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4番隊の月と雲 〜月と父とパラレルな世界 1〜
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時間は遡って昨日の夕方・・いや、すでに夜とも言える時間。
森の中に彼らはいた。
「はーーい今日の任務はこれで終了でーーす。明日は草むしりが待ってるぞーー!」
「「ええーーーー!」」
「げっ」
子供たちの可愛い歓声・・もとい非難の叫びを心地良く感じながら(嫌なやつだな)、
はたけカカシはにこやかに手を叩いた。
「集合場所は今日と一緒でーーす。」
「一楽前に12時集合だってば?」
「ぶっぶーー。一楽前はあってるけど集合時間は朝の8時でーーす。」
チッチッチと指を振ってみせたカカシに三人の目が細まる。
「・・解ってるなら4時間も遅刻してこないでください!」
「そうだってばよーーー!」
怒鳴るサクラ、ナルトに
「だいたいなんで一楽前なんだっっここまでかなりの距離があったぞ」
集合場所の意味が解らないと眉をよせるサスケ。
それに
「え?それはーせんせーが朝ごはんを一楽で食べるつもりだったから〜」
お昼ごはんになっちゃったけどね。と悪びれない担任に
「「「・・・・」」」
言葉も出ないと三人は思った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
4番隊の月と雲 〜月と父とパラレルな世界 2〜
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「さて、ほらほらもう辺りも暗いから早く帰るんだよーー」
「「「誰のせいだーーー」」」
怒鳴る力もどんどんなくなっていく気分である。
そんな会話を交わしながらも四人で森の入り口へと向かっていた。
その時
「なんだ?」
サスケが呟いた。
「どうしたのサスケ君?」
「・・音が・・・声か?何か聞こえないか?」
息を潜め聞き取ろうと耳をすますサスケにナルトは瞬間舌打ちをついた。
その瞬間地面から光が発した。
「わっっ」
「な・・なに!?」
「くっっ」
三人の声が聞こえたがナルトはそれどころではない。
(くっそーー油断したっ!)
正直ナルト一人ならこの光から抜け出せただろう。
しかし傍には2人のチームメイトと頼りになるんだかわからない担任が一名。
傍に着いていたほうが安心だろう。
シカマルの心配も考えずコンマ数秒の間にそれだけ考えてしまい、ナルトは一枚の札
を取り出した。
人差し指と中指の間に挟み祈りをこめて光の外へと飛ばせば鳥の形へと姿を代え空へ
と羽ばたいていった。
(届けっっっシカの所へっっっ)
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4番隊の月と雲 〜月と父とパラレルな世界 3〜
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ここは・・?」
突然の光。
てっきり忍び込んできた他里の忍の襲撃と思い身構えていたカカシなど拍子抜けも
いいところだった。
しかし、呆然と呟かれたサクラの言葉にハッとした。
場所が違う。さっきまでは森の中にいたはずなのに・・・
「里の中?」
なのか?と疑問を隠しきれない呟きをこぼすサスケ。
「しかもどーーー考えても真昼間みたいだネェ。」
あれぇ?と頭をかきながら空を見上げたカカシ。
金の髪の少年はいつもの騒々しさを潜め油断無く辺りを見回した。
ざっと見た限り木の葉の里である。
火影岩も見えるし。
下手をすると過去か未来へ飛んだとかそんな突拍子も無いことを考えてしまう。
「タイムスリップか、はたまた・・・」
口の中で吟味するように転がした言葉は
「なっっるっっっくぅぅぅぅぅん!!」
素っ頓狂すぎる叫び声に吹き飛ばされた。
なんだ?と振り返ろうとした瞬間背後からガバァァっと抱きつかれた。
正直初体験。
めでたい、とか言ってる場合ではない。
忍びとして、背後を取られるなんて死も同然の失態である。
しかし記憶に無い気配と、それでいてなぜか馴染む空気に背後で引っ付き虫をし
ている人間になんだか予想を立ててしまった。
いわゆる、俺にとってだとシカマルの父ちゃんとかイルカ先生みたいな・・・。
いわば一瞬でもお父さんってこんな感じかなぁ、なんて抱いていた空気。
それを全く聞き覚えの無い声の持ち主が持っているなんて。
普通ならありえない。
チラリと視界に入った金色とか、もう少し首を回して見えてしまった青い瞳とか。
ミョーにとろけ切ったあほっ面とか・・・もう、これしか答えは無いんじゃないか?
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
4番隊の月と雲 〜月と父とパラレルな世界 4〜
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「先生!?」
まさかと思いながらも叫んだカカシにナルトは心の中で呻いた。
(やっぱりそうなのかよっ)
おそらく四代目火影と思わしき人物を目にして、自分達が今居るのは過去かと一瞬
思ったが背後霊は確かに自分にむかって『なるくん』と呼んだ。
カカシではなくおそらく自分の名を。
では・・・俺が生まれた時に命を落としたはずの彼が慣れたように自分を呼ぶ理由は
なんだ?
