かなしみもいたみも
ふりきるようにはばたく
あなたがくれたゆうきを
このむねにひろげて
ああ
かけがえのない
あいのこどうをー
Perfect pitch
音程の外れた歌声が、Box内に響く。
態とじゃないのかと疑いたくなるほどの外れっぷりに、見守る二人はため息を付いた。
「さっきからこの曲ばっか・・・」
「でもぜんぜん上手くならないね・・・」
しらけた目でぼやく園子に、蘭は苦笑を返すしかなく、小さなステージ上で歌うコナンから視線を外した。
本人は楽しそうに歌っているのだから、この際上手くなるとかならないは関係ないに違いない。
「こういうところも誰かさんにそっくりで、蘭は苦労するわよね〜」
コナンを見ながらふふんと笑んで、園子は次に歌う曲番を入力する。
「ちょっと園子、新一とコナン君は全然似てないわよ」
真っ赤になって否定する蘭の姿に、意味ありげに目を細めた。
「私は、誰も新一君とは言ってないし〜」
「もうっ!」
からかいに簡単に引っかかってしまった蘭をさらに、からかう園子に悪魔の尻尾の幻影が見えても仕方ない。
事実口元に浮かべられた笑みは、小悪魔そのもの。
「で、新一君とどう違うと蘭は思うのかな?」
「・・・新一は音痴だけど、絶対音感もってるもの。コナン君はわからないけど」
「うそ!あやつのどこにそんなものが備わっているって言うの」
たった一つの欠点と言える欠点だったのにと大げさに驚く園子に、仕方がないとは言え蘭はさらに説明を加える。
その横でひたすらコナンは、TWO-MIXから貰ったCDに入っていた曲を歌い続けていた。
どうも彼女たちの会話は聞こえないようだ。
それほど集中して、歌っているようだが、一向に音程が合う様子はない。
救いようもないほど、ずれて外れた歌声に辟易して園子は蘭との会話に集中する。
それでも聞こえなくなることはない。
「絶対音感って言われるとどうしても音楽の天才ってイメージだけど、どう考えても新一君は音痴の上に音楽に関して才能ないわよ」
「絶対音感って言うのはそもそも音を相対的に把握するんじゃなくって、周波数・ピッチごとに厳密に聞き分ける感覚だから、歌うこと、曲と音を合わせることとは別物なのよ。新一の家庭環境からいってラベリングは完璧」
ラベリングとは、聞き分けた音に12音の音名の名前をつけることが出来る感覚である。
周波数・ピッチで聞き分けるので、音楽以外のあらゆる音がラベリングされる。
また、絶対音感がなくともラベリングは可能である。
「ラベリングが完璧のはずなのに、どうしてテストとかで聞き分け出来ないのよ?」
と一つ浮かんできた疑問。
知識面では満点を取るが、実技の聞き分けのテストはまったくといっていいほど、新一が出来たためしがないことを園子は覚えていた。
「多分だけど、テストでつかったピアノ自体に問題があるんじゃないかな」
「へっへえ〜」
園子は相槌をうつしか出来ない。
「じゃあ、何で新一君は音痴になの」
根本にある疑問は、またもあえなく解決される。
「阿笠博士が音痴なの。新一幼い頃阿笠博士の処に預けられることが多くて、子守唄代わりに聞いていた歌がそれはもう見事なまでに外れていたそうよ。それで、外して歌うのが当たり前だと思い込んで今まで来ちゃったから、癖みたいなもので直しようがないみたい」
「それなのに、よく自分が絶対音感だってわかったわね」
「新一は知らないと思うわよ。音楽自体に興味がなかったみたいだし。私も音楽のテストとか見るまで気がつかなかったんだけど」
きょとりと園子を見た蘭は、あっさりとそれを否定した。
「本人も気づいてないことを、蘭は気づいたんだ」
可愛らしく頬を染めて話していた蘭は、さらに真っ赤になってしまった。
のろけを聞かされているのは気のせいか。
「・・・一度、音にあわせて新一君に歌わせて見たいわね」
顔に手を当てて、頭を振る蘭を見つめながら、園子は深々とため息をついた。
END
あとがき
人気アーティスト誘拐事件
のあった次の日のカラオケボックスでの会話。
縁真より
絶対音感。彼はあると私も思いますっ
なんか納得しちゃう作品でした(笑)
そうっきっと阿笠博士は下手な気がするっ
でも博士もコナンも歌うのは好きそうですし、本人楽しそうだから
下手でもいいかなぁと思う今日この頃です。
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