恋人になった日
変なヤツがいる。よく国境近くで寝てるヤツ。
こんなトコ誰も来なかったのに。俺の秘密の場所だったのに・・・
いつの間にかやってきて、いつの間にか住み着いていやがった←住んでねぇよ(Byナルト
曰く変なヤツ)
「ああ・・・今日もいるってば」
せっかく朝から読書にやって来たってのに大好きな場所はすでに占領中。
「独占禁止法違反だってばよ」
まったく見当違いなことをボソリと呟き仕方ないので手近な木の上に座りこむ。
「まったくいい迷惑だってば」
奈良シカマルめーっっ
視界の端っこには睡眠に入りかけのシカマルの姿。
「また漁りに行ってやろーっと」
最近のうさばらしは彼の本を偵察スルコトだった。
場所譲ってやってんだからこんくらいトーゼンっだっての。
いつも思うが、この男はイマイチ読めない。
普通読む本の傾向で人となりがわかるのだが…
「忍術書だけじゃなく料理に経営術、囲碁に心理学、さらにはゲームの攻略本・・・あ、
こないだ服飾雑誌も見てたや」
なにこいつ?いったい何考えて生きてんの?
ってなもんだ。
次の本が気になってかなり恒例のナルト的趣味になっている。
「サイクルから考えてそろそろ忍術書だと思うんだよなぁ」
そぉっと覗いてみれば、分厚い、更には古そうな本み手にしたまま彼は寝入っていた。
「ビンゴっ」
内心バンザイをして大喜びしたナルトは次の瞬間あまりの驚きに木の上から落ちそうに
なった。
「ま、まさか」
ジーっと目を凝らしてみればナルトのハイパー級の視力には読み取れてしまった。
「あれは・・・」
俺がずっと探し求めていた本じゃあアーリマセンカァっ
「なんでシカマルが・・・」
なんて思う前に己の欲望のほうが勝った。
すなわち
ストンと木から飛び降り本をそっと持ち上げ・・・熟読し始めたのだった。
ほ、ほんとはパラパラって見てすぐ退散するつもりだったんだってばっっとは後ほどシカ
マルに語った言葉である。
木の葉の里の国境近くに大きな木がある。彼はたまにそこで昼寝をしたり本を読んだりす
る。
今日は本を読みに来たのだがあまりのポカポカ陽気につい夢の世界へと羽ばたいてしまっ
た。
ふいに目が覚めたのはパサリと小さな音を耳に拾った時だった。自分の真横から聞こえる
音は聞き間違えでなければ本をめくる時の紙の音。
チラリと視線だけ動かせば左に誰かが胡座をかいてすわっているのがわかる。
これでも一応木の葉の暗部に属している身。
ついでに言わせて貰えば、その中でもそれなりに強い部類にいるのだ。
普通なら半径数十メートル以内に誰かが来た時点で目が覚める。
それが全くなかったことに驚き、更には真横に座ってるというのに今の今まで気づかな
かった自分に驚愕する。
そんな驚愕を一瞬で押さえ込み、足しか見えない相手に気づかれないように、視線を自分
の手元へと動かせば、今日持って来た本が消えているではないか。
ああ、こいつは勝手に隣に座りこんで勝手に人の本見てやがるのか。
彼はようやく状況を理解した。
カサっとまためくられる紙。
隣の人間は真剣に読んでいるのだろう、その足はピクリとも動かない。
敵意は無い。
どころか気が合うかもしれない。
この本をこのスピードで読めるくらいなら自分と対等に話せるくらいの頭脳はあるのだろ
う。
そんな偉そうなことを思うのは彼の飛び抜けすぎた頭脳のせいだろう。
『過ぎた才能は己に苦痛しか与えない。』
才能ゆえに暗部へと入らざるをえなかった彼は、12才にしてそんな事を悟ってしまっ
た。なんとも生意気ざかりのガキだった。
まぁ危害加えてくるわけでもねぇしこいつが読み終わるまでもう一眠りすか?