彼が幽霊?いや実体はありまくる。あとは
「平行世界?」
パラレルワールドとも呼ばれるあれなのか!?
驚愕が表に出ないのは性だろうか。
「何故っ何で先生が生きてるんですか!!」
まぁ妥当な反応だろう。
いい大人ならもう少し選択肢を増やして欲しいものではあるが、混乱してるのだから
しかたないのかもしれない。・・・と心優しい俺は思ってあげよう。
「んん?実に聞き捨てならない言葉だねカカシ君。そんな子に育てた覚えはないん
だけどなぁ」
ニコヤカに、でも声音はどこか不穏な空気で。ちょっくら視線を上に向けてみれば勝手に
人を死人にすんじゃねぇよとその青い瞳が語っていた。
「あ、あなたに育てられた記憶なんて俺もありませんよ!」
「そ?だいたい何で人を勝手に鬼籍の人にしちゃうわけ?」
ひどくない?と喚く金髪の大人の腕の中でナルトはぼそりと呟いた
「いや、事実だし」
「え?何か言ったナル君?」
地獄耳かよ。なんて内心呟きつつもこちらもカカシ同様真っ当な反応を見せますか。
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4番隊の月と雲 〜月と父とパラレルな世界 5〜
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「ふぇ?あ、えっと敵じゃないってば?」
「はぁ?」
「罠とかじゃなければネ。まあ十中八九ほんものかな・・・」
キョトキョトとようやく慌てたように視線をうろつかせ、背後とカカシに向かって
問いかければ、背後からは
なんとも間の抜けた声が聞こえ、担任からは力のない返答が返ってきた。
本物でも大問題なんだけどねぇ。
口にされなかった言葉が聞こえてきた気がする。
「カカシ先生の知り合いだってば?」
「知り合いって言うより先生だけど」
「せんせぇ?イルカ先生とおんなじ?でもカカシ先生の先生ってことは・・・え?
何歳だってば!?」
確かに疑問爆発かもしれない。この金の髪の青年はどう多めに見ても20代後半
にしか見えない。若作りにも程がある。
なんでそんな事聞くの?と首を傾げるしかない様子の背後の大人になんとなく
視線が集まった。
「いったいどーしたのナルくん?」
「えっとえっと、イーカゲン離せってばよっっ。だいたいあんた誰だってば!?」
うずまきナルトを演じて早12年(←生まれた時からかよ)。ナルトぶりっこは
慣れたもんだ。
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4番隊の月と雲 〜月と父とパラレルな世界 6〜
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「え?酷いよナルくんっパパの顔忘れちゃったの?それとも朝の事まだ怒ってるのー!?」
両方に手をあてムンクの叫びを体言してみせた金髪男。
「・・・パパぁぁ?」
ナルトより先に叫んだのは冷静であらねばならないはずのカカシだった。
「なあにカカシ君。文句ある?」
「いや、あの、なんでもないです。」
ナルトと自称パパを交互に見比べていたカカシはぴたりと口を閉ざした。
「見よっこの遺伝子の力!」
ぐいっとナルトを引き寄せ顔を隣に並べてみせるパパ候補(←え?)にサクラとサスケは
言葉を失った。
「確かに本当ならば凄いわ」
「遺伝子だからといって・・・そこまで遺伝していいものなのか?」
髪の色といい瞳の色といいどう見ても同じ血を引いているとしか思えない。
物凄い威力の遺伝である。
「イデンシとかどーでもいいってばよ!だいたい俺に親とかいねーしっっ
いらねぇしっっっ」
きぱっと言い切ってしまえば金の髪の大人は一瞬傷ついた瞳をみせ、銀の髪の担任は
息をのんだ。
これは説明がめんどくさそうだな。役に立たなそうな大人たちに心の中で疲れたため息を
盛大についたナルトだった。
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4番隊の月と雲 〜月と父とパラレルな世界 7〜
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「まぁそんなワケでして〜」
「へぇ。初めて見たよ平行世界の人なんて。」
それは俺達も同じですから。
そんな興味津々に見られても困ります。
4代目のいない木の葉を生きる子供達の話しを聞いてようやく理解してくれた
こちらの世界の住人。
おそらく先ほどのナルトの厳しい一言が頭にこびりついて離れなかっただろうが彼は懸命に
忘れたフリをしている。
そんなにショックだったか?
