「 交換しましょ《前編》 」スレシカ×スレナル |
交換しましょ 中編 さっさと帰りついたナルトの家。 ナルトは家の中にはいった早々に机をダンダンと拳で叩きつけた。 岐路中も先ほどの担任たちの言葉が頭のなかで繰り返され、怒りは収まるどころかうなぎ上り。 「だめっムカつくっ。あータイリョクのむだぁぁ」 解ってるのにムカムカするのは止められない。 「とりあえずこれでも食ってろ。」 口の中に押し込められたのはクッキー。 1食に必要分の栄養が取れるとってもお手軽なクッキーだ。 最近もっぱらコレのお世話になっている。 「これも飲んどけ」 「ん。サンキュ」 渡されたのは怪しげなビン。 栄養ドリンクハイパーバージョン←シカマル作成 これ一本で3日は目が冴えます。 なんてフツーなら強力すぎて体に悪そうなブツだが最近暗部に大流行中である。 皆さん大変なのだ。 「シカ」 「あ?」 「めんどーなのが来てる」 「げ・・・あいつら暇なのかよ」 めんどくせぇ。 溜息をついたシカマルは呆れただけらしい。 (俺はこんなにムカついてるのに何でそんな余裕なわけ!?) シカマルにまでムカついてくる始末。 いつもなら海より大きな勘忍袋。 むしろシカマルの方が先にプッツリ切れるのが常だと言うのに、残念ながら本日のナルト袋は100分の1スケールとなっております・・ってな状態らしい。 どんどん胃が重くなっていく。なんだか全て投げ出したい衝動に駆られてきた。 「・・・シカ」 ムカつきピーク。ドンっと机を拳で叩きナルトは据わった目をした。 「あいつらに俺らの仕事押し付けよう。すっげぇ暇らしいしきっと喜んで引き受けてくれるだろうサっっ」 「おいおいお前目ぇあっち行ってっぞ。大体あいつらに俺らと同じスピードで任務出来るわけねぇだろ」 「いや明日までかかってヨシっむしろかかれっ」 そしたら下忍の任務が無くなるっと口にしなかった心の叫びまできっちり聞き取ってしまったシカマルは動きを止めた。 「・・・あー」 異存無し。 ピコピコといつもの50分の1も回転しない頭で計算したシカマルはぐっと親指を立てた。 「同意」 「同意リョーカイ。んじゃ」 「ああ」 ナルトは目くらましのケッカイを手拍子一つで解除した。 突然現れたとしか感じなかった一軒の家に2人の大人(子供達いわくクマと変態)は目を丸くした。 「これ・・・家だよね」 「そうだよな」 「さっきまであったっけ?」 「や、無かったろ」 幻術だった。 そう言ってしまえばそれしかあるまいが、一応ビンゴブックに載るくらいの実力を持つと自負しているだけに、気づけなかった事は由々しき事態である。 しかも 「ナルトん家?」 「としか考えられん」 なのだ。 結界の存在は納得出来てもそれが消滅した理由が考えられない。 しかもしかも 「「いらっしゃい」」 ミョーーに寒々しい笑顔で扉を開いた子供達。 まるで待ち構えていたかのごとく。 開いた扉からチラリと見えたテーブルの上には茶色い小瓶が2本。最近上から支給されている怪しげな栄養ドリンクに大層似ていた。 これを飲めば一日2時間睡眠で1ヵ月くらい頑張れるから。 仏様のように微笑んだ前回の任務の隊長の顔が忘れられない。 「な、ナルトそれ。」 「ん?これ?シカマルが作ってくれたスペシャルドリンクだってば」 これがあれば3日は寝ないで頑張れるってばよ。 そう言ったナルトの顔はひどく隊長の笑顔に似ていた。 荒み切ったというか、やけっぱちというか・・・。 「成長期の子供が飲むもんじゃねえな」 「アスマ先生ならそー言ってくれると思ったってば!」 ナルトの笑顔はことさら明るくなった。 「ってゆうかシカマル君がそれ作ったって?」 「必要に迫られてな。実に良く売れてるぜ」 「やっぱアレなのネ」 「多分ソレだろ。