「藤峰有希子って知ってる?」
何故か最近そんな会話を耳にする。
あんな一昔前の女優の話がなんで突然登場したんだ?
江戸川コナンのご両親
「ねぇコナン君。藤峰有希子って女優さん知ってる?」
「は?」
突然の問いにコナンは間の抜けた返事をしてしまった。
と言うのも知ってるもなにもあのボケボケお袋さんはつい先日またもやダーリンと喧嘩したと夜中の3時にも関わらず電話で叩き起こしてくれたのだ。
時差を考えろっっ。
「やっぱりコナン君も知らないかーなんかねーこの前言ってたのー」
「何を?」
「昔すっごく人気でね、綺麗だし、演技力もあったしーなんと言ってもすっっごく有名な小説家さんと結婚 したんだって」
「へ・・へぇ。」
「し・か・もぉぉその子供がそれ以上にものすっっごく有名な探偵さんだって言うから凄いなーって。でもお母さんに聞くと知ってるんだけど友達だーれも知らないんだよその女優さんの事」
そりゃかんなり昔に引退したしな。
「あーそれ僕も見ましたっ。この前テレビであの人は今っっ特集があったんですよコナン君」
そう言うことか。光彦の言葉にコナンは納得した。
「それなら私も見たわ」
珍しく灰原哀が加わってきた。
「20年前のトップスターという題目だったわね。結局どこにいるのか消息掴めなかったって話だけど?」
簡単に掴めたら編集者さんもありがたいことだろう。
日本どころか世界中に逃げ回るあの二人の為に専任の編集者が5人は付くというのだから大したものだ。
というより迷惑な作家だ。
「なんだよまたその話かよー。俺見てないから全然わかんねーんだよなーコナンみたかー?」
「いや全然しらねー。」
その言葉に元太はニカッと笑い、仲間仲間と嬉しげにコナンの背中を叩いた。
バシバシと遠慮なく叩かれ体重の軽いコナンの体は机にお腹をめり込ませた。
「っってーっっ元太っお前けんか売ってのかっっ」
「え?違うって友情ふかめてんだろ?」
「腹うったぞ」
「わりーっお前お腹に肉ねーもんなー」
「元太君でしたらお肉でガードできるんですけどね」
失礼な光彦の言葉にも元太はそうそうと笑いながらうなづきそのままコナンの不機嫌そうな顔を無視した。
どうせ俺は肉ねーよっっ。
「それでねーコナン君。その番組で消息が掴めなかったのって初めての事態なんだって。だから特集の特集が組まれてね、藤峰有希子を見かけたらご一報こーなーが出来たの」
なんだそりゃ。
眉を寄せるコナンに
「それはですね。藤峰有希子をもし見かけたらこちらの番号に電話、もしくはFAX、はたまたはがきで連絡をって言うことです。そして毎週その番組で情報を公開するつもりらしいですよ?」
それは見つかるまで続くらしい。番組も考えたものだ・・というか良いのかそんな事して?
そんな馬鹿げた夫婦探すより犯罪者探した方が世のためじゃねーの?
「それで、それでね、もし見つけてテレビ局まで連れていったらその場で沖野ヨーコちゃんのサインが貰えちゃうんだよ」
「実は僕狙ってるんですよっ。ほら見て下さいカメラっっ」
写真でもオッケイなのだろうか?
「歩美もーー沖野ヨーコちゃんのサインも魅力的だけど藤峰有希子さんにお願いして仮面ヤイバーに会わせてもらえないかなーって思ってるの」
「なにっそんな事できんのか?俺も俺もっっ探すぞっっ」
歩美のちゃっかりに元太が意気込んで乗る。
「それで顔が分からないから何か資料がないかと探していた・・と言う訳よね?」
「うん。だって写真集とか古くて色が綺麗じゃないんだもん。それにずっと昔のだから顔変わってるだろうし」
安心しろ。ぜんぜん変わってねー。むしろ変わってなくて怖いくらいだ。
「コナン君物知りだから知ってるかもって思ったんだけどなー」
「ごめんね。さすがに生まれる前の有名人は詳しくないな」
申し訳なさそうなコナンの顔をジッと見つめていた哀はどうしたことか突然に口をひらいた。
「吉田さん。協力するわ」
「え?」
ええーーーーーーー!!!
歩美の不思議そうな声よりも大きくコナンの盛大な驚き声が教室に響きわたった。
「な・・なんで灰原お前・・・」
自分の親と知ってながら協力すると言うことは・・・嫌がらせか?
