歩美:先生!私、先生に訊きたいことが…(顔を真っ赤にして)
快斗:ん〜何かな、歩美ちゃん?試験問題は教えられないよ? 歩美:ええと、三次関数が分からなくて…じゃなくて!! 快斗:三次関数じゃなければ行列かな?(ボケボケ) 歩美:先生とコナン君って、一体どういう関係なんですか!? 快斗:おお、それはなかなかナイスな質問だね〜実は俺とコナン君は8年前から… 歩美:8年前から!? 快斗:そうしそうあ…(バキッと殴り倒される) コナン:快斗てめぇ、変なこと口走ったらタダじゃ置かねーからな!! 快斗:…乱暴だよコナン君!(瞳を潤ませて) コナン:泣き落としは却下だ!! 歩美:どうしたの、コナン君?(首を傾げて) コナン:あ、何でもないよ、気にしないで、歩美ちゃん!! 歩美:ホント? コナン:ホントホント!こんな先生おいといて、あっちで一緒に化学の勉強しよう… In a high school 7(続々・ウワサの真相〜美女と野獣〜) 最近、全学年の男子生徒の間にひっそりと広まっている噂がある。 いわく『1年1組の工藤コナンはメチャ色っぽい』 男子生徒の評価としてはいささか不適切な形容詞つきのこの噂、瞬く間に全学年に知れ渡ったが、恐ろしいことに誰一人として噂を否定をしなかった…。 明日から中間テストが始まるという、水曜日。 「俺、明日の数A、ちょーやばいんだけど…」 執行委員で回収したプリントの束を抱えて歩きながら、太田がため息を吐いた。 「数Aって太田のクラス、黒羽先生だっけ?」 同じくプリントの束を抱えた関口は、そんな友人を見て尋ねる。 「そうそう。まぁ、厳しいって噂は聞かないけどさ〜」 「だったらまだマシじゃねーかよ!ウチなんか数Aが恐怖の豊サマで、数Bがリンケンなんだぜ?」 もう絶望的、といわんばかりの表情で関口が訴えると。 「うわぁ、そりゃまたヘビーな…」 太田も心からの同情を示す。 「リンケンに苛められた中2の悪夢が蘇るぜ…」 気のせいか関口の顔色は悪い。 会議室へのいつもの道程も何となく重苦しい感じで、2人はそのまま黙り込んだ。 ところが。 「これが約束の…」 ある教室の前を通りかかったとき、2人の耳に聞き覚えのある声が飛び込んできて、2人は思わず足を止めて、顔を見合わせる。 美術室の中から聞こえるその声の主は、執行委員の仲間、1年6組代表の美少女・塚原真紀だ。 「コナン君の生写真よ。」 …は? 続く台詞にますます驚愕しつつ、2人は視線を交し合う。 (今の何?) (俺が知るわけねーだろ!) (塚原が工藤の生写真?) (だから、知らないって!!) 驚きすぎて声が出ないため、口パクでの会話となっているが。 とにかく、その場に留まり立ち聞きすることにした(笑)。 「サンキュ、塚原!この見返りは必ずするからさ!!」 知らない男の弾んだ声がする。 そしてそれに答えるのは婉然とした真紀の笑いだった。 「ふふっ、礼金は先に頂いているから、もういいのよ。それより、あなたがコナン君とうまく行くことを祈っているわ…」 …何やっているんですか、塚原さん!? 同時につっこみ、青ざめる関口と太田である。 「おぅ!任せてくれよ!俺がその気になって落ちないオンナはいないんだぜ?」 自信たっぷりの口調で言い切る男に、真紀がクスっと笑いを零すのが聞き取れる。 「そう?黒羽先生はかなり手ごわいと思うけど?」 「大丈夫、俺これから工藤と体育館裏の掃除だからさ!」 …ちょっと待て〜!! (どうしよう、太田?) (どうしよう…?) 嫌な予感というか、考えたくないというか、何というか。太田も関口も冷や汗をダラダラ流して凍りついたまま動けない。 「じゃあ俺、工藤のところへ行くから!」 体格のいい男子生徒が勢いよく飛び出してきたと思ったら。 「頑張ってね〜!!」 その後に続いて出てきた真紀が上機嫌でその背中にエールを送るのに、また、2人は呆然とした。 「塚原さん〜!!?」 真紀の正気を疑いつつ関口がその名を呼ぶと、彼女は目を丸くして振り返ってきた。 「あら、いたの?」 「いたの、じゃないだろ〜!?」 太田は思わずつっこむが、だんだん泣きたい気分になってきている。 「何しているんだよ、塚原さん!!工藤の生写真なんか…」 「結構いい値段で売れるのよ?」 「………」 …売っているのか。 平然とした顔であっさりと返されて、言葉を失う太田。 「てか、アイツなんなんだよ〜!?」 太田から役割を受け継いで、関口が先ほどの男子生徒が去っていった方角を指して尋ねると。 「あの人はコナン君を狙っている通りすがりの男子生徒その1よ。」 これまたあっさりと返される。 