・・・・・・いや。寝てる間に帰っちまうかもしんねーな。
せっかくの縁だ。こころゆくまでこの本について語りたいあってみたい。
「なあ」
そう思ったら思わず声が出てしまった。
「わっ!」
思ったより若い声が返ってきた。
いや若すぎるだろこれは
「ってお前かよ」
「脅かすなってばよシカマル」
隣で人の本を読んでいたのはチョー知り合いだった。
「お前勝手に人のもん読んでんなよ・・・ナルト」
うずまきナルト。
ルーキー1のダメ忍者。
体力バカ。
金の髪と青の瞳の彼は何故か誰も気がつかないが整った顔立ちをしている。
将来美形決定だろうとシカマルはひそかに思っている。
誰に言っても鼻で笑われるだろうから言った事はないが。
「ち、ちがうってば。パラパラーってしてただけで・・・いつから起きてたってば」
「さっき。お前があんまり真剣に読んでたから寝直そうかと思ったんだけどよ」
「べつに真剣ってわけじゃ・・・」
そんな不服気な言葉をさえぎり、シカマルは本を指差してみせた。
「それについて討論したかったんだよなー」
「え?シカマルこれ読み終わったってば?」
「ああ。一応。まだ理解しきれてねーとこがいくつかあるけど」
サラリと返せばナルトは目を輝かせた。
「すげぇっシカマルすげってば。これ風の忍術書じゃん。読解したうえに理解までっ更に
は討論っっ」
うわぁ。
心底感動しているらしきナルトにシカマルはニヤリと笑ってみせた。
「よくそれが風の里の書物だってわかったな。ドベのうずまきナルトくん」
「あ・・・」
「はい、シカマル。例の本」
「さんきゅ」
二度目の会合はあれから3日後だった。
なにせ互いに下忍の任務がある。
シカマルは暗部のほうにもお仕事があるし、ナルトもどうやらそれなりに力があるような
ので、自分のように密かに上の任務をこなしているのだろうと見当つけていたシカマル。
そして実際そうであった。
前回、それとなく尋ねてみれば意外に簡単に語られてしまった。
「俺?俺は名家の護衛してるんだってば」
ケロリと任務内容を述べてしまうのはきっと火影から大丈夫だと判断した相手には言って
もいいと許可が出ているのだろう。
でなければ忍びたるものおいそれと任務について口にしまい。
だからナルトもシカマルの任務について、あえて尋ねたりはしなかった。
ただ、多分お互いに「こいつできるなっ」みたい事を思ったのは確かであり、さらにはそ
の後、いろいろ聞きたいことをすっとばして本について語り合ったりしたらあっという間
に夜になってしまったのだ。
「しっかしまさかあれが2巻だったとは・・・驚いた驚いた」
そりゃいくら読んでも理解しきれねーわけだ。と頭をかいたシカマルにナルトは呆れた顔
をした。
「むしろ1巻読まずにあそこまで理解できたシカマルに俺は驚いたってば。」
それを知った時は思わず恥ずかしいくらいに叫んでしまったほどだ。
「っつーかお前が1巻持ってたのにも驚いたけどな」
「ん、前なんかの任務ん時に手に入れたから。そんで2巻があるって聞いてずっと探して
たんだってば。」
次回1巻を貸す約束をして2巻を借りていったナルトはホクホク顔で先ほどシカマルに返
した風の書物2巻をなでてみせる。
1巻はさっき渡した瞬間からシカマルが読み始めている。
このスピードで読みながら自分と会話をするのだからすごいもんだとナルトは苦笑してし
まう。
邪魔をしないようにとナルトはもう一冊持参してきた別の忍術書を開き、集中し始めた。
