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         05巻 名探偵鈴木園子  (前編)
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「犯人は貴方よっっ」
勇ましい声が聞こえた。

コナンは思わず耳を澄ます。
犯人・・・その響きが彼をその場に縫いとめた。
完璧な推理バカである。

ふらふらと声に導かれるように辿り着いた先はとある一軒家。

なんとなく流れで窓から覗いてみれば(流れ?)そこにはヒジョーに見知った顔があった。


「ほーっほっほっほっ。この名探偵鈴木園子様にかかればこぉぉぉんな簡単な事件ちょ
ちょいのちょいよっ」


まるでどこかの迷探偵と同じこと言ってるな、と思いつつなんとなく黄昏て見る。

「ちょっねぇ園子ー。そんな事言って大丈夫なの?ってゆーか何で被害者のお父さんが犯
人になるのよっ」

傍で心配そうにエセ名探偵の袖を引っ張るのは毛利小五郎の面倒から工藤新一のお世話、
更に今は江戸川コナンの身まで預かるなんとも苦労たっぷりの幼なじみ、毛利蘭である。

(はは・・俺より面倒かけてるじゃねぇか園子のやつ)


一応自分が迷惑をかけている自覚はあったものの、園子に比べればマシと思っている時点
で多分自分の困った加減を理解していないのであろう江戸川コナン(元、工藤新一)。

「大丈夫よっ。だってこれ自殺未遂じゃない?どー考えても」

ケロリと足元に転がるマネキンを指差した園子。心臓のあたりに果物ナイフをつきたてて
ある。
・・・・あの女性物のマネキンどこから持ってきたんだろうか?
いやそれより園子お前仮にも一応自分のこと「探偵」って言ったならせめて一般人ですら
解る常識を考えろ。
どこの世界にこの状況を見て「自殺未遂よ」なんて言い切る探偵がいるよ?
あの迷探偵ですら言わないっての。


「で・・ですが自殺なんてっうちの娘に限ってっっっ」
傍にいた白髪交じりのおじさんが園子にすがるようにまくし立てる。
おい一般人、そこの女子高生の言葉を真に受けるなっっ。まぁ今は混乱してるだけだろう
けど。

「そうそうよく言うわよねーこういう時の常套句。『うちの子に限って』ちなみにこれっ
て犯罪を犯した場合にもよく使われるけど」
「園子っっ!」

ズケズケと失礼なことを吐き続ける園子を蘭は強い口調でたしなめた。
蘭・・そいつ黙らせるには一撃加えてみたらどーだ?なんて新一だったなら提案しただろ
う。

ちなみに蘭は新一には容赦なく攻撃するが園子にはしない。
その差は何だろうか・・・・。
ちなみに猛烈に痛い。本気で骨が折れたと思ったもんな←避けきれなかったらしい(笑)

「はいはい。でもさ、こういう場合って結構家に問題あったりするじゃない?ってことで
犯人は貴方。ご理解いただけたかしら?」
懲りてない。
全然懲りてない。

「っっっっっもう園子は黙ってて!」
「はぁい」


激しい剣幕の蘭に唇をとがらせて園子は肩をすくめた。


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         05巻 名探偵鈴木園子  (後編)
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「えっと今の展開がよく分ってないんですけど・・・なんで園子に依頼なんてしようと
思ったんです?」

・・・実に重要な疑問だ。俺もそれが知りたいぞ。おっさん何をとちくるってそのイケイ
ケゴーゴー女に探偵役を頼むことになったんだ?

「は?いえ、事情聴取で警察にいったらそこのお嬢さんが・・」

たまたま警視庁の近くにいた園子が盗み聞きしたあげく勝手についてきた・・・らしい。
はっ(鼻で笑い中)おしかけ探偵かよ。←たまに自分もするくせに偉そう

「そーのーこーー。携帯で呼び出して手助けして欲しいって言うから何かと思えば・・・
何考えてるのよっっ」
「だって事件よ事件。探偵に助手はつき物でしょ?それにー新一君いなくなってから刺激
が足りなくってー」
「・・・・・」

あははと笑ってみせるが、おじさんにとっては非常に笑い事ではない。
蘭がまた叱るかと見ていれば何故か口許に手をあてて、なるほど・・などと納得してい
る。
おい。

「確かに新一いなくなってからパッタリ事件に会わなくなったわよね。刺激かなるほど・
・・・」

蘭が園子を止めなくてどーーすんだ?
思わずコナンは窓をガンガン叩いてしまった。

「ら・・蘭・・・ねーちゃん!!!なにがなるほどなのっっっっ」

「え?コナン君?」
「おーガキんちょじゃん。なんでこんなところにいるのよ」

ガラリと窓をあけ園子に尋ねられ

「学校の帰り道だよ。園子姉ちゃんの声が聞こえたから来てみたんだ。」
背負っているランドセルを可愛らしく見せる。
ちなみに帝丹高校は本日、創立記念日とかで休みらしい。ちくしょ俺が小さくなってから
創立記念日なんかくるなっむかつくっっ

「ふんふん。なるほど園子様の名探偵っぷりを見てみたかったというわけか。」
「・・・まぁそういう事にしておいて・・・」
かなり不服だがめんどくさいし。

「ちなみに・・ねぇおじさん。」
「は?あ・・なんだい?」

いきなり窓からヒョッコリ顔を出した小学一年生。すでに女子高生2人にさんざんな目に
(蘭はフォローしているが効果なし)あっていた彼は更なる敵陣の登場(笑)に眉をしかめな
がら一応応えた。

「んーと。その娘さんが被害にあったのってもしかして一昨日の夕方?」
「え?なんで知ってるんだい?」
「やっぱり。僕の友達がここらへんで怪しい人を見たって言ってたからもしかして最近こ
こらへんに出没してる強盗かもって」
「ええっっ」


そしたら娘はその強盗に!?

「それは解らないけど・・。でも自殺するのに心臓をナイフで一突きって・・・女性では
あまり考えられないでしょ?」
ナイフを使うのならまぁ定番は手首だ。
心臓なんてそんな勇気いる事男だって滅多にしない。

「明日その子たちに聞いてみるね」

被害者の父は藁でもすがりたいのだろう。小さな少年に向かって深く深く頭を下げた。