◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 37巻 キズ?キス?(前編) ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 俺は昨日、発見したんだ。 そう真面目な顔でのたまった愛しのお子様。 あまりに唐突だったにも関わらず即座に真面目な顔に切り替えられた俺ってスゴイっ 「何に?」 「キスとキズは似てる!」 「は?」 「この俺としたことが今まで気付かなかったなんてな」 ふ、と自嘲気味に、だがしかし 「だがっさすがだ。世紀の発見だ」 えーっと・・・ 「それって、凄いの?」 あまりの真剣さに何その冗談面白くなーい。なんて突っ込めず、 「何言ってるんだお前。」 バカにしたような目をした上に口にだしてまでアホだなぁなんて言われた 「いや、だってそんな点々がついてるか付いてないかの違いだよ。小学生だって気付くじゃん」 「・・・ほほぅお前は俺の発見になんくせつけるのか」 ずずい据わった目で近寄り 「だが喜べ今の俺は機嫌が良い」 「は、はあ」 なんで?いや、助かったからいいけどさ 「選ばせてやるよ」 「何を?」 「キスとキズどっちが良い」 !!!なんて事だっ なんて素晴らしい選択肢。迷う間なんてコンマ1秒もなく 「キスです!」 そらもう元気に答えましたとも。 だがしかし 「ほほう。キズが良いとはマゾかお前は。だが仕方ないな」 「ち、違っ」 「仕方ない仕方ない」 「聞き間違いだってー」 「オレサマに間違いはねぇよ」 なにその言い切りー しかも 「なんで金づち持ってんの。キズじゃなくて怪我になるって。ってか撲殺する気!?」 金づち片手にじりじり迫られ 「そして哀れ快斗くんは犠牲者となったのです」 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 37巻 キズ?キス?(後編) ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ おしまい。 と話しを終えた快斗を待っていたのは何だか同情的なお子様軍団。 「快斗お兄さんかわいそう」 そうかしら。 本人は何だか楽しそうだけれど 「それにしても夢とはいえど酷い話しです」 現実と大差ないじゃない 「でも夢だから別にいーじゃねーか」 まったくよね 珍しく同意するわ小嶋君。 「何を言ってるんですかっ快斗お兄さんは心に深い傷を負ったんですよ」 「おおっそれが夢で言ってたキズかーすげぇな」 ・・・あら上手いじゃない。 心の中でお子様たちに突っ込みをいれ 「だそうよ江戸川くん」 「ほー夢とは言え確かに傷は深いな」 「こ・・・」 なんちゃんと続くであろう言葉は少年の笑みに掻き消えた。 笑顔がステキ! ものすっごく笑顔だ 「さあ、そんな傷だらけのお前に選ばせてやるよ。・・・どっちがいい?」 キズかキスか。 夢と同じ選択肢。 普段あまりお目にかけれない満面の笑み そして・・・右手にはかなづち・・・ 即答できるわきゃない。 何選んでも結果は夢と同じな気がする。いや、それ以上に酷いことになりそうだ。 「ほらとっとと選べよ」 下からの威圧感に恐る恐る 「き、きす?」 「そうかキズか」 「言うと思ったよーー」 そしてやっぱり追い回されました。 「きゃー待って危ないからっちょちょちょっとー壁がめり込んだよやばいって」 「ちっよけるな。もの壊したら博士に怒られるだろ」 「撲殺はいいわけー!?」 そんな叫びに 「博士が帰ってくるまでに証拠隠滅しときゃいいんだろ」 はんっと鼻で笑われ言い放たれた。 誰か、この完全犯罪者になりそうな小学生に常識を教えてあげてください。 「だいたいくだんねぇ夢見てんじゃねぇよ!俺をバカにしてんのかてめぇは」 ごめんなさいーーー そんな彼らを背後にお子様はすでにテレビゲームを始めている。慣れたものだ。 それを眺め灰原は 「平和ね」 ふ、と小さく微笑んだ。 おしまい |