パタン。
裏表紙を閉じた瞬間太陽が大分傾き始めているのにシカマルは気が付いた。
「うわ、もう3時かよ。昼飯くいっぱぐれた」
時計を見てつぶやいて、それからようやく思い出した。
「・・・・ってナルト。わりい。すっかり忘れてた」
この本を持ってきてくれた相手。
そして珍しく本気で自分と語り合える、自分と同じ年の相手。下忍任務で見るときより
よっぽど柔らかな笑顔をみせられたとき、シカマルは不覚にも見惚れてしまった。
ああ、こいつこんなに綺麗な笑い方出来るんだ。
その笑みを自分に見せてくれた事が嬉しくて、思い出すたびにほくそえんでしまったり。
そんなきっと初めて出来た興味の対象の彼をすっかり放り出して本に夢中になっちまうな
んて・・・。
などとちょっぴり後悔していたシカマルは次の瞬間脱力した。
「おーいナルト?聞こえるかぁぁ」
「・・・」
無視である。隣で寝転がりながら彼もまた読書中であった。
パタン
「・・・・あーよく読んだ。ってあれ?シカマルどうしたってば」
「や、なんっつーか・・・」
思った以上にこれは・・・・・・・・・・・
「気が合うかもしんねーな俺ら」
「は?」
またもや結局彼らは読書の成果について語り合い、あっという間に夜を迎えてしまった。
名残惜しげに別れを告げようと思ったシカマルは気遣わしげなナルトの視線とであった。
「シカマル忙しそうだけどちゃんと休めてるってば?遅くまでごめんってばよ」
「ああ、まぁ適当にやってっからな。むしろかなりリフレッシュしたから気にすんな。」
たかが3日である程度シカマルの状態を掴んでしまったナルトに内心舌をまきつつも軽く
肩をすくめてみせる。
「ならよかった。すっげー楽しかったってばありがとー。」
「こっちこそ楽しかったぜ。で、次なんだけどよ」
「は?」
「はってなんだよ?明後日の夕方ってあいてるか?」
「え?」
「え、じゃなくて明後日。」
「えっと。明後日の夕方は・・・・あ、駄目だってば」
「じゃあ5日後は?」
「んーと・・・・。あ、一日大丈夫。」
「俺は夜に任務入ってんだよなー。まぁいっか。じゃあ5日後の朝ここに集合な」
そういったシカマルにナルトは困ったように首をかしげた。
「・・・なんで?」
「なんでって。」
シカマルもあれ?と思う。
なんで約束してんだ?
今回は本を借りるから約束したんだよな。
だがシカマルには次も会うのが自然な気がして、いつもならめんどくさいと思うはずなの
に自分から誘ったりしているのだ。
「まだこないだお前がこっそり俺の本を読んでいた理由を聞いてなかったからな」
とってつけたような理由を口にした瞬間、シカマルは納得した。
そうだ、これを聞かなきゃならなかったな。やっぱりまた会わなきゃなんねーじゃねー
か。
「別に一日かけて語るような深い理由は無いってばよ」
そういうナルトにシカマルは眉をよせた。
「めんどくせぇなー。いいから5日後またここでなっ」
言い捨てるとさっさと去ってゆく。
その背を眺めていたナルトは首を傾げながらそっと反論をつぶやいた。
「・・・・・朝から来るほうがめんどくさいと思うんですけど・・シカマルくんやー」
5日後。あらまし(冒頭のあれ)を説明されたシカマルは溜息をついた。
カムフラージュに適当な本を持ってきたりしたのは確かだが本当はその下で禁術書を読ん
でたりしたのだ。
まさかアレを読んでると信じ込まれてしまうとは・・・。
かなり恥ずかしいかもしれない。
