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    36巻 テレパシー(前編)
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「コナンくーん。早くしないと遅刻しちゃうよー?」
「あ、うん。蘭ねえちゃん、いってきます。」
「うん。いってらっしゃい」

元気に手を振って、学校に行こうとしてフと行き先を変えた。
いやいやサボりじゃないぜ。
ちょっと寄り道するだけだ。

そんな言い訳をしながらなんだか足は自然と近所の公園へ。

ちょっと遠回りなだけで学校には間に合うだろう。
一体なにしに来てるんだか、なんて自問自答しつつ、公園を覗いてみて解った。

(あー・・)

「そこのバカイトー。君は完全に包囲されているーー大人しくでてきなさーい」
口元に両手をやり、メガホンがわりにして言ってやれば。

「・・・あーコナンちゃんだぁ」
へらりと奴は腑抜けた笑みを見せた。

「包囲ってなにそれーコナンちゃん軍団に包囲されるならどんと来いよーむしろ萌えすぎるってのーー!!」
いらん。そんな興奮はいらん。

「んで?なにがあった?」
「んん。ノリがわるいぞー。いつもの事だけどさー」

滑り台の下にある空間に入り込み膝を抱えているなんてどう考えても
『落ち込んでます。なぐさめてね♪』
の定番だ。

どこまでも定番を地で行くやつだな。
なんて意味不明な感心をしつつ、のそのそと出てきた快斗に持っていた水筒のお茶を一杯わけてやる。

いわゆる
『まぁまぁ。一杯飲みながら話してごらんよ』
状態である。


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    36巻 テレパシー(後編)
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「えーっとですね。」
「ああ。」
「いつもの事ながら、昨日の宝石もはずれでした。」
「いつもの事だな」

バッサリ。

「・・・そんでもって今日も朝からアホ子にギャーギャー言われるなぁなんて思ってね。」
「いつもの事だな」

またもやバッサリ。

「そしたらフラーとこっちに足が向いてね。ここにいたらコナンちゃんが来てなぐさめてくれるかなぁなんてね。」

えへ。なんて力なく笑うものの。
「通学経路じゃないのは知ってるのにか?」
「うん。なんか来てくれる気がしたんだ」
「そうか」

実際こうしてここまで足を運んでいる身としては「アホか」と切り捨てられなかった。

「聞こえた?俺のヘルプコール。心の中でずぅぅーと呼んでたんだよ」
「うぜぇ」

決して聞こえたわけではないけれど。
なんとなく。快斗が呼んでいる気がしたのはたしか。

世の中は意外に不思議なことが起こるもんだな。なんて思いながら、腕時計を見て血相をかえた。

「やっべ。遅刻」
「はいはーーい。俺チャリでぇーす」
「送れ!!」
「お任せあれあれ〜」




おしまい