続・小さな結託(後編) 「あー美味かった」 もちろんケーキも嬉しかった。 あんなに美味しいケーキこの先なかなかお目にかかれないだろう。 だが、一人で過ごす筈だった今日という日にあの二人と関われた事がとても嬉しかった。 「いやーなんか元気出てきたぞっ」 よっしゃーんじゃコインロッカーにいって見ますかー。 手にしたキーは近所の駅のロッカーであることは確かであった。 一体何がはいってるんだろ? 駅までの道すがら白馬が入れそうなものを考え楽しんでいた快斗は駅が見えた瞬間猛ダッシュし出した。 さあってお目見えっ。 「・・・・・」 がちゃりと開くとそこには信じられないものがはいっていた。 鍵。 「がぁぁぁぁん。」 ショックを口で表してみた。 一個や二個ではない。 「1.2.3.4.5―――――」 19個もある。 「いやん俺に何させる気なの白馬っちー」 じゃらじゃらと大量のコインロッカーの鍵を手にして快斗は泣きたい気分だった。 もう一度閉めて帰ろうかな・・と思った瞬間ロッカー内の右側の壁に紙が貼ってあるのに気付いた。 慎重にセロテープをはがすと開いてみる。
そこまでよんで快斗はつい突っ込む 「気付くに決まってんだろうがっ」
それでは頑張って下さい・・・ねえ。 あなたが気に入るもの・・・ねえ。 これは、一体、誰に、宛てた、手紙なのか・・・が大変重要ですねぇ。 俺が気に入る物がはいってても勝手に貰うわけにいかないし、うーん試しに一個だけ開けてみるか? もう一枚の紙を開いてみると19個の文字の羅列の中にここの駅構内にあるもう一つのコインロッカーの名が書いてあった。 近いし行ってみるかな。 しかしこれきっと罠だよな。 二つ目のコインロッカーを開けた瞬間快斗は思った。 19個のうちの一個目で当たりってさーなんか読まれてるっていうかさー。 「これってどーゆーわけだ?」 中には紙袋が一つはいっていた。そしてやはり右側にセロテープで手紙が止めてある。 先にこちらを読む事にした。
「ふざけてる・・絶対こいつふざけてる」 あまりの脱力感にへなへなと足の力が抜けてくる。 俺にあと18個も回れってか? 茶色い紙袋は大学ノートサイズでペラペラに薄い。 最初こちらが手紙かと思ったほどに。 手紙を広げたまま入れたらこのくらいの大きさだよなー。 封がしてなかったので試しに中を覗いてみた。 「あ。」 そっか写真かぁーーーってちょっと待てこれってコナンちゃんのラブリー写真っ。 むちゃくちゃ笑顔じゃねーか。うおっ欲しいっっ。 しかも大判に伸ばしてるのだからこれまた嬉しい。 あの部屋に飾りたいなー。 貰って行こうかなぁ。 でも人様の奪うのって泥棒のする事だしーって俺泥棒じゃーん。あはははは。 「ま、いっか」 ということで着服することに致しました快斗君。 そっさく足取りかるぅく次へと参りました。 「あーまたハズレーちくしょー。」 「おっ当たりっっ今度は何かなーすげー俺の欲しかったゲームソフトじゃねーかっラッキイーー」 すっかり罠にはまりこんでいる快斗は次々とコインロッカーを回る回る。 あたるたびに荷物が増え、ちょっと持ちきれなくなって来た頃 「あれ?黒羽君?」 コインロッカーをあけようとした快斗の背後から声が聞こえた。 快斗はビクリっと肩を揺らすと慌てて振り返った。 「ら・・蘭ちゃん。お久しぶりぃ」 「うん。会うのは久しぶりね。どうしたの汗かいてるわよ?」 ロッカーにへばりつくような快斗の様子に蘭はキョトンと尋ねた。 「いや。ちょっとビックリしちゃって」 後ろめたい事をしているせいか胸がどきどきしていた。 「そう?それよりその荷物どうしたの?」 「いや・・ちょっとその・・貰ってさ。」 「そうだったんだ。さっき遠くから黒羽君見かけてね、持ちにくそうだなって思ったからそこのお店の人に袋を一枚貰ってきたの。はい」 にっこり手渡してくれた大きめの紙袋に快斗は思わず苦笑してしまった。 本当に気が利くなー蘭ちゃんって。 ありがたく手に抱えていた品をバラバラと紙袋に放り込むと 「ありがと蘭ちゃん」 「いえいえどういたしまして。ごめんねお話したかったんだけどちょっと今から用事があって」 「ううん。