歩美:なんか高級そうなホテルだね〜vvv
太田:ホテル阪急インターナショナル、「最高級」と評された、あこがれのホテルだって!(ガイドブックを読み上げて)

真紀:じゃ、早速だけど部屋割りしましょう!

関口:…部屋割りって言っても、分け方なんて1つしかないような気がするんだけど…

真紀:あら、私、コナン君とツインでもオッケーだけど?(嫣然と微笑んで)

歩美:あ、真紀ちゃん、ずるい〜!!私もコナン君と同じ部屋がいいな!

哀:あら私も工藤君とだったら嬉しいわね、何ならダブルベッドでもいいけど?

コナン:………………(真っ赤になって俯いている)

太田:あ!てか、それなら俺だって工藤と一緒がいい!!

関口:…モテるなぁ工藤………なんか、決着つかなさそうな争いが始まっているけど

快斗:ていうか!!最上階のスイートで、大阪の夜景を見ながらラブラブするっていう計画があるんだけど〜っ!

コナン:そんなフザケタ計画を立てるなよ〜っ!(怒)









In a high school 15(執行委員一同、大阪へ行く・その2〜大阪を遊ぼう!〜)









 6月16日(土)午前7時30分。



 朝っぱらからホテル阪急インターナショナルの正面玄関で、空を見上げる一団があった。

「天気は上々、気分爽快!絶好のデート日和ね!」

 にこやかにさわやかに真紀は友人たちに言った。

 梅雨どきだというのに、大阪の空には何故か雲ひとつない。これならば真紀でなくともさわやかな気分になるだろう。

「…なんでそんなに張り切ってんの?」

 関口は首を傾げる。デート日和といっても、「デート」をするのは総勢8人いる同行者の中でも1組だけのはずだ。

 それを「デート」といってしまうと、きっと工藤コナンに蹴り倒されるのだろうけど…と、関口と太田とが目を合わせて苦笑していると。

「『K&Kラブラブ推進委員会』としては、素敵なデートを演出して、ふたりの仲を盛り上げてあげないとね!」

 心の底から楽しそうに、真紀が1人で盛り上がっているので、思わず顔を見合わせる。

 …ていうか、あの2人の仲をこれ以上盛り上げる必要があるのだろうか?

 そろいもそろって朝食の集合時間に遅れているし…

 と考えた関口だったが。

「まあ、いいけど………」

 それ以上その件について考えると怖い考えにいきつきそうだったので、適当に流しておくことにした。

 関口が視線を逸らせた先では、吉田歩美と阿笠哀がフロントの前に飾られた花を仲良く見ている。

 平和だなぁとしみじみ思った関口の背後では、まだ真紀と太田とが闘っていた。

「瀬戸さんにいっぱい写真を撮ってもらいましょう!」

「…売るんだな?」

「訊く必要のないことは訊かないでくれないかしら?」

 さくっと返されて言葉につまる友人を見て、関口はこっそりとため息を漏らした。

 ていうか、真紀に敵わないことはとっくの昔に分かっているというのに、今更どうしようというのだろう?

