◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 06巻 少年探偵団(1) ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 「あれ?あの坊主は・・・」 黒羽快斗は平日だというのに学校をお休みしていた。 ちょっと表の仕事の打ち合わせのため午前中いっぱい必要だったのだ。 午後から間に合えば学校に顔をだそうかと思っていたのだが、あいにくただいまの時刻は 3時。 こりゃぁ無理だな。 と遅いお昼ご飯を取りながら諦めたのがさっきのこと。 ちょっと距離があるが天気もいいし家まで歩いて帰ろうと思っていた快斗はなにやら視界 に、眩しいランドセル姿の小さな子供たちを入れてしまった。 いや、それだけなら実に微笑ましいのだが、その中に知っている顔があったのだ。 わー凄い偶然だーとヒョッコリ電柱に隠れ覗いてみればなんだか不穏な会話が聞こえてき た。←身を潜めるのは裏家業のサガか? 「ええっあの家のお姉さんが殺されちゃったの!?」 「いや、まだ生きてるから」 「それで不審者について学校で聞いたんですね」 「ああ、さすがに事件についてはあそこで話すわけには行かなくてな」 「って事はあの兄ちゃんが犯人なのか!?」 「かもってだけだ元太。それに光彦も歩美ちゃんも。憶えておけよ、先入観は探偵にとっ て一番の敵だぜ」 三人の子供たちに向かって不敵に笑うめがねの坊主。 この間トロピカルランドで会話をかわした少年であることは間違いない・・・と思う。 あの将来が楽しみな整った顔立ちと宝石のように輝く青い瞳。 それに澄んだ声。 「そうですね。確かに」 「うんうんっ歩美達の敵だね先入観っ」 そばかすの少年が頷き、紅一点の少女が目を輝かす。 ただ一人首をかしげたのは小太りな少年。 「先入観ってなんだ?」 「固定観念・・・・いや、思い込みだな。一番最初にそいつが犯人だって思い込んだら他 のやつの事が冷静に見れなくなっちまうだろ?」 さらに小難しそうな言葉を口にした後言いなおす。 そのランドセルは明らかに小学生であることを示しているのに言葉の内容がなにか違和感 をかもし出す。 そんな彼の名は確か 「そっかーさっすがコナンっおばーちゃんの知恵袋ってやつだなっっ」 そう江戸川コナン。変な名前だから一発で覚えた←変でなくても覚えられるがめんどいか らいつも憶えなかったりする(笑) 「いや、知恵袋じゃねーし」 疲れたように突っ込むコナンには悪いがなんだか思わず吹き出した。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 06巻 少年探偵団(2) ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 「・・・・・・」 吹き出したその瞬間強い視線がこちらに注がれる。 もちろん視線の主はコナン。 青い瞳が細められギンッとこちらを睨みつけていた。 おー怖っ。 「ごめんごめん。つい笑っちゃった」 「盗み聞きの上に笑い出すってのはいい趣味だね黒羽快斗お兄さん」 にいぃぃっこりと可愛らしい笑顔全開・・・それが怖いんですけどねコナンさんや。 「や、だからごめんって。見覚えのある顔があってつい聞き耳立てちゃったんだよ。で? えーっと君達は探偵なの?」 さっき「探偵の敵」だと三人に向かってコナンは言った。 という事は、こーゆー小さな子にありがちな探偵ごっこなのでは?と思い至ったのだ。 「そうです。僕たちは少年探偵団なんです。あ、申し送れましたが僕は円谷光彦といいま す」 「吉田歩美です。歩美達なんども難しい事件解決したんだよ。」 「そーそー。今回の事件も俺達が解いてやるぜっ。あ、俺小嶋元太ってんだ。宜しくな兄 ちゃん」 胸を張って『少年探偵団』と名乗る三人。難しい事件といっても多分猫探しとかそんなも のだろうと微笑ましく思っていた快斗は知らない。 彼らが殺人事件や強盗事件等の事件に出会って解決の手伝いをした過去を持つなんて。 まぁ解決に導いたのはコナンなのだが。 「そっか凄いな。俺は黒羽快斗って言うんだ。じゃぁ未来の名探偵達とのお近づきの印に ・・・ワン、ツー、スリーッ」 ポポンッと小さな破裂音とともに飴玉を取り出す。 小さな会場とかでやると特に子供たちと接する機会が多いせいか常に飴やチョコを持ち歩 いているのだ。 「はい。どーぞ」 ニッコリ笑って三人の手のひらに飴を乗せていく。 「すっごーーい。今の手品っっ?」 「快斗兄ちゃんはマジシャンなんだよ」 「やだなぁコナン君。まだまだ俺は卵だからねー」 この間胸張って偉そうなことのたまったけど所詮父の足元にも及ばない。 いつか・・とは思うがその日はまだこない。 まぁ一朝一夕にあの天才マジシャンの父を越えらるなんて思っちゃいないけどさ。 「で?君達はなにか事件を追ってるみたいだけど・・もしかして警視庁に向かってるのか な?」 