いつか奴の墓に行くことがあったら言ってやろうと思っていた一言がつい出てしまっただけ
なのだが。
正直見たこともない親なんぞ「要らない。」
シカマルがいて、イルカ先生がいて、じっちゃんもいるし、アカデミーで仲間もできた。
それで十分なのだ。ナルトは。
いまさら「パパだよーん」
なんてしゃしゃり出てこられても迷惑以外の何者でもない。
っつーか深く恨んじゃいないが、それでも微かにやっぱり
4代目火影が俺に狐なんか封印しやがったせいで色々メンドクサイ人生送ってこなきゃなら
なかったとか燻った思いもあるわけだ。
文句の一つくらい可愛いものだろう?
・・・なぁんてこっちの4代目様には関係のない話だけどな。
ただの八つ当たりである。
それも理解しているから。
ちょびっと距離を取りつつもカカシの後ろからヒョッコリ顔を出してニッコリ笑ってみせたり
なんかしてやった。
さっき「はじめまして」とか言ったら本気で泣き出しやがったからな。
少しは愛想振りまいといてやるか。ってなもんだ。
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4番隊の月と雲 〜月と父とパラレルな世界 8〜
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まぁよくよく考えれば、ある意味、1番最初に出会ったのが彼であったことはとっても幸運
だったのだろう。
うっかりこちらの自分と会ってたりしたら・・・どうしたかなぁ←遠い目(笑)
「そっかぁナル君は卒業したらカカシ君の生徒になるのかぁ・・・悩むなあ」
どうやら時間軸もずれたらしくこちらのナルト達はまだアカデミーの生徒らしい。
こちらの生き物(失礼)は、ぽわわんと何か考えていたかと思えば腕を組んで唸りだした。
「なんで悩むんですか!これでも今では立派な先生なんですからねっ」
胸を張って言い切った銀髪の担任に子供たちは白い視線と共に付け足した。
「最低3時間の遅刻するけどな」
「任務中イチャパラ読んでるけどね」
「たまぁぁにしか頼りにならねえけど」
本人いわく立派な担任だそうだ。
三人の言葉に四代目様はおっしゃった。
「総合してダメダメ担任じゃないの?」
コックリ。
深く頷く生徒達にダメダメ言われた先生はガァァンとショックを受けたような顔を見せた。
あれ?まさか本気で立派な担任のつもりだったのか?
とこちらが衝撃を受けてしまう。
「じゃあ僕の家においでよ。」
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4番隊の月と雲 〜月と父とパラレルな世界 9〜
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おそらく異世界であるこの世界に自分達の居場所は無い。
担任よりも子供達のほうが深刻に今の状況を考えていた。
「どうしよう。とりあえずお金は共通よね?いくら持ってる?」
「宿代には全く足りない程度だな。」
「俺ってばお菓子代くらいしか持ってねーってば。カカシ先生は?」
「あー・・・俺もあんまり。そっかー宿代ねぇ。」
いっそ野宿?
でもご飯が困るねぇ。
子供達に話し振られをようやく考えだしたカカシはあんまり困ってなさそうに口にする。
そこに彼が突然言ったのだ。先の言葉を。
「え?」
「客間なら余るほどあるしー。」
ウキウキと勧誘しだした4代目にカカシは慌てた。
「ストップストップ!!先生それはまずいですから!」
「えーーなんでぇぇ?」
「こっちのナルトに気づかれたらどうするんですかっ」
「最初に説明すればいいでしょ?」
そういう問題なの?
「ナルトは?いいの?」
「俺?俺は全然いいってばよ?」
キョトンと何も考えていなそうな返事をされてサクラはうな垂れるしかなかった。
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4番隊の月と雲 〜月と父とパラレルな世界 10〜
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「同じ人間が同じ場所に存在するのは問題ないのか?」
「そーっっそれが言いたかったのよ!カカシ先生どうなんですか?」
「さて?異世界なんて初体験だからねぇ」
困った顔のカカシに
「んとーでもさっ。たぶん『同じ』じゃないし大丈夫だってば。別に過去に戻ったワケ
じゃないってばよ?」
言われてみればそういう考え方もできる。
「さすが僕のナル君っ目の付け所が違うね!」
なんて自慢している大人は放っておいて、
「じゃあお邪魔させていただいてもいいですか先生?」
「何泊になるかわかりませんけれど・・」
「一生かもな」
「サスケ君!」
考えたくもない最悪の事態を口にされサクラは思わず叫んだが
「え?僕は一生でも大歓迎だよ。ナル君が2人なんて夢のようじゃない。」
うっとりと両手に花を想像しているのが丸解りの4代目に誰もが白い目を向けた。
「さすがカカシ先生の先生だけあるわよね。」
「ウスラトンカチはうつるんだな。」
「俺ってば今すぐ帰りたいってばよ・・・」
「先生・・お願いですからそのしまりの無い顔をどうにかしてください。俺がハズイですから!」
自分の親であるハズなのにナルトは全く他人のフリ。
こうなると元生徒である自分に全ての責任が降りかかってくるのだ。
あの男の奇行の責任を!
