◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 21巻 最初の挨拶 前編 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本日最初の挨拶はこれでした。 「黒羽君。コナン君のことは諦めてね。」 へ? ってなもんだ。 あの嵐の生還から数日後。 生還劇に江戸川コナンの名が出ることも、怪盗KIDの名が出ることもなく、実に平和だった。 って事でのんきに黒羽快斗は毛利家へお邪魔していた。 「あのね。私もこんなこと言いたくないのよ。ホントよ。」 「はあ。」 「コナン君にはもうすでに大切な人がいるみたいなの。」 「・・・え?」 息が止まった。 大切な人? 「え・・えっと。蘭ちゃんじゃなくって?」 「違う違う。だってコナン君が自ら相棒って認めたのよ?」 それは相当だ!! でも相棒っていうくらいだからもしかして 「服部君とか?」 「ううん。それもハズレ。」 ドクンドクンとこめかみで脈が波打っているのがうるさい。 蘭の声が遠く聞こえる。 俺、なんでこんなに動揺してんだ? 疑問に覚えながら、それでも気になってしかたなくて目眩がする足を叱咤しながらどうにか話をつなげる。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 21巻 最初の挨拶 中編 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 「じゃー誰だろ?わかんないなぁ。」 俺以上に頼りになる奴なんているのかよ。 なんて頭の片隅で思いつつも江戸川コナンの顔の広さを考えればいるかもしれん・・なんて思っちゃう自分が嫌だ。 「だからね。コナン君のことは諦めて・・・・大丈夫っっそんな傷心の黒羽君にグッドニューース!」 「・・・また困った工藤新一君のおしうり?」 「あ、解っちゃった?」 えへっと舌を出し肩をすくめた蘭に快斗は笑って見せる。 たぶん笑えたと思うけれどよく解らない。 「で?コナンの相棒って誰?」 「・・・・」 張り付いた笑顔で問いただせば蘭は一瞬驚いた顔を見せた。 あ、俺ちょっと口調強かったかな? ジーッと真剣に俺の顔をみていたかと思えば蘭は困ったような顔をみせた。 「あのね。絶対誰にも内緒に出来る?」 「うん。親にも決して言いません。」 そこまで秘密ってどんな大物が出てくるのよ?下手したら犯罪者? あーあいつそういう輩にも知り合いいそうだしなぁ。 キョロキョロと辺りを見回し、それから快斗に耳を差し出すように言う。 なんだなんだ厳重だなぁと思いながら腰をかがめてみせれば蘭はそっとささやくように教えてくれた。 「えっとね、驚かないでね。コナン君の相棒って・・怪盗KIDなの。」 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 21巻 最初の挨拶 後編 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 最後の部分は本当にほんとーーに小さくて、聞き取るのにも苦労するほど。 それでも、一般の方々よりも優れた快斗君の耳には綺麗に聞き取れてしまいました。 かいとうきっど・・・? 目眩が一瞬で治まった。 視界もオールクリア。 こめかみの脈もいきなり静かになって・・・ ああ・・俺の体ってえらく正直だよねぇ。なんて初めて思っちゃった。 「そっかー。うん、ありがと蘭ちゃん。」 「え?」 「コナーーンとっとと準備しろよーーお前が行きたがってたんだろうがーー。早くしねぇとおいてくぞーーー」 「うわっ待てっっマジで待てって!」 おそらく準備の手を止めて影で聞き耳を立てていたのだろうコナンに意地悪気に叫んでみせればコナンは本気で慌てだした。 そっかー相棒かぁ。まさかそこまで認めて貰えるなんて。 抑えようとしても抑えきれない笑みが零れ落ちる。 「バカ面度が上がってるぞ。」 「コナンちゃんのせいだもんー。」 「はぁ?頭悪そうな顔で頭悪いこと言ってんじゃねぇよ、このバカイトが」 ひどく不機嫌な態度がただの照れ隠しだってことくらいもう解ってるけど。 「き、きっつー。もうちょっと優しい言葉は吐けないのかねぇ。」 「うっせぇっ」 コナンの相棒って実はかなり損な役回りじゃない?なんて思わないでもなかったが甘んじて受け止めてみせましょう。 だってなんてったってお前が認めた『相棒』だもんな。 おしまい |