この方向にあるのは警視庁である。 快斗にとって実になじみのある(予告上出しに行くときとか(笑))場所なだけにとっさにそ の場所が頭に浮かぶ。 普通ならこんな小さな子供たちが警視庁に用があるなんて思わないだろう。 行ったあとで「あ」と思ったのだが、子供たちはその言葉にサラリと同意を示した。 「そーです。先日とあるお宅の前で不審な人物を見かけまして」 「んで俺達そいつがどんなヤツだったかとか教えるためにきてやってんだぜ」 「でもあの人確かに動きが変だったけど悪い人には見えなかったよ?」 最後の歩美の言葉にコナンは眉をよせた。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 06巻 少年探偵団(3) ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 「どうして?」 「だって・・なんか優しそうだったもん」 「変な動きってどんなことしてたんだ?」 「んーと・・・・家の前を行ったり来たりしたりー」 「そうそう。後は電柱の後ろからたまにあの家覗いたりしてたよなあの兄ちゃん」 「僕の予想では20代前半らしきその男性は強盗というよりもその被害者の恋人ではない かと思うのですが。」 「あっ歩美もそう思ったっ。」 光彦と歩美の言葉に素直に頷けないのはその行動ゆえ。 恋人なら何故家の前をうろうろしてるんだ? 「親に付き合ってるの内緒にしてたんじゃねぇのか?」 聞き役に徹していた快斗がつい口を挟んだ。それにコナンは冷静に返答をする。 「確かにお父さんは娘さんに恋人の存在があるかは知らなかった。だけどあの日、この家 は無人となるはずだったんだ。」 父は仕事。 娘は友人と遊びに。 父子家庭のお宅のため、あっさり家は無人となる。 では恋人なら何をしにこの家の前に?娘さんは出かけていたはずなのだから約束している わけが無い。 「たまたま遊ぶはずだった友人が風邪を引いたからお見舞いにいってすぐに家に帰ってき たらしい」 とは友人の証言である。 仕事でいないはずの父を警戒する必要はない。 「となると・・・・」 重々しくコナンを結論を述べた。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 06巻 少年探偵団(4) ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 「やっぱり強盗犯の線が濃い・・・というわけだ」 「でもなぁ。」 まだ渋る歩美にコナンはあまり考えたくない一つの考えを口にした。 「例えば、強盗といっても単純に適当な金持ちの家に押し入る強盗もいれば、綿密に下調 べをして乗り込む強盗もいる。 その男性の場合は後者の可能性が極めて高い。もしかするとこの家に強盗に入るために娘 さんの恋人になったかもしれない。」 情報源とするために。 その後盗る物盗ったら適当な理由をつけて別れればいいのだ。 「特に父子家庭ともなると通帳の番号は娘が知ってるもんだろ?恋人にならなにかの弾み でポロッと暗証番号をこぼすかもしれない。」 銀行でお金を下ろすときに 『僕はいまだに暗証番号を自分の誕生日にしたままだからカードを落としたら危ないよ ね』 と笑いながら言えばそれにのった娘さんが 『あ、うちもそうっ。やっぱりめんどくさくて変えてないのよ』 と軽く返すかもしれない。 それで終了だ。 「ええっそれってお姉さんに嘘ついて恋人になったってことっ!?」 「いや、もしかすると・・・だ。一応その線で高木さんに調べてもらってるけど」 「えー高木刑事で大丈夫かよ」 ・・・元太。確かに頼りなく思えるだろうがそんな不安そうに言うな。高木さんが可哀想 だろ。 と突っ込もうとしたコナンは首を傾げる快斗を見て、あ・・と思った。 「刑事さんと知り合いなんだ」 「うん。高木刑事はちょっと抜けてるけどとってもいい人なのっ」 「歩美ちゃん・・・」 その場合はちょっと抜けてるけど、の後に「頼りになるの」と言ってあげるべきではない だろうか? 抜けてるけどいい人、じゃ刑事として問題だぞ。 まぁ言葉通りの人だけどさ。 「高木刑事はちょっと頼りない感じはしますけど一緒にいる佐藤刑事はとってもしっかり してますから大丈夫ですよきっと」 コナンが関わった事件に興味深々に首を突っ込んでくる佐藤刑事。今回もきっと高木から コナン情報を得て高木よりもしっかりと調べてくれることだろう。 「高木さんの存在って・・・」 いい人なのにねぇ。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 06巻 少年探偵団(5) ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ そんなこんなで気が付けば警視庁前。 快斗は思わず呟いた。 「俺は一体何故ここにいるんでしょーか?」 