「…その1って…」 「いや関口、ここでつっこむべきところはそこじゃないぞ!!」 「そりゃそーなんだけどさ…」 「あなたたちって、結構おもしろいのね。」 どこまで本気だか分からない会話を交わす2人を見て、真紀はおもしろそうに笑う。 「…俺たち一応、マジメにやっているんだけど…」 何となく、彼女にだけは言われたくないと思ってしまうのは自分だけだろうか…と、少々遠くを見つめた関口の肩を、太田が揺さぶった。 「関口!ここで俺たちが挫けたら工藤はどうなる!?」 「ああ、そうだった!!」 「…あなたたちが挫けても、黒羽先生が助けてくれると思うけど…?」 諸悪の根源のくせに、いけしゃあしゃあとそんなことを言ってくる真紀に、太田の堪忍袋の緒が切れた。 「誰のせいだと思っているんだ〜!?」 そこが廊下という公共の場だということも忘れて絶叫すると、今度は関口が宥める側に回らざるを得ない。 「落ち着け、太田。ていうか塚原さん、黒羽先生のことが分かっていて何で他の男をけしかけるんだ?」 真紀の意図が掴めないと、素直に尋ねる。 すると真紀は、花のようににっこりと笑った。 「私、『K&Kラブラブ推進委員会』を密かに結成しようと思って。」 「…ヘぇ…」 …ということは、『K&K』というのは『工藤&黒羽』か?などと冷静に考える関口だったが。 「でも、それだったら普通、工藤を狙う男を排除するんじゃないか?」 素朴な疑問を口にしたら、小馬鹿にするような笑みを見せられた。 「恋は障害が多いほど燃えるのよ?」 「…へぇ…」 その笑みにはムッとしつつも、関口はそういうものかと思わず納得しかけて、太田に頭を叩かれた。 「納得してどーする!?工藤の危機にはかわりねーんだぜ!」 「あ、そうか…」 「体育館裏だったな、行くぞっ!!」 太田は関口の腕を掴んで、そのまま体育館へと向かって走り出した。 …プリント。 そう、2人が去った後には執行委員のプリントが残されていて、取りあえず、真紀はそれを拾い上げたのだった。 ところ変わって体育館裏では。 「小林のヤツ、遅いな〜」 大きな箒を片手に、きわめて不機嫌な面持ちで、コナンが後ろの席の男子を待っていた。 …ったく、なんで試験前日にまで掃除なんかしなきゃなんねーんだよ。 不満タラタラだが、家に帰ったところで大して試験勉強なんかするわけでもない。 「大体、私立なんだから掃除なんて業者にさせりゃいーじゃねーかよ。」 工藤コナン、相変わらず自分自身の危機には何のアンテナも働かないらしい(笑)。 のんきに掃除に関する不平不満を頭の中で並べ立てていた彼だったが、走ってくるクラスメイトを見つけると、箒を壁に立てかけて仁王立ちに立った。 「遅いって、小林!」 「悪い、ちょっと野暮用があって…」 小林は両手を合わせて済まなさそうに頭を下げてくる。 「ったくよ〜」 その『野暮用』がまさかあんなことだとは思いもせずに、頬を膨らませながらも許すことにしてコナンは箒を手にとった。 「まぁいいけど、早く終わらせて帰ろうぜ!!」 一応、試験前だし、と心の中で付け加えるコナンだったが。 「…早く帰って、黒羽先生と会うのか?」 「は?」 思いがけないことを言われて、きょとんとして小林を見上げた。 小林は中学のときからラグビー部に所属しており、どちらかというと小柄なコナンよりも二回りも大きい体格の持ち主だ。 「工藤、マジに黒羽先生とそーいう関係なわけ?」 そんな大男に思いつめたような目を向けられて詰め寄られて、さすがのコナンも寒気を感じた。 「なに馬鹿なこと…」 とにかく、否定しなければならない。 竹箒を両手でしっかりと握り締めて引きつった笑みを浮かべると、コナンは努めて明るい口調で言った。 「そーいう関係って言われてもよく分からないけど、黒羽先生は昔よく遊んでもらっただけで、別に小林が気にするような関係じゃ…」 そんなことを言っても誤魔化そうとしているのは明白で、小林はジリっとコナンににじり寄る。 「ふぅん、じゃあ俺が工藤に手を出してもいいってことなのか?」 そう言いながら、小林が獣のような眼差しで見下ろすと、コナンは表情を強張らせて一歩ずつ後退していく。 「冗談はよせよ…!」 「冗談じゃないって気がついているんだろ、工藤!」 強い視線で睨みつけられるが、竹箒を握り締めるその手が震えていることに小林は目ざとく気付いていた。 そしてコナンの背が壁についた、そのとき。 「工藤〜っ!!」 遠くから大声で呼ばれて、コナンと小林は同時に振り返った。 こちらに向かって大きく手を振ってくるのは…。 「太田?」 執行委員の仲間の1人、太田である。 何故その太田がこんなところに、と首を傾げたコナンだったが。 