落とし物と贈り物
 
 
 
 
 
 
「結構面白かったな」
「でしょ?ダチの間で人気だったからさ」
 だから一緒に見ようと思って誘ったの。
 
 
いつもなら工藤邸でゆっくりする二人だが、
今日は快斗のおねだりもあって映画鑑賞に来ていた。
 
見た映画は推理もの……ではなくてアクションもの。
人気の俳優が主演とかでクラスメートが話題にしていたのだが、
快斗としては教えてもらったあらすじのほうが面白そうだったのだ。
 
 
「確かに役者も大事だけど、やっぱ脚本だよなー」
「話がしっかりしてれば役者も良くなるし」
 
 
映画が終わったのは午後5時。
さすがに遅くなってはお隣の主治医に叱られかねないと、
二人は早めに切り上げて電車に乗って帰路についている途中である。
 
 
「あと、監督も良いと役者に張りが出るよねー」
「一人でも良い役者が居てもそうなるぞ」
「うんうん。それと……あ」
 
 
ふと快斗がズボンのポケットから携帯を取り出す。
どうやらバイブにしていたらしい。
 
 
「何、メール?」
「うん、母さんから。“友達と夕食食べてくるから、あんたはあんたで食べなさいね”だって」
「おばさんらしーなー。……うちで食べるだろ?」
「うん!じゃ、帰りに材料買って帰ろうか」
 
 
快斗は話しながらメールの返事を打つ。
さすが、気付いたときにはもう打ち終わっていた。
 
 
「………あれ?」
 
 
ふと新一が快斗の携帯を見て言う。
 
 
「…お前、キーホルダーどこいった?」
「え?」
 
 
快斗も気付いて手元の携帯に目をやる。
 
携帯についている水色のひも。
根本には白バイに乗った警察官のキーホルダーがついて……いたはずである。
 
 
「あれ、ない……」
「どっかでおとしたのか?」
 
 どこで落としたんだろ……。
 
 
快斗は記憶の糸をたどる。
 
 家を出るときは…絶対にまだあった。
 映画館はいる前にもあったし…。
 そういえば映画館の中で2回くらい取り出したな…。
 一回目は時間を確かめるためで…。
 二回目は確か…
 
 
「あ」
 
 
 そういえば二回目の時、ポケットに入れたはずのケータイから
 キーホルダーだけ、飛び出してたような…。
 真っ暗だったし、座った状態だったから確認できたのは手の感触だけだったけど。
 
 
「……たぶん映画館の中……だと思う」
「探しにいくか?もう次の始まってると思うけど」
 この電車が着いてから折り返しても、見つかるかどうか分からないぞ。
 
「どーしよー!!折角新一からもらったのに!!」
「いーじゃねーか、ストラップの一つや二つ…」
 
 
そう。いつも世話になってるからと、佐藤刑事からもらった白バイのストラップ。
しかも色違いで二つもらったものだから。
 
同じようなものを二つも付ける気はしなかったから、
たまたま家に押しかけて来ていたヤツに押しつけただけなのだけれど。
 
 
「やだ!!新一からもらったものだもん!!」
「……元々は佐藤刑事からだけどな」
「でも、新一から手渡されたものだし!!」
 
 
どうしよう…と考え込んで言う快斗を横目に
新一はふっ、と笑みをこぼす。
 
 
「また佐藤刑事にもらってきてやるから…」
 それで我慢しろ。
 
「えー、でも……」
 
 
それでも駄々をこねていると、
電車が駅のホームに着く。
 
 
「ほら、降りるぞ!」
「え、あ、うん…」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
数日後…
 
 
「見てみて新一!」
 ジャーーン!!
 
 
いつものように家でくつろいでいた新一に
快斗は思いっきり手を伸ばして目の前に携帯を差し出してきた。
 
 
「あ、キーホルダー…」
「そ、見つけたんだーv」
 
 
目の前の水色の紐の横で
ヘルメットをかぶってサングラスをかけた白バイ隊員が揺れている。
 
 
「次の日に朝イチで映画館に行ったらね、掃除のおばちゃんが見つけといてくれたらしくてさー」
 ほんっと良かったよ、新一が折角くれたものなんだし…。
 
「ふーん、………」
 
 
揺れるキーホルダーをじっと見ていたかと思うと、
新一はふと立ち上がって部屋を出て行ってしまう。
 
 
「え、ちょっと、新一?」
「そこで待ってろ」
 
 
閉まったドアを見つめて快斗は首をひねる。
 
 
「……何怒ってんだろ……?」
 
 
しばらくするとドアが開き、入ってきた人物の姿を確認したとたん
 
ぽすん。
「え?」
 
 
何かが快斗の顔に当たっていた。
膝の上に落ちていたのは、5p×20pほどの紙袋。
 
 
「やる」
 
 
一言言うと、それ以上何も言わずに新一はソファーに寝ころんで読書を再開する。
小さな紙袋を見、新一を見てから、それでも首を傾げながら快斗は聞く。
 
 
「……開けてもいいの?」
「………」
 
 
無言を肯定と受け取り、早速紙袋を開けてみる。
 
 
「……………コレ?」
 
 
入っていたのはストラップ。
透明の紐の横には小さなキーホルダーがついている。
クローバーの模様の入った、キーホルダー。
 
 
「……無くしたって言うから、代わりのものを買ってきてやったのに……」
 いらないなら返せよ。
 
 
視線は本のまま、新一がつぶやく。
 
 
「…い、いるにきまってんじゃん!!」
 
 
思わずストラップを握りしめて叫ぶ。
なにせ、あの新一が自分のためにわざわざ買ってきてくれたのだ。
いらないと言うはずがない。
 
 
「ありがとー、新一vv」
「……今度は無くすなよ」
「うん、絶対無くさないv」
 
 
 
 
 
 
その日を境に、二人が2種類の同じストラップを携帯に付けているのが目撃されたとか。
 
 
 
 
 
 
おしまい
 
 
 
 
 
 
あとがき
前半、つい先日の経験談です。
暗いと落としたことに気付かないから面倒なんですよねー。
ちなみに白バイのストラップ、存在します。
なんでも普通には買えないものらしい…。
じゃあ、何で兄貴は持ってるんだろ…?
20000番ヒット、おめでとうございます、縁真様アンドはるちゃん!!
 赤森翌架
 
 


ハーボックの「はる」切りよく20000番をゲットしてくれた赤森さんが下さった作品です♪
普通は管理人がきり番ゲッターの方に何かをあげるのに、
貰ってしまいましたぁ♪♪

うわーい!!!

しっかし快斗君うらやましすぎです。
クローバーのキーホルダー欲しいーーーーー!!!
しかも新ちゃんが自ら選んで買ってきたなんてっ
しかも新ちゃんとおそろなんて
ずるいーーー(涙)
赤森さーん快斗のストラップ盗んできてくださいーー←命がけ(笑)
ストラップは落とした事ないけれど携帯なら映画館で無くした経験ありの縁真より