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      4番隊の月と雲〜月と雲と空と 1〜
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「「空さん」」
「おや、月と雲じゃないですか。聞きましたよ3代目から」

初対面から変わることの無い穏やかな雰囲気を持つ元上司。
今は2番隊の副隊長の補佐。という立場らしい。

「あーまぁ楽しく隊作りしてマス。2番隊どうっすか?」
「そうだねぇ。あまり変わらないかな」
サラリと最悪な事実を述べられてしまった雲は顔をしかめ、月はそんな空の相変
わらずの毒舌っぷりに笑い出した。
「くくっ変わらないのは空さんの性格もですね」
「このくらいで無いとやっていけませんよ」
微笑みと共に優しい声音で吐き出される言葉は結構きつい。

「だよな。ホント言うとうちに誘いたかったんだけど・・・」
「無理ですねぇ」
「はー。空さんのことだから2番隊でもすでに手放せない人物になってるよなー
」
わかっちゃいたけど。
月は溜息をつき心から嘆く。

「4番はまだ新しいですからね、私のような人間はまだ必要ありませんよ」
使えない者を適当にあしらいながら仕事を進めるそんな人間は。

適材適所という言葉を暗部全体に使うのならば確かに空は他の腐りきった隊に就
くのが一番正しい気がする。

「2番隊の副隊長はなかなか出来た人物です。出来れば1番隊に戻りたいんです
けどね」
「今1番隊ってどうなってるんっすか?」
「まぁ・・・後任を任せたイニシが胃痛を訴え始めました。それ以外はなんとか
機能してくれているみたいですけど」

胃痛。まだその程度ならなんとかなるかな?
それともこの先悪化するのか。

「イニシも迷惑だったろうなぁ。」
「ええ、彼には可哀想なことをしてしまいましたが彼意外にあの人をお願いでき
る人が思いつかなかったので」
申し訳なさそうな空に月と雲は同意を示した。

「うん、空さんは正しいですよ」
「最良の選択だったと思うっす」

「そっか。ありがとう。」

空には珍しい太陽のごとき子供のような笑み。
それに2人はつられたように微笑んだ。

空は今日も良い人で、相変わらず人の世話を焼きまくっている。
そんな空が2人はやっぱり相変わらず大好きだと再確認したのだった。



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      4番隊の月と雲〜月と雲と空と 2〜
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アカデミーと言うところは。
暗部並みにやっかいだったりする。

と海野イルカは思っていた。

「今日も今日とて学年主任は何であんなバカなことを胸を張っておっしゃるんで
しょうねぇ」
ブツブツと呟く。
胸の中に溜め込まないようにという生活の知恵である。

暗部の「空」と中忍の「イルカ」。
どちらにも共通していえるのは『苦労性』である。

暗部では最悪に困った隊長たちを。
アカデミーでは一人の少年に全てを押し付けて当然と思っている最悪な大人たち
を。

どう適当に操ってやろうと余念がない。

「イッルカせんせぇぇぇ」

金の髪を揺らして、満面の笑みで、自分に向かってかけてくる可愛い可愛い教え
子。

「こぉらナルトっ廊下は走るなっ」
「あうっ」

慌てて早歩きに変えた少年に笑みが零れる。こんな時に日ごろのストレスが癒さ
れると思う。

「あのさあのさ」
「うん、どうした?」
「シカマルしんねぇ?」
「ん?シカマルかぁ。この時間だったら外で昼寝でもしてるんじゃないか?」
「うー見つからないってば」
「約束でもしてたのか?」
「違うけど・・・」

お昼休みの時間である。まだ御飯を食べてる生徒も居れば元気に外で遊んでいる
子供も居る。

「まぁいっか」
「いいのか?」
「ん、どーせ後で教室で会うし。」
「急ぎだったのか?」
「うん。」

コクリと頷いたナルトはフと目を瞬かせた。

「あ、シカだ」
ナルトの視線の先、イルカの後方には確かにシカマルの気配。

ナルトはそちらに向かって走り出した。


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      4番隊の月と雲〜月と雲と空と 3〜
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「シカシカシカシカーーーこれっ急ぎだってばよーー」
「んあ?・・ああ、それか。わかったすぐにやっとく」
「あーよかった。渡し忘れてるのさっき気付いてビビッタってばよ」

シカマルに渡されたのは数枚の紙。

「・・・・・・・書類?」


「うわっい・・イルカせんせー?」
「なんでそれにわざわざ幻術が掛かってるんだ?」
「「は?」」
2人はキョトンとした顔でイルカを見あげた。
一見ただの落書きにしかみえないが、幻術系に強いイルカにはわざわざ解かなく
ても見えた。

「見えてないならいいが・・・でも急ぎって言ってたし・・お前ら何やってるん
だ?」

2人は顔を見合わせ、それから
「イルカ先生ってもしかしてただの中忍じゃないってば?」
「実は暗部在籍とかいいます?」

「はぁ?」
なんでいきなりそんな事を?しかも事実だし。

「何言ってんだお前ら。」

「この幻術そこらの上忍にも見えないレベルっすよ。」
「まぁ幻術解けば見えるだろうけど、それでも結構きついレベルだってば」

「って事で決定っす」
「イルカ先生は隠れ暗部だってばよ」

よく解らない理屈で勝手に決定されても困る。

「・・・ったく。何が言いたいのかわからんがナルト、シカマル。お前らがこの
幻術かけたのか?」
「シカはこーゆーの得意なんだってば!」
「まぁでもこれはナルトが持ち歩く為にかけたんだろ?」
「うん、もし落としたら困るし」

ニシシと笑ってみせたナルトにイルカは頭がくらくらする。




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      4番隊の月と雲〜月と雲と空と 4〜
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「その紙ちょっと見せてくれないか」
「あー重要書類だけど・・・イルカ先生ならいいかな」
「いいんじゃねーか?」

シカマルの許可を得てナルトは書類をイルカに手渡す。

ピンっと紙を指先で弾いて幻術を解いて見せれば傍で感嘆が上がる。
むしろ今ので幻術が解かれたのに気付いたお前らに感嘆するよ俺は。

「あー・・・・」
パラパラと流し見しただけで・・・・解ってしまった。
まさかと思いつつ思わず呟いてしまった。

「月と雲・・・・」

「「え?」」
それに2人は過剰に反応を示した。
それから。

「ま・・まさか」
イルカを見つめ。

「「空さん?」」

あっさりばれた自分の暗部名に光月と流雲をツキクモ呼ばわりするのはどうやら
自分だけか限られた人物しかいないのだと気付いてしまい、そんな場合じゃない
と言うのに
(うわ)
そんな特別扱いにかなり嬉しかったりしたイルカが居た。


おしまい