「えー?どうして?」
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4番隊の月と雲 〜月と父とパラレルな世界 11〜
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自分にとってあの男の存在は複雑なものだ。
正直かかわりたくない。
父だなんて思ってないし、これからも変わらない。
そう自分の中で決着つけて数年。それまでどれだけ焦がれ羨んで恨んだ事だろうか。
生涯、交わる事の無い人物だから。諦めていたのに。
なんて偶然。いや奇跡・・・嬉しくない奇跡だ。
4代目のお宅の一室。
とりあえず1人ずつの部屋は今から用意するからここでくつろいでてね〜と居間らしきところに
通されお茶をすする異世界からのトラベラーたち。
「ナルト?大丈夫?」
「あ、うん」
カカシの言葉に小さく頷くナルト。
彼らしくない静かな様子に誰もが目をみはった。
でも考えてみれば普通の反応。
生まれて初めて父に会ったのだから。
「ナルトはお父さんのこと知ってたの?」
正直カカシは驚愕していた。この子供の父親が自分の先生だったことに。
でもナルトはそれに関しては疑問も否定も口にしなかった。
「知ってたけど?」
「なんで教えてくれなかったの?」
教えてくれたら、もっと・・・
「聞かれなかったし?」
サラッと静かな返事がかえる。
「教えて、何か変わるってば?」
「・・・」
もっと何だと言うんだ自分。危うく自分の嫌な部分を晒してしまうところだった事を悟りカカシは
息をのんだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
4番隊の月と雲 〜月と父とパラレルな世界 12〜
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ナルトのお父さんが4代目火影様なのよね。あんなに若いのに」
「サクラちゃん。先に言っておくけど、俺が父と認めるのはイルカ先生かシカマルの父ちゃん
だけだってばよ」
ニコニコ笑顔できっぱり言い切った子供に子供達は戸惑い、カカシは
「何言ってるんだナルト!」
怒りだした。
「カカシ先生はあっちの味方だってば?」
「味方ってゆーか・・・」
何を言い出すんだこの子は?カカシにはナルトの考えが解らない。
「先生がナルトのパパなのは事実でしょ?」
「でも俺は認めないってばよ?」
「・・・なんで?」
「ヒーミーツだってばよーぅ。そんくれー大人なら自力で考えろってシカならいうだろーし。
それよりこれからどうするってば?」
ニシシと笑ってこの話題は終了とばかりに次の話しを振ってきた。
それにサクラとサスケは眉をよせた。
「ねぇ。そんなに避けてもしかたないと思うわよ?」
「この状況では無関係でいられないだろ?」
長い間近くでナルトを見てきただけある。
ナルトが出来れば「避けたくて」出来れば「無関係でいたい」と思っていたことなんて簡単に
解ってしまったようだ。
「・・・おおー子供の方がキビってもんを解ってるばー」
「機微の意味を言えるようになってから口にしろドベ」
「ぬぬっサスケのくせに生意気だってばよ!」
「なんだとこのドベが!」
思わずいつものようにサスケが言い返した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
4番隊の月と雲 〜月と父とパラレルな世界 13〜
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「サスケ君っナルトの口車に乗っちゃだめよ。このまま話しが逸れていくわ」
ホントだ・・・。
サクラの言葉に思わず場が静まり返った。
なんだか室温が少し下がった気がしてしかたない。
「えーっと、話を戻すけどナルトは先生とあまり関わりたくない・・ってこと?」
にこにこ笑ったままのナルトがちょっと怖いなんて気のせいに違いないと言い聞かせながら
無言に耐え切れなかったヤワな大人がぼそぼそ、と口を開いた。
「そーだってば。」
「なのにこの家にお世話になるの嫌がらなかったよね。」
「タダで部屋用意してもらってタダでメシ食えるとこなんてあんまり無いってばよ。」
にこにこと。したたかとしか言えない言葉を口にしたナルトがまるで知らない人のように
感じてしまう。
「あら、カカシ先生よりちゃんと考えてるじゃない。」
サクラがさらりとカカシをけなす。
「へっへー。だてに1人暮らししてねーってばよ!」
よくイルカ先生とかじっちゃんにタカってたもんねー。
言われてみればその通り。
カカシみたいに高給取りなワケでは無いし、この子の生活費はどうなっていたのだろうか?
