突然だが風邪を引いた。

それはもうすんばらしくひいた。


ボンッと熱が出たわけではなく。

頭がガンガンするわけでもない。

最初はちょっと喉痛くてトローチとか飴とか舐めてたんだよな。

そんで喉痛くてイライラするから近場にいた奴(主に快斗)に八つ当たりしたりして・・・・。


そのうちあー喉治ったと思ったら今度はさぁ―――――



         無言の日



こーえーがーーー出ないーーのぉぉぉぉ。
朝起きたらそうだった。
「おはよ。何してんのコナン?」
無音で叫ぶ俺にとっくに起きて着替えていた快斗は不思議そうに尋ねた。



丁度快斗ん家に泊まりに行った日の事だった。
昨日夜遅くまでだらだらとどーでもいー事しゃべってさ、いつの間にか寝てたんだよな。
パクパクパク口を動かす。
出るのは息のみ。

「ん?読心術やれってか?」

ちぃぃがぁぁううううう。
ブンブン首を振る。
「それじゃぁ。うーーん。鯉の真似っっ。ってうおっっ鯉って魚じゃねーかやめろよコナンっ。」
勝手に言って勝手にビビってんじゃねーよ。
それにもブンブン首を振る。
なんでIQ400もある奴がこんな簡単な事思いつかないんだよっ。

それともわざとか?
俺昨日なんか怒らせるような事したか?
なあっなあっっと襟首ひっつかみ無言でつめよる。
どうやらこれには快斗も参ったらしく。
両手をあげて

「うっそーん。解ってるって声でないんだろ?」


うんうん。解ってるんなら最初っから言えよっ。
とりあえず一撃加えておく。

「お前足癖悪い。」

そりゃ未来のエースストライカーだからな。ふふん。
口で言いたいけど言えないってーのは結構つらいな。
もどかしい。
しかも相手が快斗だと伝わっててもわざと違う解釈したりするからたまらない。
だからと言って他の奴を呼ぼうにも声が出ないんじゃ電話もできねーし。



あーーーつまんねぇぇぇぇ。



「風邪かなぁ?」
そういや一昨日くらいまで喉痛いって叫んでたもんねー。
あーなるほど。
と二人でこくこくうなづく。風邪か。一番ありえるな。

「俺が前声出なかったときってカラオケやった次の日だったんだよな。でもお前がカラオケ行くわけないし?」
ってか昨日一日一緒にいたくせにわざわざ聞くか?
あーあーどぉぉぉぉっせ俺は音痴ですよ。
はっ歌がうまいからなんだってんだ。



「あらーすねちゃった。ちょっと待ってな母さん呼んでくる。」
『なんで?』
パクパクと息で聞いてみる。
「ん?風邪の症状ってのは母親が一番解るもんだろ?」
そゆもんか?俺んちじゃ母さん全然わかんない人だからな。
ゆーさくぅぅーー助けてーーが口癖の母さん。
多分俺が熱だして寝込んだら仕事で缶詰になってようが父さんに助けを求めるだろう母。
そんで父さんも甘いから仕方ないなとか言って部屋から出てきたりすんだよな。
あーいかわらずのラブラブバカップル健在。


「コナンちゃん熱はあるのかしら?」
快斗を後にひかえやってきたおばさんは俺の額に額をあてる。
こうやって熱計られたのって初めてかも。
「んーないみたいね。それじゃあ頭痛い?」
んーん。首を横にふる。
「喉は治ったのよね。」
「そう昨日はなんとも言ってなかったし。」

八つ当たり君第一号は本人が答える前に答えてくれた。彼が一番被害にあっていたから解るのだろう。

「んじゃ気持ち悪い?」
ぶんぶん。
ぜーんぜん。へーき。
「あら。だったら声だけね。大丈夫よほっとけば治る治る。」
「そゆもん?」
「まあ念のため薬飲んで家でゴロゴロしてなさい。」
心配そうな快斗に苦笑しつつおばさんは俺の頭をなでながら言った。
コックリ。
クチパクで『ありがと』と言うとおばさんはにっこり笑い俺の手を取った。

「薬の前に朝ご飯食べないとね。」




階下に降り、居間へと行くとすでに朝ご飯が並んでいた。
「さっきコナン呼びに行くとこだったんだよ。」
ご飯だよーと言う前に俺の奇行を見て目を丸くしてしまったらしい。
『へーそーだったんだ。』

今日はパン食。
フレンチトーストにサラダ。
それとヨーグルトとフルーツ。

うーん。俺だけだったら食パン(しかも焼くのめんどいから生)一枚で終わりか朝ご飯食わずに終わるよな。
手を合わせて『いただきます』
「いっただっきまーす。」
「フレンチトースト足りなかったらまた焼くから言ってね。」
うんうんとうなづく。
食欲はあるみたいだし大丈夫だな。
うん大した事ねーじゃねーか。単に声でないだけで。


隣で新聞広げながら食う男に目をやり
『お・や・じ』
と言う。
簡単に無視された。
ちぇっ。声に出てないから気づいてないのかフリしてるのかわかんねー。

「もー快斗ったら新聞広げながら食べるのはやめなさいっっどこかのおっさんみたいよ。」
「へーへー。ちょっと待って。今いーとこ・・・。」
新聞から目を離さない。
どうやらさっきの俺の言葉は見えてなかったらしいな集中してる。
なーんだ。無視してたわけじゃないのか。

