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 4番隊の月と雲 〜消えた月 1〜 
          ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「まさか」
と思った。
「そんなバカな」
とも思った。

でも現実は覆せない。

暗部に所属する空(そら)という人物は額に手をやり動揺を数秒で押さえ込むと大きく息を吸い込んだ。

「この事態を至急伝えてください。・・・彼らの仲間達に」


シカマルに、彼の相方に。早く。



その日はドンヨリ曇りだった。
任務は三班合同での草むしりというぶっちゃけ勘弁して欲しい、そんなもの。

まー当然のように未だやってこない班が一つ。
「いつもの事よね」
なんて言ったのは幼なじみであり、同班である山中イノである。
誰もが口にしないだけで同じ事を考えているだろう。
シカマルはぶちぶち雑草を引き抜きながら

「あいつも大変だ」
なんて相方の苦労に思いをはせた。



「しっかし3時間たっても気配無しとは」
恐れ入るわ。と紅上忍は肩をすくめた。

「下手したら休みだと思いこんでるかもしれねぇな」

タバコの煙を空へと吐き出し冗談とも言えないことを口にしたのは我らが担任クマ
・・・ではなくアスマ。

「有り得そーな所が嫌なカンジねぇ。どっちにしろ雨も降りそーだし昼には切り上げたほ
うがいいかもしれないわね」
「だなぁ」

雨の中で草むしりなんて最悪パターンだけは回避できそうでその提案は子供達一同、両手
をあげて歓迎である。

その時、フイに感じた気配。シカマルが顔をあげ、数秒おくれて
「誰だっ」
アスマが叫んだ。


「至急の伝言を承っております。」
瞬く間に目の前に現れた細身の男性は黒い装束に身を包んでいた。
識る者が見れば暗部に所属している事が一目で解るそのいで立ち。
「俺に?」
訝しげに問うたアスマに暗部は衝撃の言葉を口にした。

「いえ、この場にいる全員に」
「はぁ?」

サラリと返された返答にアスマは余計に訳がわからなくなる。
しかし

「はたけカカシ率いる7班の消息が昨日より不明です。」
「「「は?」」」
不明って?



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 4番隊の月と雲 〜消えた月 2〜 
          ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「詳しく説明してください」

呆けている暇は無い。とばかりに質問を浴びせたのは担任ではなく1人の生徒。
いつもマイペースな奈良シカマルであった。
担任たちは冷静な教え子の声にハッと我に帰った。


「昨日の任務完了の報告が出ていません」
「あいつの事だからなぁ」

「ええ」
暗部がコクリと頷いた。

なんかあっさり同意しちゃったよこの人ーと思いつつも
「やっぱりカカシ上忍ってほうぼうに迷惑かけてるのね」
イノがずばりと言い切った。
『やっぱり』
ってところがポイントだろう。意外でもなんでもない。むしろ納得の事実ってことだ。

「こちらもそう思っていたのですが」
面倒臭がって報告を後回しにしたらうっかり忘れてた・・・なんてパターン慣れたもんな
のかもしれない。
しかし
「さすがに今朝になっても今日の任務の詳細を聞きに来ないもので」
しかも決定的なのは
昨夜遅くに春野家から連絡が来たらしい

「海野イルカの自宅に」


「は?」

娘の帰りが遅いので担任に連絡・・・したがつながらず。
途方にくれた時アカデミー時代の担任を思いだしたらしい。

「昨夜から調査し、同じく他の三名も行方が解らない事が判明しました。」

おもわず言葉を無くすしかない。

「・・・昨夜から、か」
なるほどタイミングが本当に悪い。いつもなら夜の任務があるから居なくなれば夜か夕方
には気付く。
しかし

「ぐっすり眠りこけてたぞ俺は」
相方の危機に情けない。


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 4番隊の月と雲 〜消えた月 3〜 
          ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「って事は生死も不明ってわけね」
紅の言葉に子供たちの肩がビクリと震えた。

「んなワケっねーよ!」
「し、死ぬなんてそんな・・・」
「信じたくはないが」
キバが叫び、ヒナタが震え、シノが俯く。

可能性が高いのは本当。それを無意識に解っているから。


「生きてるぜ。」


え?と誰もが・・・暗部ですらその声を振り返った。
「少なくともナルトは。ナルトと一緒にいる限りは他の奴らも確実に生きてる。」

どこからそんな自信が?と突っ込みたいほどサラリと気負いなくシカマルが言い切った。

「イルカせんせーは?」
「彼は本日はアカデミーに・・・・いや、もしかすると火影様のところいるかもしれないな。」
「解った。」

暗部の答えに一つ頷くとシカマルはクルリと背を向け歩き出した。

「あーあいつの事は気にすんなよ。なんっつーか。ああいう奴だからな。」
物問いたげな暗部にフォローになっていないフォローをするアスマ。

「なんか解ったのね。」
「そうだね。」

イノとチョージは納得する。
そしてシカマルの言葉に一気に安心を得てしまった。
彼がああ言うということは確実だからだ。

決してその場限りの気休めを言う人間ではないと知っているから。
それはいつも一緒に遊ぶキバやシノも同じこと。


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 4番隊の月と雲 〜消えた月 4〜 
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「ひなた安心していいぜ。シカマルがナルトに関しては保障してくれたからな。」
「おそらく他の三人も共にいるだろうことから全員無事と考えていいだろう。」
「そ・・そうだよね。ナルト君強いから。どんなことがあっても大丈夫だよ・・ね。」