っつー訳で子供がこんなもん飲んだり作ったりしなくていいよう大人が頑張ってくれませんか」 「よーするに俺達の任務代わって欲しいってば♪」 何となくは察していた。こんなもん飲まなきゃいけない状況、更には作ってしまえるその腕前。 「代わってあげたいのは山々だけどねセンセー達もやっかいなお仕事が待ってるのヨ」 今からAランク任務である。期限は明日の朝まで。 二人がどんな仕事を任されているか知らないがとてもそちらを手伝う余裕はない。 「ん、解ったってば。んじゃセンセーの方俺達がやっとくから俺達のお願い」 それなら出来るよね。 にこぉと未だかつてお目にかかったことがない程嬉しそうな顔でとんでもない提案をする。 「無理だろ」 「無理だよねぇ」 アスマとカカシの怪訝な顔にナルトは頬を膨らました。 ここで逃がす気はさらさら無いのだ。 騙くらかしてでも自分達の任務を押し付けたい。っていうか押し付ける!←決定事項 「いいから代わってってば!とりあえずうんって言ってっっ」 お願い、とカカシの服を掴み上目使いでおねだり炸裂。ちなみによく三代目に使う手である。 「う・・・うん」 思わず頷いてしまったカカシは多分悪くない。 今だかつてこの手から逃れられたのは1人しかいないのだから。 「シカいい?」 「ああ。どーせ北方に巣くった盗賊団の暗殺だろ。なんか抜け忍がゾロゾロ加入してるって話だからな。」 その貴重な1人はなんだか下忍には持ち得ない情報をペロッと口にし同意を示す。 「うん。今夜が山だって噂だからいっきに叩くつもりみたい。」 「じゃあそっちのメンバー他に動かして二人でさっさとやっちまうか」 「さんせーい。」 「ふ・・・ふたりともなにいって・・・」 「お前ら・・・・・まさかシカマルとナルトじゃねぇのか?」 ひらがなで呆然と訪ねたカカシと、まさか誰かが変化してんのか?と疑わしげな瞳をむけたアスマ。 無理もない。 そんな二人にナルトとシカマルは一瞬顔を見合わせ、それから・・・プッと内心吹き出した。 |
交換しましょ 後編 変な顔の大人たちを指差して笑い転げたくなる衝動を押し隠しナルトは朗らかにいつもの笑顔で笑って見せた。 「やだなぁアスマ先生。俺もシカマルも本物だってばよ。ちゃんと解ってて引き受けるから安心して俺らの任務行ってきてってば♪」 「火影様には俺らから言っとくんで。」 そう言いながら白紙の巻物にサラサラと何かを書いたかと思えば 「よしっと。ナルっ書き漏れないか?」 「ん〜無し。」 ざっと目を通し確認を終えた巻物をクルクルまとめハイとカカシに渡した。 「はい、せんせー」 「俺らの任務書っす、本物はとっくに焼いたんで」 呆然と受け取ってからハッとする。 「火影様に伺えば・・・」 「時間がないってば」 「期限は明後日の夜までです。多分アスマ達なら大丈夫と思うけど早めに出発を推奨しますね」 「へ?」 「たぶんって・・・明後日って・・・オマエラ明日の任務どうする気だったんだ」 それに二人はニヤリと唇を持ち上げ、 「もちろん」 明日の朝までに終わらせる自信があったに決まってっだろ。 「アスマぁ」 不敵な笑みに見入っていたアスマに、先に巻物を開いたカカシが泣きそうな声をだした。 「終わんないよコレ。明後日期限じゃきびしー」 内容は軽いSランク。 並の上忍なら50人で組んで1ヶ月かけて行うような、そんなレベルの任務だ。 しかも請け負っているのは下忍であるはずの2人きり。他の人間の名前は書かれていなかった。 「ヨロシクってば」 「とりあえず俺らは火影様んとこ行くか」 「ん。今日はゆっくり寝れそうだってば〜スペシャルドリンク飲む前でよかったぁ」 「だな。」 うまく行けば明日の昼間も休みだし〜 ルンルン気分で我が家を後にした。 