俺も用事あるからおアイコだよ。そうだっ今朝は早くから起こしちゃってごめんね」 「いいのよ。こちらこそコナン君が失礼な対応しちゃったし」 クスクス二人で笑いあいそのまま「それじゃあ」と手を振って別れた。 「うーん本当にいい子だねぇ。」 さすが新一の幼なじみさんだ。 まるで近所の親父のような感想を一言述べようやく目の前のコインロッカー攻略にかかった。 「作戦第3終了っ。結構予定通りね。それじゃあ次はコナン君お願いね」 『はーい蘭ねーちゃん』 「うはー思った以上に俺好みのばっかー。っていうかぁ」 俺用じゃねーの? 次のロッカーで最後である。 場所は快斗の家の近く。 そのまま帰れば丁度いいかと思い、この順番にしたのだが・・・。 どーもうまくはめられた気がする。 そしてそんな快斗の予感はやはり的中したのだ。 最後のロッカー。中の手紙をみれば一目瞭然。
があーーーーーーん。見事にはめられた。 いや薄々そうかなぁとは思ってたけどなんかなんか・・・白馬ぁぁぁぁコインロッカー代って結構高いんだぞぅぅぅ。 庶民的な突っ込みをつい入れてしまう。 しかし見事だった。 疑いながらも思わず最後まで付き合ってしまったのだから。 とりあえず次の紙を見てみる。 そこには見たことのあるような字で
紅子ぉぉぉぉ。 さっき会ったばかりの少女の顔を思い出し快斗はペタッとロッカーにもたれかかった。 あのでっかい写真をかっさらったのが2ヶ月前。 その二ヶ月前にこの予言をしたのだ紅子は。 果たしてあたるのか。 いや当たらないほうがビックリなくらい正確な紅子の言葉だ。 行けば俺の幸運とやらに出会えるのだろう。 幸運っていうくらいだから嬉しい事が起こるんだよな? 行かなきゃ損ってか。 多分この時点で予想はしていた。 幸運の内容。 でも出逢うとやっぱり感動は一押し。 東へ後100m残したころだろうか前方に小さな少年を見かけた。 俺の幸運ーーーーーーーーーーーー♪ 「こっなんちゃーーーーーーーーーーーん」 弾む足取り弾む声。あんもう白馬ぁ紅子ぉさ・ん・きゅって感じぃぃ。 罠にはめられたのなんかどーでもいいくらい幸せな快斗。 一気に50mに詰めてきた男にようやく振り返ったコナンは大きな目をさらに大きくして慌てたように逃げ出した。 「なんで逃げるのおおー」 「俺は用事があるんだぁぁぁ。」 「えーだってー俺の幸運ー」 「わけ分かんない事言われても俺は困るー」 「いーじゃーんちょっとくらい話しようよー」 「お前の場合離してくれなくなるだろうがっ」 「だめ?」 「だーめー」 全力疾走しだしたコナンに余裕をもって快斗が追いかける。 とりあえず間を5m以上あけることにしておいてコナンをただ追いかけた快斗。 とうとうコナンは息切れしてしまい、立ち止まった。 「疲れたー」 「そりゃあれだけ必至に走ればね。」 コナンの前にしゃがみ込み大丈夫?と顔をのぞき込む快斗を未だ肩で荒く息をするコナンはギッと睨み付けた。 訳をするならば『大丈夫なわけねーだろ』 だろう。 「ったく変態みたいに追いかけてくんなよ」 「せめて犬に例えて欲しかったけど・・っていやそれより変態に追いかけられた事があるのかっコナンっっっ」 両肩をひっつかみゆさぶる快斗にコナンは頭がクラクラしてくる。 「お前・・おれを殺す気かぁぁ」 「あ、ごめん。それより変態・・」 「それは置いて置け。」 いいたくないらしいコナンに快斗は事情をさっし頷いた。 ちくしょうコナンちゃんを追いかけた変態ってどんな奴なんだあ。 はっまさか服部?いやまさかそんなやばいことあいつがするとは・・・・するか? 「服部じゃねーぞ」 「俺の考えよまないでちょうだい」 ポーカーフェイスで装って居るはずなのに何故分かるんだかコナンはズバッと快斗の思考をあててしまう。 「いや俺もそう思ったし。お前か服部かなぁって。お前の可能性は拭えなかったけど服部で無いことは確かだったな。言葉がこっちの言葉だったから」 「ふむーって俺の可能性もあったわけねーーーー」 「探偵っていうのは身内すら疑ってかからなきゃなんねーんだよ。」 