「私も一度会って見たいのよね名探偵の親というのに」
「はーいーばーらぁぁぁぁ」
そんな興味本意の事で俺の首を絞めないでほしい。
「大体日本にいるのかしらねその人?」
「さあ?わかんなーい」
「それから調べてみましょ」
どうやって調べる気か知らないが灰原は乗り気だ。
しかも元太も光彦もやる気満々・・と言うことは、自分一人逃げ切れる筈がない。
「もちろんコナンもくるよな?」
「当然ですよねコナン君?」
元太と光彦の笑顔が痛かった。
作業は順調に進んだか・・と言えば実はそうではなかった。
何せ彼らは小学生。限界というものが(いくら名探偵とマッドサイエンティストがいても)存在するのだ。
その科学者は言った。
「無理ね。今日はやめましょ」
あっさり諦める哀にホッとしたがまだ油断はできない。なにせ彼女は「今日は」と言った。
「は」と言うことは明日もやる気なのだろう。
「ええー灰原さんもう帰っちゃうのー?」
「ええ。今からしなければならない事があるからごめんなさい」
にこやかに微笑むと歩美の制止を軽く受け流し背を向けた。
どこまでもゴーイングマイウェイなお人だった。
「まあいっか。明日も付き合ってくれるみたいだし。灰原さん今回はいつもより積極的だよね」
嬉しいなーと話かけてくる歩美にコナンは引きつった笑みしか作れない。
「よかったな」
現在敵は目の前に三人。とりあえず強敵は去った。
だが家で何かする気かもしれないから安心は出来ない。
コナンはバクバクする心臓をそっと押さえてみた。
頼むから何事もなく終わってくれよ。
果たしてコナンの願いは思わぬ形で崩された。
「コッナンちゃぁぁぁぁぁぁぁん」
授業参観。何故いるのか?なんて愚問はする気はないが、背後から聞こえてくる声にコナンはぐったり机に引っ付いた。
「この問題が分かる人いるかなー?」
担任の声に次々と手が上がる中コナンが反応しないのが悔しいのかまたもや叫ぶ。
「コナンちゃんっっ」
「そんな問題も分からないのかコナンっっ」
しかも一人じゃない。
ダブルアタックだ。
渋々手を挙げると当てない訳にいかないのだろう担任が仕方なくコナンを当てる。
「江戸川君」
「9です」
「はい。良くできましたー」
たかが一年生の算数。
どうしたら間違えられる?
それなのに背後の人間の喜びようといったら。
「キャーコナンちゃんお利口さんっっ」
「うむ。さすが私の息子だ」
何故こんなに飛びはねているんだ・・・。
「江戸川君・・・ごめんなさい」
今更謝られても後の祭り。
まさかコナンの両親がこんなノリの人だとは思わなかったのだろう灰原哀が隣りの席から申し訳なさ下に頭を下げた。
「いいよ、もう・・」
今更だし・・・遠い目で答えるとさすがの哀もしまったわと言った顔を見せた。
確かに哀はこの両親ズにコナンの授業参観の情報を入れた。だが、それに食いついたのはこのお祭り好きの二人なのだから哀だけが悪いとは言い難い。
「あの・・あの違ったら申しわけ無いんですけど・・もしかして藤峰有希子さんですか?」
ミーハー丸出しの誰かの親の声が聞こえた。
ほら見ろバレた。
今日の格好は変装と言っても帽子とサングラスだけだから分かる人には分かる。
しかも今はやりの『藤峰有希子』の名前にクラスの女子はおろか男子、さらには担任まで一気にコナンの母に注目した。
それに口元に手をあてふふ・・と笑うと
「違いますよ。工藤由希子です」
ニコリと気負いなく答えた。
ああ。そりゃもうあっさりとな!!!
「やっぱりっっ元、藤峰有希子さんですねっっそしたらもしかして隣りの方は工藤優作さんっっ?」
「はい。あ、でも今は子供達の授業中ですのでこれでお願いしますよ。」
人差し指を立て唇に当てるとキザに片目をつむったその男に一気におばさま方がエキサイトした。
「あ・あ・あ・あああああの。サイン頂けますか?」
「私もっっああ何で今日に限って小説持って来なかったのかしら。近くに本屋あったかしら」
「どうしましょう今日は化粧のノリ悪いのに・・」
「お母さん・・・」
自分の母の興奮ぶりに後を振り返り固まる子供が続出。
「・・本当にごめんなさいね江戸川君」
「・・・」
返す言葉は無かった。
その後、
「よーコナンーよくも俺らを騙してくれたなーー」
「そうよっコナン君ったらひどーい」
「なんで黙ってたんですかっ」
「言えるかーーーーー」
三人のお怒りの言葉に叫び返し、だが今回は灰原哀という心強い味方がフォローに入ってくれたおかげで事なきを得た。
それと―――――
「えへへ。仮面ヤイバーと握手しちゃった。」
「僕もですヨーコちゃんとも握手したし・・。この右手絶対に洗えません」
「写真も撮ったしな。自慢してやろー」
コナン率いる子供達に連行されて、テレビ局に連れて行かれた有希子と優作はそのままテレビ出演を依頼され、『藤峰有希子を見かけたらご一報コーナー』に早々にピリオドを打った。
「コナン今日は家に帰って来なさい」
父の言葉は予想していたためすでに蘭に連絡はいれてある。コナンがランドセルから鍵を取りだし二人で懐かしの我が家へと足を踏み入れた(有希子はアイスクリームが食べたいと言いだし、一人コンビニへ出掛けた為あとで来るらしい)
