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    29巻 逃げるなよ・・・(前編)
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最近、コナンはとみに思うことがある。


あいつってなぁんか・・・運悪いよなぁ←諸悪の根源

泣きながら「蘭ちゃんのバカァァ」とか空に向かって叫んだりしてるの見て
(本人に言えよ)とか、
今日は工藤新一の押し売りから30分で免れた!ラッキーとか嬉しそうに俺に言うのを見て、
(え?そんなんで喜んじまうんだ?)
となんだか不憫にすら感じてしまう。

ああ、俺ってなんてお人好しなんだろうか←あくまでも諸悪の根源

だもんで考えたわけだ。
たまには優しくしてやろうと。←偉そうだし



「よぉ、昨日ぶり」
「きのぉぶりー」
昨日とは昨夜のキザ怪盗の事だがな。
本人は分かっているのだろうか?あっさり返事しているが。
しかも傍で蘭が聞いているのだが・・・。

「え?昨日って黒羽君コナンくんと会ってたの?」
いつのまに?なんて素朴な疑問に見せかけて探りを入れるおばさま予備軍。

「・・・え?」
やっぱりウッカリしてたのか。あまりにポケッとした顔で蘭を見た快斗に
ため息をつきたい。←元凶の分際で
「違うよ。昨日はメールしただけ。今日遊びに来るよってお知らせして
くれたんだ。」
多分、おそらく快斗のボケボケの原因はあの蘭の激しいアタックのせい
であろう。(間違いなく)
昨日も大変だったようだし←放置して帰った悪魔


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    29巻 逃げるなよ・・・(中編)
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いつもなら冷たい視線で(このアホが)なんて言ってくるだけのコナンの
珍しいフォローに快斗は目を見開いた。
それからニヘーと笑って
「そうなんだ。たまにはお知らせしておこうと思ってね。それより
蘭ちゃんどこかに出かけるの?」
ちょうど玄関先で出会ったために、蘭のおでかけスタイルに話題を
すりかえてみた快斗。

「ええ。園子と近くのケーキバイキングにってあらもうこんな時間。
じゃあ黒羽くん、コナンくんをヨロシクね」
「うん、蘭ちゃんこそ楽しんできてねー。」
「おいしかったら黒羽君にもお店教えるね」
「ありがとー」

めずらしい。本当に珍しいことに蘭と出会って平和に会話して平和にさよなら出来た。
それに密かに幸せをかみ締めている男。
くぅぅぅなんてラッキー。

とか思っているはたから見れば不幸街道まっしぐらの快斗君にコナンは

「今日は蘭もいねぇしうちでのんびりするか?」
「いいねぇ」
たいてい遊ぶときはどっかに出かける(蘭対策に)。
今日も映画にでも行く予定だったのだが、別に来週でもいいだろう。

「そういやこないだ母さんが送ってきたクッキーがあるんだが食うか?」
そんなに日持ちがしない有名なメーカーのクッキーを取り出しついでにこれまた
珍しいことに自分のコーヒーのついでに
快斗のオレンジジュースまで用意してあげたりするコナン。

(・・・あれ?)
快斗は思わず首をかしげた。
いまだかつてこのお子様があっさり席をたって飲み物を用意したり御菓子を
出したりしたことがあっただろうか?
ついでに言えば先ほどのササヤカながらも蘭へのフォロー。いつもなら
絶対にしてくれない。

なんだろう?機嫌がいいのかな?

そう思いながらも一抹の不安がぬぐいきれない快斗。


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    29巻 逃げるなよ・・・(後編)
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「どうした?食わねぇのか?」
「いっっいただきますっっっ。って、えええっっこれすっごいおいしいって
有名だよ。めっちゃ高いらしいよ。
快斗君のいつか食べてみたいお菓子の上位に入ってたやつだよっっ」
さしだされた箱を見てダンッッとテーブルをたたいた。
あまりの嬉しさに。

「あ?そりゃーよかったな。母さんがここのお菓子が好きらしくてなたまに送
ってくるぞ?そんなに好きなら
また横流ししてやるよ」
「ホントっっ?マジでっっっ?うそっやべぇめっちゃ嬉しいんですけど。
コナンと友達になってよかったーーーー!」

「・・・・それかなり失礼な感想だな」
「すみません!興奮のあまりに大変うっかりな発言をいたしました。
お許しください」

せっかくの機嫌の良さ(と快斗は思っている)をそこねてしまっては大変だ。
クッキーを没収されてしまうかもしれない。
慌ててペコペコ頭を下げて見せればコナンは憮然とした表情をすぐにもどした。

「まぁいいや。食え。満足いくまでな。」
その後2人でテレビを見てゲームをして・・いつもなら放置して読書にひたる
コナンが構ってくれるのが嬉しい反面怖い。

「ただいまー。あ、黒羽くんまだ居てくれてよかったー。今日のお店すっごく
おいしかったからお土産。ぜひお母さんと
食べてね」
適当にチョイスして4個買ってきたの。3個くらい黒羽くんなら簡単に
食べちゃうわよね。
なんて言いながらニコニコとケーキ入りの箱を蘭にさしだされ無意識にお礼を
いいながら受け取った快斗の恐怖はピークに達した。

(な・・なに?なんの罠なの?)
今日のコナンは一味違う。まるで別人のように優しい←言いすぎといえない
ところがポイント
そして今日の蘭も、おかしい。怪しいくらいに優しい←失礼

きっとこれは罠だ。俺を油断させて何かしようとしてるんだ!!

「お、、俺用事思い出したからかえるねっっっ。じゃあまたーーーーー」
ケーキの箱はゆらさないように、でも全速力でその場から逃げ出した。


俺は・・・俺はけっして騙されたりしないんだからなぁぁぁぁ。



残された蘭とコナンは
「よっぽど急ぎの用だったのね。」
(おいおい、逃げんなよ)
勝手に勘違いしてビビッテいた様子の快斗にコナンは思わず苦笑をもらした。





おしまい