「俺と服部しか疑わなかったくせにぃ」 「他にやりそうな奴いるか?」 「いませーん」 鮮やかに確信を突かれ快斗はうなだれてしまう。 「あっれー何してんの二人とも?」 どうやらある家の門の前に二人はしゃがみこんでいたらしく、その声にハッと慌てて立ち上がった。 「園子ねーちゃん」 「園子ちゃん」 なにか大量にお菓子の入った袋を抱えて園子はそこに立っていた。 と言うことは 「あれーここって園子ちゃん家?」 違うはずだよな?と思いつつ試しに快斗は尋ねてみた。 「っていうか別宅。パーティーとかちょっとした何かをするときに使うのよ。普段使ってないからちょっと借りちゃった。そうだちょっと黒場君手伝ってくれない?」 「はいー?」 うむを言わさぬ勢いで手を引っ張られ家へと引きずりこまれた。 なんか俺こき使われそうな予感。 「はえーなにこれ?真っ暗じゃん」 家に一歩入るとどこもかしこも真っ暗だった。かろうじて前にいる園子が見える程度だ。 「ちょっとここで待ってて今電気付けてくるから」 「ああ、うん」 なんだろう妙な空気だなぁ。 その理由を探ろうとしたとき隣りに気配を感じでびびった。 「こ・・・コナン?」 なんでここに?用事あるって言ったじゃん。てっきりそのまま逃走したと思っていた快斗は見え無いながらもコナンの気配を感じ取り心底驚いていた。 「快斗にーちゃん。はいろ」 それに答えるでもなくにっこり微笑むとコナンは真っ暗な中目の前のドアをバァンと開いた。 パンパンパンパンパン。 「うわっっ」 盛大な音に慌てて耳を押さえた快斗にちゃっかりすでに耳を押さえていたコナンは指を指して笑い出した。 「見事なシャッターチャンスだったわよっふふんバッチリ撮っちゃった」 園子の声がどこからか聞こえてくる。 そして ポワッと光ろうそくの灯。 「さあ。黒羽君。消して下さい。」 なんとなく暗闇に目も慣れてきたおかげてそのコナンに誘導されてろうそくに近づいていく。 なにがなんだか分からないまま(いや想像は付たけどいきなりで混乱してたからちょっと待てっっって気分だったんだよな。)吹き消すと一気に電気がついた。 「誕生日おめでとう黒羽君」 「おめでとー快斗」 「おめでとうございます黒羽君」 聞き取れないほど一気にいわれ快斗は呆けてしまった。 今日一日の出来事が走馬燈のように思い出される。 あれも罠。これも罠。全部罠? ただこれだけの為に。 そこまで考えて快斗は盛大に笑い出してしまった。 お腹を抱えて涙を流しながら。 「あははははははははは。お・・・お前らバカばっかっっ。あははははは」 床にこぶしを打ち付け狂ったように笑い続ける快斗に皆一様に微笑むと 「快斗。誕生日おめでとう」 コナンがポンッとしゃがみ込んでいる快斗の髪を撫でた。 「・・・・うん。ありがと」 笑いも一瞬で引っ込み、卑怯にも目が涙で潤んでくる。 ちくしょーこれは笑い涙だぁぁぁ。 「楽しかったでしょ?コインロッカー」 白馬の脳天気な言葉に快斗は戦利品を抱え上げてニヤリと笑う。 「これ一個目って了解済みなのか?」 「それは」 チラリとコナンに目を落としすぐに快斗に戻すとそっと唇に人差し指をあてシーとやる。 「ですのできちんと保管お願いしますよ」 相変わらずの善良な市民のような笑顔で白馬はあくどい事をさらりと言ってのけた。 「オーケィ。気を付けとく。他のってみんなから?」 それにニヤリと笑って返すと快斗は気になっていたことを尋ねた。 「そうです。みんなで相談して買ったんですよ。ここのメンバーと寺井さん。それに貴方のお母さんからです。それがみんなからあなたへの誕生日プレゼントです。」 「そっか。サンキュ」 寺井ちゃんと母さんまでグルだったとはな・・・そう思いつつも腹は立たない。 あーやべ。また涙でてきそう。ちくしょっ。 「会った時におめでとうを言わないようにするの、すっっごい大変だったんだから。」 青子の言葉に蘭と紅子が一斉に頷く。 「そうよね。思わず言っちゃいそうだったわ私も」 「ですわよね。思わず笑ってしまいそうでしたし」 「蘭の場合朝の電話の時もよね?」 「そう。