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        15巻 大粒の涙 (前編)
    ――――――――――――――――――――


大粒の涙のような宝石がある。
形が涙型というだけでなく、水色に透きとおっているのだ。
そしてビッグジュエルといえるほどの大きさ。



さて、何故俺がこんなものを眺める嵌めになったかと言えば、

「毛利さんがいれば安心ですねっ」
「いやいやそんなことありませんぞ」

ガハハと胸を張る一人の男のせいである。


言わせて貰えば江戸川コナン。6才の身ではあるが、本当ならば高校生。
家に一人で留守番ぐらいお手の物である。

いやいや、もっと言わせて貰えればこのくらいの年齢の時に何ヶ月も一人で暮ら
して事くらいあったさ。

ああ、あの万年新婚夫婦が
『ちょっと旅行に行ってくるわ♪』

の書置きと銀行のカードを残して世界漫遊の旅に出ることなんかしょっちゅうだ
ったのだから。

そのたびに博士のお世話になったり、仕方なく料理を覚えてみたり・・ああ、俺
って不幸かも。

それに比べたら居候の身の今のほうが過保護に育てられている。


    ――――――――――――――――――――
        15巻 大粒の涙 (後編)
    ――――――――――――――――――――


「おや後ろのお子さんは?」
「ああ、うちで預かっていましてね。娘が合宿で家にいないものでしてね、一人
で留守番させるのは心配なので連れてきてしまいました。ご迷惑をおかけしない
よう充分注意して来ましたが・・」
ダメですかね?
と言外に尋ねる小五郎。
何気に注意なんぞしていない。
彼曰く、『このガキはそこらのガキと違って聡明だからな。言わなくても解って
いるさ』との信頼のお言葉。

なのに何故お留守番はさせないのかと言えば
「いえ、構いませんよ。そういえば毛利さん家の近くで強盗殺人がありましたか
らね。」
「ええそうなんですよ。まだ犯人も捕まっていないですし」
そういうことだ。
蘭もものすごく心配していて絶対に夜一人にさせては貰えないのが最近である。

これをヤツが狙いに来る、か。

(・・・んなこたぁどーでもいいからさっさと帰りてぇなーー)

それが、本日買ったばかりの小説の続きが気になって気になって仕方が無い、花
の六歳児の本音であった。



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    12巻 奴等の仲間  1
――――――――――――――――――――

「なんだあの古典的な方法は」
「ん?それは手紙のこと?それとも鳩?」
「どっちもだ!!」

江戸川コナンは昨日、近所の公園で小学校の友人とサッカーで遊んでいる所、い
きなり鳩が肩にとまり、くちばしに銜えた封筒を差し出されたという。

それはもう驚いた。

鳩から手紙を貰う日が来るなんて思いもよらなかったのだから。
しつこく自分に差し出すので人違いでは?という気持ちを抱えながらも受け取っ
てみれば宛名書きは

K to E

それだけで分る。

「あのバカか」

中を見てそれが確定して、それから呆れかえるやら笑えてくるやら。
クルッポーと未だ肩で鳴いている鳩に苦笑を浮かべつつ封筒をポケットにしまっ
た。
周りの子供たちにやいやい言われたがとりあえず人懐っこそうな鳩を差し出し話
題をそらすことに成功。←鳩身御供?

そして本日・・・・ここに居るわけだ。

「へー。ここがお前んち」
「そ、母さんもいるけど気にしないでいいよ」
「ああ。ってかお前俺のことなんて説明してんだ?」
「ん?友人」

それで納得するか?普通これだけの年齢差で友人っておかしいだろ。

「だってさー他になに?蘭ちゃんみたいに恋人でぇす。とか言って欲しい?」
「やめろっ鳥肌が立つっ」
「こんな男前にそれは失礼っしょ」
「空耳か?今幻聴が聞こえたような気がするな。ああ、そういや最近耳掃除して
なかったなぁ」
「・・・いいけどね。うん。耳掃除は大事よコナンちゃん」

