――――― 月の光と笑顔  2 ―――――










音楽の時間が終わり、皆が今日の聞いた曲の話や、音楽鑑賞の後に歌った童謡の感想をワイワイとしゃべりながら自分達の教室に戻っていった。
歩美たちも楽しそうに話している。


「今日の音楽なんか綺麗な曲だったよね!」

「確か…『ベントウ』って名前の人が作ったんだよなっ!」

「元太君…『ベントウ』ではなく『ベートーベン』ですよ。」

「ちょっと間違えただけじゃねーか。」

「元太くんったら。」


コナンは楽しそうな3人をいつも通り「しょうがないやつらだな。」という顔をしながら、  いつも通り笑っている。


「吉田さん、この曲気に入ったの?」

「うん。なんかロマンチックな曲だよね。哀ちゃんもそう思わない?」

「そうね……。」


哀も相変わらずの大人っぽい笑みで歩美と話している。

……いつもと変わらない日常だった。












「おい!校門の前に子供が立ってるぞ。」

「ほんとだ…小さいな。小学1、2年生ぐらいか?」



「快斗〜また寝てるの!?」

「何だよ。青子!今は休憩時間だろうが。寝てても文句言われることはね〜ぞ。」

「授業始まってもそのまま寝てるじゃないっ!!…っとそんなことを言いに来たんじゃなかった!なんか校門の前にね、小学生の子が立ってるらしいの。すごくかわいい男の子だって。一体誰に用事なのかな?」

(……かわいい小学生の男の子……まさかっ!?)


快斗はいきなり起き上がり、鞄を持って急いで走り出した。
その様子に青子は慌てる。


「ちょっと、快斗!!どこ行くのよ!?まだ6時間目があるのよっ!」

「わりぃ、青子!さぼる!!先生には適当に言っといてくれ。」

「え〜〜!ちょっと快斗っ!!」



そう、コナンは江古田高校の前に来ていた。
小学校は高校より早く終わるため、コナンは校門の前で待っていたのだった。

(う〜〜〜。皆こっち見てるみたいだな。やっぱ高校の校門前で待つのは辞めた方がよかったか?………わざわざここまで来る必要はなかったよなぁ。それに…)

コナンは高校生の物珍しげな視線に居心地が悪い。
しかも何故わざわざ彼に会いに来たのか自分でもよく分かっていないのだった。


あまりの居心地の悪さにやっぱ帰ろうかと思案しているとき、向こうから走って来る人物が見えた。
それが誰か目が認識する前に声が聞こえた。


「コナンっ!!」


そして驚くほどの早さで、自分の名前を呼んだ男が目の前に現れた。


「よお。快斗。」


コナンが少し恥ずかしそうに快斗に向かって手を挙げた。


「どうしたの、コナン?わざわざウチの高校まで来るなんて…」

「ちょっとな………迷惑だったか?」

「そんなことないよっ!!」


コナンがよく見ないと分からないほどの心配そうな目を快斗に向ける。
普通の人だったら気付かないくらいの変化だったが、もちろん快斗は気付いており、慌てて否定する。


「でもコナン。本当にどうしたんだ?今まで高校まで来たことなかったのに。」

「最近お前と会ってなかったから、たまにはと思って…。」


そうコナンは小さな声で言うとそっぽを向く。
耳が少し赤い。
その様子を見て快斗は満面の笑みを浮かべる。

(コナンvかわいい〜〜vv)

快斗は顔がデレデレだ。


「おい、快斗?」


快斗がこっちの方を見て笑った顔のままなので、コナンは不審げな視線を向けた。


「(はっ!)…コナン、そろそろ移動しよう。」


コナンの一言に快斗は正気に戻り(笑)、移動の提案をする。

(これ以上かわいいコナンを他の奴らの視線にさらしておけないもんね)


