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     4番隊の月と雲  〜1番隊をやめた訳 (前編)〜
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光月と流雲、めでたく入隊しました。



「一番隊はな、暗部の中で最強の隊。すなわち暗部の中でも特別なのだ!!」
簡単な入隊式(暗部のお面や衣装を火影さまから頂く、ついでに決めた名前を名乗
る)の後、隊分けをされたナルト、シカマル。
2人はセットで。という希望を出していたので、めでたく2人揃って一番隊へと入
隊が決まった。

そこででっぷり太った隊長の最初の言葉はそれだった。
いやー。まず挨拶とかさーしようよ。
一般常識が欠けてるということでマイナスポイント。
しかもてっきり新人に「だからこの隊に入隊出来たことを誇りに思えっ」と鼓舞
をするのかと思いきや

「だからワシは暗部の中で一番偉いんだ!!」

自慢話かよおっさん。
でっけー腹ぷにぷに動かしながら、汗をかきかき自慢話。
過去どれだけ自分が偉業を成し遂げたか。
自分の部下にどんな凄いヤツがいるか。

聞いてもいないのにペラペラと。
なぁ。
俺らまだあんたの名前聞いてないっすよ。
っつか俺らも名乗ってねぇし。

あまりに常識ハズレな行動に2人で内心溜息つきまくりだった。


だいたい最強っつーのも胡散臭い。
新人としてはあるまじき事だが本日入隊した2人は火影様と大変親しく、大雑把に
暗部の情報を知っていた。

すなわち・・・・おっさん(一番隊隊長)の言うことは真っ赤な嘘だということを
。

確かに人選的には一番隊に実力のある者を多く割り振っている。
だがしかし、死亡率が一番高いのも一番隊。
結果残っているのは"超"がつく優秀な者か、十把一絡げのザコ暗部のみ。
差が激しいのが現状だ。

実は2人。ただ今激しく後悔していた。

「「あーーなんでどの隊でもいいなんて言っちまったんだろぅ」」

そのひと言に尽きる。
先にもっとしっかり調べていたらもっとマシな隊長がいる隊をお願いしただろう
。

(ってかこいつなんで隊長なわけ?)
どーー贔屓目に見ても忍び自体の引退を強くお勧めした方が良いと思われる。


「あー」
やーもうさ。自慢はいいからとりあえず俺らの配属教えてくださいよ。
と口を開きかけた流雲の横から

「隊長遅くなってすみません。」
穏やかな声が響いた。
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     4番隊の月と雲  〜1番隊をやめた訳 (中編)〜
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「隊長遅くなってすみません。」
穏やかな声が響いた。
振り返れば声のごとく穏やかな笑顔を持つ男性一名。
20代前半と思わしきその男性はニッコリその場の3人に笑顔を見せながらも誰
の口も挟ませようとしなかった。

「後は私が請け負いますから隊長は仕事を。隊長が居られないと仕事が滞ってし
まいますから」

あくまでニコヤカにでっぷりおっさんの自尊心を擽りながら体よく追い払う。
見事な手際である。
まだまだこういう手腕には能力が足りない2人は「これは見習わねばなるまい」
と感動してしまう。

「おおっそうだな。全くワシがいないとうちの隊が回らないのだから困ったもの
だ」
と言いながらもホクホク顔で去っていった。


「さて、邪魔者もいなくなったことだし。君が光月君で、君が流雲君だね?」

ふう、とスッキリした顔で彼は1人ずつの顔を見ながら名前を呼ぶ。
それにコックリ頷くと

「私は1番隊の副隊長の空(そら)です。あんな隊長の下大変かと思うけど出来る
限りのフォローは入れていきますので何かあったら私になんでも言ってください
ね。」
なんと出来た人間だろうか。
先ほどの傍若無人なヤローを見たせいか余計に素晴らしく見える。
挨拶完璧。
新人の顔と名前をきちんと覚えている。
下っ端に対して丁寧口調。更にはきちんと君づけ。
更には隊長を上手く扱える。

