そろそろ排除しようかと思うんだけどさー 

フと思いついたから言ってみた言葉に 
「へぇ。良いんじゃね?」
主語も聞く前に肯定して下さった相方。

「いい加減目障りだしな」
ああ、主語無しでも察してくれるこいつが嬉しい。
しみじみ思う。 
なんだか気分が良くなって

「じゃ、やるかっ」

満面に笑みをたたえて言えば

「だな」
めんどくさがり屋の相方にニヤッと笑い返された。 

     ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 
 4番隊の月と雲 〜おっさん排除大作戦 1〜 
          ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「最近の暗部の質を見つめなおしたい」

そんな表向きで、全員の身体能力を調べようと言い出したのは4番隊の隊長だった。
表向きというだけあってもちろん裏はある。
むしろ裏がメインである。

「ふむ。暗部の質とは?」
どうやって調べるつもりじゃ?
火影様は興味深気に聞き返した。

「そうだなぁ。暗部っていうのはさ。一応上忍以外もいるじゃんか?俺みたいな下忍なり
たてとか。イルカ先生みたいな万年中忍とか。たぶん知られていないだけで他にもたくさ
んいると思うんだよな。」

隊長としてこの場にはいる物の、他に人がいないだけあって彼の口調も砕けている。
それを火影様がどう思うかと言えば

『です、ます口調なんて寂しいじゃないかっっ』
なんて孫馬鹿な考え方を持っていたりするので他人の目がないとガラリと光月は口調をい
つも通りに戻してしまう。




     ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 
 4番隊の月と雲 〜おっさん排除大作戦 2〜 
          ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「で?」
「うん。で、そういう人間って確かにスカウトされただけあって強いけど、上忍での精神
的に辛いこととか経験しないまま暗部入ったりして精神負けしたり・・とか無くも無いわ
け。」
「ああ。なるほど。」
「そういう精神のチェックとかも兼ねながら、体力測定とかしていく。」
「ふむ。」

確かに大切かもしれぬのぉ。

「・・・なぁんて表向きの口実を使ってぇ」
「は?」
「全隊長にももちろん参加していただきましてぇ、隊長に関してだけは結果を張り出そう
かと思うのですよー」
「なにゆえ?」
「え?だって隊長ってのは隊の頭じゃん?やっぱ使える人材がなるものだし。そりゃー体
力測定でも素敵な結果で隊員達を楽しませてくれるはず♪ちなみにあんまりにも酷かった
ら・・・・火影様解っておられますよね?」

いきなりの敬語に火影様はビクッとなった。

「たとえば。暗部の隊長のくせに、下忍程度の能力しかなかったり。暗部の隊長のくせに
精神的に笑えるほど弱かったり・・・。ねぇ火影様。そんな人間をそのまま在籍なんてあ
りえなくないでしょうか?たとえ大昔。太古の昔に役

立ったかもしれなくてもですねぇ」

太古とは言いすぎだろうがそれくらいの過去であると言いたいわけだ。

「しかしっ」
「後身に道を譲るのはご年配の仕事です。デンって居座っていたら育つ人間も育たないで
すよ?お分かりですよね?」

つい先日の1番隊の危機。あれを思い出せや、と光月の瞳は語っていた。




     ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 
 4番隊の月と雲 〜おっさん排除大作戦 3〜 
          ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「また、あんな事になったときにうちの隊で尻拭いしろと言われてももうしませんよ?」
「そんなっっ」
「そんなじゃありません。すべての責任はその隊の隊長が取るべきなのです。なのにあの
おっさんどーしました?」
「・・・」
「俺にお礼はありませんでした。かろうじて命をとりとめた隊員達には謝罪どころか『無
能め』と怒鳴りつけてました。はい、ご感想は?」
「・・・・そこまで・・・酷いのか?」

火影様。
いまさらな事を聞かないで欲しいんですけどねー。

「無能なのはあのおっさんらです。いっそ闇夜に乗じて抹殺したほうが早いのでは?雲と
空と三人で真剣に語り合ったのは過去数十回に上ります。」
恐ろしい話である。

2人の子供だけではなく、温厚が服を着て歩いているとしか思えないあの空までもがその
話に乗っているという事実が。

「うう。しかし」
「しかしもカカシもありません。今の暗部不足の元を正せば使えないおっさんら。あれ消
したらすっげー暗部充実しますよ?」

鶴の一声。
暗部不足に年中悩まされている火影様は飛びつくしかなかった。

そう、目に見える結果が出しまえばあの図太い狸どもも文句言えまい。
まぁ素直に測定してくれるとは思えないが・・・。

「そこはうまくやっておくからさ。」
なんて軽く言ってのけた子供の言葉を信じてしまう自分が情けないと3代目は思う。
何もかも、彼らが考えたシナリオ。
それが無ければ自分は動けないなんてこんなんで里長と言っていいのだろうか?

