◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 04巻 本当の正体 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 「えーっと・・・何か用かな?」 マジシャンは腰を屈めて首をかしげた。 いきなり目の前に走りよってきた小さな子供が自分を睨みつけているのだ。 そりゃあ戸惑うだろう。 「あ・・・・名前なんていうのか聞きたくて・・・」 同じ顔だからなんだというんだ? 思わず衝動的にこみ上げてきた怒りはなんだ? それをぶつけるのはただの八つ当たりである。 そう、自分がこんな姿になってるっていうのに同じ顔のこの男は平和そうに手品をしてる なんて許せんっっというのはそりゃもう完全な逆恨み以外の何ものでもない。 と言うわけでとってつけたような質問を貼り付けた笑顔で聞いてみる。 「ん?もしかしてファンになっちゃった?」 ヘラリと崩れた笑みを浮かべたマジシャンは人懐っこい笑顔で 「黒羽快斗だよ」 サラリと自分の名前を名乗った。 「そのうち世界にこの名前を轟かせる予定だからねー。沢山の人に広めといてね♪」 「は・・はは・・・うん。」 あまりにアッサリと大きな夢を語ったマジシャンに笑みが引きつりそうになる。 だがしかしあの腕前ならその言葉はそんなに遠くない未来に実現することだろう。 自分の夢は頓挫しそうだっていうのに。 おおっとやばい。また理不尽な怒りがこみ上げてきやがった。 これは早々に退散するに限るだろう。 今この男は自分にとって鬼門である。 目の前にその顔がチラチラするだけでムカつく。 幸せそうに微笑んでいるだけで蹴りつけたくなってくる。 さぁって俺はすることあるしさっさとこの男から離れよーっと。 「じゃあがんばってねー」 「うんありがとうっ」 可愛らしい声を心がけて子供らしく大きく手を振って別れの挨拶とする。 そのまま永遠にさらばだっと思っていたら 「あっそうだ。君の名前は何ていうのーーー?」 遠くから叫ぶように聞かれた。 もう会うことは無いだろうに。律儀なやつだなー。 そう思うとなんだか無性に笑えてきて、隣を歩く博士が目を丸くするほど元気に叫んだ。 「え・ど・が・わーーーこーーーなーーんーーーーー」 「そっかー変な名前だなーーーー」 「うるさいよーーーーーー」 鬱屈した気分を振り払うかのようにでかい声で会話。 バカみたいに大声出して。 子供の特権生かしてみたり。 これからしばらくこうして生きていかなきゃいけねぇしな。 やれやれ土日があけたら学校だよ。 こうして2人は互いの本当の正体を知らないままファーストコンタクトを終えた。 |