((わー尊敬しちまうなー))

「さて、まず最初に教えておきたいのはあの隊長の性質ですね。」

わー暗部入って最初にそれですか?
しかも尊敬できるこの人がそう言う位なのだからかなりの重要性を秘めているの
だろう。
心して聞かなければ。二人は思った。
そしてそれは正解だった。

「非常に情けない話ですが、彼の人気は我が一番隊で最悪です。他の隊でも最悪
ですが、やはり一番被害にあっているのが我々ですからね。その上で、彼の持つ
権利というものがありまして訴えてもどうにも出来ないもので」
「ああ、長年勤めすぎて迂闊にクビを言い渡せないってヤツですね」

オブラートに包んで遠まわしに言おうとした空に光月はアッケラカンと言い放つ
。
それに驚いた顔をしつつも苦笑を見せた空は

「ええ、ぶっちゃけた話そうです。そういう訳でやりたい放題のあの人ですが、
当然ながら彼の悪口が本人の耳に入ったら厄介なことになります。」
「暗部クビとか?」
「や、多分あれじゃね?明らかに危険な任務に就かされたり、変な濡れ衣着せら
れたり」
「流雲君正解です」

溜息をつきながら頷いた空。

「あ、呼び捨てでお願いします。っつかむしろ雲(くも)だけで良いんで」
「同じく俺も月(つき)でお願いします。」

「・・・じゃあ最初からその名をつければ良かったんじゃないの?」

素朴な空の疑問に2人は顔を見合わせてから
「「色々あるんすよ」
肩をすくめてみせた。


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     4番隊の月と雲  〜1番隊をやめた訳 (後編)〜
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「まぁそんな訳で色々めんどうでしょうが、出来る限り目をつけられないように
」
「「はい」」
「それから愚痴を言いたければ彼に適当なあだ名を。ちなみに一番隊内での彼の
通り名は『おっさん』もしくは『腹でたヤツ』です」
「・・そのまんまじゃん」
「いかに嫌われてるか解ったな」
温厚そうな空がその通り名を口にしたのがちょっと違和感だが、副隊長なんかや
っている彼はきっとこの隊の誰よりも苦労しているのだろう。あのおっさんとの
関わりも多いだろうし。

「ちなみにあのおっさん、仕事してるんですか?」
「ええ、してますよ」
なんかこの人のよさそうな人に全て押し付けてそーと思い尋ねた光月に空に穏や
かに頷いた
「へー意外っすね」
「ほんとー」
「ええ、とっても仕事してくれてますよ。毎日毎日お酒片手にゴロゴロと」
「・・は?」
「資料を読んでるフリをしたり」
「はぁ?」
「適当な隊員捕まえて適当にうんちくかましたり」

ここまで来るにいたって二人はようやく空が厭味を言っているのに気がついた。
あまりに穏やかだったので本気で気づかなかったのだ。

「まぁいいんですよ。明らかに不可能な任務の采配してみたり、無理やり新人の
教育をして再起不能に陥らせたりされるよりはよっぽどね」

(ああ・・ああ・・)

なんてなんて苦労してるんだこの人は!!

「そういう訳で頑張ってくださいね」

「「はい」」
この人がいるから。頑張れそうな気がした。




しかし現実は残酷なものであり。
2人は残念ながら頑張り切れなかったのだった。
それはとっても単純な話。

空が


「「2番隊にとられたーーーー!!」」

からである。


ちなみに言えばその原因はあの「腹がでたおっさん」であった。
酒に酔った勢いで二番隊の隊長と隊員を賭けた花札大会が行われたらしい。


「「賭けの賞品を隊員にするっててめーーーどういうこっちゃ!!」」
他にもトレードされた大物はいたと言うがどんな大物よりも一番隊にとって大切
なのは空だった。

「「っつか空さんだけは空さんだけは返してくれーーーー」」

それが一番隊の誰もの願いであったと思われる。



そして4番隊発足へと話は繋がるのであった。







おしまい