口がむずむずして仕方なかったわよー」 園子の言葉に笑い出す蘭。 「そっかーそれも罠の一つだったんだ。思い返してみると言われてなかったよねぇ。」 会話がスムーズだったため全然気付かなかった快斗。 それに三人が嬉しそうに笑みを見せた。 作戦が完璧に成功したのが嬉しいのだろう。 こんな罠なら何度だってハマってもいいけどね。 快斗は思う。 「さあ。そろそろお腹も空いてきた事ですし始めましょうか」 白馬の言葉がパーティー開始の合図。 秘かにポテトをつまんでいたコナンが蘭と青子に怒られているのを横目にパーティーは始まった。 そして楽しくパーティーをして終わったかというと残念ながらそうではなかった。 「・・・・海の生き物がいるのぉぉぉぉ」 「「「「は?」」」」 蘭も園子も紅子も白馬も何が言いたかったのか分からず問い返した。 部屋を見た時点でやばいと気付いていたコナンと青子は視線を空に彷徨わせる。 「魚ぁぁぁぁぁぁぁ」 「あれ?黒羽君って魚・・・ダメなのぉぉぉぉぉぉ?」 園子が慌てたように叫ぶ。 パーティー用のお皿は実は全て魚の絵が書いてある。 別に何か理由があるわけではなく、たまたまそのお皿がこの家に置いてあったから使っただけである。そしてコップにも魚の絵。 「わ・・私紙皿と紙コップ買ってくる」 「あっ蘭ちゃん青子も行くっ」 「僕もっ」 快斗の怒りを恐れたのか青子とコナンが慌てたように蘭に続く。 「まぁぁぁてぇぇぇあーおーこーーーーーこーなーんーーーーーー」 ゾンビのような声に二人はひたすらぺこぺこ謝る。 「ごめん快斗っ青子も知らなかったんだよう。さっき快斗がくるちょっと前にここに着いたばっかりだったし、それに真っ暗だったんだもん」 「右に同じく。」 そんな二人に怒るわけもいかず快斗はしくしく一人地面にひっつくのだった。 解放された二人は一目散に蘭の後を追って家を出た。 とりあえずすべての皿とコップを片づけおえた園子はほうっと一つ息をついた。 「あーよかった。飾りに魚の柄つけないで」 「本当ですね。皿とコップが同じ絵柄だからいっそ部屋も魚で統一しようという案が可決されていたら大変な所でした」 「反対してくれた紅子ちゃんに感謝」 「わたくしの場合はただ単に部屋の飾りをする手間を惜しんだだけ。それが結果として良とでたのはラッキーでしたわね」 「ま、終わりよければ全て良しっといきましょっか」 「そうですね」 「同感ですわ」 そのころ魚の皿に触りたくない快斗はソファに座り誰もいない隙に幸せをかみしめていた。 腕には袋に入ったプレゼントを抱え込み、美味しそうな食べ物にヘラリと相好を崩す。 そして視界にはようやく帰ってきたコナン達。 俺って超幸せ者じゃん? 後日談 「ああ。そうだ快斗ー青子の誕生日の時もあのケーキ奢ってねー」 「えええっっ」 「だってケーキ一つ分は青子が払ったんだからっ。紅子ちゃんもオーバーしたからその分奢ってもらわなきゃね。」 元々一個だけのつもりだったため、それ以外は青子と紅子の自腹である。 カンパで集めてもいいが、紅子が別にいいですわと言い出したため、青子も請求しにくくなってしまったのだ。 それじゃあやっぱり奢ってあげた本人から貰うのが筋ってものよね。 「ふ・・二つ?」 「うん。あっそういえばそんなに美味しいなら僕も食べてみたいなーってこの前コナン君が言ってたよ」 「コナンちゃん・・・・本気か?」 甘いもの苦手なくせに。 はっまさか嫌がらせ?そのためなら甘い物の一個や二個食べるかもしれんあいつなら。 「さー?たーいへんだねー快斗ー3つも奢るなんて」 「勝手に決めるなー」 「いいもーんコナン君味方に付けるからっ」 「・・・・・・」 快斗の怖い物―――――魚 ―――――どうやら最近はそこに江戸川コナンが付け加わったらしい。 青子にその情報を横流ししたのは考えるまでもなく快斗の母。 (おばさん。良い情報ありがとう♪) 「なーんてね。冗談よー」という青子の言葉も聞かずフラフラとどこぞへと去っていった彼。 その後あるファースト店で「いらっしゃいませー」と笑顔で頭を下げる彼の姿を見かけた者がいるとかいないとか。 真実は未だ闇の中。 end |