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      4番隊の月と雲
         〜腹出たおっさん木の葉も揺るがす 1〜
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先日。
噂の4番隊は大きな大きな任務を遂行した。

1番隊の最大戦力を注いであっさり全滅の危機に陥ってしまったその時。

たった2つの班を増援に送っただけで、その危機を救出してしまったのだ。

1番隊の隊員はとっても感謝をし、
1番隊の班長は内心とっても業腹だったらしい。

「たかが巻物の奪還1つ出来ないとは情けないっっっっ」

隊長はプリップリと救護室で寝込む隊員たちに怒鳴りつけた。
医療班の班員はそれにいやーな顔をし、隊員たちはいつもの事と聞き流す。

そこへ

「おや1番隊の隊長ではありませんか。」
「ん・・・・・ああ、君か」

よいしょと救護室の扉をくぐってきたのはまだ若い青年2人組。
噂の4番隊の隊長と副隊長であった。


「怪我はどうです?すぐに復帰できそうですか?皆さん優秀な方ばかりだから一
日も早い復帰を火影様も待ち望んでいらっしゃいますよ。」

にこやかに1番隊の隊長に話しかけたのは流雲。
それから

「隊長ももしや激励に?そうですよね。彼らでなければこの任務生きて帰ってな
んてこれませんでしたから当然ですよね。」

首をかしげキョトンと見あげたのは光月。

2人とも心から言っているように見える。
実際のところ本音がすなわち皮肉になるといった素敵な話なだけだが。



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      4番隊の月と雲
         〜腹出たおっさん木の葉も揺るがす 2〜
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だいたいこの隊長。
何をとち狂ったのか巻物奪還に戦力つぎ込んでおきながら、情報収集には全くて
をつけてない。
普通は自分の隊の情報収集が得意なものか、専門の人間に頼んだりする。

それをこの隊長
『●●って所に居る、●●って人間から明後日までに●●って巻物を取ってこい
。』
それだけいって暗部たちを送り出したそうだ。

はっはっはー。
ありえねぇ。

だいたい期限も本当は来月まで大丈夫だというのにさっさと終わらしてもらおう
と焦らせたり。
戦力つぎ込めば何でも片付くと思ってるのがありありなこの行動にあきれ返った
のは後で尻拭いをすることなった自分たちだ。


1番隊の隊員たちはあきれ返るよりも青ざめた事だろう。


かなりの上質の暗部たちが全滅の危機に陥っているという情報を手にしてしまい
ナルトは慌てた。



いかん。このままじゃあのバカ親父にこの里つぶされるっっっ。



直ちにナルトは自己判断で自分の隊の回復重視の班と援護重視(幻術とかが得意)
な班を向かわせ仲間の救出を第一。
余裕があれば任務遂行と言い渡し送り出した。
その後で火影様の下へと駆け込んだのだ。



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      4番隊の月と雲
         〜腹出たおっさん木の葉も揺るがす 3〜
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「あの親父ぶっころぉぉぉぉすっっっ」

「これナルト何を騒いでおる。」

「あの親父ぜってぇぇ暗部つぶす気だ。そんでもってゆくゆくは木の葉もつぶす
気に決まってるってばよーーーー」

「・・・気持ちは解らなくはねぇけどな。少しは落ち着けよナルト」
「だってだってーーーー」

微笑ましい子供たちの掛け合いに笑っていた火影様は1番隊の状況を聞き顔を一
揆に引きつらせた。


「い・・一番隊の1から5班は全滅寸前・・・じゃと?」

「悪いけど勝手に4番隊送り込んだから、適当に後で書類作ってくれってばよ」

「あい、わかった。して、今の状況は?」

「一応はりつかせてある影分身からは8割方生存者確認。巻物はまだ手に入れて
ない。」
「8割・・・本当か?」
「ああ、瀕死だらけだけどな。」

火影様は溜息をついた。
ナルトはこんな事で嘘をついたりしない。本当に全滅寸前だったということだろ
う。


「もう一班向かわせるか?」
「そこが悩みどころだってばよ。今空いてるのって戦力メインのばっかだから」

「少しは使えないのか?」
「まだ要修行って感じだなぁ。一応幻術で煙にまいて敵が去ってからこっちに連
れて帰ってもらう予定なんだけど・・・」

「火影様、他の隊で医療忍術を使える班は?」

そこに行ってもらえば・・と淡い期待を抱いたシカマルの言葉はあっさり打ち砕
かれた。


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      4番隊の月と雲
         〜腹出たおっさん木の葉も揺るがす 4〜
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「班は無い。1つの隊に数名使えるものがいるのが今の暗部の普通じゃの」
「使えねぇぇぇ」
頭を抱えたナルトは
「ああもうっっ仕方ねーーシカっっ行くってばよ」
「ええーマジかよ。めんどくせぇ」

「前にシカが作ってた試作品試すチャンスだってばよ」
「いいのか?どんな副作用が出るかわからないんだぜ」
「死ぬよりかマシだってば。」

さらりと他人事だから言える言葉である。

「へっそうとくりゃー。荷物まとめてくる。早く準備しろよナルトも」
生き生きとシカマルが動き出す。

「おお。やる気だなシカってば」
「・・・お主ら・・・・頼むから頼むから変な事はしないでくれっっ」
「うーん。じっちゃん。ま、ほぼ完璧に近いシカの薬は今回必須だってば。ホン
トいうとうちの隊のヤツラにも持っていかせたかったんだけど、もしものときに
対処できないじゃん?」
「その薬とは?」
「増血と体力回復の兵糧丸」
有りそうで実のところまだ開発できていない兵糧丸である。

これが完成すればこの先とっても役立つことであろう。

「成功を心から祈っておるよ。」
それを知っているから火影様は真摯な口調でそう呟いた。


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      4番隊の月と雲
         〜腹出たおっさん木の葉も揺るがす 5〜
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そうして生き残ったのが彼等なわけだ。



「副作用が心配だからなー」
と毎日顔を出す4番隊の隊長&副隊長に隊員達は心から感謝していた。
彼等が居なければ自分たちは間違いなく命を落としていただろう。
援護といい、兵糧丸といい。

「便利だろー医療忍術」
ニッと笑ったのは隊長と共に見舞いに来てくれたらしい4番隊の隊員たち。
まさか1班全員が医療忍術を使えるなんて。
驚くしかない。

しかもその全員が攻撃力を主として暗部に入隊したはずだというのに。
だいたい医療忍術なんてものこの救護班以外で使う人間なんて初めて見たのだ。
強さが全ての暗部には必要ない・・・・それが隊長の言葉。
賛同まではしないが、心の奥底で多分同意をしていた自分たち。

それが根底から覆された。そんな気分だった。

「うちの隊長と副隊長殿はよー戦力も重視してるけどちょっとでも回復できれば尚良しっ
て人間なんだよなー」
「そーそー。大体考えりゃわかるよな。回復する敵ほどやっかいなもんはいねーってさ」
「ま、暗部に入るとそういうアタリマエのことを忘れやすくなるっつーわけだ。」
「お前等も4番隊が完成した後の事件でよかったよなー。」

おかげで助かったし?

彼等は自分らの隊長達を自慢しまくると最後に
「うちの隊で医療忍術を全く使えねーヤツって1人もいねーんだぜ。」
そんな爆弾発言を落としてじゃーなーと去っていった。


4番隊って何なんだ?



おしまい