今更なことを心配してしまうカカシ。
実際は里一番の高給取り(なにげに火影様より金もってまっせ)なくせに倹約家なナルトである。
そのくせクダラナイことにポンと金を使ったりもするお間抜けさんでもあったりもする。
「だからさ、お父さんがどーのってのは俺にはどーーでもいいことだし。」
どーでもいいって・・・。
先生が今この場にいたら大変なことになっただろうな。
カカシは遠い目をするしかなかった。
「俺にとってあの人は”タダ”で寝泊りさせてくれて”タダ”でメシ食わせてくれるすっげー
いいおっちゃんだってば。」
そっか。うん”タダ”ってのはすっごくポイント高いんだねナルトの中で。
新たなナルトを発見してしまった気分でいっぱいである。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
4番隊の月と雲 〜月と父とパラレルな世界 14〜
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「それについての論議はまた今度、先生も交えてするとして、当面の問題を話すぞ」
ロンギなんてしねーってば!!
というナルトの抗議はとりあえず無視して、カカシは話を進めることにした。
「とりあえず言える事は、しばらくは元の姿で里内を闊歩出来ないってことだねぇ」
こちらの自分と出会ったり、知り合いとバッタリ出会ったり。そんな事したら面倒になること請け合い。
変装でごまかせればいいができる事ならば変化がベスト。
カカシレベルになれば変化でもバレてしまうだろうが。しないよりマシ。
「変化し続けろって事ですか?」
「外に出るならネ。チャクラ切れたらここに退避すればいいしー」
先生は一日くらい余裕だから関係ないけどネ〜。
思いっきり人事だといった感じでカカシは言った。
「いちおーね、先生に協力してもらって帰る方法を探すけど・・・まぁ気長に頑張っていきますか」
あまり期待は出来なさそうだ。カカシ自身どこから手を付ければいいのか途方にくれている現状。
火影という協力者がいることが唯一の救いかもしれない。
あんなに頼りなさそうにみえるが・・きっといざとなったら頼りになるはず。きっと、たぶん。
「カカシせんせーがそんな弱気でどうするってば!」
「そうですよっあたし達に出来ることなら何でも手伝いますから」
「ウスラトンカチらしくいつも通りヘラヘラしてろ」
ハッパをかけられているような、けなされているような、よく解らない子供達にカカシは
ヘラっと笑ってみせた。
「ま、なんとかなるでしょ」
それでこそいつもの畑カカシであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
4番隊の月と雲 〜月と父とパラレルな世界 15〜
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「おかえり〜ナル君」
火影という仕事は暇なのだろうか?
ついありえない事を3人は考えてしまった。
どうやらちょうどお昼ご飯を食べる為に街に出ていたらしい四代目は、異世界からの
トラベラーを拾い、職場に戻るのをやめてしまった。
のんびり自分達を自宅に連れていくと部屋の準備に行ってしまったホカゲサマ。
それからアカデミーから帰ってきた子供を迎えに玄関まで飛んでいく。
「仕事は?」
サクラのもっともな疑問にあいにくカカシからの返事はなかったとか。
「うわっなんでいるってばよ!」
「お客さんがいるから仕事は明日〜」
え?自分たちのせいで里長が仕事出来なかったってわけ?
「サボりの口実にすんなってば!」
なるほど。
「んで?母ちゃんは?」
「寝てるよ」
「んじゃお客さんに先にあいさつするってば」
「うん。あ、ナル君すっごく驚くよ〜」
「ふぇ?」
そんな会話にまず最初に思ったのは
『母ちゃん!?』
よくよく考えれば四代目が生きてるのだから奥様も存命していておかしくない。
むしろ自然だ。
しかし
「聞いてないヨ」
情けない声で呻いた元生徒。
忘れてたとしか思えない。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
4番隊の月と雲 〜月と父とパラレルな世界 16〜
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「あれで里長・・・三代目の偉大さをヒシヒシと感じるわ」
「あれで大丈夫ならドベでも出来る」
「え?マジ?サスケに保証されたってば!」
「・・・喜ぶな。ただの厭味だ」
現状にうちひしがれている彼らの部屋の襖がゆっくり開きそこから元凶の大人が
ヒョッコリ入ってきた。
「おまたせ〜うちのナル君でぇっす♪」
後ろにいるのは寸分違わぬチームメート・・・のそっくりさん(ちと違う)。
「ほぇ?なんでサクラちゃんがここに・・・ってサスケまで!」
キョトキョトした目で知った顔を流し見てから
「とーちゃん。あそこに・・・」
「うん?」
ものごっつ期待たっぷりの笑みで愛息子の反応を待つバカ親。
「変な人がいるってばよ!!」
「ええ!?うそっ」
ナルトの指の先に慌てて視線をやり、気付いてしまった。
「・・・確かに怪しいよね。うんそっかナル君はカカシ君に会った事なかったっけ。」
銀髪だけでも珍しいのに口元を隠す黒いマスク、更には片目まで隠して・・・しかも片方しか
見えない瞳はなんだか眠そうな怪しいカンジ。
「やばい。どこから見ても立派な変質者だよカカシ君」
「親子そろって酷すぎませんか先生!」
思わずカカシは机をぶっ叩いた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
4番隊の月と雲 〜月と父とパラレルな世界 17〜
