――――― 月の光と笑顔  3 ―――――











コナンは蘭と小五郎と一緒に夕食を食べ、風呂に入り、TVを一緒に見てしゃべりそして眠りについた。
もちろん、蘭や小五郎にばれないように寝たフリをしただけだったが。
寝入った2人を確かめると、コナンはパジャマから洋服に着替える。
そして今日買ったばかりの本を読み始めた。




そうして時間が過ぎた。
コナンは頬にあたる風に気付いた。
窓が開き、そこに白い怪盗がふわりと現れる。




「こんばんは。名探偵。」


白い怪盗がコナンの前でひざまつく。


「キッド。思ったより早かったな。」

「愛しの名探偵に早く会いたかったものですから。」


そういうとキッドは手を差し出し、コナンの前でポンッっと花を出す。


「どうぞ。」

「…バラじゃないんだな。なんていう花だ?」


キッドはいつもコナンにバラを出して渡しているのだが、今回はあまり見かけない花だった。
花といえないくらい素朴な花だったが…。


「これは『甘野老(あまどころ)』といいます。素朴で可愛らしい花でしょう?」


すずらんのようにぶら下がるようにして、緑白色の筒状の花がついている。
そしてすずらんのように濃い緑色の葉ではなく薄い黄緑色のユリのような葉だった。
キッドが差し出す花としては、野草のような花で違和感がある。


「なんかめすらしいな…。」


コナンはそう言ってキッドの差し出した花を受けたった。


「ここに来る途中に咲いていたもので、摘んできてしまいました。名探偵にはお気に召しませんでしたか?」

「そんなことない。…ありがとな。」

「いいえ。」


キッドはコナンの言葉に笑みを浮かべた。


「では名探偵。今宵はとても美しいハーフ・ムーンです。空中散歩と参りましょう。」


そしてコナンにむかいキッドは手を差し出した。
コナンも素直にその手をとる。





キッドのハングライダーで、コナンはキッドに抱えられ一緒に美しい半月が浮かんだ夜の空を飛ぶ。
5月の気持ちいい風がコナンの頬を掠めていく。


「気持ちいい…。」


コナンが呟いた言葉を聞き、キッドは嬉しそうに笑う。


「気に入っていただけたようでよかったです。」


そしてお互い穏やかな気持ちのまま、空を飛んでゆく。
しばらく飛び、コナンが口を開く。


「なあ、何で俺に何かあったって分かったんだ?自分でもいつもの自分と変わらないと思うぐらいだったのに…。」


コナンはずっと聞きたかった疑問をキッドにぶつけた。

その言葉を聞いたキッドはハングライダーを高いビルの屋上につけて、着地した。
そして2人で屋上に立つと、コナンに向き直り、膝をついて目線を合わせる。


「それは、名探偵…いえ、コナンの表情を見たからですよ。あなたの笑顔に陰りがあるような気がしたのです。それに今日一緒に公園に行く途中に学校の話をしたでしょう?その時もあなたの目に陰りがあった。あなたの笑顔…そしてその真実を見抜く目に陰りがあるのなら何かあったと思うほうが自然でしょう?」


キッドは真剣な目でコナンの瞳をみる。
コナンは大きな目をさらに開いて固まった。
こんなささいなことにキッドが気付くとは思わなかった。
コナンはキッドの洞察力に改めて驚いていた。


「そんなささいなこと……」

「コナンの変化はすぐ分かります。なんと言ってもあなたは私の一番大事な方ですからね。」

「キッドっ!!」


キッドの言葉を聞いた瞬間、コナンは真っ赤になり、キッドの名を叫ぶ。
キッドはそんなコナンを穏やかに見つめ返す。
コナンはそんなキッド…快斗に負けた気がしてなんだか悔しい気がした。
でもそんな快斗との関係に心が温かくなるのも感じる。


「ありがとな…快斗」

「礼をいわれるようなことはしてないよ、コナン。」


2人は笑いあう。



「オレははそういう本当のコナンの笑顔が見たかったんだ。」


そして快斗は本当に嬉しそうに笑った。

(お互いがお互いの笑顔を見たかったという訳か…)

コナンはそんな自分とキッド…快斗の思いに幸せになるのを感じた。



穏やかな暖かい空気が2人の間に流れる。


「遅くなってしまいましたね。そろそろ家まで送りましょう。」

「ああ。」


そしてまたコナンはキッドに抱えられ、空中を飛んだ。


「そういえば名探偵、ピアノソナタ『月光』の題名の由来はご存知ですか?」

「いや…俺は音楽関係はちょっと…」

「詩人レルシュターブの第一楽章についてのコメントに由来するそうですよ。『このソナタ第一楽章はスイスの【四つの森の湖】にそそぐ月の光を見るようだ』と形容したことから引用されたそうです。……『月光』は題名通り、月の光の曲ですが、名探偵は月の光は苦手になってはいませんよね?」

「ああ。どうしたんだ?」

「この曲を悲しい思い出の曲だということで、月の光そのものまで好きじゃないと思われたら悲しいですから。私は『月の光』は好きですからね。」

「俺は曲そのものものも嫌いじゃないぜ。……それに月の光は好きだ。」


(キッド、お前を連想させるからな…。)

コナンは心の中で一言付け加えた。


「そうですか。それは嬉しいです。」


キッドはそう言うと、コナンを抱く腕に力を込めた。




それからコナンはキッドに毛利探偵事務所まで送ってもらい、別れ際にキッドから口付けをされて、真っ赤になり、照れ隠しにすねたフリをしてキッドを困らせた。
もちろんキッドもいつものことだったので、始終笑顔だったが。





朝、コナンが目を覚ますと、蘭はもう起きて洗濯をしていた。


「おはよう。コナンくん。今日は遅かったのね。ねえ、棚の上に置いてある花どうしたの?」


棚の上には昨日キッドからもらった花『甘野老』が活けてあった。


「あの花はね、もらったんだ。」

「そうなんだ。あれ『甘野老』よね?」

「蘭ねーちゃん、知ってるの!?」

「最初は知らなかったの。今朝起きたら活けてあったから、『何の花だろう?』って調べてみたのよ。」

「へ〜。蘭ねーちゃん勉強熱心だね。」


蘭は嬉しそうに笑い、「女の子は花が好きなのよ」と言った。


「そうそう、その図鑑にね、一緒に花言葉も書かれているんだけど、甘野老はね『元気を出して』ですって。」

「…そうなんだ。」


コナンは着替えてくると部屋に戻って行った。
キッドがバラではなく、甘野老をくれた理由……


「バーロー」


コナンは部屋で1人、小さな笑顔を浮かべた。











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遅くなりまして申し訳ないです。
こんな内容でも良かったでしょうか?
なんか入れたいエピソードをとりあえず詰め込んだまとまりのない話になってしまいました(汗)
それになんかコナンが弱い…
強いコナンが好きなのにおかしいです(笑)
こんな拙い小説ですが受け取ってくだされば嬉しいです。

久栄

2004.5.19

野に咲く花を差し出すKID!!(キャっ萌え♪)
花言葉をきちんと知ってるなんてさすが紳士です。
っていうかさすが怪盗KIDだーー
By縁真