なんてくだらない会話をしながら和やかにこの困った男の母と挨拶を交わし、部
屋へと通された。



    ――――――――――――――――――――
     12巻 奴等の仲間  2
    ――――――――――――――――――――

そこまでの感想。

「うむ。普通でつまらん」
「コナンさん。俺をなんだと思ってんですか・・・」

明らかに拍子抜け、いやそれどころか不服そうな顔に快斗は予想していながらも
苦笑してしまう。

「で、ここがお前の秘密基地だな」
「普通に子供部屋って言ってちょーだいよ」

真実秘密基地をこの部屋内に持つ快斗はコナンの何気ない発言に密かにドッキリ
である。

「へー・・・え?」
「なに?」
ピタリと一点を目に止め動きを止めたコナン。
その視線の先には・・・・何故だろう、秘密基地の入り口が・・・。

ば・・・バレナイよね?

確かに大きな写真である。
お前ファザコン過ぎだろ?と言われても仕方ないくらいの大きさのパネルである
。
今更この上に芸能人のポスターを貼りたいとも思わないし、父として、というよ
りマジシャンとしての尊敬する師匠である。
ある意味芸能人のポスターを貼るファン心理と変わりなかったりするわけだ。

「へー・・黒羽盗一じゃねぇか」
「え?」

まさかコナンの年代の子供が父を知ってるとは思いもよらなかった。

「知ってるのか?」
「ああ。以前・・・」

言いかけてコナンの口がパタリと止まる。
そう、そうなのだ。言っちゃあいけない事を言いそうになりました江戸川コナン
っ。

「以前?父さんと会ったことがあるって?」
「いや・・六歳児の俺が会える訳ないし・・ってトウサン?」
「だよなぁ。でも知ってるってことは知り合いに父さんのファンがいたのかなぁ
。うわー嬉しいかも・・」
「待て待て。お前この人と・・・・。く・・黒羽快斗・・だったかお前?」
「そうよーん。親戚?とか遠回りな事聞かないでちょーだいね。」

ニッと目を細め笑ってみせるその姿は確かに言われてみれば黒羽盗一に似てなく
はない。
というより

(お袋にみせられた昔の黒羽さんにそっくりじゃねーか)
むしろ今まで気付かなかったのが不思議なくらいに。



   ――――――――――――――――――――
    12巻 奴等の仲間  3
   ――――――――――――――――――――

「そっか息子がいたのか。」
「だから俺もほれっ」

パチリと指を鳴らした瞬間に指の間にビー玉を四つ出現させる。
ぐっとその手を閉じ、開いた次の瞬間にそのビー玉の色と大きさが変わっていた
り。
ポンッと四つのビー玉を放り投げれば空中でいきなり8つに増えたり。

「ね?」

にこぉと嬉しそうに小手先の技を見せていくがどれも完璧で。
いや、思い返してみれば最初の出会いはトロピカルランドでこいつがマジックシ
ョー開いたんだよな。
なんかすっかり忘れてたけどこいつマジシャンの卵とかいって実はすでに卵とれ
てんじゃねぇのか?

「夢は父さんみたいなマジシャンになること。そんでもって世界に羽ばたいて賞
とか総なめにしてーそれからそれから・・・やっすい値段で沢山のマジックショ
ー開きまくりたいなぁ」

沢山の人に見てもらいたい。
それが願い。

「いいな。それ。」
「へへーでしょ?」

そのためにはそれなりの賞いただいて稼げるようになってからだ。安値でのショ
ーというのはほぼボランティアになるだろうから。
一回の大きな舞台で稼げる凄いマジシャンになりたい。

