ぴこぴこはんまーの活用法
ゴソゴソ・・・・・・・・・・・・・
コナンは、久しぶりに工藤邸の物置を整理していた。ここのところ、使っていなかったので埃が大量にあってちょっと憂鬱だ。
物置の整理をすると言ったら自分も手伝う、と張り切っていたヤツは、そのときにはすっかり忘れていたらしい本日の『お仕事』
の準備のためいない。
「・・・・・・・なんだよ、手伝うって言ったくせに・・・・・・俺より仕事が大事かねぇ・・・・・」
と、快斗が聞いたら思いっきり否定するようなことを愚痴りつつ、コナンは物置の奥深くにしまわれていた箱を引っ張り出した。
「なんだこれ?・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ、俺の子供んときのおもちゃ箱か。まだあったのか、これ」
と、中身を確認しようと箱を開けると。
出てくる出てくる、昔懐かしのおもちゃから手作りの人形(母親に持たされた)、果てはちょっと流行っただけのおもちゃまで、実に
いろんなおもちゃがそこに仕舞われていた。
「・・・・・・・・・・・・・あれ?これ・・・・・・・・・・・」
その中でコナンは、あるものを手に取った。ためしにそこらの床を叩いてみると、『ぴこ★』と相変わらず愉快な音を立てる。
なんだか面白くなって、コナンはそれを脇にどかして物置の整理を続けた。
「待てぇっ!!KIDッ!!!!」
「では、この『女神の翼』はいただいてまいりますよ、中森警部♪」
KIDがバサァッとマントを翻すと、もはやそこには誰もおらず・・・・・またしてもKIDの犯行は成功に終わる。
犯行現場から離れたビルの屋上に舞い降りたKIDは、遠くに確認できる赤い光を眺めて笑った。
「ダミーは完璧vvじゃぁ、こいつはどうかなー・・・・・・・・・」
降り注ぐ満月の光に、たった今取ってきた宝石を翳す。その中に見えるモノを探して・・・・・・・・・・・・・・。
しかし、今日の獲物も目的の物とは違って、KIDは肩を落とした。
「ちぇー・・・・・これも違うかぁ・・・・・・」
思わずそう愚痴って、近づいてきた大好きな気配に慌ててKIDの仮面を貼り付ける。
この衣装を纏っている間は、KIDとして接する。それは、快斗が心に決めたこと。
キィ、と静かな屋上にドアの開く音を響かせて入ってきたのは、KIDが尊敬し、愛して止まない名探偵。
・・・・・だが、今日はなんだか様子がおかしい。ちょっとそわそわしながら、後ろ手に何か隠している。
そして蒼い瞳は、悪戯っ子のようにキラキラと輝いているのだ。
KIDは、イヤな予感にとらわれる。コナンの瞳がこういう輝きを宿しているときは、大抵自分に被害が出るのだ。
快斗の時にばかりそういう目にあってきたのだが、今度はKIDのほうにも進出してきたようだ。
ゆっくりと近づいてくるコナンに、KIDはちょっと冷や汗を流しつつも振り返った。
「ようこそ、名探偵。今宵もあなただけがここへたどり着けたのですね」
「よく言うぜ、子供が夜出歩くのは難しいんだぞ」
「でも、名探偵は来てくれるでしょう?」
確信を込めた問いに、コナンは苦笑いする。確かに、答え合わせをしに毎回KIDの現場へ行っている。
たまに暗号が手抜きだったりしたときは行かないのだが、そうするとKIDのほうが自分に会いにくるから、そんなに意味は無い。
快斗も好きだけど、自分が先に好きになったのはやはりKIDのほうだ、とコナンは思う。
あのとき、杯戸シティホテルでの邂逅で、コナンはKIDに心奪われた。その後も何度か会ったり助けられたり助けたりして、KIDが
昼間素でいきなり自分の前に現れて告白してきたときは驚いたが、実はそれを上回るくらい嬉しかったのだ。
自分だけが想っているのではないとわかったし、しかも自分に秘密を打ち明けさえしてくれたのだから。
だけど、とコナンは思う。それと掃除をサボったのは別だ。(ぇ
あれから何時間かけて物置を片付けたと思っているのか。子供の身体である自分には、出来ることが限られてしまっているのに
コイツは『仕事』にかまけてなんにも手伝っちゃくれなかった。ちゃんと約束したのに、だ!
