03巻 まさか・・・


最近・・・ふざけた奴を見かけた。
この小さな体になってからほんの5日。
小学校へは明後日から通うことになるらしい。

俺は通いたくない。
通いたくない。
通いたくないんだーーーーーーーー。
ちくしょーーー。
うっかり忘れていたのだから仕方ない。
こんな常識的なこと蘭が見逃してくれるはずもない。
「僕実はアメリカでスキップして高校1年生までは終了してるんだー」
とか言ってみろ。
間違いなくめんどくさい。

小学校に通うのとどっちがめんどくさくないだろうか?と秤にかけて・・・俺は小学校を選んだ。
俺の幼なじみはうるさいんだ。

という訳で今のうちとばかりに今できることをしていた。
工藤の家へ通って情報収集。
警視庁に以前取り付けておいた盗聴器(←おい)で情報収集

そんでもって本日はトロピカルランドへ行って現場検証。

その際当然のように俺の足は阿笠博士。
老体に鞭打って頑張ってもらっているが本人結構楽しそうだ。
あんな重たそうな体してるわりにフットワーク軽いからな博士は。

「博士っ今日はトロピカルランド行くぞっっっ」
そう叫んだとき阿笠博士は間違いなく微笑んだ。
「おお。天気もいいし絶好の遊園地日和じゃしのぅ」

遊びに行くんじゃねぇぇぇぇぇぇ。
小さな頃は沢山めんどうかけていた俺が最近構ってくれなかったのが寂しかったのかもしれない。
やれ人脈だ。
やれ蘭とデートだ。←実際デートらしいことはしてないが
やれ事件だ。
と忙しかったからなぁ。

おおぅそー考えると蘭との絆はどうなるんだろうか?←今気づくか?
ちょっぴり進展しそうでいながら何故か1mmも動かない幼なじみの関係。
もしかするとこれは後退の気配・・・・・。
どうする俺?


「ま、いっか」

何故だろうか。警察との絆が断ち切れるときよりあっさりしているのは。
その程度なのか。
それとも蘭を信じているのか。
たんに薄情なのか←これっぽい

まぁそんなこんなでトロピカルランドへ。

そしてそこで出会ってしまったのだ。
そのふざけた奴と・・・。

「お、新一、大道芸やってるぞ」
「は?そんなんどーでもいーよ博士行くぜ」
「待て待て待て待て。おおーーすごいぞあの少年は」
「少年?」

まるで子供のように目をきらきら輝かせて人々の群れの後ろから覗き込む博士に呆れつつも、仕方ないく付き合うことにしたコナン。

「あー確かに若いな」
「新一と同じくらいかのぅ」
「かもな。ここ意外と競争率高いっつーし土曜のこの時間にこの一番でっかい広場でやってるっつーことは相当な腕前なんだろうな」
あの若さで。
へーと思わず興味もわくってなもんだ。

博士に抱きかかえられ興味津々で見ていると少年は頭に被ったシルクハットをヒョイととり腰を折った。
その瞬間にシルクハットの中からフワリと風船が。
さっき頭からとった瞬間は明らかに何も入っていなかったというのに。

慌てて少年が風船をシルクハットの中に押し込めるとパンッと破裂音とともに辺り一面に無数の風船が現れた。

「う・・・わぁ・・・・」

すげぇ。
てっきりジャグリングとかを想像していたからまさか彼がマジシャンとは思いもしなかった。
しかもこの腕前。


「最後までご観覧ありがとうございました。」

空へと昇っていったたくさんの風船を見送っていた観客達は慌てて若きマジシャンへ視線を戻し割れんばかりの拍手を惜しみなく送った。

どうやらさっき頭を下げていたのは最後の挨拶の礼だったようだ。
落ちまでマジックを忘れないとは素晴らしいマジシャン根性である。

「なんじゃ終わってしまったのか残念じゃのう」
「だな。最初から見たかったな」
博士の言葉に素直に同意を示したコナン。
ちなみに今日は必要ないのでメガネははずしている。

ただ今めがねは博士がカスタマイズ中だ。
なにか便利な機能をつけてくれるらしい。

っつーか充電が必要なめがねってなんだ一体?

「まぁ終わっちまったもんは仕方ねぇし博士予定通り行こうぜ」
そう言って振り返った先には何故かニコニコ笑顔のマジシャンの顔。

人の群れがなくなったせいで真っ直ぐ見えてしまった。
見なかったほうがよかったかもしれないが。


「ま・・・・・まさか・・・・・・」


「新一?」

視線を素通りされた博士の戸惑ったような声などまったく聞こえておらず俺は衝動的に駆け出した。


その自分と全く同じと言っても過言じゃないくらい似過ぎた顔を持つマジシャンに向かって。