「まったくもぅ。困った子よねーコナンちゃんっ。」
ねーと一緒に首を傾げる。
こんな可愛いおばさんは好きだ。いーよなー快斗毎朝こんな手料理食えて。



「おいしい?」
『うん。』
満面の笑みでうなづくとおばさんも嬉しそうに笑ってくれる。
なんか嬉しい。





だが食事も終わりに近づこうというころおばさんは突然に叫びだした。




「うーーーコナンちゃんのかわいーーー声が聞きたいーーーーーー。つまんなーーーい。」


おう。


駄々をこねるおばさんに俺はポカンとした。

いやつまんないって言われてもね・・・。

机をこぶしでゴンゴン叩き、首をぶんぶんとふりまわす。

「だって快斗ってば新聞読んでるしーー今日はコナンちゃんと楽しくお話しながら朝ご飯ーーてウキウキしてたのにーー。」

えーーーん声が聞きたいよぉぉぉ。

俺にどうしろと?

困り果てた俺は隣に目をやる。
新聞から目を離さない快斗。
聞こえてる癖に聞こえないフリってか?なあっ俺声でないんですけど・・・。


ジーーーと穴が開くほどみつめる。



見つめる




見つめる



見つめる


見つめる

見つめる

見つめる



「なあにコナンちゃんってば俺見とれるほどいい男?」

フォークで襲いかかる。

「うわータンマタンマそれは痛いっっやめてっプリーーズ。」
フォークの先で脅すとようやく新聞をほうりなげて未だ泣き叫ぶおばさんへと向き直った。

「母さん。今一番つらいのはコナンなんだよ。今こそ母さんの包容力で包んでやらなきゃっっ。」
もっともらしい事をもっともらしい顔でのたまった。
「・・・いいの?」
「は?」

あまりの低い声音に快斗は引きつった笑みをみせた。
「コナンちゃん包んじゃっていいの?私が包んじゃってそんでついでにその包み頂いてっちゃうわよ?」
「・・・・・。」
えっとぉ。
母さん切れてますね。
据わった目がマジっぽくて怖いです。

「コナン。すまん俺にはもうどうしようもない。」
『まてぇぇぇぇお前の母だろうがっっ』
「いやそうなんだけどさ。」
切れた母さんをなだめられるのは父さんだけなんだよね。
今は亡き父のみ。
『うちと一緒か・・・』
お腹が空いたと泣く母をなだめる父を思い出す。
何故その程度で泣くかなと思ったらどうやら父に構ってほしいだけらしい。
やれやれどこの家も一緒かね。


『おばさん。泣かないで。明日にはきっと声も治ってると思うし』
クチパクで言うがさすがに伝わらない。
うーん困った。
それが伝わったのか以心伝心で快斗がノートとペンを持ってきてくれた。

ホイッ。

ん。さんきゅ。

クチパクどころか目だけで会話。
おー便利だぞ快斗。


さっき言った言葉を紙に書く。
そうすると何故か泣きやんだ。
俺の手からノートをひっつかむとそれをまじまじと見つめる。
やだなぁそんな見られると恥ずかしいんだけど。


「かっわいーーーー。」

は?ノートが?


「だろ?」

解ったらしく快斗も相づちをうつ。

「コナンちゃんの字っっ。かわいーー。ねっねっもっと書いてっ。」

かわいい・・・・・。

なんでだ?俺普通に書いたぞ?
はいっと渡されたノートを見やる。
いつもの俺の字。工藤新一の時とは手の大きさが違うせいか全然違う字。
まあこのくらい下手じゃないと小学一年生の字に見えないから丁度いいか・・とか思ってたけど可愛い?


どこが?

『どこが可愛いの?』
書いてみる。

「いやーーーん可愛いーーかわいーーー。」

どうして・・・。

ガクリと地面に手をつく。
そんな俺の頭にポンと手を置き快斗は「まあいーじゃねーか」
と笑った。
いやまあ泣き叫ぶおばさんを止められたのはいいけどさ。

この俺のブロークンハートをどうしてくれんだお前は?

「俺の愛で包み込んでやるよ。」




いらないそんな愛。





結局その日一日おばさんとはノートで会話。
そのたび可愛いと叫ばれ抱きしめられ俺は何度涙したことか。
完全に声が出るようになるまでは更に3日かかった。
それまで恐竜の鳴き声のようなうめきでずっと会話をしていたのだ。
治るまでにどれだけの人に笑いものにされたやら。

涙でマクラを濡らすなんて一昔前の少女漫画的事態まで引き起こしてその騒動は5日目の朝にやっと収まった。

久しぶりに登校すると以前見舞いに来た少年探偵団が「つまんな〜い」とか治った声の文句を言いやがるわ灰原の「あら残念。せっかく新しいクスリ試そうと思っていたのに」等の言葉がまっていた。

俺を心配してくれる友はいないのか?




頭痛くてもいい。

熱だして寝込んでもいい。

喉痛くてもいい。

気持ち悪くてもいい。


だから

だから―――――


声が出ないのだけはいやだぁぁぁぁぁ。



江戸川コナン6歳。

今回は一つ人生の試練を乗り越えたような気がしました。

end

事件ものにしようか悩みましたが、平和な日常ギャグこれでクリアーできたでしょうか?
コナン君にとっての平和。事件にしたら平和じゃないだろうか?いやだがコナンはいつも
事件まきこまれているし簡単なものなら平和な日常オッケーでは?
とかムダにものすごく考えてしまいましたね(何故に)
彼の日常って一体っっ(笑)


2002.1.20 By 縁真