たまに母親の愛読書である恋愛小説まで紛れ込ませていたのだから・・・←これが一番恥
かも
「そういやシカマル前に読んでた料理の本の中で一番使えそうなの貸してくんね?」
「・・・」
期待したようなその顔にワリィ実は読んでねーんだ、なんてとても言えず
「今度な」
と、思わず承諾してしまった。ああ・・・帰って読み漁らなきゃなんねぇじゃねぇか。め
んどくせぇ。
「しっかしなぁ。まさかシカマルが2巻持ってたなんて・・・」
誤算すぎる。とナルトは眉をよせた。
「先月親父が土産にな」
「・・・羨ましいってば」
「そんで外にはこんな面白しれーもんが沢山あるんだなぁと感動ひとしおってわけで」
「ああ、それであの準備?」
「・・・・そこまで知ってラッシャイマシタか」
「知ってましたってばよ。」
ニッコリ微笑んで見せたナルトはシカマルの背後の草むらに視線を向けた。
あそこにはシカマルが以前からちょこっとずつ用意している旅の荷物がある。
本当に少しずつなのだが、それでもそろそろ十分な量になっているはずだ。
最初に見たときは本気で「シカマルまさかここに住む気だってば!?」とびびったが、そ
のうちリュックが用意され、寝袋が容易され、携帯用の食料が用意されたときには「あー
そっか」と思ったものだ。
「だからここに最近来てたってば?」
「あー、まぁカムフラージュにはなんだろ?いつものごとく森へ居眠りこきにきた旧家の
息子が突然なぞの失踪!」
まぁ事件だと思ってくれねーかなぁ。とは希望である。
抜忍になってしまえば家族に迷惑がかかる。いくら全てがめんどくさくなって、生きる意
味も見つからず、里の外の沢山の書物に心惹かれた(←最大の理由か?)といってもやっ
て良いことと悪いことの区別くらいシカマルはついている。
「そういやシカマルって結構狙われてるもんな。それって奈良家っていうよりその頭脳の
せいっぽい?」
「あー。マジめんどくせぇから。」
「だよなぁ。このままじゃ普通に奈良の家にも迷惑かかりそうだし?まぁ抜けても迷惑か
かりまくりだけど」
「・・・・うまぁく丸めこんでくださいませんかねぇナルトさん?」
「ごめんなぁ俺も抜ける気満々なんだってば。むしろ便乗狙ってるんですけど?」
「はぁぁ?マジかよ?やっぱあれか?狐?里のバカどもがうぜぇ?」
「っつーか・・・・霧隠れにあるっていう銘酒『隠れ香』が飲んでみたいし、その付近の
遺跡に眠ってるっつー文献もすっげーーーーーーーーーー漁ってみたいし・・。なんって
いうかかなり誘惑?」
いっそ木の葉が嫌いになったからとか言ってくれたほうがマシなくらい自分勝手な動機で
ある。
いや、むしろそれを口にしないというのはそれだけナルトの心が強く、潔いからに他なら
ないのだが、それにしても・・・。
目をキラキラ輝かせるナルトはきっと第二の未来を夢見ているのだろう。
おいしいお酒と、大好きな書物。幸せの絶頂である。
「のった!!!っつか酒も本も仲間にいれろやっ。ぜってー足手まといにならねーって誓
うから連れてけっっ」
シカマルもまた珍しいことに激しく興奮中だった。
「ふっふっふーシカマルならそう言ってくれると思ってたってばよ〜。」
二人手と手を取り合いそれから互いに振り回しあった。←激しい興奮を分かち合い中(笑)
「お、いいこと考えついたぜ」
「ん?」
「やー抜ける理由いるかなぁって思ってよ。お前と一緒ならあれだろ?」
「あれ?」
なんだってば?ってか抜けるのに理由必要?
