◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 30巻 いけません奥さん・・・(前編) ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 『でねー新ちゃんったらねー』 「ぁぁぁあっ!いけません奥さん!俺はそれ以上聞くわけには・・」 身悶えながら受話器から耳をはなした快斗だがそのハイテンションながらも耳に 心地よい声はどこまでも追いかけてくる。 『だぁいじょうぶよー』 「ぜんぜん大丈夫じゃないですからーーー。俺、まじでプチッとつぶされますから!!」 『まぁ、快斗君ったらおもしろーい。』 いやいやいやいや。ぜんぜん冗談でもなんでも無いんですけどね。 キャラキャラ笑う昔の大女優さま。 今だってお美しいですが・・・って現物とお話したことないけどね。 正直今の状況が不思議でならんわけですよ。 「快斗ー電話よー」 なんて声で朝おこされて、だれー?なんて母に聞いたら 「か・の・じょ」 なんてキャッキャとはしゃぎながら伝えられた。 「はぁ?」 アホコか?なんて思いながらもわざわざこんな朝っぱらから幼馴染が電話をかけて くるとは思えず (緊急ならなおさら携帯にかけてくるだろうし)と、首をひねりながら電話にでてみると 『はぁーい快斗君の自称カノジョでーす』 「・・・・あのーどちらのカイトさんのカノジョでしょうか?」 とりあえず真面目に返してしまった自分のばかん。 だって知らない声だったし、間違えてたら可哀想じゃん。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 30巻 いけません奥さん・・・(後編) ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 『やだー快斗くんったらおもしろーい。』 この言葉を後に何度聞くかなんとこのときの俺は知らなかったのだが寝ぼけた 頭をフルに回転させながら 「えーっと・・とりあえずどちらさまでしょうか?」 バカ丁寧に尋ねたのはとっても正解だったと今でも思う。どこの女子高生が掛 けてきたんだぼけぇっと受話器を叩ききっていたら後が怖かっただろう。 ああ、良かった。 『新ちゃんのママでぇぇす』 そう、この言葉を聴いた瞬間思ったわけだ。 そしてこの奥様は俺に延々工藤新一の困った話やら小さな頃のお話を吹き込 んでくださり(何故だ?)うふうふ・・と笑いながら 今度はうちのお母様との長話に突入したわけだ。 「どうぞうちの快斗をヨロシクお願いしますね。」 なんて母さんが頭を下げている意味が分からん。 しかも何時間後かに 「もー快斗ったら恋人できたなら教えてくれなきゃ!母さんビックリしたわよ。」 「・・・は?」 「新一君っていうらしいじゃない?工藤さんと親戚になれるなんて夢みたい!」 「・・・・」 俺も夢じゃないかと思うよ。 あまりに予想外のところから予想外の大打撃をくらい俺は先日の蘭ちゃんとコナン のあれはきっとこの罠を発動するための前フリだったんだと思った。←勘違い 「蘭ちゃんの、、、、バーーカーーーーー」 青い空に向かって朝から叫んだその言葉はおそらく八つ当たりでもなんでもなく、 真実正しい相手に向かっての言葉だろう。 何故なら工藤夫人に新一の恋人候補の話を持ちかけ、さらには色々と吹き込んで いたのは毛利蘭であり。 乗り気になった工藤母に黒羽家の電話番号を教えたのも毛利蘭である。 どこまでも外堀を埋めてくる恐ろしい女性であると今更思い知った快斗であった。 おしまい |