「そうだな。俺も居心地悪いしな。」

「じゃ、どこ行こうか?どこか行きたい所ある?」

「いや、特には…。」

「じゃ、少し距離あるけど、この前行った大きな公園行こっか?あそこの近くには大きな書店があるしね。」

「そうするか。」


どうやら行く場所も決まり2人は歩き始めた。

そして、いつも通り快斗が楽しげに語り、コナンもそれを聞きながら相槌をうち、また逆に快斗からせがまれ学校のことや、博士と少年探偵団と出かけた話など、たわいもない話をしていると目当ての公園が見えてきた。


「コナン、どっち行く?本屋?」

「書店に行こうぜ。俺ほしい本があったんだ。」

「OK!じゃ行こっ!」


2人はまず書店に向かい、コナンは小学生の体になってからなかなか読めない推理小説を片っ端から、チェック&ゲットしていった。
もちろん快斗もマジックに役立ちそうだと思う本をゲットする。
大きな書店だけあって品揃え豊富でコナンも快斗も大満足だった。
コナンの表情も明るい。


「結構いろいろ揃ってたな。」

「そうだね。やっぱ大きい本屋はいいね〜。あっ、コナンちょっと公園に寄って行こう。」


コナンと快斗はゲットした本を持ち、公園に向かって行った。



そろそろ日も暮れだし、公園の夕焼けが見えるベンチにコナンと快斗は並んで腰を掛けた。
快斗が近くの自動販売機から自分には炭酸飲料、コナンにはブラックコーヒーを買ってきて渡す。


「さんきゅ。」


コナンは礼を言って渡された缶コーヒーを飲み始めた。
快斗もコナンの隣でジュースを飲む。





しばらく2人の間に会話はなかった。


突然快斗が口を開く。


「……コナン。何があったんだ?」


快斗が真剣な顔でコナンの顔を覗きこんだ。
しかも問いかけは「何かあったのか?」ではなく「何があったんだ?」という『何か』がコナンにあったという確信のあるものだった。


「……何もねえよ。」


コナンは快斗から顔をそらして言う。


「コナン…俺の目を見て言える?」

「………。」

「新一。」


快斗が優しく声を掛ける。
そして顔をそらしたコナンのあごを捉え、自分の顔の方に向けた。
快斗の真剣な、そして心配そうな目を向けられ、コナンはぽつぽつと話始めた。


「今日、音楽の授業で………悲しい曲を聞いたんだ。それだけだ。」

「…悲しい曲ってコナンにとってどういう意味をもつ曲だったんだ?」


快斗が静かに問う。


「ある事件で、使われた曲だったんだ。………俺がっ!もっと早く事件に、謎に気付いていればあんなに人は死なずにすんだんだっ!それに俺は………。」


コナンは苦しげに声を出し、言葉を詰まらせた。


「コナン…『俺は』何?」


言葉が止まったコナンに快斗は静かな落ち着いた声で続きを促す。
その声にコナンは苦しそうに青い目を瞬かせてまた話し出す。


「…………どんなつらく悲しい事実でも『真実』はいつも一つだ。その『真実』で犯人を追い詰めて、みすみす自殺させてしまう探偵は ……。」


(月影島の殺人事件のことか…。)

快斗はその事件を知っていた。
警視庁の刑事にちょっと変装して、警視庁に入り込みコナンが関わった事件の調書を見ていたからだった。
自分と知り合う前の事件とはいえ『コナン・命』ともいえる快斗にぬかりはない(笑)


黙りこくり、苦しそうな顔をして下を向いてしまったコナンを快斗はぎゅっと抱きしめた。

突然のことにコナンはびっくりして、快斗の腕の中から抜け出そうともがき出す。
日が暮れてきたとはいえ、まだ夕方。
周りの目があるし、第一コナンにとって抱きしめられることは恥ずかしかった。