「ふぅん」
なかなか。夢と現実をしっかり考えてるんだなぁと思いつつも、世界で賞を総な
めと言ってる時点で無謀としか思えない。

「まぁ頑張れ」

高校生が見る夢としては上位に入る素晴らしさではなかろうか。満足そうに微笑
みパネルから離れようとした。
「・っと」

体勢をくずし、ぐっと思わずパネルに手をついてしまったコナン。
「へ?」

慌てたのは快斗である。
離れようとしたコナンにほっとしたのは束の間、いきなりパネルが回転し始めた
のだ。
ダメだ。あのなかを見られるわけにはいかないっ。

慌てて慌てて・・・・快斗はコナンの手を掴みぐっと自分の方へと引っ張った。



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12巻 奴等の仲間  4
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快斗の腕の中に引っ張り込まれたコナンは何がなんだかわからない。
壁に手をついたらいきなりクルリとパネルが回ったのだ。
そして裏面にはどうやら違う写真があるらしい。
まるで隠れキリシタンのごとき隠し方である。

しかも隠されていたものが・・・

(もしかして奴らの仲間か)

フト訝しんでも仕方ない。


何せ先週博士にとあるショーに連れて行ってもらってからというもの、あの子供
達はすっかりハマりこんでしまい、あの灰原ですら壁にポスター張って応援して
いるという。
その人物というのは・・・

「怪盗キッド」
「あれ?知ってるの?」

今は裏側のキッドのパネル。
普段誰も見ることの適わない、初代キッドの貴重な写真である。

「そうか・・お前も奴らの仲間なんだな・・・」
「は?」

「こいつはコソドロだっっ」
「うん」
「なのにあいつらと来たら・・・・様づけだぞっっ」
「多いよねぇ」
「何が嫌ってあの灰原がキッドを尊敬のまなざしで見ている所だっっ」
「へえ」
灰原という人物は知らないがそういうキャラじゃぁ無いのだろう。コナンは両腕
の鳥肌をさすっている様子を見せる。

「って事で俺にとってこいつは敵だ。」
「・・・どこからその結論がきたのか解らなかったです」
「つまりこいつの大ファンと思わしきお前も俺の敵だっっっ」
「おーーい俺の話は無視ですか?」

「じゃあなっっ」

「えー帰っちゃうのーー?」

「うるせー敵の分際で話しかけるなっ」

「ええーーそれ酷くないーー?」

本当のこと(KID)を知られたらこの怒りはもっともっともーーっと凄いものになる
のだろうか?
快斗はちょっとだけファンになってくれた子供達を恨みたくなってしまった。



    13巻 見破られた正体(前編)


あれ以来会うと不機嫌なコナンさん。
最近けっこーいい感じに仲良しさんだったのになぁ。

相手は小学生であるというのに。
黒羽快斗は全力でお相手していた。
そんな会話が出来るヤツ滅多に居ない。

自他共に認める天才児である黒羽快斗の欠点といえば、天才すぎることであろう
。
うっかり少しでも難しいことを口にしてしまうと友人に引かれてしまう。
「え?この程度で?」
ってな事でもヤツラは「何言ってんだ黒羽?」と首を傾げやがる。


幸い「この程度」ならば青子には理解できて笑って突っ込んでくれたりするが。
マジで真剣にありがたい。
それでも日々、細心の注意を払って発言していたりする。
計算づく?
何とでも言え。
これが俺の生活の知恵だ!!


そんな訳でつい最近知り合ったばかりの江戸川コナンとの帰り道の全力の井戸端
会議は快斗的にトップ3にランクインするほどの楽しみだったりした。

そんな楽しみを・・・・・

「ひどい・・ひどいよコナンちゃん」
俺が何したっていうのよ?
ただ単に怪盗の大ファンで部屋にパネル飾ってるだけじゃんっっっ。

道端で出会っても片眉をクイッと持ち上げ不愉快そうにさっさと去る。
そんな子供が恨めしい。

なんてねちっこいヤツなんだ!!


   ――――――――――――――――――――
    13巻 見破られた正体(後編)
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しかしよくよく考えればヤツは高々6才児。

あの小気味良い突っ込みと、回転速すぎて周りからは訳解らんだろう会話につい
てくるあの頭脳。

そして快斗を鼻で笑って言い負かせるだけの豊富な知識。
更にはどんな事件も冷静に対処する図太さ。
犯人を追い詰める姑息なまでの駆け引きのうまさ。


おかしいだろう?
どれだけ天才だろうがありえないだろう?

