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 4番隊の月と雲 〜総長って美味しいですか? 前編〜 
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「「総長?」」

なんだそれ?
2人の子供は首をかしげた。


ある日、三代目火影さまはのたまった。

「隊長が5人も抜けてしまって実は困っておるのじゃ。」
今更なこと言うなよジジィっっ
と思っただけでなく口にしたのは光月・・こと、ナルト。

それに三代目は

「いや、ワシは抜けた穴にはポッカリ副隊長が納まれば万事解決、とそう思っておったのじゃ。」
「違うんっすか?」
これにはシカマルも問い返さずにはいられなかった。
今まで隊長の仕事をしていたのは押し付けられていた副隊長である。

面倒以外のどんな仕事もしていなかった隊長が抜けていったい何を困る?

2人の子供はそう思っていたし、ハッキリ言って他の暗部の誰もがそう思っていた。

しかし、現実とはなかなかうまくいかないものなのであろうか。

「副隊長たちはのぅ・・・隊長にはなりたくないと。」
「「はぁぁ?」」

なんでそうなるかな?

「じゃー適当なの隊長にすえて今までどおり副隊長で全権握ればいいじゃん?」
わけが解らないまでも打開策を口にしたナルトに三代目はうむ、と頷いた。

「ワシもそう進言してみた。しかしそれはそれで他の者が納得しなくてのぅ。」
今まであの、あーーのーー最悪迷惑極悪の隊長を上手く面倒見てくれた素敵な副隊長が隊長にならず、
誰が隊長になれようか?

そんな気持ちがいっぱいらしい。

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 4番隊の月と雲 〜総長って美味しいですか? 中編〜 
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「と、言うわけでただいま5つの隊が隊長不在となっておる。」
「・・・もうそのままで良いんじゃないですか?問題なさそーですし。」
めんどくさくなったのだろう。シカマルが投げやりにそう言った。

「ふ。問題ないと思うか?」
「有るんっすか?」

「ほかならぬ副隊長が・・・隊長不在なんぞありえないと。」
「「じゃあお前がなれーーーー!!」」

あんな隊長の下で副隊長なんて長く勤めていたせいか誰もが野心を持たず、それでいて変な方向に頭が固い。
いわゆる海野イルカがたくさんいるような物だろう←そうか?

「という訳で、妥協案が総長なのじゃよ。」
「妥協ねぇ。」
「そもそも総長って今までなんでいなかったんです?」
暗部の隊長の上は火影様に直通だったのが不思議だとシカマルは思う。

「昔はおったのじゃがのぅ。」
「へー。いたんだぁ。やっぱり暗部で一番凄い人がなったの?」
「そうじゃな。誰もが認める暗部の中の暗部。それが総長。一番最後の総長は4代目じゃったよ。」
「へ?」
「火影になる前の話じゃ。」
「でも4代目って若くして火影になったんじゃないっすか?」
若くして総長になってそのまま若くして火影ってどんだけ凄い人だよ。しかもそのまま若くして命を落として・・・
物凄い生き急いでしまった人だよな。なんてシカマルは思う。

「そう。総長を次に渡す前に4代目に就任してそのままあの事件へと入ってしまってのう。」
狐の騒動の前にも立て続けに色々と騒動があり、次に引き継ぐ暇がなかったらしい。
仕方なく4代目は火影と総長の兼任で忍び達を動かしていたという。

「そのまま総長の座は次に継がれることなく絶えてしまった。」
最後に就任した4代目があまりにも凄い人だったから。誰もが総長の座には気後れしてしまったらしい。
あの腹が出たおっさん達も同様だというのだからどれだけのカリスマを発していたのかが伺えるというものだ。


「そんなわけで今、まさに総長という役職が話題にのぼったわけじゃ。」
「なるほどー。それは解ったけどさーわざわざそんなの用意しなくったってあの副隊長たちなら完璧に隊長を
全うできるのに。」
ナルトの知る副隊長達は誰もが人格者で、良くぞ今までこんな掃き溜めに残っていてくれたと涙を流して感謝したいくらいの人たちだ。
だからこそ不思議でならない。

「彼らはデンと表立って命令するより誰かの下に就くのが性にあっているらしい。」
無駄に副隊長らしい人物ばかりが適職についてしまったようだ。

「それゆえに、自分の上に誰かがいないと不安になるようだのう。」

火影様は困った子供たちじゃとでもいう様に微笑すらもらしてみせた。

「えーーあのおっさんが上にいるより安心じゃんかーー」
「というより上には火影様がいるじゃないっすか。」

呆れまくりの子供たちにすら火影様は微笑をみせる。

「まぁ大人の心というのは複雑なものとでも思っておれ。」

もって生まれた性質というものがある。それをいきなり変えろというのは酷の話だ。
歳を食っているだけに火影様はそういう考えかたも理解できる。
しかしナルト達にはまだ難しいのかもしれない。


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 4番隊の月と雲 〜総長って美味しいですか? 後編〜 
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「そーゆうもん?まぁいいんじゃない?それが仮初でもいれば万事解決なわけだし。テキトーに作れば?」
「ばぁかナルト。お前無関係ですむとかホンキで思ってんのか?」

ここに呼ばれてそんな話をされた時点でイヤンな予感は漂っていたのだ。

「思ってないけどさー。でもさすがに俺らにしろとか言わないよなじっちゃん?正直実年齢も若造だし、暗部経験も浅い。
ありえないと思うし。そうなるとあれか?イルカ先生あたりを説得して無理やり総長押し付けてくれーとか?」

「ああ、イルカ先生なら誰もが納得するな。でもあの人が俺らの説得程度でそんなめんどくさい役引き受けるか?」
「・・・難しいなぁ。ってことでじっちゃんイルカ先生の説得はお断りだってばよー。」
「めんどくさいんで右に同じっす。」

朗らかにナルト語で言い切ればシカマルもとっとと便乗する。

「ってことで俺ってば帰るー」
「じゃ火影様しつれいします。」

さくさくっと用件を切り上げて逃げの体勢の二人に

「待たんかっっっっ」
火影様の怒声が響いた。


「解っててそれか。ああ、そうだとも実年齢も暗部経験も赤子に等しいお主らに、総長を渡すなんぞ狂気の沙汰としか思えぬかも
しれぬ。しかし、それが総意というものじゃ。」
「「バカなっっ」」
「ここに5人の副隊長達の署名がある。読んでみよ。」


光月か流雲が総長になるなら隊長やりまーす。

「・・・・よし。流雲まかせたっ」
「おい」
トンとシカマルの肩に手を置いたナルトにシカマルは低い声で怒りを表す。

「さっきナルトの言ったとおり仮初とでも思ってもらえばよい。かるぅく引き受けてみぬか?」
「無理むりっっ」
そんなでっかい肩書きいらんわっっ。
2人の心は一緒だった。

「返事はできれば今週中に。どちらかが総長を引き受けてくれぬ場合はまぁ隊長不在でどうにかまわしてもらうしかないのぅ。」

それも申し訳ないがのぅ。とため息をついてみせた三代目。
何それ心理作戦?
結構効いてるんですけどーーー!!

火影室を退出後、2人はでっかいでっかいため息をついた。

「あのおっさんら追い出したのは確かに俺らだけどよー。」
「だからって俺らにいろいろ押し付けるのは酷いってばよ。」

でも今までものすごーーーく頑張ってくれた副隊長が一番安心できる体制を整えてあげたいとも思うのは二人がなんだかんだ言って
優しいからなのだろう。

「どうする?」
「どうしよー?」

なんだか2人で情けない顔で笑いあってしまった。





おしまい