「バカイト!離せ〜!」


しかし快斗の腕はきつくコナンを抱きしめていて、全然外れない。
じたばたしていると快斗が口を開いた。


「コナン……新一は人間が好きなんだね。そういうコナンが俺は好きだよ。」


そしてコナンを抱く腕に力を込めた。


あの月影島の事件は3人が殺され、犯人の麻生成実が事件の最後炎の中で死ぬ……自殺してしまった事件だった。
コナンは自殺を止められなかった自分を責めているのだろう。
殺人犯の死に…『人』の死に悲しみ苦しむコナン……彼は人間が好きなのだろうと快斗は思う。
いつも事件に巻き込まれたりしているが、どんなときでも彼は一生懸命に取り組んでいる。
そして『人』にとても優しいと思うのだ。
そんなコナンが快斗は好きだった。

もちろん、あの力強い美しい目に惹かれてもいるけれど。





「……ありがとな、快斗。」


快斗に抱きしめられたまま、コナンは快斗の腕の中で小さく言った。


その一言に快斗は嬉しげな笑みを浮かべた。




しばらく2人は抱き合ったままだったが、突然コナンが大声をあげた。


「しまった!!もうこんな時間じゃねえか!蘭に早く帰るって言ってきたんだった。早く帰らねえと…。」

「そうなんだ……もう暗くなったもんね。じゃあ帰ろうか。」


コナンの言葉に快斗はすごく残念そうだ。
江古田高校の校門前でコナンが言ったように、しばらくコナンと快斗は会っていなかった。
2人は学生でお互いで普段は学校がある。
それになんといってもコナンはものすごい事件体質。
すぐ事件に巻き込まれ、なかなか2人で会えない。
それに快斗も、今をときめく『怪盗キッド』。色々やることがあるため会えないのもしょうがないともいえる。

残念そうな快斗に悪いと思いながらも蘭との約束は守らなくてはいけない。


「悪ぃな。快斗。」

「いいよ、だって蘭ちゃんとの約束だもんね。……そうだっ!今日の夜迎えに行くよ。明日、土曜日で休みだから夜遅くなっても平気だよね?」

「小学生の俺が夜外出するのを蘭が許してくれるわけないだろうが。」


快斗の申し出をコナンは一蹴する。
しかし快斗はめげなかった。


「もちろん分かってるよ。だからこっそり迎えに行くよ。」


いたずらっぽい笑顔で快斗が言う。
その笑顔を、コナンは見つめる。


「コナン?」


そんなコナンに快斗は不思議そうだ。




コナンは快斗の笑顔を見て気付いた。
自分がわざわざ校門の前で快斗を待った理由を。
快斗の『笑顔』が見たかったということを…。




「何でもない。じゃあ帰ろうぜ。………夜、蘭やおっちゃんに気付かれないように気をつけろよ。」

「もちろんっ!気をつけるよ。」


快斗はコナンの了承の返事にますます嬉しそうな笑顔を浮かべた。









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裏話をすると、3話にはキッドが出てきます。
本当は2話で終わらす予定だったんですが、コナンの映画『銀翼の奇術師』を思い出してどうしてもキッドを登場させたくなって無理矢理3話になりました(笑)
自分のサイトに映画の感想をアップしてるんですが、読み直してキッドを登場させたくてしょうがなくなっちゃって…
長くて申し訳ないです。
縁真さんも映画見に行かれたそうで、キッドかっこよかったですよねv





一応、今回も「いきなり次回予告」

情熱のレッドコナン華麗に参上!!
静寂のブルーKID優雅に登場!!
友情のイエロー平次派手に見参!!
次回の暴走戦隊5レンジャーは
「只今、隊員募集中!!!空きはピンクとグリーン?!」
あと…2人!!


「いきなり次回予告」は ココから



2004.5.18

包容力のある快斗が素敵ーー♪
意地っ張りなコナンを抱きしめてあげれちゃうのは快斗ならではですよね。

映画かっこ良かったですよねKID〜
思ったより出番多くて嬉しかったです♪
でもKIDの姿での出番が少なくてもっと欲しかったー
By縁真