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     09巻 一本背負い(前編)

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「なーなんで俺は男の恋人を勧められてるんですかーコナンさんや」
「さー?俺もなんでかさっぱりなんだよな快斗さんや」

コナンと快斗は深い溜息をつきながら喫茶店でお茶していた。
なんだか偶然が続いて道端でばったり出会うことが多いこの二人。
無視するのもどうかと・・って感じで「よっ」と声をかけ「こんにちは」と返事
をする。
それから適当に立ち話をしてすぐ解れるつもりが何故か深くどーでもいいことで
話こんでしまったりして結局手近な喫茶店に入ったりすることが多くなった。

今日の話題は「蘭」である。

ちなみに冒頭の会話はちょうど公園の前で出会った2人の最初の会話。挨拶なし
である。

「俺はさ、一応可愛い女の子と結婚して子供つくって・・って夢があるわけ。な
んで工藤新一?なんで男?蘭ちゃんの頭どうかしちゃってるの?」
「実は俺もそれが非常に気になる。なんでお前?なんで男とひっつけるんだ蘭っ
っっ」

コナンの猫かぶりは周りに誰もいない時、突然ボトリと剥がれ落ちた。

それこそ「なぜっ」と聞きたいところだが、この口調のほうがなんだか楽そうだ
し、こちらも気楽なので特に突っ込まずサラリと流している快斗。
それにありがたいと感謝の心を抱き、代わりにその顔についての不服を押さえ込
むことにしたコナン(笑)
ということで最近の2人はなんだか友好関係が築かれてきているのである。


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   09巻 一本背負い(中編)
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「最初は自分の気持ちを知るために恋人を適当にあてがってみるとか言ってたん
だよな。なのにいつの間にか話が摩り替わって工藤新一の恋人を決定するんだっ
てのが目標になってる気がする」
「それで男をあてがうのがどーかと・・。いや俺が被害者じゃなきゃいくらでも
勝手にやってって感じだけどさ」
「被害者・・まぁ確かにあの激しい攻めは凄いよな。」

『ねぇなんで新一じゃだめなの?性格?あの推理バカなところがだめなの?大丈
夫よっ黒羽君なら心ひろそーだし、新一が本読んでるとなりで楽しそうにマジッ
クの練習してそーな感じだし。新一そういうの見抜くの好きだから本ホッポリ出
して黒羽君のマジックに集中しちゃうかも。わーなんかいい感じー』
どんな感じだ?
と思う快斗とコナン。

「っつかさ、俺そのご本人と会ったこともしゃべった事も無いってのにいきなり
恋人にどーです?って聞かれてもさー」
「だよな」
「なんかお見合い写真もってきたおばちゃんみたいな感じ?」
「似てるな」
「しかも切羽詰ってるような感じが・・・・」
「もう後が無いんだーーって感じだよな蘭のヤツ・・。なんでだ?何があいつを
そこまで思わせる?」
「そんなに工藤新一って問題児なの?」
「・・・・・ノーコメントでお願いします」
快斗の素朴な質問にコナンは答えられなかった。
いつもなら自信満々に良い所だけ並べ立てる。
だが――――――――――


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   09巻 一本背負い(後編)
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「なんか蘭ちゃんの言葉聞けば聞くほどすっごい問題児にしか思えないんだよね
ぇ。ってかさーお見合いおばちゃんってより欠陥不良品を売りつけようとする販
売員ってのがもっと適切かも〜」
「・・・欠陥不良品・・・・」
それは酷い・・酷い言い草だ。

「そんな感じじゃん蘭ちゃんって」

おかげで快斗はまだ会ったこともない新一の悪いところをツラツラと並べ立てら
れてしまう程。
逆に良い所って何?顔?お金持ちってところ?あとは?

蘭は言う。
『顔と金しかないのよあの推理バカは』
それって人間としてヤバクないか?
失礼ながら快斗は心配してしまった。


それほど悪口を並べ立てておきながらも、蘭はまだ猛烈アタックをかますのだ。

本当に蘭はしつこい。
どうして快斗がいいのか分からないが蘭の頭中ですでに新一には快斗しかありえ
ないらしい。
それか


『も・・もしかして黒羽君、コナン君と付き合ってたり・・・・する?』

どーーーしてそっちにいくんですかーーーーーーーーーーー。

『だってすっごくお似合いだもの』

コナン君が相手だったら仕方ないわよね。新一のことは諦めるわ。

見事である。コナンと快斗を一撃で撃沈させる素晴らしい一本背負い。

地面に叩きつけられた二人は衝撃のあまり2人で顔を見合わせ儚く笑いあってし
まったらしい。



おしまい