「じっちゃんはさー。あのおっさんらの功績を知ってるから。でも俺らは知らない。だか
ら簡単に切り捨てられるんだと思う。悩むことないって。」

フォローまでされてしまった。
うむ。そうじゃのう。
そろそろ腹をくくるしかない。
ここまでお膳立てをしてくれているのだから。


三代目火影様は一呼吸すると

「すべてはお主ら三人に任せよう。火影としてワシも測定に参加することにしよう。そう
すれば年齢が云々やつらも文句言えまい。」
その言葉に・・

「マジ!?」
目の前の子供の顔は輝いた。



     ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 
 4番隊の月と雲 〜おっさん排除大作戦 4〜 
          ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「これは何だ?」
「火影様主催の暗部おんりー身体測定のようですね」

首を傾げつつ空は答えた。

「最低基準値を超えれなかった者は暗部から除隊だと?」
「まぁ妥当では?」 

そもそも暗部の特性からして辞める目安がなかなか難しいのだ。
大きな怪我をした時。
精神的に耐えれなくなった時。
が主で。 

歳などで能力が低下した時は頑固に居座り続けるのが恒例と化しているように空は思う。 
いっそ暗部も定年を取り入れるべきだとは光月の言葉。 

(暗部の定年っていくつだろう?)

そう考えだして答えを出すのに難しい事に気がついた三人はこう言う手段に出たわけだ。  

「使えないヤツ強制廃除大作戦ってな」 

別に使えない隊長に限ったわけでなく、暗部というステータスにしがみつくバカ者も中に
はいるわけだ。
そういう奴らをあぶりだすのも目的としている。

まぁ体力測定程度でどこまで炙り出せるかは解らないが。


「ダメなら次の手を考えるだけだしな。」
すでに次の手をいくつも考えているのだろうシカマルが気軽に言えば
「最終手段としては闇夜に乗じて・・も考慮しておいてくれ」
「うわーイルカ先生がどんどん黒くなっていくってばよーー。」

さらっと言われた暗黒な言葉にナルトは冗談半分で叫んだ。
半分は本音だったけれど・・・。

「元からだから安心しろよナルト」
「・・・うう・・シカ・・俺を癒してくれぇ」
「無理だ。俺も今ダメージくらったからな」
イルカのダークな笑顔に痛恨のダメージを食らった子供たち。

それに
「こらこらイチャツイテないで早く懸案を煮詰めるぞ」

「「・・・うぁぁい」」
そうかイチャツイテるように見えたのか、とぐったりしつつナルトとシカマルは良い子の
返事をした。


     ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 
 4番隊の月と雲 〜おっさん排除大作戦 5〜 
          ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「へー・・・おっさんの割にがんばったじゃねぇか」
「俺はむしろ火影様に感動したけどな」
「まさかあのご老体でここまでの数値を弾き出されるとは、さすが火影様だな。」

暗部全員分の測定表を手に3人は感嘆の声をあげた。

火影様が参加すると聞いて逃げるわけにはいかなくなった困ったおっさん達はしぶしぶな
がら参加した。

身体測定でとんでもない数値を出したのは何も火影様ばかりでなく、この場にいる3人も
同様。
周りで一緒に測定していた者たちが思わず拍手を送ってきたほどである。

「山登りにこんなに時間かかってたら意味ねーけどなぁ」
「あの腹の出具合を考慮したら頑張った方じゃねぇ?」
「というか・・まさかクナイ投げ程度であそこまで苦戦するなんて・・俺は情けなさの余
り涙が出そうだったぞ」
副隊長と共に隊長の情けない姿を見てしまったイルカはため息をついた。

「アカデミーレベルだ。クナイ投げだけ見ればサスケのほうがうまいかもしれないな。」
そこまで言っちゃいますかっイルカ先生っっ。
実際にナルトとシカマルは見てはいないものの結果を見る限りあながち誇大報告という訳
でもなさそうだ。

「これはもちろん発表っと。どーかな、微妙なところかも。うまく落ちて5人?」

首を傾げて問うたナルトに
「だな、予想以上に頑張ってくれちまったからな。ま、俺らの横に並べておこうぜ。若者
の力見せ付けてやるってな。」
「それはあの人たちも焦るだろうね。一目瞭然の力量差なんだからな。」

ニヤリとシカマルが提案し、イカルも朗らかな笑顔で同意する。

「ついでに上位の者も張り出しておくか。他の奴らが、自分のと比べて向上心持ってくれ
ればいいしー、あ、空のは張り出し確定だからな」
「え?俺のもか?・・めんどくさい事になりそうでいやなんだが」
「ダメダメ。イルカせんせーはトップ5に軽々食い込んでるんだから。張らない分けには
いかないって」




     ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 
 4番隊の月と雲 〜おっさん排除大作戦 6〜 
          ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



そんな訳で張り出しである。

隊長格と、上位10名の暗部達の測定値。

並べてみせたその紙に火影様は

「世代交代の時期が来たようだのう」

穏やかに穏やかに隊長達に語りかけた。


顔を真っ赤にさせながらもさすがに火影様に八つ当たりするわけにもいかず、張り出して
あった紙を破り捨て去っていったのは5人の隊長達。

自分でも解っていたのだろう。
その場に残っているのはかろうじて、面目はどうにか保てる程度に成績を出せた隊長達。

それでも、同じ隊長である光月はおろか、副隊長やら上位の10名の成績には遠く及ばな
い事に気づいているのは間違いない。
誰も言葉を発せずそそくさとその場を離れていった。


「5人。新しい隊長を選定せねばな・・・」

去ってゆく5つの背中を眺めながら三代目火影様は物寂しいようなホッとしたような気持
ちでポツリと呟いた。





その後1年に一度この測定は行われことになるなんて・・・ひそかに考えている火影様し
か知るよしもなかった。