―――――――――――――――――――― 14巻 落葉の中の尋問 1 ―――――――――――――――――――― 今日こそは・・・そう思った。 江戸川コナンの帰り道で待ち伏せ。 いつも通る喫茶店の近く。 そこで少し緊張しながら待ち続けた。 ハラリと舞う葉っぱを眺めていると向こうからやってきた少年。 無視して通り過ぎられないようにと動こうとした快斗をよそに少年はフイにこち らを向いて。 「快斗。顔かせ」 偉そうにのたまってくださった。 願ったり適ったりですけどね。その態度はどーかと思うんですよコナンさん。 連れて行かれたのは近くの公園。 木登りによさそうな樹が大量に育っていて、その奥まったところでコナンは足を 止めた。 「コナン?」 一体何の用があるというのだろうか?予想がつかない。 まさかお前とは永遠に絶交だから話しかけるな・・とか・・・釘刺しに? あ、やばい泣きそう。←情けない 「・・・・悪かったな」 「へ?」 すっげぇ聞きなれ無い言葉を聴いた気がする。 コナンが・・・「悪かった」って? ―――――――――――――――――――― 14巻 落葉の中の尋問 2 ―――――――――――――――――――― 「だから悪かったなって」 「何が?」 本気で解らない。キョトンとしていると。 「あーお前バカだろ。俺のここ最近の態度だよっっ。悪い。あれ八つ当たり」 「え?ええっ」 てっきり怪盗のファンである俺のことが気に食わないんだと思ってたら。 「ちょっと最近体調崩しててな、イライラしてたんだ」 そこにノーテンキにいつものようにコナンに話しかけてくるバカがいてついムカ ついた。 「体調って・・・大丈夫なの?」 そう見えなかったけど。精神的に物凄く強いコナンがイライラするなんて。 「ああ、大分な。だから悪かったな。」 無視しちまって。 「ううん。そんな事情なら仕方ないよ。嫌われたんじゃなくてよかったー。」 ホッと胸をなでおろす快斗にコナンは困った顔をみせた。 本当に嬉しそうに快斗が笑ったから。それだけ悲しませていたのだと気付いてし まった。 「別に犯罪者応援してたからって嫌わねーよ」 「嘘だー。物凄い怒ってたじゃん。敵だーとか話しかけるなーとかさー」 「・・・頭に血が上るとどーもなぁ。昔から犯罪者に関してだけは冷静になれね ぇ」 昔から・・・ね。 江戸川コナン。彼の戸籍は確かにあった。 でも見るものが見れば解る。 あれは偽造であることを。 コナンの両親が存在しないことも。 江戸川コナン自体、過去のどこにも存在しないことも。 お前は一体どこから来たんだ? ―――――――――――――――――――― 14巻 落葉の中の尋問 3 ―――――――――――――――――――― 「1つ聞きたいんだけど」 「なんだ?」 胸の動悸が止まらない。唾をコクリと飲み込んで。 一呼吸してから 「コナン。お前は何者だ?」 一歩彼へと近づくたびにカサリと落ち葉が音をたてる。 時々覗かせる事のあった影を帯びた瞳を向けられ失言を悟る。 やっぱりNGワードだったか。 酷く自分の言葉を後悔した。 思わず「今の無しっっっ」と叫びそうになったその瞬間。 少し高くて、それでいて優しい音色が辺りに響く。 「俺の名前は江戸川コナン。探偵だ。それ以外の何者でもない」 きっぱり言い切った彼の蒼い瞳はゆるぎなく、まっすぐ自分を射抜いた。 (やばい・・・落ちそう) まさかこんな子供に?なんて思う。 でもこの浮き立つ心は止められない。 こんなに謎だらけで、こんなに頭が良くて、こんなに・・・俺と波長が合うやつ この先きっと出会うことはないだろう。 そんな強い確信が快斗にはあった。 今ここで、彼を逃すわけには行かない。 もし逃したら・・・もう自分の目の前には現れてくれない・・・そんな気がする から。 ―――――――――――――――――――― 14巻 落葉の中の尋問 4 ―――――――――――――――――――― 「お前が何を隠してるかは知らないけど、それを非難する気はねーんだぜ」 「・・・ふぅん。じゃあ快斗は何を聞きたかったんだ?」 「いや。たまにお前が辛そうだったから口に出すだけでもすっきりするかなぁと」 違う。最初は好奇心。 それからコナンのあの傷ついた瞳の意味を知りたくて。 全てを知りたくて。 「口に出せねぇ事だって世の中にはたくさんあるんだよ」 「ですねぇ。コナンの中には立ち入り禁止の札が立てられまくりっぽいしー」 「るせーお前ほどじゃねぇよ」 うわお。俺に回ってきちゃったよ。 「俺だって聞きたいぜ。お前は一体何者なんだ・・ってな」 「それは・・・・多分そのうちコナンならわかるよ。」 あの姿で出会ったら。 もしかすると一発でばれるかも。 互いに隠している最大の秘密。 それが俺らを遠ざけるもので無い事を切に願いたい。 こいつと離れる日なんてきて欲しくないからな。 おしまい |