いや慣れてるよ。(忍び込むのはね) でもなんで中に俺まで連れ込まれなきゃいけないの?まったく関係ないのに。そりゃ特に この後用事は無いけどさ。 「だって快斗兄ちゃんがいたほうが便利・・・じゃなくて役立つ・・・でもなくって、あ 〜心強い?と思うしー」 その言い直してるのはわざとですか?しかも最後すっげー投げやりに聞こえたのは幻聴で しょーか? 「確かに子供だけでは入りにくいよなぁ」 ってのは解る。だがたまたま居合わせたまだ2回しか会った事のない他人をこき使うって どーよ? なんか俺恨まれてるの? なんて快斗は胸に手を当て己の行いを振り返ってしまう。 真相はたんなるコナンの八つ当たりである。 『せっかくこないだ無傷(?)で開放してやったってのに俺の前にノコノコ現れるとはな ・・・』 しばらくは見たくない新一そっくりの顔。 快斗の顔に『思う存分いぢめて下さい』なんて文字が見えるコナン。当然気のせいであ る。 「あ、コナン君」 今も昔も変わらない穏やかな声音。人の良さそうな笑顔。そして頼りないと思われがちだ が芯は強い・・・新一時代とても信頼していた刑事、高木の登場である。←さっきさんざ んコケ下ろされていたが(笑) 子供と侮る刑事の多い中、彼は子供達を対等に扱う。もちろん危ない事はさせないが。 それがとても嬉しい。 「このあいだの男について裏がとれたよ。君達は彼が当日現場にいたことを証言してね」 それからつらつらと男の犯行について述べ行く高木。 やはり予想通り恋人や友人になりますして、情報を手に入れてから盗みに入るのが彼の手 口らしくい。 しかも盗むのではなく、カードを偽造する。 それから別れたり、まったく会わなくなってから一気にそのカードでお金を引き出す。 しかも一回こっきり。その為今までまったく彼の犯行は暴かれなかった。 そして被害は数十件にも及ぶという。更に調べればまだまだ出てくるかもしれない。 「佐藤刑事が張り切っちゃってね。凄かったよ」 ハハ。と情けない顔で笑いながらそう締めくくった高木にコナンは自分の推理が当たって いたことに満足そうに頷いた。 「やっぱり佐藤刑事が調べたんだね」 「だよなー。高木刑事だけでこんなに調べらんねーよな」 「ほとんど佐藤刑事が調べたと思われますが佐藤刑事は他のお仕事大丈夫なんでしょう か?」 「いや、僕だって調べたからね。でも佐藤さんは休みの日まで使って手伝ってくれたか ら。なんか凄くウキウキしてたんだけど」 なんでだろうね? 首をかしげた高木に子供たちはさぁ?としか答えられなかった。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 06巻 少年探偵団(6) ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 「あの〜1つ聞きたいんですけど」 「え?わっ工藤くん?」 工藤ってのはあれか?あの最近行方しれずっつーあの東の、と名がつく探偵君?むかぁし 昔のその昔初体面でヘリからいきなり拳銃ぶっぱなしてくれたあの探偵くん? そういや青子に似てるって言われたなぁ。街中でも何度か声かけられたし。そうか身近で 顔を知ってる刑事ですら間違えるほど似てるのか。そっかー。 と一瞬で「工藤」なる人物についての追跡はやめて、次の考えに移る。 次とは・・・・そう、今までまったく快斗の存在に気づいていなかったらしい高木のこ と。 一般人にぺらぺら捜査状況を口走っているのも快斗にとっては驚きだったが、子供たちは 普通に聞いていたからもしかしてこれがいつものことなのかも・・と思い至った。 大丈夫なのか?こんなに間が抜けてて。更に口が軽くて・・・とちょっと高木を心配して しまう。 だが高木だってちゃんと刑事なのだ。きちんとしている所はしている。 コナンが相手だと何故か不思議なことに「大丈夫」と思えて、なんでもポロっと漏らして しまうが、他の人にたいしてはきっちり口は堅い。 そんなことを知らない快斗は先ほどの子供たちの言葉を思い出しなるほどーと納得してし まった。 『抜けてるけど優しい』 なるほどなるほど。 「・・・違います。黒羽です。えーっとこいつらの証言使えるんですか」 当然のように高木は言ったが実際子供の証言は重く受け取られない。 「はービックリした。ああ。彼らは特別だよ。何度も事件を解決してるからね」 警察の上のほうからも信用され始めているらしい。 んなバカな。 快斗は叫びたくなるが高木が嘘をつくようには見えない。 ポカンと子供たちを見ていた快斗に相変わらずニコニコ笑顔の高木はそれで、と尋ねた。 「君、黒羽君って工藤君の親戚とかかな?」 コナン君と工藤君は親戚らしいからその繋がりでここにいるのかな? 素朴な疑問である。 そしてコナンによって黒羽快斗の親戚に工藤新一が加わった(笑) 「うん。遠い親戚なんだよ♪」 快斗はその日の夜、本気でコナンに恨まれることをしたかずっと悩んだらしい。 |