「ああ。分かってる。それよりいい加減さっさと逃げないと編集者が鬼のように束になって追いかけてくんじゃねーの?」
丁度今日放映の『あの人は今』だが、さっき撮ったばかりの映像を使うのは当然のこと。
と言うことは今日日本にいることは夜にばれるのだ。
「分かってる明日のお昼の便で行くから大丈夫だ」
「それなら良いけど。ああ。そうだ学校にフォローいれとけよ。ものすげー騒ぎになって授業中止になったんだからな」
「それもすでに菓子折送っておいたよ。心配性だなーコナン・・新一は」
「こんな親持つとそうなるんだよ。」
「こんな親ってどんな親の事よーーー」
「げっ母さんいつの間に戻って来たんだ」
近所に買いに言った有希子はコンビニで人々に囲まれてしまい、近場にも関わらずアイスを買うだけで1時間もかかってしまった。
「新ちゃんの為に日本に戻ってきたのに酷い」
「為になってない・・・って」
「有希子諦めなさい。結局息子というのはいつか離れていくものなんだよ」
なんだよまるで俺悪者じゃねーか。
「だって・・そうね。放任過ぎたのが悪いのかしら。新ちゃんの授業参観って一度もいけなかったじゃない?」
本当は行きたかったがまだ有名人だった為、騒ぎを恐れて有希子は参加できなかった。
昔の方が今より常識を知っていたのかもしれない。
「今はコナンちゃんだけどでも一度くらい親に授業見て欲しいかなーって思ったの」
「母さん」
恥ずかしかっただけだけどな。
だけどあれが授業参観と言う物なのかもしれない。
気恥ずかしくて、背後が気になって(別の意味で気になってしょうがなかったが)そわそわしてしまう。そんな感じ。
「授業つぶしちゃってごめんね。それと・・・ただいま新ちゃん」
何カ月ぶりかに顔を見せたと思ったらひと騒動を巻き起こし嵐のごとく去っていくはた迷惑な人だが母であることに変わりはないし。
そんな有希子が嫌いではない。
そんな夫婦は結構俺の理想かもしれない。
一生なれないだろうけど。
「お帰り母さん。父さん。」
「そうそう今日は快斗君も呼んでパーッッといきましょ」
「は?」
「だってーまだ私快斗君見てないんだもーん」
「私も見てみたいな。お前が気に入った男だろう?しかも頭がいいとか?」
気に入ったって・・この二人どこまで知っているんだろうか・・いやその前に俺快斗の話この二人にしたか?冷や汗ダラダラのコナン。
そうして心の準備が出来ぬまま、颯爽と現れた陽気な男にコナンは頭を抱え込んだ。
「うっわー感激だなーこんな有名人に会えちゃうなんて」
「私こそ感激だよ。まさかこんなにそっくりさんだとは思いもよらなかった。さあさあっ上がって」
「んっきゃーー新ちゃんそっくりっっやだどうしよう。ゆうさくー写真撮ってぇぇぇ快斗君とコナンちゃん二人のツーショットーーー両手にはなーーーー♪」
まるで新ちゃんが二人いるみたいーーー興奮気味の有希子。
酒の相手が出来たと快斗と二人延々飲み続ける優作。
しかも何故か我が家でもないのにくつろいでいる快斗。
一人、部屋の隅で現実逃避したい気分のコナンは母の
「コナンちゃん。ところで快斗君とはどこまでいったのかしら?」
の一言にあっさり大阪までなんて流せる神経をもたず、飲んでいたビールを吹き出した。
「か・・母さんっっ」
「いやーん汚い。快斗君ティッシュ取ってー」
「あ、はーい。・・ってコナン?お前何吹いてんの?」
まるで子供みたいじゃんと笑う快斗にコナンはぷっつん何かか切れた。
(誰のせいだ誰のーーーーーーーーーーーーーー!!!)
「うっせーーーーーー!!!!!!」
そのまま久しぶりの親子対面もなんのその自室に入ってふて寝をしてしまった。
「あらら。相変わらず照れ屋さんね。新ちゃんったら」
「そうなんですよーでもそこがまた可愛いvv」
「ま♪惚気られちゃったわ」
「そういう有希子さんだっていつもさんざん惚気ているじゃないですか。」
「うふふ。新ちゃんは聞いてくれないんだもの。またメール送るわね」
「今度はコナンのラブリー写真も貼付して返信しますよ」
「あら。じゃあお礼に新ちゃんの小さな頃のエピソードでも聞かせてあげるわね」
うふふ。あはは。
傍で聞いていた優作があまりのノリノリさに付いていけず哀れな息子に同情を寄せるほど二人は意気投合していた。
「ちなみに快斗君。二人の関係はどこまで?」
「それは、ノーコメントです」
諦めない母と辛抱強い快斗の闘いは朝まで続いたという。
二人の対決の結果は次の日の母の態度でよく分かった。
おしまい
 
あとがき
開口一番に言いたい事は、
仮面ヤイバーの事。
彼がアニメの人なのか戦隊物の人なのかさっぱり解らないまま書いてしまいました。
間違ってたらすみません(涙)
いやそんな事にこだわっていてどうするっと思ったんですけど、どうにも気になってしまいまして。
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