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ほえーー違う世界から来たってばー」
間抜け全快のこちらの世界のナルトの様子にサクラとサスケは思わず自分の世界のナルトに視線を
向けてしまった。
「同じドベでも何かが違う気がするんだが。」
「そうよね。何かしら、そこはかとない腹黒さ?そんなものがこっちのナルトからは感じられないわ。」
ヒソヒソと内緒話っぽいのですが・・
「腹黒さってなんだってば?」
ニコーと満面の笑みで2人に問いかけたりするナルトに思わずビクリと肩をゆらした。
比べてみると本当に良くわかる。
逆に比べてみないと解らない程度の違い。
「うちのナルトって意外と聡明な顔立ちしてるのね。」
「ここまで間抜け面が出来るとは思わなかったな。」
気の抜けた笑みというものは良く彼がしていたが、ここまで何も考えていなそうな笑みは初めてみた、と
サスケとサクラは思った。
「世界が違うというだけで結構変わるものだね。」
入り混じりそうだ、と思っていたのに。実際会ってみれば全くの別人にしか見えなかった。
似たような顔立ちに似たような色彩。似たようなおバカキャラ。
なのに、全然似てない。
「そりゃー俺ってばいっぱい苦労して下忍になったってばよ!」
「ええっっっお前ってばもうアカデミー卒業したってば!?ずりーーーってばよーー」
何がずるいのか解らないが仲良く同じ顔が話している図を見て相好を崩しまくっている大人が1人いることが
非常に気になる。
嫌でも視界に入るんですけどねぇ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
4番隊の月と雲 〜月と父とパラレルな世界 18〜
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「じゃあ俺がもしこのままの姿でいたずらしまくってもぜぇぇぇんぶお前のせいになるってことだってばね。」
ウシシシ。
と悪巧みを口にするナルトにこちらのナルトが慌てた顔で叫んだ。
「だめーーー!ダメだってばよ!とーちゃんっっっなんか言ってやれってばっっ」
「ええー。2人でいたずらしたらどう?」
上手い言い負かしを思いつかずつい大人をたよったナルト(白い方(笑))だが、大人はまったく役に立たなかった。
「煽ってどうするんだ」
「これが火影って・・・カカシ先生どうなんです?」
もし4代目が生きていたらきっとこんな状態だったんだろう。
あの3代目の後釜にしては軽い。軽すぎる。
「これが先生の持ち味だしネー。」
俺には何もいえません。
こちらの大人も役にたちやしない。
「ま、仕方ねぇからちゃんと変化してやるってばよ。」
上から目線で言い放つと白ナルトの頭をポンポンと叩いてやる。
「・・なんか兄ちゃんみてーだ」
「俺も弟が出来たみてーで面白ぇってば」
家族なんていらないと豪語していたナルトにしては破格の態度である。
正直自分でも驚くくらいに目の前の違う世界の自分に愛着がわいていた。
親の庇護の元ヌクヌク育ってきたこちらの世界のナルト。
てっきりムカついたり、恨めしい気持ちになると思っていたのに、予想外な感情。
(なんってーか・・・小動物を見てる感じ?)
本人が聞いたら大噴火がおきそうな感想を内心で呟き、ナルトは目の前の少年を微笑ましく見ていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
4番隊の月と雲 〜月と父とパラレルな世界 19〜
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「意外でした。」
「何が?」
どれだけデカイのか火影宅。と言った勢いで個人に部屋を与えてもらえた一行は、
気になっていた火影様の奥様との対面は出来なかった。
体調がよくないらしく、あまり興奮させてはいけないとの旦那の配慮だった。
確かに異世界からのトラベラーとの対面なんて驚くに決まっている。
それが顔見知りだったり、息子と同じ顔だったりなんてしたら・・・大げさなくらいに騒ぐに決まっている、との
お言葉だ。
あんた人のこと言えないしな。
なんてカカシは内心で突っ込んでおく。
それぞれ個人の部屋に分かれ、今はカカシに用意された部屋で元担任と2人で酒を酌み交わしていた。
懐かしさで涙が浮かびそうだと思いながら、ポツリとずっと思っていたことを呟いた。
「ナルトが・・こっちのナルトと仲良くなるなんて」
「なぜ?」
同じ人間ならば同じ思考で気が合う可能性なんて高いはず。
同属嫌悪なんて言葉もあるが、あの能天気なナルトにそんな言葉当てはまるわけが無い。
「先生、俺たちの世界では先生は居ないんです。奥様も。ナルトはずっと1人で生きてきました。」
「でも3代目もいるし、里の人だって助けてくれただろう?」
きっと可愛がってくれただろうなぁ。なんて微笑んでみせた担任にカカシの表情は曇るしかなかった。
「・・・」
「どうしたの?」
「狐は・・九尾はどうなりましたか?」
「ああ、あれはナルトの中に封じてあるけど?もう少しナルトの体が出来上がって術に耐え切れるようになったら
別のところに封じなおすつもりだよ」
なんでもないことのように。彼は言った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
4番隊の月と雲 〜月と父とパラレルな世界 20〜
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「・・・こちらでは・・・・」
そんな簡単に口に出来なかった。
どれだけの被害を押し付けられたか。たった一人の少年が助けてくれる人も居ない中、激しい攻撃を受けてきた。
それを、見ていた。それだけ。
もし彼が4代目の息子だと知っていたら自分はどうしてただろうか?