「お前だって火影様に一言言っておきたいだろ?あの人お前に罪悪感感じてそーだし
よ。」
「う・・そういえば」
ナルトが抜ければ間違いなく3代目は己を責めることだろう。自分の不甲斐なさのせいで
ナルトを里抜けするほど追い詰めてしまったと激しく嘆くことだろう。
(うわーそこまで考えてなかった・・・)
それを見て取ったシカマルはニヤリと笑うと真剣な目で提案した。
「ッつーことでだ。『駆け落ち』ってことにしよう」
「は!!!!?」
決行は早かった。
なんと言っても行動派のナルトとすでに酒と本に目がくらんでいるシカマルはすぐにでも
行きたい気持ちを抑えて、なんとか準備万端ととのった10日後の真ッ昼間に行動を開始
した。←早すぎだろう
「一応じっちゃんに手紙残してきたけど・・・シカーまだだってば?」
「ちょっと待て。最終確認中だ。・・・・認めてもらえないのは重々承知しているので告
げぬまま出ていきます。今まで育ててくれてありがとうございました。」
ってなもんか?親に手紙なんざ書いた事などないからなんだか気恥ずかしい。まーこれで
親父達は俺が「うずまきナルトと恋人」だからここにはいられないと思ったと判断してく
れるだろう。
なにせ「うずまきナルト」である。
男、ってだけでも大問題だというのに、狐を腹に抱えているのだ。さらには自分と同じく
暗部所属。
問題しか無いではないか。
そんなナルトと里抜けしようってんだから俺もめんどくさいことをしようとしてるよ
なぁ。
わかっちゃいるが。
ナルトの素の顔と出会ってまだそんなにたっていないのに、すでに離れがたい。
ナルトが残ると言い張ったらシカマルももしかするとナルトの傍に居るために木の葉の里
に残ろうと思うかもしれない。
そこまですでに執着していた。そんな自分を恐ろしく感じるものの、楽しくすらある。
昨日の夜この手紙を書いてるとき、本当にナルトが自分の恋人のような気がして気恥ずか
しくなってしまったのを思い出し、シカマルは頬を染めた。
だから気づかなかったのだと思う。
っつーかそう思いたい。
まさか自分の背後にナルト以外の人間が立っていたなんて・・・・・。
「ん。まあまあの出来だな。」
「んあ!?」
「っつーか勝手に人を無理解人に仕立て上げるのはどうかと思うぞバカ息子」
シカマルの手元の手紙を真剣に読んでいたナルトはその声にビクリと反応し、シカマルに
しがみついた。
頼られているようでちょっと気分がいい。
いや、それよりなんでお前親父の気配に気づかなかったんだっ。見張りの意味がねーだ
ろっ。
目配せをすれば。
だってシカマルと気配がそっくりで安心しちゃったってば・・・それになんか俺すっげー
緊張してたし、集中力なかったってば・・・。
などと可愛い(←メロメロかお前?)ことをナルトは囁いた。
そのナルトは俺、がんばるってばっっとギュっとシカマルの服を握り締めると、そっとシ
カマルの影から顔をのぞかせ。
何を言うかと思えば―――――
「しっシカマルの父ちゃんっ?あっあのっ俺達アイシアッテルんです」
ものごっつ胡散臭いカタカナ言葉。お前理解してないだろ?的発言にシカマルは目の前が
真っ白になった。
だめだ、この計画は実行前から倒れている・・・。
だめだこいつ・・・。暗殺は得意なくせにこーゆー系はダメなのかよ。こりゃ諜報には
ぜってー使えねぇな。
そんな場合じゃないのに思考は目の前の少年の使い道について進んでいく。
とすると、当然色も不可。ってか当たり前だっ。
って事はやっぱ無難に暗殺か。回復、処理班、あとはー解析?