・・・・・・・・・・・・・・・・そう、今コナンはちょっとどころじゃなく怒っていたりするのである。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・(にっこりvv)」
「め・・・・・・めいたんてい・・・・・・?(汗)」
かがんだ自分の目の前で、コナンは花が綻ぶような綺麗な笑みをする。それにぽーっと見惚れそうになったが、KIDはコナンの
瞳が笑っていないのを見て取った。
(あのー・・・・・・コナンちゃん・・・・・・俺、なんかしましたか・・・・・・・?)
ポーカーフェイスを必死で保つが、その下では冷や汗をかきまくっていたりする。
その間もコナンはにこやか〜に笑い続けている。KIDは針の筵に座っているような気さえしてきた。
(だ・・・・・誰でもいいからこの状況をなんとかしてくれぇ〜〜〜っ!!!)
しばらくそのまま二人は見詰め合っていた(ぇ)が、ふいにコナンが後ろに回していた手をこちら側に持ってくると、持っていたモノで
KIDのシルクハットを、『ぴこ★』という軽快な音とともに弾き飛ばした。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・へ?」
一瞬、ポーカーフェイスがはがれ間抜けな顔をしてしまうKIDに、コナンは素早く隠し持っていた小型カメラで『パシャリ♪』とその間
抜け面をしっかりと写真に収めた。
呆けていたKIDは、もうKIDの仮面などかなぐり捨てて素でコナンに迫る。
「コナンちゃん〜〜〜〜っ!!!!!今の、撮ったの?もしかして、撮ったの?」
「うんvv」
(いや、そんなに満足げな笑みで言わないでください名探偵・・・・・・・・・)思わず、何故か思考だけをKIDモードに戻す快斗。
そんな快斗の様子を面白そうに眺めて、コナンはまた物置から持ち出してきた『ぴこぴこはんまー』で快斗の頭を叩いた。
『ぴこ★』
『ぴこぴこぴこ★』
『ぴこっぴこっぴこっ★』
だんだん連続で叩きだしたコナン。どうやらずいぶんとソレがお気に召していたようだ。
しかし、いつまでも叩かれているといい加減痛い。快斗は『ぴこはん』を素早くコナンから取り上げると、自身もKIDの衣装から普段
着に換えて、コナンを問いただしてみた。
「ねぇ、コナンちゃん。俺、なんかやった?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
途端に不機嫌な表情になってソッポを向くコナンの顔を、快斗はしっかりと自分に向けて
「なんかしたなら謝るからさ・・・・・・言ってくれないと、わかんないよ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・お前が、約束したのに来ないからだ・・・・・・・・」
ポソリと呟かれたそれを正確に聞き取って、快斗はコナンを抱きしめる。
「わっ!?ちょっ、快斗!?」
「ねぇコナンちゃん・・・・・・・ひょっとして、淋しかった?」
「・・・・・・・・・・・んなわけねぇだろ」
そう答えるコナンの顔は、耳まで真っ赤だ。それが可愛くて、快斗はますますコナンを抱きしめる。
「んー、コナンちゃん、愛してるよ〜〜〜vvv」
「・・・・・・・・・・・・・知ってる・・・・・・・・・・・」
その答えに快斗はコナンを抱き上げて、ちゅっと、触れるだけのキスをした。
「なっ!!!」
「ん〜、コナンちゃん、俺、そこまで言われると我慢できない・・・・・・・・・」
「お前は盛りのついた猫かっ!!・・・・・・・・・・・・・・・こんなとこでヤるなよ・・・・・・・・・」
「仰せのとおりにvvお姫様vv」
「誰が姫だ誰がっ!!!!」
そして、快斗はコナンをしっかり家までお持ち帰りし(笑)、おいしくいただいたとさvv
数日後・・・・・・・・・・・今度は、(何故か)もうひとつあった『ぴこはん』とまたしても物置に仕舞われていた工事用ヘルメット(誰が
そんなものを仕舞ったのかは不明)を使って、ジャンケンゲームに興じる二人の姿があったらしい・・・・・・・・。
その勝敗は不明であるが、コナンが学校を休む日がちょっと増えたらしい。
END
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