理不尽だと里の人々を責めただろうか。
可哀想にと精一杯、金の髪の少年をなぐさめただろうか。
きっとそうしていた。
でもそれは4代目の息子だとしたら。
同じ境遇なのに、俺は何も感じなかった。
あんなに小さな子供が理不尽に殴られても、ののしられても
「当然じゃない?」
なんて思っていた。
なにが当然だったんだろう?
今となっては全ての愚かしさに吐き気すら覚える。
「俺は先生に謝らないといけません。俺だけじゃない、里の誰もが・・・。」
先生よりも本当はナルトに。
でも今更本人になんていえない。
許してなんてもらえる訳がないのだ。
そして許されてはいけないとすら思うのだから。
まさかこんな形で懺悔をする日がくるなんて。
カカシは重い重い口を開いた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
4番隊の月と雲 〜月と父とパラレルな世界 21〜
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「おはよーってばー」
朝日を背に太陽に負けないくらいの明るい笑顔で挨拶をするのはナルト。
「おはよう、ナルト。ナル君は?」
「あれ?解ったってば?ナルは今顔洗ってるとこだってばよ。」
ナルトというのは違う世界から来たほうの呼び方。
こちらの世界のナルトはナル君と呼ぶ。
そう4代目様は決めていた。
昨夜辛い話を聞いた。それがこの目の前でニコニコ微笑む少年に現実におこった過去の話だなんて、
とても信じられないし、信じたくない。
生徒の前では堪えたけれど、自室に戻ってから涙が止まらなかった。
なんでそんなことになってしまったんだろう、と。
「あれ?ナルって呼んでるんだ?」
「うん。あっちは俺のこと兄ちゃんて呼ぶんだってさ。兄弟みたいっしょ?」
クスクスと笑ったナルトにつられるに微笑み返した。
「本当だねー。ナル君の事はナルトが起こしてくれたの?」
寝坊すけナルトはいつもならまだ寝ているはずなのに。
「昨日は一緒に寝たってば。だから俺が起きるときに一緒に無理やりたたき起こしてやったってばよ!」
俺だけ起きるのはなんかムカついたからー。
「そっか。」
本当に仲良くなったものだ。
昨日のカカシの言葉を思い出してしまう。
意外だったという言葉。
今ならその意味が解る。
この目の前の少年の心がどれだけ広いかが。
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4番隊の月と雲 〜月と父とパラレルな世界 22〜
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「サスケ君とサクラちゃんは?」
「2人とも俺より早く起きて散歩してるってばよっっ。ずりーし!」
「へぇ。みんな早起きだね。カカシ君も見習ってほしいよ。」
未だ起きてくる気配のないカカシに苦笑するしかない。
「え?あの変な人まだ起きてないってば?」
洗面所から戻ってきたナル君が素っ頓狂な声をあげた。
「カカシせんせーはいつものことだってばよ。遅刻あたりまえ。遅刻しなかったら槍が降ってくるに
違いないってば。」
そこまで言われるって人間としてどうよ?
