そこにある、白い花束。








普段何気なく歩いている道に置かれた白い花束。

この時期になると決まって、その花束は飾られる。



少し思うところはあるけれど、誰かがここで死んだとは聞いたこともない。



けれどそこに、毎年欠かさず訪れる誰かがいる。



真っ白なプリムローズの花束。










そして、今年初めて白いバラの花を手向ける人を見つけた。









漆黒のスーツを身に着けたその人は、数年前一気に有名になった「倫敦帰り名探偵」と呼ばれる白馬探その人であった。


懐かしいその姿に、俺はほんの少しがっかりしながら、声をかけた。



「よう、おメーだったのか」



「くっ黒羽君なぜここに」


わずかに裏返った声が、その驚きの程を俺に伝える。



「偶然だよ。でもまー気になってはいたんだよな、毎年欠かさず置いてあったから」



「そうですか」


すぐに己を取り戻した白馬に、あの頃との違いを見せられた気がした。
そんなことを思う自身に自嘲しながら、俺は静かに白馬に歩み寄る。



「で、お前は何でここにいんだ?」


「後悔ですよ。彼の一時の休息を邪魔してしまった」


「今更てめーがなに言ってやがる。俺はあの時ちゃんと忠告はしたぜ」



一瞬膨れ上がった怒気を瞬時に霧散させて、俺は白馬を見つめた。


































サーチライトの光が、夜空を明るく照らす。


KIDはゆっくりと背後を振り返ってにやりと笑った。



「今宵もここまでたどり着けたのは名探偵だけでしたね」



その言葉に、暗がりに身を潜めていた人物の笑う気配が届いた。



「大勢に来て欲しいんなら、あんな暗号出すなよ」



ほんの少し高く、女性にしては低い澄んだ声が、KIDに投げかけられる。



「つれないですね。あなたに来ていただきたくて、私は招待状をお出ししているのに、あなたはいつも見向きもしてくれない」



「俺がここに来ても、何もすることは出来ないだろ。俺はお前の目的を知ってる。だからこそ止めることなどできない」



知られていたことに、ほんの少し驚き喜びに笑みを深める。



「そのお言葉だけで私には充分です。許してください。あなたの真意も知らずこんなことをしでかした私を」



「許すも何も、俺は気にしてないぜ。お前の空気はひどく落ち着けるからな」



普段ならとても見ることのできない柔らかな笑みを探偵は浮かべた。



「では、今宵この私にほんの一時、盗まれていただけますか?」


「―――そうか、今日はお前の・・・・・いいぜ、日付が変わるそのときまでお前に預けてやるよ」



「ありがたき幸せ」



跪き、KIDは探偵の手の甲に口付けを送った。


そして、風にたなびくマントで探偵を包み込んだ。




「おや、今日は来客が多いようですね」



くすくす笑いながら、近づいてくる気配にKIDは探偵を背にかばった。









「KID!!」




屋上へと続く扉を勢いよく開けた白馬が、目にしたのは二つの影。


一つは白い怪盗KIDのもの。


もう一つは、時折警視庁で見かける探偵のもの。



二つの影は、互いに背中合わせのまま油断なく辺りに気を配っていた。





どちらも互いに信頼しあっての体勢。





「白馬・・・・」


「おやおや、白馬探偵今頃ご到着ですか?」


油断なく身構えたままのKIDは、その余裕を見せ付けるために白馬を嘲笑う。

普段ならけしてそんなことはしないKIDに探偵は眉を顰めた。


「ですが、あなたの出る幕ではない。お帰りなさい、身の程をわきまえて」


手厳しいKIDの言葉に、白馬はただ見つめていた。


「言いすぎだ、KID。・・・・白馬、今すぐその扉の中に入れ」


たしなめる言葉にKIDは、笑う。






「あなたたちは、知り合いだったんですか?」


状況を忘れ、二人の分かり合った雰囲気に白馬は不信げに尋ねた。



「怪盗と探偵は互いに惹かれあうもの。白馬探偵、いらぬ邪推は無用ですよ」



普段なら疑問も抱かず受け入れられる言葉なのに、どうしてか信じることができなかった。

事実それは半分は嘘であったから。



「本当にそれだけの関係なんですか?」



言葉は無意識について出た。


探偵は、ただ視線をそらし、そのことを気配で悟ったKIDはにがり潰したよう白馬をにらみつけた。



「白馬探偵。私はあなたのその変なところで敏く、無邪気な子どものごとく残酷に必要のないものまで暴き立てるところが好ましくもあり、反吐が出るほど嫌いですよ」



淡々と語るKIDの言葉に、その怒りの程を白馬は突きつけられ、動けなくなった。





わずかにできた隙。



二つの方向から同時に飛んでくる鉛。



KIDは、軽やかにかわした後で驚愕に目を見張った。





白馬の前で血まみれに倒れた探偵の姿。


KIDと探偵を狙っていたはずの銃口の一つが、白馬に狙いを定めていたことに、KIDは気づくことができなかった。



「工藤君!!」


「名探偵!」



二人の声に、わずかばかり探偵は蒼い瞳を覗かせた。




血に濡れたその場所は、致命傷といっても過言ではない。


白馬よりも早く駆け寄ったKIDは、すばやく抱き上げると白馬が止めるのも構わず空に舞った。


暗闇で広がる白いハングライダー。


格好の的となるそれに、これ以上銃口が火を噴くことはなかった。
































脳裏に浮かぶのは、助からないと悟ってしまえるような傷を負った探偵の姿。



「白馬、感傷に浸っているとこ悪いけど、あいつなら生きてるぜ」


「あの傷でですか!!」


「ああ、治ったら速攻で出て行きやがった。協力者のお嬢さんと一緒にな」


「どこに・・・・」



とそこまで聞いて息を呑んだ。

まったく取り繕っていたに黒羽の態度に。


「わかんねー。置き手紙だけ残してきれいさっぱり消えやがった。この俺様にもまったく居所が掴めねー。だから、怪盗KIDが消えた日に花を供える奴が誰かを知りたかったんだが、お前である方の予測が当たっちまったな」


特に残念そうでもない言葉の裏にある、酷い焦燥に白馬は後ろめたくなる。


「だーっ、てめーさえあん時あんなことさえ言わなけりゃ今頃、パッピーエンドで終わってたのによ」


「僕が、なにか言いましたか」


「あいつは優しすぎんだ。置き手紙になんて書かれてたと思う?俺の足を引っ張りたくないってよ。足を引っ張ってるのはこっちだって言うのに」




道路に置かれた花束を見つめながら、黒羽は吐き捨てた。


























「ほんと、優し過ぎるよな」










吐息のようにつむぎだされた言葉は、白馬の耳に届くことなく風に浚われていった。














































あれから4年。




「やっと見つけたよ、新一」




「・・・・快斗」
























白い、プリムローズの花は今も変わらずその道を見つめ続けている。




















あとがき

ほぼ無理やり終わらせました。
なんだか意味不明。
ノリで書いていったらこんなんできました。
やたら長くなりそうなので、無理に完。

そして意味不明・・・・



管理人より

架印 様より「46968」の地雷品を頂きました♪
ふふふ。危うく不幸なまま終わるかと思いましたよ。
よかった最後に見つけ出してくれて。
新ちゃんも本当に優しすぎますよね。
でもその優しさが快斗にとっては辛い結果をもたらしてしまいましたが。
でもまあ最後には探しあてたしこの先は幸せに暮らしてますよねー
4年分の愛がこれから新一を襲うことでしょう(笑)
架印さん。素敵な話ありがとうございました♪