おー有りだな。二人で解析班に勤めるのってサイコーかもしんねぇ。って火影様許してく
んねぇって。暗殺部の稼ぎ頭二人も抜けたら里やべぇよなぁ。
・・・って里抜けするよかよっぽとマシか。
「おーいシカ。シカマル。戻ってこーい」
「・・・・・は。俺今飛んでた?」
「すっげー現実逃避かましたのはよくわかったけど俺のがんばり無視しないでくん
ねー?」
「や、あまりに使えなさ過ぎて頭真っ白になったっつーの。」
色任務には向いてないと分かってある意味ホッとしたが。
未だクラクラする頭を抑えげっそり答えればナルトはムッと唇をとがらせた。
「ちげーもんっ。俺シカのこと好きだし、シカは俺のこと好きなんだから愛し合ってん
のっ。おっちゃん分かった!?だから駆け落ちすんだってばっっ」
おいおいごり押しかよ。そんな子供の癇癪みてぇに言ってどーすんだ。っつかやべ。けっ
こう嬉しいかもしんねー。
「そうかそうか二人がなぁ愛し合ってるってか。」
だがしかし父はナルトの言葉にニヤリと笑った。と、次の瞬間大きな声で玄関へ向かって
報告した。
「かあちゃんっシカに恋人ができたぞっめでてーから今夜は祝いだっ」
「ちょっ・・・」
「まてぇぇぇ」
ウソダロぉ
「あらあら。驚いたわね。それは赤飯炊かなきゃね。」
「しかもナルトだぞっ。可愛いぞっ」
「まぁホント。そこらの女の子もはだしで逃げ出しちゃうわねー。」
本気だろうか?本気でこの夫婦は言ってるのだろうか?二人は顔を見合わせ首を傾げあっ
た。
「しかも駆け落ちしようとしてやがったんだぜ。このマセガキが」
「それは大恋愛だねぇ。ちょっとシカ。同性だからってあたし達は怒ったりしないわよ」
「むしろ大賛成だな」
うむうむ。と夫婦はうなづきあう。
反対してくれ。むしろ猛烈に反対してくれてよかったのに・・。
なぜ・・・。面白いからか?
そうなのか!?
両親の気性を他人よりよぉぉぉぉく理解しているシカマルにはそうとしか考えられなかっ
た。
「・・・お・・俺ってば・・・あの・・・ごめんシカマル。今日は一旦帰るってば。駆け
落ちはまた今度・・・」
混乱が絶頂まで達したのだろう。
ナルトは逃げに入った。
「・・・・・逃がすかっての」
それを見逃してくれるほど相方は優しかぁ無いっ。
「だって俺、こういう訳分かんないの苦手なんだってばーー」
「俺だって苦手だっつーの。」
「シカマルの両親じゃんかっ。なんとかしろっての」
「出来たら俺も苦労しねーよ」
そうだろうとも。この両親から何故このシカマルが生まれたのか激しく疑問を感じてし
まったナルトだった。
「それにしてもナルト君とくっついてくれてよかったわよホント」
「は?」
「なんでだってば」
「んぁ?まぁこのバカ息子がすべてに興味なくして里抜けるよりかよっぽどマシだろ」
「そろそろ危険っぽかったもんねぇ。ナルト君がいてくれれば安泰だね」
父と母はサラリと衝撃的な言葉を口にした。
「・・・ばれてんじゃん」
「・・・・・・・・・・・・・」
ボソリと隣で呟かれた言葉にシカマルは頭を抱えて苦悩した。
「でもシカマルの父ちゃん。俺ってば別にコイビトじゃないってばよ?」
「あん?ここに書いてあるじゃねーか」
「違うもんっ。ただその方が都合がいいからって書いただけだってば。シカマルは本当は
おっちゃん達が思ってた見たいに里抜けが目的だったんだってばーーー」
めっさバラしてくれましたなナルトくん。
お前一人で逃げる気だろ・・・。
恨めしげな視線を向けるシカマルをきっぱり無視してぷくぅと頬を膨らまし抗議の声をあ
げたナルトにシカクはポリッと頬を掻いた。
「ったく、めんどせー奴らだな。まあいいじゃねーかオマエラ今から恋人同士なっ。そし
たら二人とも抜けねーんだろ?」
けってーいと決め付けた大人が一名。
意外とツボをついた意見である。
確かにすでに互いは絶対の存在となってしまっている二人。
片方が抜けないと言ったらもう片方も残ること必至。
「だ・・・第三者に決定されたってば・・・」
「あー」
クソ親父に勝手に決められるのはむかつく。
だがしかし、シカマルは考えてみた。
自分以外の人間がナルトの傍にいたら?・・・めんどくせぇけどむかつく。
ナルト以外の人間とずっと一緒にいたいか?・・・めんどくせぇ。
じゃあナルトとだったら?