 真紀と太田と関口が、仲が良いのか悪いのか評価の困難な会話をしていると。

「あ、コナン君、おはよ〜」

「おはよう、歩美ちゃん、灰原。いい天気で良かったな!」

 欠伸をしながらコナンがやってきて、歩美と挨拶を交わしている。

 真紀はツカツカと歩いて行って、そこに割り込んだ。

「さわやかな目覚めを満喫しているところ水を差して悪いんだけど」

 と言いながらも、全然まったく爪の先ほども悪いとなんて思っていない顔で。

「食事の後で私たちの部屋に来てね!」

 ニッコリと、真紀はそう言った。

「………なんで?」

 真紀を相手にする場合、このかわいい笑顔が曲者なのだと思い知らされているコナンは、警戒心を隠さない。

「昨日以上に綺麗にしてあげるvvv」

 予想通りというか、げに楽しそうに物騒なことを考えている真紀に、コナンは引きつった笑みを見せた。

「…別にいいよ、このままで…」

 ていうか、このままがいい。

 コナンは心の底からそう思うのだが、そんな願いは真紀には通用しないのだ。

「あら、遠慮しちゃダメよ!せっかくのデートなんだから!!」

「デートじゃないっ!!っつーか、俺で遊ぶな〜!」

 ついに耐え切れなくなったコナンが長年の経験で培った外面の良さを捨てて叫ぶと。

「ふぅん…そんなこと言うと、あんなコトとかこんなコトとか全部洗いざらい瀬戸さんにバラしちゃうかもしれないけど、いいんだ?」

 やや目を細めて、真紀はコナンを見下ろした。…実際の身長は真紀よりもコナンの方が5センチほど高いが、「見下ろす」としか表現のしようがない表情なのである。

「なっ………」

 忽ちコナンは真っ赤になって絶句する。

 ほんの何秒かの間に死んでもバラされたくない数々のシーンが脳裏をよぎり………そして数々ある時点でもうダメなのだと悟った(笑)。

「ね、文句ないよね?」

「…ていうか」

 言わせねーんじゃねーか、とボソッと呟いても無視される。

「じゃ、今日の服はコーディネートその2ね!」

「あ、あのワンピ可愛いよね〜vvv」

「良かったわ、せっかく買った服が無駄にならなくて」

 勝手に進められる計画に、何の話だよ、とコナンがこっそり涙していると。

「あ、みんなもう起きているな!それじゃあ朝食に行こうか!…て、どうしたの?」

「何もかも黒羽のせいだっ!!」

 打ちひしがれるコナンと勝ち誇る(?)真紀の顔を交互に眺めた黒羽先生に、コナンの渾身の蹴りが炸裂したのだった。









 それから2時間後。

 正門から入って目の前の地球儀モニュメントの前に。

「というわけで、やって来ましたUSJ、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン!」

 何故かマイクを片手にアナウンサースマイルの真紀がいた。

 その正面でデジタルハンディカムを構えているのは放送委員の瀬戸弘樹。

「…何やってんだ、アレ?」

胡乱げな視線を彼女に向けるコナンに、問われた太田と関口は苦笑する。

「ビデオ、理事長に命令されているんだってさ」

「まぁ理事長が欲しい映像は塚原さんじゃないんだろうけど…」

 彼らの説明に、花柄ワンピース姿の美少女風コナンは、僅かに眉を顰めた。

「………黒羽か」

 極自然にコナンの口からため息が漏れたのを目の当たりにして、関口と太田は信じられないと顔を見合わせる。

 明らかに、理事長に対する対抗心、あるいは嫉妬に似た想いが感じられたからだ。

 関口にしても太田にしてもコメントに困り、2人とも気付かなかった振りをして、そこら辺の家族連れやカップルなどを何気なく見ていたが。

「ねぇ女の子だけで記念写真撮ろうよ!!」

 パタパタと軽い足音をたてて駆け寄ってきた歩美がコナンに言うのを聞いて、口をあんぐりと開けた。

 …ていうか「女の子」?

「ほらほら、工藤さんも!」

 ツッコミたいのは山々だったが、歩美に続いてやってきた真紀の姿にビビッて何もいえない(笑)。

「ええっ?」

 歩美が右腕に縋り付き、真紀が左腕に自分の両腕を絡めて。

 コナンは2人に引きずられるようにして地球儀の前に立たされた。

 その後に呆れ顔の哀が、仕方がないわね、というオーラを漂わせながらも続く。



 そして、瀬戸にカメラを渡して、モニュメントの前で4人で写真を撮っているのを見た関口はぽつりと呟いた。

「………間違いなく、顔のレベルは高いよな………」

 性格その他、問題がないわけではないが、外見のレベルは滅多にお目にかかれないような4人連れである。

「放っておけば4人まとめてナンパされること、間違いなしって感じだよな。」

 …約1名、本当は男子高校生だと分かっていてもなお、とてもそうは見えない。

「工藤もな」

「ああ、工藤もな」

 思わず2人で同時に呟いてしまい、太田と関口は同時に吹き出した。

「違和感ねーよなぁ」

「ってか、溶け込んでいるっていうか」

 こんなことをコナンの前で言ったら半殺しぐらいにはされるかもしれない、と思いながら2人はしみじみと言った。



 …なんで俺がこんな目に遭わなきゃなんねーんだよ。

 ある意味で両手に花的状態で写真を撮られ、コナンはそんな不満で一杯だった。

コナンにとっては異性に抱きつかれているわけだが、傍から見れば女の子がじゃれあっているだけである(笑)。

「ね、次はスヌーピーと一緒に写真を撮ろうよ!」

 コナンの腕にしがみついたまま、マップを広げた歩美が言い出した。

「スヌーピー・スタジオ?いいね、行こう!!」

 すぐに真紀が賛成の意を示し、コナンに目で圧力をかけてくる。

「…いや俺は絶叫系とかの方がいいんだけど…」

 何か微妙に論点がずれているような気がしないわけではなかったが、とにかく逃げたい一心でそう主張すると。

「あ、ジュラシック・パークの?私も乗りたい〜!」

「大丈夫、男子に並んでおいてもらえば待ち時間も有効に活用できて、ノー・プロブレムよvvv」

 かなり極悪な台詞を吐く真紀に押し切られ、スヌーピー・スタジオに行く羽目に陥ったコナンだったが。

 …ていうか俺も「男子」なんじゃないのか?