人生6年。
物心ついてせいぜい4年か5年。
その短期間であれだけの能力を手に入れられるか?

あいつ実はアンドロイドじゃねぇの?
なんて現実味の無いこと思ったりして、面白半分に調べてみたりした。


江戸川コナンの人生を。


結果を言わせて貰えば。

「余計わからなくなったっつーの!!」

あいつは一体何者なんだ?


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       14巻 落葉の中の尋問 1
    ――――――――――――――――――――

今日こそは・・・そう思った。
江戸川コナンの帰り道で待ち伏せ。
いつも通る喫茶店の近く。
そこで少し緊張しながら待ち続けた。

ハラリと舞う葉っぱを眺めていると向こうからやってきた少年。
無視して通り過ぎられないようにと動こうとした快斗をよそに少年はフイにこち
らを向いて。

「快斗。顔かせ」

偉そうにのたまってくださった。

願ったり適ったりですけどね。その態度はどーかと思うんですよコナンさん。


連れて行かれたのは近くの公園。
木登りによさそうな樹が大量に育っていて、その奥まったところでコナンは足を
止めた。

「コナン?」
一体何の用があるというのだろうか?予想がつかない。
まさかお前とは永遠に絶交だから話しかけるな・・とか・・・釘刺しに?
あ、やばい泣きそう。←情けない


「・・・・悪かったな」
「へ?」

すっげぇ聞きなれ無い言葉を聴いた気がする。
コナンが・・・「悪かった」って?


   ――――――――――――――――――――
    14巻 落葉の中の尋問 2
   ――――――――――――――――――――


「だから悪かったなって」
「何が?」

本気で解らない。キョトンとしていると。

「あーお前バカだろ。俺のここ最近の態度だよっっ。悪い。あれ八つ当たり」
「え?ええっ」

てっきり怪盗のファンである俺のことが気に食わないんだと思ってたら。
「ちょっと最近体調崩しててな、イライラしてたんだ」

そこにノーテンキにいつものようにコナンに話しかけてくるバカがいてついムカ
ついた。

「体調って・・・大丈夫なの?」
そう見えなかったけど。精神的に物凄く強いコナンがイライラするなんて。

「ああ、大分な。だから悪かったな。」
無視しちまって。

「ううん。そんな事情なら仕方ないよ。嫌われたんじゃなくてよかったー。」
ホッと胸をなでおろす快斗にコナンは困った顔をみせた。

本当に嬉しそうに快斗が笑ったから。それだけ悲しませていたのだと気付いてし
まった。


「別に犯罪者応援してたからって嫌わねーよ」
「嘘だー。物凄い怒ってたじゃん。敵だーとか話しかけるなーとかさー」
「・・・頭に血が上るとどーもなぁ。昔から犯罪者に関してだけは冷静になれね
ぇ」

昔から・・・ね。
江戸川コナン。彼の戸籍は確かにあった。
でも見るものが見れば解る。
あれは偽造であることを。
コナンの両親が存在しないことも。
江戸川コナン自体、過去のどこにも存在しないことも。

お前は一体どこから来たんだ?



    ――――――――――――――――――――
       14巻 落葉の中の尋問 3
    ――――――――――――――――――――

「1つ聞きたいんだけど」
「なんだ?」

胸の動悸が止まらない。唾をコクリと飲み込んで。
一呼吸してから

「コナン。お前は何者だ?」

一歩彼へと近づくたびにカサリと落ち葉が音をたてる。
時々覗かせる事のあった影を帯びた瞳を向けられ失言を悟る。
やっぱりNGワードだったか。
酷く自分の言葉を後悔した。

思わず「今の無しっっっ」と叫びそうになったその瞬間。
少し高くて、それでいて優しい音色が辺りに響く。

「俺の名前は江戸川コナン。探偵だ。それ以外の何者でもない」

きっぱり言い切った彼の蒼い瞳はゆるぎなく、まっすぐ自分を射抜いた。

(やばい・・・落ちそう)