残されたのは巻物を持って固まったままのカカシと、机に残されたドリンクをやけっぱちに煽るアスマの姿だけだった。 って事で交換したから♪ ウキウキと可愛い孫同然の子供にそう告げられたとき、火影様の時は止まった。 もしかすると一生止まりそうなぐらい驚愕していたかもしれない。 心臓が10呼吸分くらい止まっていたような気がする。 「な・・・・・な・・・・・・・・なんて事をしたんじゃぁぁぁぁぁ」 この二人だからと任せた任務を他の人間に・・・・。 「ああ・・貴重な忍びがまた減ってしまう・・・」←火影様の中ですでに二人は抹殺されたようだ 「や、アスマもカカシ上忍も死んだと決まったわけじゃありませんから」 「お主らにしか任せられぬと判断した任務を他の人間が無事遂行できると思うか?」 火影様はとうてい思えないらしい。 「あのですねぇ。大分買いかぶられているようですが俺たちも一応人間の範疇なんでそう飛びぬけた存在と位置づけしないでくださいませんか」 「じっちゃん。一応先にある程度の手を打ってから任務してるんだぜ俺たち。だからこそあのスピードで終えられるわけ。別に人外に強いって訳じゃないんだからさー」 そこらへんの苦労も理解して欲しいうえに、無条件に難しい任務はこの二人に・・・なんて思って欲しくない。 これは良い機会なのだ。 これであの二人が無事任務を終えて帰ってこれば、ある程度のやっかいな任務なら他の暗部に任せてもいいだろうと3代目は理解してくれるはず。 「じゃあ今回も」 「事前に打った手が発動しているはずですからあの二人でも期限内に任務を遂行できると俺たちは踏んでます」 「そーそー。だからそー怒んなって」 な、じっちゃん。 「しかしお主らあの二人にバラした事はどうするのじゃ」 「んーはぐらかすー」 「適当に丸め込みます」 そんな簡単にいくかっっっと怒鳴りつけようと思ったが、3代目火影様は過去何度かこの二人にはぐらかされ、丸め込まれた経験を思い出した。 この二人ならお手の物なのだろう。 最終手段として記憶の抹消という手もある。 任せておけば間違いなかろう。 と、やはり12才という小さな子供を盲目的に信頼してしまう。過去の実績があるからこそ、なのだが。 「では今からカカシとアスマの任務に行ってくれるのじゃな」 「うん。俺たち二人でいくからさ、他のヤツラは別の任務に回してやって。」 「二人で?大丈夫かのう?数はそれなりと聞いておるが」 ナルトの発言に心配そうな顔をみせた3代目。 「ああ、平気っす。むしろ他のヤツラいるほうがジャマなんで」 しかしシカマルはケロリとなんだか失礼なことを口にした。 「ふぅむ。まぁお主らがそう言うなら。」 自分よりよっぽど忍びの使い方を心得ている二人だからこそ納得し、火影様は残りのメンバー表を取り出しニッコリ微笑んだ。 「ついでに行く前にこやつらをどの任務に当てたほうがいいか考えてもらえぬかのぅ」 「「・・・・・」」 火影様の人使いの荒さは今日も絶好調である。 ちなみにカカシとアスマが無事帰還を果たしたのは期限ギリギリ。 2日後の夜のこと。 ボロボロのずたずたで命からがら帰ってきました状態の二人に、火影様はとても狂喜乱舞したという。 「な?他のやつらにだって出来るだろ?」 「っつー事で次回からもうすこし考えてからこちらに任務を回してくださいね」 負担が軽くなる〜と、ホクホク笑顔の二人はそう火影様に釘をさすと、もう捨てるしかない雑巾状態の熊と変態の姿を視界から追いやり二人で手を繋いで去っていった。 それを呆然と見送っていた雑巾組みは思わず火影様に掴みかかった。←そりゃそうだ 「「いったいあの二人はなんなんですかっっっ」」 襟首を引っ掴まれつつも、年甲斐もなくウインクなんぞしてみせた。 「それは・・・・・ヒミツじゃ♪」 火影様の茶目っ気は年中絶好調である。 《完》 |