「あのバカか」 中を見てそれが確定して、それから呆れかえるやら笑えてくるやら。 クルッポーと未だ肩で鳴いている鳩に苦笑を浮かべつつ封筒をポケットにしまっ た。 周りの子供たちにやいやい言われたがとりあえず人懐っこそうな鳩を差し出し話 題をそらすことに成功。←鳩身御供? そして本日・・・・ここに居るわけだ。 「へー。ここがお前んち」 「そ、母さんもいるけど気にしないでいいよ」 「ああ。ってかお前俺のことなんて説明してんだ?」 「ん?友人」 それで納得するか?普通これだけの年齢差で友人っておかしいだろ。 「だってさー他になに?蘭ちゃんみたいに恋人でぇす。とか言って欲しい?」 「やめろっ鳥肌が立つっ」 「こんな男前にそれは失礼っしょ」 「空耳か?今幻聴が聞こえたような気がするな。ああ、そういや最近耳掃除して なかったなぁ」 「・・・いいけどね。うん。耳掃除は大事よコナンちゃん」 なんてくだらない会話をしながら和やかにこの困った男の母と挨拶を交わし、部 屋へと通された。 ―――――――――――――――――――― 12巻 奴等の仲間 2 ―――――――――――――――――――― そこまでの感想。 「うむ。普通でつまらん」 「コナンさん。俺をなんだと思ってんですか・・・」 明らかに拍子抜け、いやそれどころか不服そうな顔に快斗は予想していながらも 苦笑してしまう。 「で、ここがお前の秘密基地だな」 「普通に子供部屋って言ってちょーだいよ」 真実秘密基地をこの部屋内に持つ快斗はコナンの何気ない発言に密かにドッキリ である。 「へー・・・え?」 「なに?」 ピタリと一点を目に止め動きを止めたコナン。 その視線の先には・・・・何故だろう、秘密基地の入り口が・・・。 ば・・・バレナイよね? 確かに大きな写真である。 お前ファザコン過ぎだろ?と言われても仕方ないくらいの大きさのパネルである 。 今更この上に芸能人のポスターを貼りたいとも思わないし、父として、というよ りマジシャンとしての尊敬する師匠である。 ある意味芸能人のポスターを貼るファン心理と変わりなかったりするわけだ。 「へー・・黒羽盗一じゃねぇか」 「え?」 まさかコナンの年代の子供が父を知ってるとは思いもよらなかった。 「知ってるのか?」 「ああ。以前・・・」 言いかけてコナンの口がパタリと止まる。 そう、そうなのだ。言っちゃあいけない事を言いそうになりました江戸川コナン っ。 「以前?父さんと会ったことがあるって?」 「いや・・六歳児の俺が会える訳ないし・・ってトウサン?」 「だよなぁ。でも知ってるってことは知り合いに父さんのファンがいたのかなぁ 。うわー嬉しいかも・・」 「待て待て。お前この人と・・・・。く・・黒羽快斗・・だったかお前?」 「そうよーん。親戚?とか遠回りな事聞かないでちょーだいね。」 ニッと目を細め笑ってみせるその姿は確かに言われてみれば黒羽盗一に似てなく はない。 というより (お袋にみせられた昔の黒羽さんにそっくりじゃねーか) むしろ今まで気付かなかったのが不思議なくらいに。 ―――――――――――――――――――― 12巻 奴等の仲間 3 ―――――――――――――――――――― 「そっか息子がいたのか。」 「だから俺もほれっ」 パチリと指を鳴らした瞬間に指の間にビー玉を四つ出現させる。 ぐっとその手を閉じ、開いた次の瞬間にそのビー玉の色と大きさが変わっていた り。 ポンッと四つのビー玉を放り投げれば空中でいきなり8つに増えたり。 「ね?」 にこぉと嬉しそうに小手先の技を見せていくがどれも完璧で。 いや、思い返してみれば最初の出会いはトロピカルランドでこいつがマジックシ ョー開いたんだよな。 なんかすっかり忘れてたけどこいつマジシャンの卵とかいって実はすでに卵とれ てんじゃねぇのか? 「夢は父さんみたいなマジシャンになること。そんでもって世界に羽ばたいて賞 とか総なめにしてーそれからそれから・・・やっすい値段で沢山のマジックショ ー開きまくりたいなぁ」 沢山の人に見てもらいたい。 それが願い。 「いいな。それ。」 「へへーでしょ?」 そのためにはそれなりの賞いただいて稼げるようになってからだ。安値でのショ ーというのはほぼボランティアになるだろうから。 一回の大きな舞台で稼げる凄いマジシャンになりたい。 「ふぅん」 なかなか。夢と現実をしっかり考えてるんだなぁと思いつつも、世界で賞を総な めと言ってる時点で無謀としか思えない。 「まぁ頑張れ」 高校生が見る夢としては上位に入る素晴らしさではなかろうか。満足そうに微笑 みパネルから離れようとした。 「・っと」 体勢をくずし、ぐっと思わずパネルに手をついてしまったコナン。 「へ?」 慌てたのは快斗である。 離れようとしたコナンにほっとしたのは束の間、いきなりパネルが回転し始めた のだ。 ダメだ。あのなかを見られるわけにはいかないっ。 慌てて慌てて・・・・快斗はコナンの手を掴みぐっと自分の方へと引っ張った。 ―――――――――――――――――――― 12巻 奴等の仲間 4 ―――――――――――――――――――― 快斗の腕の中に引っ張り込まれたコナンは何がなんだかわからない。 壁に手をついたらいきなりクルリとパネルが回ったのだ。 そして裏面にはどうやら違う写真があるらしい。 まるで隠れキリシタンのごとき隠し方である。 しかも隠されていたものが・・・ (もしかして奴らの仲間か) フト訝しんでも仕方ない。 何せ先週博士にとあるショーに連れて行ってもらってからというもの、あの子供 達はすっかりハマりこんでしまい、あの灰原ですら壁にポスター張って応援して いるという。 その人物というのは・・・ 「怪盗キッド」 「あれ?知ってるの?」 今は裏側のキッドのパネル。 普段誰も見ることの適わない、初代キッドの貴重な写真である。 「そうか・・お前も奴らの仲間なんだな・・・」 「は?」 「こいつはコソドロだっっ」 「うん」 「なのにあいつらと来たら・・・・様づけだぞっっ」 「多いよねぇ」 「何が嫌ってあの灰原がキッドを尊敬のまなざしで見ている所だっっ」 「へえ」 灰原という人物は知らないがそういうキャラじゃぁ無いのだろう。コナンは両腕 の鳥肌をさすっている様子を見せる。 「って事で俺にとってこいつは敵だ。」 「・・・どこからその結論がきたのか解らなかったです」 「つまりこいつの大ファンと思わしきお前も俺の敵だっっっ」 「おーーい俺の話は無視ですか?」 「じゃあなっっ」 「えー帰っちゃうのーー?」 「うるせー敵の分際で話しかけるなっ」 「ええーーそれ酷くないーー?」 本当のこと(KID)を知られたらこの怒りはもっともっともーーっと凄いものになる のだろうか? 快斗はちょっとだけファンになってくれた子供達を恨みたくなってしまった。 おしまい |