「カカシ君は昔からだからなぁ。」
きっと墓によって遅刻してるんだろう。でもたぶん寝坊も本当。昔から朝に弱い子だから。
「ナルはアカデミーだろ?俺は朝飯くったら散策するってば。昼にはもどってくるつもりー」
「そんなに変化が持つの?」
「俺のチャクラは量だけはすごいってイルカ先生が言ってたってば!」
「あ、俺もイルカ先生に言われたってば。」
さすがイルカ先生。
なんて2人でイルカを褒め称える。
いやいや褒められてるとは思えないぞそれは。
「イルカ先生はやっぱりこっちでも熱血だってば?」
「うんすげーってばよ。いたずらしたらどこまでも追いかけてくるしー。拳骨おとすしー。
暴力反対だってばよ。」
「おおーいっしょだーー。そんなイルカ先生が俺ってばすっげー好きーーー」
「俺もイルカ先生大好きだってば!!」
ハイテンションなイルカ談義に
「・・・パパはちょっと妬けます。」
お父さんは複雑な気分でした。
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4番隊の月と雲 〜月と父とパラレルな世界 23〜
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今の姿はいつも暗部の時にする変化。
20才前後に成長して、髪と瞳の色を黒にする。
それだけで一気に印象が変わるらしい。
ついでになんかこの姿だとモテルらしい←シカ曰く。
あんまり変えてないつもりなんだけどなぁ。
なので本日もヒョウヒョウとした足取りで里の中を歩いていたら若い女性がこちらを振り返る。
下手したら男性も振り返る。
ご年配の方だって「まぁ」って頬染めてるし。
おお、俺ってばもってもて。
この格好で里の中を歩き回ったことがない(←暗部の姿を知っている人に会うとバレそうなので)
のではじめての体験にドキドキである。
シカマルの言葉を鼻で笑っていたがあながち嘘でも誇張でもなさそうである。
ただの散歩。でもあちらこちらの店に顔をだしてみたりすると違うところがあったりして面白い。
4代目とその奥方が生きている。
もしかすると他にも助かった命があるのかもしれない。
「お兄さんいい男だねーよかったらあんみつ食べていかないかい?」
何故いい男だとあんみつを食べるのだろうか?
「お兄さんお兄さん」
「・・・んん?俺?」
「そうそうあんただよ」
まさか自分に声が掛かっていたとは思わなかった。
里内で知らない人に声をかけられるなんて滅多にないから。
顔をあげれば甘味どころのおばちゃんが手招きしていた。
この甘味所はチョージや、あんこの姉さんとたまに行ったりしていた。
最初は嫌な顔をしていたおばちゃんが最近では普通に接してくれるようになってちょっと
嬉しかったりしている。
「さっき朝ごはん食べたばっかりでまだ入りませんねぇ。また小腹が空いたときにでも
寄らせてもらいますよ。」
ニッコリお辞儀をして、誘いをかわせばなにやら感心されてしまった。
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4番隊の月と雲 〜月と父とパラレルな世界 24〜
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「はぁ4代目様みたいな爽やかな断り文句だねぇ」
「へぇそうなんですかー。4代目さまは良くこられるのですか?」
「元々整った顔立ちの人だしねぇ。そのわりに人懐っこい方でね、気さくに寄ってくださるんだよ」
「そうですか。皆に好かれていらっしゃるんでしょうね」
「そらーもう。木の葉で4代目様を好いてない人間なんておらんよ。」
あははは。・・そこまで言うか。←かなり呆れ
自慢げに言い切ったおばちゃんに「木の葉は安泰ですねー」なんて調子良く返しながら手を振り
その場を去る。
(噂には聞いていたが・・マジで人気あるんだなー)
『比較されてけっこーキツイってばよ』
とは昨夜聞いたこちらのナルトの言葉である。
笑って言っていたが、ここまで人気があるとかなりこちらのナルトの精神に苦痛を与えている事だろう。
ただの大物ではなく、気さくで、人懐っこくて、愛嬌があって、息子ラブなところが唯一の弱点では?
なんて感じ。
父としては最高で、人間としても最高で。
他人だったらどれだけ尊敬できただろうか。
しかし肉親。あくまで親。
欠点が見つからない完璧人間と比較されたらどうすりゃいいんだ?
反発するには良い父だし、全てをあきらめて現状を受け入れるにはナルトという人間は我が強い。
比較されて「悔しい」「負けたくない」と思ってしまうほどには向上心もある。
盲目的にパパをほめられて嬉しいなんて言ってる時期は当に過ぎ、今は多感なお年頃である。
しかもアカデミーでは先生から『親が火影様』って事でひいきされ、まともに友人も作れないときたもんだ。
←親の肩書き目当てのお子様は近づいてくるが
ひいきするくせに「とても四代目のお子様とは思えないな、あの成績は」とか影で言っているのを
聞いてしまったとか(忍ならきっちり本人の聞こえないところで言えよ)
そして、それをグチれる相手は誰一人いない。←四代目信者が多すぎるらしい
そりゃー辛いわ。なんか俺の方がシカとかイルカ先生がいる分幸せな人生送ってきた気がするもんなぁ。
あまりに素晴らしい人物を父に持ち、しんどそうである。
そういや木の葉丸も3代目っていう目の上のたんこぶ(←言いすぎ)に苦労していたなぁ。
「居ても、居なくても迷惑とは・・・なんてやっかいな男だろうか」
うずまきナルトにとっての父という存在は。
2へつづく
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