まさかこんな子供に?なんて思う。
でもこの浮き立つ心は止められない。

こんなに謎だらけで、こんなに頭が良くて、こんなに・・・俺と波長が合うやつ
この先きっと出会うことはないだろう。

そんな強い確信が快斗にはあった。

今ここで、彼を逃すわけには行かない。

もし逃したら・・・もう自分の目の前には現れてくれない・・・そんな気がする
から。



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       14巻 落葉の中の尋問 4
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「お前が何を隠してるかは知らないけど、それを非難する気はねーんだぜ」
「・・・ふぅん。じゃあ快斗は何を聞きたかったんだ?」
「いや。たまにお前が辛そうだったから口に出すだけでもすっきりするかなぁと」

違う。最初は好奇心。
それからコナンのあの傷ついた瞳の意味を知りたくて。
全てを知りたくて。

「口に出せねぇ事だって世の中にはたくさんあるんだよ」
「ですねぇ。コナンの中には立ち入り禁止の札が立てられまくりっぽいしー」
「るせーお前ほどじゃねぇよ」

うわお。俺に回ってきちゃったよ。
「俺だって聞きたいぜ。お前は一体何者なんだ・・ってな」

「それは・・・・多分そのうちコナンならわかるよ。」

あの姿で出会ったら。
もしかすると一発でばれるかも。


互いに隠している最大の秘密。

それが俺らを遠ざけるもので無い事を切に願いたい。
こいつと離れる日なんてきて欲しくないからな。


    ――――――――――――――――――――
        15巻 大粒の涙 (前編)
    ――――――――――――――――――――


大粒の涙のような宝石がある。
形が涙型というだけでなく、水色に透きとおっているのだ。
そしてビッグジュエルといえるほどの大きさ。



さて、何故俺がこんなものを眺める嵌めになったかと言えば、

「毛利さんがいれば安心ですねっ」
「いやいやそんなことありませんぞ」

ガハハと胸を張る一人の男のせいである。


言わせて貰えば江戸川コナン。6才の身ではあるが、本当ならば高校生。
家に一人で留守番ぐらいお手の物である。

いやいや、もっと言わせて貰えればこのくらいの年齢の時に何ヶ月も一人で暮ら
して事くらいあったさ。

ああ、あの万年新婚夫婦が
『ちょっと旅行に行ってくるわ♪』

の書置きと銀行のカードを残して世界漫遊の旅に出ることなんかしょっちゅうだ
ったのだから。

そのたびに博士のお世話になったり、仕方なく料理を覚えてみたり・・ああ、俺
って不幸かも。

それに比べたら居候の身の今のほうが過保護に育てられている。


    ――――――――――――――――――――
        15巻 大粒の涙 (後編)
    ――――――――――――――――――――


「おや後ろのお子さんは?」
「ああ、うちで預かっていましてね。娘が合宿で家にいないものでしてね、一人
で留守番させるのは心配なので連れてきてしまいました。ご迷惑をおかけしない
よう充分注意して来ましたが・・」
ダメですかね?
と言外に尋ねる小五郎。
何気に注意なんぞしていない。
彼曰く、『このガキはそこらのガキと違って聡明だからな。言わなくても解って
いるさ』との信頼のお言葉。

なのに何故お留守番はさせないのかと言えば
「いえ、構いませんよ。そういえば毛利さん家の近くで強盗殺人がありましたか
らね。」
「ええそうなんですよ。まだ犯人も捕まっていないですし」
そういうことだ。
蘭もものすごく心配していて絶対に夜一人にさせては貰えないのが最近である。

これをヤツが狙いに来る、か。

(・・・んなこたぁどーでもいいからさっさと帰りてぇなーー)

それが、本日買ったばかりの小説の続きが気になって気になって仕方が無い、花
の六歳児の本音であった。




おしまい