 ワンピース姿でそんなことを口にしてみても説得力がないようなことを、延々と考え続けていた。











 午後6時。

 そろそろホテルに帰って夕食でも、というときになって、快斗がコナンにそっと囁いた。

「ホテルに戻る前にさ、2人で観覧車、行かない?」

 USJの対岸は天保山で、海を隔ててすぐ近くに大観覧車がある。1周するのに約15分を要する、いわゆる世界最大級の観覧車はどう考えてもデートスポットだった。

 別にこういった類の観覧車はお台場にも葛西にもあって、大して違いはないのだろうとコナンは言いたかったが。

「みんなはどーすんだよ?お前、仮にも引率者だろ?」

 実は快斗がものすごく観覧車に乗りたがっていたのを知っていたので、とりあえず別の角度からやんわりと拒否してみる。

 すると快斗もさすがに一瞬、言葉に詰まった。

「…じゃあみんなで!」

 本当はこっそり行きたかったが、確かにこんな見知らぬ土地で可愛い生徒たちを見捨てるわけにもいかない。

 妥協の策として全員で行こうと提案すると、対するコナンの返答は素っ気なかった。

「明日、海遊館に行くんだろ?明日でいいじゃないか」

 多数決の結果、最終日の明日は半日かけて海遊館に行く予定になっている。観覧車は海遊館のすぐ隣にあるのだから、まとめて行く方が効率的ではないか。

 すると、快斗はぷうっと頬を膨らませていじけたようにコナンを見る。

「俺は海遊館には行かないんだって!」

 …正確に言えば「行きたくても行けない」のだが。

「いいじゃん、ちょっとぐらい俺の行きたいところに付き合ってくれたって!」

「何、子供みたいなこと言ってんだよ!」

 痴話ゲンカとしか言いようのない口論をはじめた快斗とコナンのところへ、それまでみんなでマップを見ていた真紀が近寄ってきて叫んだ。

「先生、船に乗りましょう!」

「…船?」

 口論を中断して、2人はそろって真紀を見る。2人とも、いきなり何を言い出すのだ、と怪訝そうな顔である。

「そうです、ほらあそこ!!」

 真紀の指が示す方には確かに水上バス乗り場があり、すでに生徒たちは勝手に移動を始めている。

「コナン君、早く〜!」

 コナンたちの視線に気付いた歩美が手を振ってきて、コナンと快斗は真紀とともに水上バス乗り場まで小走りに走る。

 そして、何故か理事長に渡されたチケットの中に入っていた乗船券を使って乗り込んでから。

「………あ、これ天保山行きだ………」

 チケットに書かれた行き先を見て、コナンが呆然と呟いた。

 すると、隣にいた真紀がにっこりと一言。

「そうよ、夕暮れ時の観覧車から見る大阪なんて、最高じゃない!」

 …決定事項らしい。

 まぁいいか、と思いつつ、マジメに考えるのが心底バカらしく思えたコナンだった。







 *****





 翌日6月17日(日)。

 一行は昨夜に引き続き天保山に来ていた。



 地下鉄中央線の大阪港駅を出たところに。

「よぉ工藤!しばらく見ない間にえらい別嬪になっとるな!!」

 私服の服部平次が待ち構えていたので、快斗が顔色を変えてコナンに詰め寄った。

「なんで服部がここにいるんだよ!?」

 せっかくのデートなのに(←間違い)と憤慨する快斗に、コナンは苦笑を浮かべる。

「黒羽が海遊館に行かないから、服部を電話で呼んだんだよ。」

「工藤に呼ばれたら、東京かて飛んで行ったるで〜!!」

 やたらと幸せそうにそんなことを言っている平次のことは完全に無視して、快斗は快斗で目を潤ませた。

「もしかして…それって、俺の代わりに服部に引率させて…」

 そして俺たちは2人きりのラブラブデート!?と続けようとした快斗だったが。

「黒羽の代わりに俺が工藤をエスコートすればええんやな!?」

 という、平次の浮かれきった言葉に遮られた。

「何だって〜!?」

 快斗は噛み付くように剣呑な瞳を平次に向ける。

 平次は余裕の笑みでその視線を受け止めた、が…。

「2人とも違うって。俺たちが海遊館に行っている間快斗が暇だろうから、服部と遊んでいればいいかなと思ってさ!よろしくな、服部!!」

 コナンはそれだけ言い残して、執行委員の生徒たちと一緒にさっさと海遊館に入って行ってしまう。







 結局、みんなが海遊館から出てくるまでの3時間、快斗と平次は「日本一低い山」天保山に登って時間を潰していたのだった………。









The END.





(コメント)

 1万HIT記念企画第3弾。大阪編その2です!名付けてデート編…のわりには、デートらしいことはしていませんが(汗)。今度は真紀ちゃんに負けて、コナン君は女装してのUSJその他。私だけは楽しいです〜(笑)。

ところで、私は大阪には1回しか行ったことがありませんので、もしかしたら嘘があるかもしれません。もし「本当はこんなではない〜!」という箇所があっても、多少は大目に見ていただきたいです。

今後もどうぞ宜しくお願いいたします!!



≪BEYOND THE BLUE SKY≫管理人

小夜 眞彩