子供たち全員がシカマルの言葉一つでホッと胸をなでおろし、

「大人としてちょっと情けないわよね私たち。」
「んだなぁ。まぁ子供は子供の言葉が一番胸に届くもんだしな。どっちにしろ俺は
シカマルみてぇに言い切る自身はねぇ」
「そうね。」

紅の言葉にアスマは淡々と言い切る。
もし他の子供が言ったならアスマは希望的楽観を口にしてるなーと思っただけだろう。
しかし他ならぬ奈良シカマルがあの言葉を口にした。

「ナルトは確実に生きている、な。」
「なに?アスマも信じているの?」
「信じる?いや、シカマルは非確定要素を口にすることは基本的にありえねぇという
事実から来た俺の予想だ。」
「・・・」

アスマといい、子供たちといい、そこまであっさり信じてしまえるなんて。
シカマルを良く知らない紅には理解できない。
でも、

「理解は出来ないけど・・・生きていて欲しい。そう思ってはいるのよ。とにかく私と
アスマは火影様のところへ伺うから、あなたたちは今日は解散。状況がつかめ次第また
連絡するから各自鍛錬に励むこと。あともし、本当にもし、集団誘拐の可能性も無くはないから、
決して1人での行動はしないこと。いいわね?」

子供たちが各々頷くのを見て、紅はのんびりタバコをふかすアスマを引っ張って去っていった。

残された暗部はそれらのやり取りを最後まで眺め、それからシカマルが向かった可能性のある
アカデミーのほうへと足を向けた。



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 4番隊の月と雲 〜消えた月 5〜 
          ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

シカマルはあの後アカデミーに向かわず火影宅へと直で来ていた。
どうせすぐにアスマ達も来るのだろうからさっさと先に情報だけ仕入れておこうと思ったのだ。

「空さんも中にいるか?」
「あ、流雲さん。はい、空さんでしたら部屋で3代目とお話を。」
「あんがと。」
「なにか重要な話のようでしたが」
「大丈夫だありがとう。」
「そうですか。」

今は中に入れないかもしれないと親切に伝えてくれた暗部に流雲(シカマル)はもう一度礼を口にする。
コンコンと扉を叩いて名を名乗れば即座に入室の許可がおりた。

「しっつれーしまーす。3代目ーうちのバカが班員ともども消えうせたってー?」
「物凄い言いざまだのぅ流雲。」
「そーっすか?」
「クモ・・」
まさか開口一番そんなノンキな言葉を聞くことになるとは夢にも思っていなかった暗部仕様のイルカに、
同じく暗部仕様のシカマルは軽く頭を下げた。

「俺らに連絡するよう伝えてくれたのは空さんっすね?ありがとうございます。」
「とにかくお前に伝えなくてはと思ってな。解るか?」
ナルトがどこにいるのか。


「今のところなんとも。ただ・・・あいつら異次元っつーか、異界に飛ばされてません?」
そうでなければここまで相棒の居場所を読み取れない説明がつかない。とシカマルは思う。

「・・・異界・・・。簡単に言ってくれるな。」
「簡単でしょ。伝説の三忍だって使っているじゃないっすか。」

サラリといわれた言葉に思わず三代目と空は目を丸くした。
異界の術を三忍が?
はて?なんのことだろうか?
それからああ、と思い当たった火影様は頷いた。

「まさか契約の召喚のことか?」

言われてみれば異界からの召喚である。
異界なんてまるで書物の中だけの世界だと思っていただけにカルチャーショックといったところだが。




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 4番隊の月と雲 〜消えた月 6〜 
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「ええ、あいつらもある意味異界の生き物っすよね?あんなでけーナメクジも蛙も蛇も
見たことないっすよ。」
「なるほど。それで9班のメンバーはその世界に飛ばされた、と?」
「それがまだ読めないんですよねー。今あいつの気配をたどっているところっす。」

目を細め言葉を濁す。
気配は読めてきた。
物凄く遠いのは解るが場所までわからない。物理的にではなくて、何かに阻まれた遠さ。
結界か?それならぶち破って帰ってくるよなあいつ。
じゃあ何か大きな怪我でも?いや感じ取ったチャクラは平常を示している。


浮かんでいく端から消去していった結果。
異界。異世界にいるのでは?との判断が最後に残ったのだ。
いわゆる消去法。
だがそれを口にしたのがシカマルであるだけで真実味が増すのは不思議な話である。


「異世界・・・・せっかく煩いおっさん共が居なくなったというのに。」
そんなにナルトから平和をとりあげたいか?と神をうらみたくなってしまう。
そんな悲壮感を漂わせまくる空に流雲はケロリと言ってみせた。

「っすよねぇ。ま、あいつの波乱万丈は今に始まったことじゃないっすからとっとと
慣れた方が楽ですよ。」


とにかくナルト達が最後にいたと思われる場所に行こうとシカマルは思った。
どこから異界への道がつながったのか。
そこから何かが掴めるかもしれない。

「昨日の彼らの任務?ああ、確か森でキノコ狩りだったと記憶しておるが。」
「・・・・そうですか。」
またクダラナイ任務を引き受けたもんだ。
忍って何でも屋なのか?なんて疑問を感じてしまうシカマルだった。



おしまい