・・・・めんどくせぇけど・・・・・有り、だな。
「シカマルもほらっなんか言えってば」
「あー、婚姻届は無理だからとりあえずさっさとうちに籍いれとくか?」
男同士ならそうすんだろ?
「し・・しか!?」
何言ってんだってばっっ
「バァか。そんなんナルトが火影になるまで待てよ。」
そしたら火影権限で同姓の婚姻も可能にしてくれるだろうしよ。ニヤリと笑う父。
「あーなげぇなー。めんどくせぇけどナルト。20才までには籍いれれるようさっさと火
影になって改革しろよ」
「ってシカマルっっそーゆー問題じゃなくてっ」
「んだよ?なんか不満か?ちゃんと補佐はしてやるぜ?めんどくせーけどな」
「ちがうってばっ。シカマルはともかく、シカマルのとーちゃん達なんて俺の事なんにも
知らないのにそんな気軽にいいのかってば」
「あ?ナルトのことだぁ?お前がじつは暗部やってる狐っ子ってことか?」
サラリとなんだか木の葉1重要なことを言われた気がする。
暗部やってる。
狐持ち。
さらには男。
そんな三重苦を分かっていながらの先ほどの発言ですかいっ親父さんっっ。
「うっわ。嫌なハショリ方っ」
「まちがっちゃいねーだろ」
「あら、ナルトくんったら暗部やってるの?やったねシカマルお揃いじゃないの」
「・・や、お揃いって・・。確かにそーだけど・・なんか違う・・・」
っつーか母ちゃんご存知でしたのデスカ。なんでもかんでも知ってる両親に泣きたくなっ
てきたシカマル。
もっと早く言ってくれれば気楽に生きていけた・・・・かもしれないのに。←言い切れな
い(笑)
「お前は俺が誰かしってっかナルト?」
「カヤ。」
結構前から組んでたのに全然気づかなかったが・・。と、悔しそうにボソリと呟いたナル
トに満足そうにシカマルは頷く。
「そ、そんでお前がその相棒ミヤ。公私共に俺らは相棒になるってわけだ。結構よく
ね?」
「相棒は恋人とは違うってば・・・」
「あんま深く考えんなって。ただずーーっと一緒にいるってことだろ。一緒にメシくっ
て。一緒に任務やって。一緒の家に帰ってきて、一緒に本読んだり新しい技編み出した
り。」
次々出てくる未来図にナルトはドキドキしてきた。
「・・それ・・・すっげ良いってば」
「だろ?」
なんて幸せな未来だろうか。
気が合うシカマルとずっといられて、本について語ったり、ごろごろしたり、暗号解読し
たり・・・・。←丸め込まれ中
溢れ出す未来への希望がとめられない。
「ってことで。これからよろしくな」
ニヤリ笑いながらと差し出された手のひら。
いいのかな?そんな事夢見ちゃって・・。
いいのかな?シカマル後悔しない?
おっちゃんも、おばちゃんも後悔しない?
見つめた3対の瞳はどれも優しくて、しっかり頷いてくれたから。
ナルトはドキドキしながらそっと握り返した。
「えっと・・・ヨロシクお願いしますってば」←丸め込み成功(笑)
彼らが恋人になった日。
ナルトが生まれて初めて未来を楽しみだと・・・誰かと一緒にいる明日を楽しみだと感じ
た日であり、
さらにはシカマルが生まれて初めて恋心を自覚した日でもあった。
後悔はしない。だって君と一緒だから
おしまい
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