「無事か、工藤!?」 近くまで来た彼が、ハァハァと荒い呼吸を繰り返しつつそんなことを言うので、思わず目を丸くする。 「なんで?」 「何なんだよ、お前!?」 コナンは純粋に疑問を感じただけだったが、せっかくのチャンスを邪魔された小林はジロっと太田を睨み付ける。 その視線を受け止めて内心ヒヤリとしつつも、太田はコナンを横目で見やった。 「間に合ってよかったよ。」 …呆然とした様子はあるが、着衣の乱れもなく、傷なども見当たらない。 いつもどおりの彼の姿を確認すると、ほっと息を吐く。 ここに辿り着くまでに時間がかかってしまったため、気が気ではなかったのだ。 「てめぇ、まさか俺の邪魔をしようっていうんじゃ…?」 殺気さえ漲らせる小林に、太田は果敢にも頷いた。 「黒羽先生が来るまで、工藤には指一本触れさせないからな!」 実は今、関口が黒羽先生を呼びに行っているのだ。その間、コナンを死守するのが太田の役目なのである。 「『K&Kラブラブ推進委員会』の根性をなめるなよっ!」 ビシっと人差し指を立てて宣言した太田だったが。 …結局、塚原真紀にいいように操られているだけなのかもしれない。 という情けない思いがちょっぴり脳裏をよぎったりもした(笑)。 「『K&Kラブラブ推進委員会』?」 状況も何もかも忘れて、何だそれは、と訝しげなコナンと小林の声がハモる。 「そう!工藤と黒羽先生の幸せを守るため、俺たちは日々死力を尽くして戦うからな!」 太田は大音声できっぱりと言い切った。 これはこれで、なかなか見上げた心意気ではある(笑)。 と、そのとき。 「ご協力ありがとう!!」 ジャーン♪と効果音でも背負っていそうな雰囲気で、頭上から高らかな声が降ってきた。 「え?」 思わず3人そろって上を見上げると、体育館の屋根の上には、涼やかな顔で立つ数学教師の姿がある。 「先生!?」 「黒羽…!!」 上下スーツでそんなことをされても、と呆れてしまうのは彼らだけではないだろう。 …ていうか、その登場の仕方に意味はあるのか? 今までの付き合いで彼らの異様さに慣らされてきた太田だったが、今度ばかりは口をあんぐりと開けて見ているしかない。 数学教師・黒羽快斗はそれぞれの反応にクスッと笑みを漏らして、屋根の上からトンっと飛び降りた。 その高さ、約5メートル。 「…人間じゃない…」 正直な感想を呟いたら、当の本人に悪戯っぽく睨まれて、太田は慌てて口を噤んだ。 そんな太田の反応には何も言わずに、快斗は音もなくコナンの背後に回り、当然のようにその肩を抱いて口を開いた。 「ま、そういうわけでコイツは俺のもんだから♪」 スッと細められた視線が小林に向かう。 「手を出したら生徒だって容赦はしないよ?」 軽い口調だが、底冷えのする声音は本気に違いない。 「………………!!」 息を飲んで固まっている小林を一瞥すると、快斗はふっと気配を和らげて腕の中のコナンを覗き込んだ。 「じゃ、帰ろっか?」 「え?だって掃除…」 コナンは両腕でしっかりと握り締めた竹箒の存在を思い出して、聞き返す。 「いいよ、そんなのサボって。家まで送って行くからね〜」 快斗はその箒を簡単に取り上げると、はいっと太田に手渡す。 「てゆーか、お前、教師だろ?」 「いーのいーの、今更じゃん♪」 教師のくせにサボりを教唆し、あろうことかそのままコナンを抱え上げて去っていくその姿を、竹箒を手にした太田は呆然と見送った………。 The End. (コメント) 3000HIT記念企画その2。またしてもどうしようもないギャグになりました♪ 今回は「真紀ちゃんになりたい」と仰る縁真さまにお伺いした「真紀ちゃんだったらやってみたい」リクを元に書いてみました。頂いたリク内容は「とりあえず『工藤君黒羽先生を守る会』はたまた親衛隊を作成して、哀と二人でだぶる会長を務め、コナンを狙う男子をみかけたら阻止するのではなく、けしかけ、コナンを救う快斗を見て喜ぶ」ということでしたが、哀ちゃんは出てこないで、その分ギャラリー太田&関口に働いてもらいました(笑)。 これからも皆様、どうぞ宜しくお願いいたします。 そして、もし「真紀ちゃんだったらやってみたい」リクでもありましたら、お気軽にどうぞ(笑)。 2002年3月24日 ≪BEYOND THE BLUE SKY≫管理人 小夜 眞彩 |
うふふ・・私の変な願いを叶えてくれてありがとうございます眞彩さん。
やはり真紀ちゃんと哀ちゃんには一筋縄ではいかない人間でずっと居て欲しいですねー。
というか太田&関口っっ君たち美味しいぞっっ。
いいキャラだね彼らも。
しかもさりげに「K&Kラブラブ推進委員会」に入会しているし(笑)
By縁真